崩壊世界でルートシューター   作:穴熊拾弐

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第19話 Forecast②

 

 

 

 罠だらけの学校攻略。

 そのためにも俺は買い出しなどの準備を進めることを決めた。

 猟銃も失い、地雷除去も探知方法もわからんのだ。

 このまま無策で突っ込むと、間違いなく貯金が尽きる。

 

 というわけで軍資金の確保から。

 まずはこの数日間で溜めていた肉の売却に肉屋へと向かった……のだが。

 

「――」

「あん?」

 

 封鎖壁のすぐ近く。

 がさりと近くの茂みが鳴ったかと思うと、そこから小さな影が出てきた。

 

「……猫か」

 

 向けていた拳銃を上げる。

 みゃあ、と鳴くのは三毛猫の子供だ。

 全身が汚れまくっていて、やせ細ってる。

 

「野良……ここまだ危険領域内だぞ……」

 

 ぼやく間に足に纏わりつかれた。

 こういった野良猫、たまーにいるんだよな。

 大体餌がないからか、ブラーが怖いからか領域から逃げ出してるようだが、こいつは違うらしい。

 

「ほら、俺は何も持ってないんだ。どけどけ」

 

 そのまま猫を飛び越えて肉屋へと向かった。

 

「――おや、リズさん。いらっしゃい」

「おはようございます」

 

 集めて解体した心臓、実に5体分を売りに出す。

 今までは1~2体しか売れなかったのに一気に5体。

 ああ猟銃。お前は偉大だった……。

 

「ふむふむ、リズさん、解体の腕を上げましたな。部位も増えて傷も少ない」

「はい。設備が増えまして、このように」

「良いですねえ。大変良い!」

 

 相変わらず頬ずりしそうな勢いでうっとりと肉を見つめている。

 ……天パ店主といい、俺が関わる商人は謎な人間が多すぎるな……。

 そのまま自分の世界に行きそうなので声をかけて止める。

 

「あの……」

「おや、失敬。少々興奮してしまいました。こちらがお代です。それと、頼まれていた弾薬も」

「……ありがとうございます」

 

 頼んでいたのは拳銃の弾と……猟銃の弾……。

 くぅ……いつかまた手に入れてやるからな……。

 悲しんでいると、肉屋が別の物を取り出した。

 

「それと、こちらはサービスです」

「これは……手榴弾(グレネード)ですか?」

 

 暗緑色の細長い缶に、なにやらレバーのようなものが取り付けられている。

 ゲームとかで見た閃光手榴弾(フラッシュバン)がこんな見た目だった気がするが。

 

雷光手榴弾(ショックバン)という新商品です。閃光や音ではなく、小規模の放電を発生させてブラーを行動不能にさせるものです」

「放電ですか、こんな小さな筒で……」

 

 静電気くらいしか出なさそうだけど、ブラーの動きが止まる程の威力がある?

 それは凄いが……。

 

「そんなことが可能なのですね」

「ほほっ、これもリズさんがお持ちしてくれた心臓のおかげですよぉ」

「私の? そうなんですか?」

「ええ、これの素材はブラーですから」

 

 そう言って納品したばかりの心臓を揺らしてみせた。

 見た目は手榴弾だけど、これの中身が心臓……? 真っ赤な血肉が詰まってるってこと?

 電気じゃなくて血肉が飛び散りそうで嫌なんだけど。

 

「こんなお肉が雷を生むんですか。不思議ですね」

「ブラーという生物の面白いところですねぇ。ブラーは存在を吸って現象を生む、何とも不思議な特性です」

「……?」

 

 なんか格言っぽい事を言い出した。

 良く分からんが、ブラーの心臓でトンでも魔法兵器が作れるってのは本当らしい。

 レジピポたちも心臓を集めて武器を作ってるというし。

 つまりブラーってのは侵略者であり貴重な資源ってことか?

 

 ……倒すべき侵略者に()()があるってのは、あんまり良くなさそうな気がするが……。

 ま、俺の気にすることじゃねえな。

 

「わたくしどもの新商品です。ぜひ使って、感想をお聞かせください」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 俺にとっては便利な武器が増えるだけだ。

 ありがたく使わせてもらおう。

 ……ああ、そうだ。ついでに。

 

「あの、お水と……お肉ってあります? 食用のやつ」

 

 猫って、何が食えるんだ?

 

 

***

 

 

「――お、まだいた」

 

 肉屋を出て地下道から領域内に入ると、さっきの猫が岩の上で寝転んでいた。

 白い岩だから日に当たって暖かいんだろう。

 そいつの前に肉屋から貰った肉――わざわざ焼いて細切れにしてくれた――を置く。

 

「ほら、これ食え」

「――――?」

 

 そいつはしばらく警戒して臭いを嗅いでいたが、少し待ったら一気に貪り始めた。

 やっぱり腹減ってたんだな。

 水も貰って来たので手にあけて差し出してやると舐め始めた。

 

 首輪はしてないが、飼い猫だったのかね?

 それとも余程飢えてたか。

 そのまましばらく水を与えて、満足したらしいところで立ち上がる。

 

「とっとと別のとこ行けよー」

 

 汚れた頭を指で撫でてから歩き出す。

 変な出会いはあったが、収穫は――残念ながらなかった。

 

 猫用の餌を待ってる間に聞いてみたんだが、流石の肉屋も地雷除去技術は持ってなかった。

 

「結局力業で潰すしかないか……その辺の車見つけて突っ込ませればいけるか?」

 

 一応、本当に最悪の場合は俺が石とか鞄に詰めて突っ込む()()()()()()はできなくもない。

 終わるまでに何回死んで、いくらかかるのかって話だが。

 

「場所も範囲も分からない地雷原とか終わってるだろ……」

 

 ゲームだと先達たちの残した叡智(マップ)があるのに……。

 

「うーん……」

 

 しかし、どうするかな。

 除去も探知も無理ときた。

 こうなったら吹き飛ぶ覚悟でやるしかないか?

 

 ただそれには金が要る。

 ということで、肉の次はジャンク売却。

 鵲へと向かうことにしたのだが――。

 

「南地区に来いって……なんでまた」

 

 連絡をしたら、今日は別のとこにいるからそっちに来いとのこと。

 修理用の工房でもあるのかね?

 

 なので、地下道に引き返して外に出て、封鎖壁の外側を南に沿ってぐるっと回っていく。

 目的の場所にたどり着く頃には日は高く昇り、昼前になっていた。

 

「……ん?」

 

 医者(ドク)の医院の近く。南北に街を貫く通りに人だかりができている。

 なんだありゃ。揉めてるようには見えないけど。

 気になったので近づいてみると――。

 

「――鵲?」

「あ、来た来た。こっちこっち!」

 

 リヤカーとブルーシートを広げて家具や家電を並べた天パ店主がいた。

 この賑わいの原因は彼だったらしい。

 なんだあれ。ジャンクショップ鵲の出張販売か?

 これがあるから南に来いって言ってたのか。

 

 そして横には記者(ライター)の姿もある。

 天パ店主の方は応対に忙しそうなので、記者(ライター)の方に声をかける。

 

「こんにちは。これ、何してるんですか?」

「……修理した家電とかを配布してるのよ」

「配布? 売ってるんじゃなくて?」

 

 てことはこれ慈善活動ってこと? マジで?

 そんなことをする良い人には見えなかったが。

 

「ええ。流石にこの状況で家電を売って稼ぐ事はしない……ってのがあいつの考えよ。稼げるのに、どうかしてるわ……」

「あはは……」

 

 よく見れば周囲には警察や漂白部隊(SBEU)がいる。

 こちらを警戒してるんじゃなくて警護をしているようだから、ちゃんと正式に認可された取り組みらしい。

 ジャンク狂いに見えるが、ちゃんと世のためになることしてたんだな……。

 

「はーい、順番にね! 予約票を……はい、確かに。じゃあこれ、ヒーターね」

「ありがとうございます……!!」

「丁寧に使ってねー。はい、次。えっと、これだね。ポットだよー!」

 

 人々はちゃんと順番を守って配布を受けている。

 暖房器具にスマートフォン……あれ欲しいんだけど……駄目ですよね、はい。

 

「暖かいの返ってきた!」

「そうだね、これで寒いのもへっちゃらだねー」

「ははっ、水のカップ麺とようやくおさらばだ……!!」

 

 家電を受け取り帰っていく人たちは皆、嬉しそうだ。

 良いことしてるんだなー、あの天パ店主。

 感心して賑わいを眺めていると「ちなみに」と記者(ライター)が口を開く。

 

「あれ、全部じゃないけどあなたが売った物で修理したやつだから」

「え? ……そうなんですね」

「そうよ。だから誇りなさい。あなたはこの街の復興に少しだけ貢献してるのよ」

「……それは、それは……」

 

 ゴミ拾ってるだけなんだけど、それが誰かの役に立ってるってのがわかると不思議な気分だなあ。

 

 ――俺がゴミ集めさせられてる理由ってこれか?

 

 神様らしく人助けをしろって?

 ……そんな殊勝な神様には見えなかったがなあ。

 

 しかし、こうして見ると住民たちは皆何というか……ぼろいな。

 服装がバラバラというか、とりあえずありもので暖かい恰好をしている感じ。

 多くが帽子とかで髪型も隠してる。満足に風呂も入れないとかありそうだ。

 んー……。

 

「もしかして、服も需要あったりします?」

「勿論あるわよ。燃料が不足してるから、冬はみーんな厚着。もこもこよ」

 

 もこもこって……。

 聞こえは可愛いが、要は物資不足ってことだよな。

 

「なに、拾ってくる? どうせ無料で配ることになるわよ?」

「まあ……鞄に空きがあればですけど。今も時々緩衝材代わりにしてますし」

 

 実はそこそこ溜まってる。今は仮倉庫に積んであるけど、更に集めて配るのもいいだろう。

 需要があるならやるのもいいかな。

 

「……」

「あの、何か?」

「……いいえ。どいつもこいつもお人好しって思っただけ。あと、例の件も頼むわよ!」

「それは勿論。やれるだけやってみますよ」

 

 そのためにここにいるんだしな。

 でも、そうか。なら服を持ってきて天パ店主にでも渡すかな。

 どうせ余ってるし、こんな光景を見ちゃうとな……。

 

「……あ」

「ん?」

 

 ふと聞こえた声に振り向くと、そこには学生服の少女がいた。

 あんぐりと口を開けて、こちらへと指をさしているが……誰だ?

 ジッと見つめていると……あ。

 

「――もしかして、文香さん?」

 

 こくりと頷きが返ってきた。

 学生服だから気付かなかった……。

 最初のタスク依頼主にして、この世界に住む一般人少女――足立文香嬢。

 まさかの再会。……ゲームじゃないと、こういう事もあるんだな。

 

「えっと……飴、いります? イチゴ味か、パイン味」

 

 とりあえず、俺は笑みを浮かべてそう告げるのだった。

 

 

***

 

 

「――お、お久しぶりです……」

「ええ、お元気そうですね、文香さん」

 

 鵲出張所から少し離れた所で、文香嬢と話をすることにした。

 あれから一週間は経ったかな?

 緊張しながらも笑みを浮かべている彼女に変わったところはない。

 元気そうで良かった。

 ちなみに飴はまた断られた。美味しいのに……残念。

 

「あの! あの後遺影も受け取りました。本当にありがとうございました」

「いえいえ」

 

 それも良かった。命を賭けた甲斐があるってもんだ。

 うんうんと頷いていると、文香嬢がでも、と不安そうに口を開いた。

 

「あの、その十神さんなんですけど」

「……十神?」

「ほら、漂白部隊(SBEU)の隊長さんですよ。遺影を託してくれましたよね?」

「ああ!」

 

 あの姉ちゃん、十神っていうのか。しかも隊長だって? 結構若かった気がするが……人手不足なのかね。

 

「その方がどうされたんですか?」

「十神さん、何度かあたしの所に来てリズさんの事を聞いてきたんです。『誰に遺影回収を頼んだのか』って。多分、リズさんを探してるんじゃないかと思って……」

「……私を? 何度もですか?」

「はい」

「……なるほど」

 

 ふーむ。俺のことを聞きに来るかもと思ってはいたが、大分しつこいな。

 わざわざ目の前で死んだってのに……。

 死者のことを聞き回って一体どうするつもりなんだ?

 

「なんで私のことを調べてるか、わかりますか?」

「遺族に伝えたいから、知ってるなら教えてくれって……とても必死そうでした」

「必死……」

 

 ……ひょっとして何かバレたか?

 俺の恰好は特徴的だから、例えば巡回中の兵士に見つかっていた……とか?

 

「……あ」

「? リズさん?」

「あ、いえ。なんでもないですよ、なんでも」

 

 もしかしてこの前姉ちゃんが必死に探し回ってたのって俺か?

 だとしたらマズいな……。

 

 自爆した筈の俺が五体満足で生きてる――そんなことある筈がないもんな。

 下手したら俺の『システム』を知られかねない。

 あの拠点、馬鹿でかいから直ぐに見つかるだろうし……そうなったらリスキルで速攻ゲームオーバーだ。

 

 ……絶対にあの姉ちゃんとは遭遇しないようにしよう。

 やっぱりなんか索敵方法手に入れないとなー。なんかあるといいんだが……。

 

「黙ってるって約束だったので、嘘をつきましたけど」

「あら、ありがとうございます。ちなみに、それってどんな……?」

「……えっと……」

 

 何故か急に口ごもった文香嬢。

 しばらく待つと、十神って隊長についた嘘を教えてくれたんだが――。

 

「……神頼み?」

 

 まさかの神頼みだった。

 しかもそれを信じたって……。

 

「……ふふ、ふふふっ」

「ちょ、笑わないでくださいよ……!! 必死に考えたんですから……!!」

「ごめんなさい。あまりにも、その、想定外だったもので……神頼みとは、思いつきませんでした」

 

 どうなってんだ。漂白部隊(SBEU)ってのは間抜け集団なのか?

 あー、面白。

 でも必死になって探してたってことは、流石に騙されてはいないのかな。

 言い訳まで一緒に考えるんだった。今後の反省としよう。

 

 ともあれ逃げ回ることは決定だな。

 でもそうなると、地雷にかかりまくってたら流石に見つかるよな? ますます地雷原の突破をどうするか――。

 

「――それ、使えるんじゃない?」

「はい?」

 

 背後から記者(ライター)の声が聞こえた。

 こいつ、聞いてやがったのか?

 

「……」

「安心しなさい。アンタが笑ったところからしか聞いてないから。それより、さっきの服の件よ。良いじゃない。神のお恵みってことにすれば」

「……服ですか?」

 

 彼女の言葉には、俺じゃなくて文香嬢の方が反応した。

 

「そ。こいつ、危険領域内から服とか持ってきて配ればいいんじゃないかって」

「わあ、それ良いですね! あたしも冬服欲しいし……協力しますよ!」

「……ええ?」

 

 その後、2人による作戦会議の結果、『服を集めて神様のフリして配ろう作戦』が実行されることになった。

 

 なんか想定外のタスクも生えてきたんですけど。名前もまんまだし。

 まあ、いいけどさ……。

 

 


探索成果:―

 

収入:¥1,000,000 【ブラー売却】

   ¥ 72,500 【ジャンク売却】

支出:―

 

残額:¥1,466,550

 

進行中任務

1:夜鳥羽の裂け目の消滅

2:拠点の修復

3:予言者の潜伏場所の発見

4:衣類の回収、引き渡し


 

 

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