ロングラン・スリーピース・アリス・コンプレックス 作:電動ガン
「古畑さん異人変化症証明カードが出来ましたよ!」
「おお。」
またある日、と言っても前からそんな日が経ってない頃。支援会の中村さんがやってきた。お役所仕事って時間掛かるものだと思ってたけどやけに早いな。
「こちらです。」
「なるほど~」
カードを手渡されてしげしげと眺める。運転免許証みたいだ。
「これは肌身離さず持ち歩いてください。そして提出を求められたら必ず出してください。そしてこちらがマイナンバーカードです。」
「あれマイナンバーカードもいあるんですか?_」
「ええ。証明カードとは別物になります。そして基本的にですが証明カードの方は見せたくない場合は見せなくていいです。ただし先ほども言った通り何かサービスを求めた時に身分証と証明カードを出してを言われて見せないと違法になります。身分証のみを求められた時などマイナンバーカードのみ出しても問題ありません。」
「うん?」
「詰まるところ異人変化症だと隠しても問題は無いと言うことです。」
「そうなんだ…」
「そしてですが古畑さんの権利などに関しても書類をお持ちいたしましたのでご確認を。」
「はい。」
「簡単にご説明しましょうか。」
「そうですね…お願いします。」
書類をざっと開いて確認する…結構めんどくさそう。
「必要ならばリーガルチェックをしてください。費用はこちらで出ますので。」
「はい。」
「簡単に説明しますと。」
ぺらっと一枚目をめくる。
「こちら。まず公式年齢の説明になります。実年齢との適用が違いますのでよく書類をご確認ください。」
「はい。」
「そしてですが古畑さんは実年齢が33歳、公式年齢は7歳に決まりました。これで子供の権利4則などが適用されます。同時に実年齢が成人済みでも公式年齢に基づいて年齢制限があります。」
「えっと…それは例えば酒やタバコってことですか?」
「そうなります。他には競馬や競艇などの公営ギャンブルの投票権購入なども制限されます。基本的に大人にならないとダメ!と言われるようなことは子供と一緒ってことですね。」
「ははぁ。」
「次に12ページまで飛んでください。」
「はい。」
「続きましては不動産の購入などに関してです。通常ならば未成年者は親の同意などが必要なのですが実年齢が成人済みなので同意が必要ありません。」
「おお!便利!」
「ほかにも親の同意が求められる契約などが同意無しで契約できます。こういう場合に証明カードの提出が求められますね。」
「なんか騙されないように注意しないと。」
「ですね。次30ページに飛んでください。」
ぺらり。まためくる。今度も難しそうな事が書いてあるぞ。
「こちらはですね簡単に言いますと公式年齢が未成年でも実年齢が成人済みの場合は少年法が適用されませんよってことです。」
「あ~…なるほど。」
「ここに関しては難しいのでリーガルチェックなどしてもらい嚙み砕いて説明してもらってください。」
「はい。」
「次は…」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
だいたい聞けた。要するに異人変化症の俺は子供の権利と大人の権利を半々で使えるアンバランスな存在となったわけだった。うーん悪用しようと思えばいくらでも悪用出来るぞこれは。
「どうでしょうか。」
「だいたいわかりました。あとは弁護士の先生にリーガルチェックを頼もうと思います。」
「わかりました。それでは次の話なのですが…」
「え?まだあるんですか?」
「まだありますよ。御両親を呼んでいただけますか。」
「え?はい。」
親を呼べ?なんだろう…まぁ呼ぶけど。父さんは仕事なのでいないが母さんを。
「呼んできました。」
「支援会さん!御無沙汰してます~」
「本当ならお父様がいて欲しかったですが…こちらの書類を。」
カバンからテーブルに書類が出されるそれは…
「賠償金の書類です。」
書類を手に取って眺めた…そして飛び上がって心臓が飛び出るほど驚いた。
「ば、ばば、ばいしょうきん…12おく・・・!?」
「!?」
「左様です」
いや左様ですとか言ってるけど賠償金で出てくるような額じゃない。いっぱしのサラリーマンの生涯年収より多い額。それが支払われると書いてある。マジだ!!!
「こちらの書類にサインしていただき振り込み口座の用紙を書いていただくとおおよそ三か月以内に振り込みます。」
「早すぎる…」
「異人変化症に関しましてはとにかく急ぐ必要があるので。特に完全変異型の方は金銭的な余裕と安心が無いと自害しかねない状況だということをご理解ください。」
「は、はぁ…にしても多すぎるのでは?」
「ええと…隼さんの人生がめちゃくちゃになっているんですよ?国としては人生に価値を付けるようなことは避けたいのですが価値を付けて出せるのはここまでという額です。」
「…。」
「受け取ってもらわないとそれはそれで大問題になってしまうので…」
「…わかりました。サインして受取口座を書けばいいんですね?」
「はい。もう名義変更された口座の新しい通帳とカードが届いてますよね?」
「あります。」
「それにお願いします。必ず本人の口座に。」
ちゃらちゃらっとサインと口座情報を書き込む。億万長者になっちゃったぁ…!!
「ありがとうございます。こちら持ち帰らせていただきます。すみませんまだお話はあるのですが、お茶、いただきますね。」
「ああ、はい、どうぞどうぞ。」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
その日の夜。俺は長くなった自分の髪をまだ一人で洗えないため母さんと風呂に入った。父さんが帰ってくるのを待ち、賠償金の話の後の重要な話を聞いてそれは即決出来ないと保留にしてもらった。
「で、だ。父さん。」
「そうかそんなに賠償金もらえるのか。」
「父さん達にもいくらかわたそうか?」
「いや大丈夫だ。息子…いや今は娘か。自分の子供の金をあてにするほど馬鹿な親じゃないよ。」
「そっか…必要になったら言ってね。」
「ああ。」
「それで、なんだけど…」
それで、残った話は本当にどうしたものか困った。最悪拒否しても良いとの話だったが拒否したら拒否したでめんどくさそうな話だった。
「学校か…」
「うん…」
それはまた学校に通って欲しいとのことだったのだ。まぁでも授業を受けろとの話ではなく。戸籍を新しく作ったので義務教育を修了していないので形だけでも行っておいたことにして欲しいということらしい。
「それには東京に引っ越して支援会の息がかかった学校にして欲しいって。」
「うーむ…」
「どうする?拒否しても良いっては言ってるけど…義務教育を受けてない子供が爆誕するのは俺もまずいとは思う。」
「何か上京する支援はするとか言ってたか?」
「住むところの家賃支援はしてくれるって言ってた。賃貸なら家賃の40パーセントを毎月。購入なら購入額の50パーセントを負担するって。」
「そうか…じゃあ行くか。」
「でも…俺一人暮らしするの?この外見で?」
「あーそうだったな…」
「いくらなんでも無理じゃない?」
「ちょっと母さんと考える。いつまでに返事しろって言われたか?」
「いや特には。」
「そうか。待ってくれるならちょっと待ってもらおう。」
「わかった。」
俺としてはもう一回学校に行くのは…ちょっとな。でも行かないと行かないで向こうが困るだろう。迷惑かけるくらいなら行っとくか。