ロングラン・スリーピース・アリス・コンプレックス 作:電動ガン
いつからだろうか。
夜空を見上げて眺めていた星々が脅威になったのは。
いつからだろうか。
星が不幸の象徴となったのは。
いつからだろうか・・・
そう、あれは。
「・・・。」
「以上が古畑隼さんの異人変化症の発症状況説明になります。よってこれより本人確認に入ります。御両親から隼さん本人しかわからない質問をしてください。」
「はい・・・では・・・」
異人変化症。それが世の中に出てきたのは12年前。ある日突然隕石が降り注ぎ地球に甚大な被害を齎した。
「隼、昔行った事のあるスキー場は・・・そこで食べたよく話す食べ物は・・・」
隕石自体は大した物じゃなかった。恐竜を絶滅させた様な巨大な物では無い。しかし衝撃波で建物を破壊するなどの被害が出た。
「馬刺しを食べて・・・それと合鴨の・・・」
「合ってる・・・じゃあ次は・・・」
政府も隕石被害を重大自体と認識し、対応に当たった。隕石の飛来で、大勢の被害者が出た。それも子供が。
「小さい頃・・・海で・・・」
「それは・・・」
だがおかしさに気づくのも時間の問題だった。隕石の被害で行方不明者が出るのは政府も予測していた。隕石が落ちたのは都市部も多い為子供の被害者が出るのも察していた、だが。
「次は・・・東京に住んでた頃・・・」
行方不明者が多すぎるのと、亡くなった子供が多すぎる。政府は異常事態が起きていると調査に乗り出した。結果。
「支援会さん、大丈夫です。本人だとわかりました。」
まず行方不明者の多くは男性。そして身元が確認出来ない謎の少女が多い。ほとんどの少女が亡くなっていたが、僅かに生き残った少女に話を聞いた。
「わかりました。ではここにサインと印鑑を・・・」
少女は言った、自分は少女ではない。成人男性だと。そして突き止めた。謎の宇宙放射線によって男性が少女へと変容していることを。
「はい。これで引き渡しの完了になります。後は・・・」
地球は未曾有の危機に遭遇した、と世界が発信した。そしてこの隕石襲来はまだ終わらない。天の川流星群帯に地球が突入し、まだ始まりに過ぎないと人類は震え上がった。
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「父さん、母さん、本当に信じるのか?」
「信じる。ちゃんとあなたにしかわからない質問をしたし。」
「でも、俺は完全変異型で・・・」
「それも書類を見た。それにDNA鑑定結果もあるじゃないか。親子関係は証明されてる。」
「されてるのは親子関係だけで、DNA的には完全に別人なんだぞ。」
俺は古畑隼。仕事場に隕石が飛来し、33歳のうだつの上がらない男性から推定7歳の女児になってしまった。異人変化症という宇宙由来の病気らしい。
「それに賠償金が出るんだろ。もう人生はめちゃくちゃだが安泰は出来る。それに発狂もしなくて済んだし。」
異人変化症・・・アリスメタモルフォーゼは発症すると少女になる。ここまではいい。だが・・・基本的に異人変化症は患うと発狂してしまう。何故かは詳しくわかっていない。男性が少女に反転し、若返ってしまうことで脳に甚大な負担が生じて発狂するという説が強い。
「賠償金・・・」
「宇宙政策の失敗の責任を国が取ってくれるのはありがたいな。」
異人変化症には段階がある。15〜6歳くらいに若返り、歯型、指紋、内臓器官、DNAなどの元の男性の痕迹が残った第一変化、12〜3歳に若返りDNA以外の元の男性の痕跡が消えた第二変化、そして6〜7歳まで若返りDNAにも元の男性の痕跡が無くなった完全変異。この第一変化に重度の錯乱が生じて会話不可能で要介護が必要。第二変化になると錯乱こそしないものの重度の鬱で会話不可能要介護。完全変異になると何故か錯乱も鬱も無く正常、だが元の男性の特定が困難という状況だ。おれはこの完全変異型。
「賠償金の支払いはまだ先になるし支援会に確認しなきゃいけないな・・・」
異人変化症が世に現れて12年。日本の人口のうち10000人が異人変化症になり、医療機関が逼迫している状況だ。完全変異型で収容がいらない患者はわずか12人だという。
「とりあえずさ・・・俺、どうなんの。」
「うちでゆっくりしなさい。」
「そうだな。流石に仕事は続けられないしな。」
「わかった。」
異人変化症を患うのは男性だけ。そして怖いところがあるそれは・・・
「じゃあ・・・しばらくゆっくりしようかな。」
少女に変容していて、女性と違うところは無いが。人間の女性では無いという。
「暇だ・・・」
自宅でぼんやりとちゅいったーを眺めながら過ごしている・・・が。暇だ。
「ごめんください。」
「はーい。」
誰か来る用事などあっただろうかと呼び鈴が鳴ったので出向く。
「あ、中村さん。支援会ですか?」
「そうです。まだ必要な手続きがあるので。」
「そうですか。上がってください。」
政府の組織である異人変化症対策支援委員会の中村さんだった。
「お茶です。」
「ありがとうございます。それでなんですが・・・」
「はい。」
「先日、本人確認をしましたよね。その後の書類をお持ちしました。」
「その後の書類?」
「ええ。戸籍情報や金融機関、行政サービスなどの名義変更を一括で済ませるものです。」
「なんかすごそう。」
「すごいですよそりゃあ。これは異人変化症が確認されてから整備されたものですが興信所から弁護士団含め全ての患者が困らないようにしたものですからね。」
「へぇ。」
「戸籍情報に関しては・・・色々複雑ですが、DNAで御両親との親子関係が認められますが、出生届が無い為実子とは認められません。寄って血の繋がりのある養子という立場に落ち着きます。」
「なるほど。」
「そして・・・こちらの書類にサインする前にこちらを書いてください。」
「?」
「これは・・・大変申し訳ないんですが・・・本人確認は取れても、同一人物だとは認められなくて・・・」
中村さんが取り出したもう一枚の書類、それは改名届と書かれた書類だった。
「新しく戸籍を作る必要があるんです。その際元の名前と同じだと不都合が多くなりまして・・・」
「なる、ほど・・・」
「裁判官の審査を省略するものでこの書類で完結します。新しい名前を書いた瞬間効力を発揮します。」
「わかりました。新しい名前・・・」
あまり元の名前から離れると嫌だし。こんなもんにしよう。古畑はやて・・・っと。
「はい。確認しました。ではこちらの書類を・・・」
「はい。」
さらさらとサイン。あとハンコ。これでよし。
「はい。これも確認しました。あとは異人変化症証明カードの写真を撮ります。」
「はい。」
「どこか。無地の壁が・・・」
「あ、でしたら向こうの部屋で。」
部屋を移動し、写真を撮・・・なんかゴツいカメラ出てきた。
「撮ります。」
パシャリ。パシャリパシャリ。オーケー。
「異人変化症証明カードってなんですか?」
「異人変化症証明カードとは、その名の通り異人変化症患者であることを証明するカードです。実年齢と公式年齢が記載されて公的な身分証だと考えてください。運転免許証みたいなものです。」
「なるほど。」
「では異人変化症証明カードが発行出来ましたらまた来ます。その際に変化した国民の権利等について説明する資料を持ってきますね。」
「わかりました。」
「それでは今日はこれで失礼します。何かご質問などがありましたら名刺の電話番号にいつでもご連絡ください。」
「ありがとうございます。」
中村さんは帰っていった。そして買い物に行っていた母さんが俺用の子供服を買ってきたので、着せ替え人形にされるのであった。