ゴミ漁りの来訪者、謹慎どころか免職間近の
またも奇妙珍妙なチームとなった俺たち3人は、まず地下研究所の破壊から進めることにした。
ただ、その前に。
「……ああ、この辺です。止めてください」
「はーい。本当にここに置いてきたの? あんた……」
「仕方ないじゃないですか。緊急事態だったんですから……阿内さーん!」
彼を押し込めた建物に声をかけると、がたがたと音が鳴って上階の窓が開いた。
「ああ! 良かった! 来てくれた……!!」
「当然ですよ。言ったでしょう、逃がすって」
「……うわ、本当に
「そうなのか? 見慣れてるかと思ったが」
「ふふん、私、危険領域に入ったことないから!」
「……それでよく裂け目ライターを名乗ってるな……」
背後で呑気に会話している2人。
それを見て、阿内君が首を傾げる。
「その人たちは……」
「あー……しばらくの同行者?」
「へ? 同行者って……」
「大変申し訳ないんですが、もう少しだけ、私たちにお付き合いください」
「……なんでぇ?」
いや、ホント、なんでだろうね……ごめんね。
***
というわけで、早速4人連れとなった俺たちはホテルへ戻り、地下研究所へと入った。
早速咲良さんの治療を行いながら話すのは……これまでの情報。
「――というのが、大体私たちが把握した情報です。ほら、締めますよ」
「ああ……くぅ……っ!!」
医療設備から見つけたサポーターを巻きつけながら伝えたのは、例の実験体連中――α部隊について。
治療を終えて顔を上げると、机に座っていた
「……な、な……」
「鷹村さん? どうし――」
「ぬぁあんですってぇ!?」
咲良さんの言葉を遮る様に、
「「うるさっ……」」
「夜鳥羽で人体実験!? そんでその生き残りとさっきまで戦闘してたぁ!? なにそれ……」
「安心してくれ、鷹村さん。奴はもう退いて――」
「――超面白そうじゃない!!」
「……そっちか……」
一応、肉屋については伏せたままにしてる。
本来は明かさないといけなかったが、あの怪人のおかげで隠せるようになった。
面倒な敵だが、こういう意味ではありがたい。
ついでに見つけた医療品を鞄に入れつつ、足元を指さす。
「そして、ここがその現場」
「ええええ……やっば……てことはここは……」
「それも大丈夫だ。ここの安全は――」
素早くばっばっと周囲に視線を振って、そのまま勢いよくこちらへ向いた。
「――情報の宝庫ってことね!?」
「……やっぱりそっちか……」
なにやら咲良さんが落ち込んでるが、気にせず頷く。
「そういうことです。特捜の依頼でここを爆破して、ついでに書類の焼却もしちゃいますが……その前に、30分あげます」
「え!?」
がたりと
爛々と輝く目には、さっきまでの恐怖はどこへやら。
良いね、この貪欲さ。
この人のこういう所が好きだし、その能力は、今この時こそ輝くだろう。
「欲しいのは怪人の生態。できれば弱点。それとこの施設に関する情報です」
「ふんふん、前者は了解。後者はもう少し具体的にお願い」
「……この施設で行われていたことの詳細とその責任者。その情報が欲しい」
「んん! そういうこと。
言い辛そうな咲良さんを見ただけで理解してくれた。
話が早くて助かる。
「報酬として、見つけた情報の扱いは任せますよ。好きに使ってください。ただ、持ち帰りは最低限でお願いしますよ」
「え!? ほ、ホントに……?」
「緊急事態だ。致し方ない……ただし! くれぐれも丁重に扱えよ。少しでも嘘や誇張を混ぜてみろ……あとは分かるな?」
「ひぃ!? こ、公権力には逆らいませんよ……!! 当然じゃないですか!!」
それは記者としていいのか……?
まあ、それはともかく。
「
「……行き当たりばったりの間違いでは?」
「失礼な。偶然なんかじゃありません。これは、神様のお導きってやつですよ」
というわけで、飴を放り込んで、手を叩いて切り替える。
「まずは調査、そして爆破と焼却。……急ぎますよ!」
「うん!」
「……ああ」
勢いよく立ち上がった俺たちを、阿内君が呆然と眺めてる。
「……あの、俺は?」
「「「手伝って!」」」
「……なんでこんなことに……」
そこからは大忙し。
俺と咲良さんと、後はちょっと身綺麗になった阿内君も動員して、手あたり次第書類をひっくり返しては
それを記者が凄まじい速度で精査、整理して、不要なものはシンクで燃やす。
「はいこれ」
「あいよ」
「これも頼む」
「はいはい。あ、もうこの辺は要らない。奥お願い」
「ええ!? は、早いっすね……」
「本業なんで! はい、急ぐ!」
「ひぃぃ……!!」
広いし暗いが、書類を見つけて運ぶだけなら大して時間はかからない。
咲良さんが爆破して塞いじゃった通路だけが面倒だったが、除去する時間もなかったので抜け穴を利用して何とか運搬。
そうしてきっかり30分後の、13時35分。
「――よし、大体分かった」
ばん、と分厚いテーブルを叩いて
「もうか?」
「もうだよ。と言っても、ここじゃ大したそんなに多くの情報はなかっただけだけど。流石にヤバいのは処分はしてったみたいね」
「……そうか。ということは、いい情報は何も?」
「――ふふん、私を舐めないで。分かったって言ったでしょ? 推測も混じってるけど、多分2人が欲しい情報だと思う」
自信満々な笑みを浮かべて、
「じゃあ――」
「ただ、説明は作業しながら。ここ破壊するんでしょ? 怪人が戻ってきても困るしさ、ほら、急いだ急いだ」
***
ホテルから出てしばらく走った所で車を止めた。
「もうそろそろ平気だと思うわよ」
「よし、リズ。この番号にかければ爆破する」
「おお……これ、一度やってみたかったんですよね。それでは、えいっ!」
タップしてワンコールした直後、地響きとともにくぐもった爆発音が鳴り響いた。
地下研究所、特に奥の解剖部屋辺りに集中して設置した爆薬が無事に作動した様である。
「わっ! 凄い威力っすね……」
「ちょっと、音でブラーが寄ってこないでしょうね!?」
「大丈夫ですよ。活性化に夢中ですから」
怪人と遊んでる間に、すっかりこの辺りからはブラーが消えている。
駅にでも集結してるんだろう。……行くのこえー。
そのまま車を西に走らせながら、記者はこの短期間の調査結果を告げる。
「――ここの施設に関しては、概ね2人が聞いて、調べてたことそのままだったわ。半分は治療施設で、もう半分でブラーに関する実験をしてた」
「実験……特殊個体の人体移植だな?」
「ところが、それだけじゃないんだなーそれが」
「なに?」
がたんと揺れる車内。
助手席で
「咲良さんの父親たち第3師団には、ブラーの掃討の他に、やつらの生態調査任務があった。それはいいわよね?」
「はい。あの学校で行われていたのもその1つだと思われます」
牢屋に改造された教室に繋がれたブラー。
多数のカメラで観察されていただろうあれは、悍ましい程の無慈悲さ、徹底さを感じた。
侵略者相手だ。一切の容赦なく調査が行われたのだろう。
「写真の場所ね。あそこ、どおりで何も情報が出ない筈よね。ちなみに運動能力だったり、後は言語能力とかも調べてたみたいよ。会話を試みた記録があったわ」
「ブラーと会話……? 良く分からない鳴き声しか聞いたことないですけど、喋れるんです?」
「いやあ、無理無理。そもそも侵略者だし、言葉が通じないのは明白だし。ここでも調べたのはほんの一瞬だけだったわ。ただ、ブラーに言語が存在するかは調べてたみたい。怪物同士が意思疎通をしてるか、ってね」
その資料がこれ、と紙を見せてきた。
……何書いてるか全然わからん。
「この辺の研究は今も各所で行われてる。あくまで最初が夜鳥羽だっただけ。違法性……法律なんてないから、非道徳性かしら? その点も何の問題もないでしょ」
「そうなんですね」
「あんた、ホント何も知らないわよね」
「あははは……」
「――で、そうしてブラーの調査をして分かったことは……ブラーが持つ恐ろしい程の変容性だった」
「へん……? なんです?」
よくわからない単語が飛び出してきた。
「変容性。とっても変わりやすいってことよ。ブラーは、取り込んだ物の特徴を再現する能力があるみたい」
「――ああ!」
パチンと指を鳴らす。
「
「多分。実は、人間以外も結構食べてるのかも」
トカゲの尻尾切りとか。
じゃあ、やっぱり怪人のクリック音も……ん?
「……学校で鮫みたいな外見の奴と戦いましたけど、夜鳥羽に鮫っています?」
「んー、水族館はなかったよね? 海もない。学校で飼ってたわけもないし」
そんな学校嫌すぎる。
「そもそも火、吐いてきましたけど……」
「……火炎放射器でも食べたんじゃない?」
そんなわけあるか!
「ま、まあ、その辺の詳細はともかく! そういう特性があると分かったわけでしょ? ……そうなるとさ、興味が湧かない?」
「というと?」
「それはー……よっと」
大通りをゆっくり曲がる。
窓の向こうに、あの白い巨腕が見える。
……肩付近まで出てるな。急がないと。
「――ブラーは様々な生物の特徴を再現できる身体を持ってる。それってつまり、人間の身体も再現可能ってことでしょ?」
「……あ」
「もし、ブラーの肉体から人体の一部が
「「……!!」」
咲良さんと顔を見合わせる。
阿内君は話についていけてないのか首を傾げてた。
その特性が事実なら確かに、色々なことに説明がつく。
特殊個体が様々な生物?の特徴を有する理由。
ブラーの人体移植なんて狂気の考えが実行に移され、しかもそれが成功し、怪人たちが今もなお生きている事実。
それら全部、ブラーがこっちの生物に適合できるなら納得がいく。
「もしかしたらブラーは、異界を渡り歩いて色んな世界の生物を飲み込んできたのかもしれないね。……火、吐く鮫とか」
「そんな世界があってたまりますか」
しかし、異界を渡って、ねえ。
星を渡って丸ごと呑み込む化け物とか創作に出てきた気がする。
そんなん急に来られたら神様も困るだろうな――ん?
……
「……あ」
「? リズさん」
「あああ……!! もしかして、そういうこと……!?」
全身が震えたのは、車の振動のせいではないだろう。
その思いつきのあまりな突飛具合と、『これだ』というジャストフィット具合に身震いした。
もし、ブラーが取り込んだものを再現できる能力を持ってるなら。
それはひょっとして……
神様が大慌てで俺らみたいなのを派遣した理由。
そして、俺と
全部、このままじゃ自分たちが乗っ取られそうってんなら理解ができる。
「これは……想像以上に、とんでもない非常事態ですね……」
「ちょっと、いきなりどうしたのよ?」
「いえ、ひとまず、今は西へ急ぎましょう」
色々と確かめなければならないことは多いが、まずは肉屋だ。
それからしばらくのドライブを経て、俺らは西の端までたどり着く。
「……ここに出口が? そんなもの、聞いたことがないが……」
「無理もないですよ。恐らく、隠されてましたから」
「何?」
「それより、皆さん。よく聞いてください」
店に向かう前に、皆に伝えておかないといけない。
「今から私の協力者と会います。いいですか、くれぐれも粗相のない様に!」
「粗相って……子どもじゃあるまいし」
「駄目ですよ。驚いて逃げ出したり、怖がって泣いたり、攻撃なんて以ての外ですからね!」
「だから、そんなことするわけないじゃない」
言ったな?
ならばよし!
「じゃあ連れて行きます。ちなみにその人、さっきの怪人と同じ、人体実験の生き残りなんで」
「「――はぁあああ!?」」
よし、じゃあご対面といきますか!