ロングラン・スリーピース・アリス・コンプレックス 作:電動ガン
結局。俺は学校に通うことにした。東京の新宿に賠償金でマンションを俺名義で買い、住民票を移す。そして流石に外見7歳に一人暮らしはさせられないと東京に住んでる父さんの妹、つまり俺の叔母さんだ。美香子ことみかちゃんと暮らすことになった。
「引越しもこれで終わりっと。」
「はーちゃん終わった?」
「終わった。」
俺が買ったのは5LDK7階角部屋の高級マンション。6億ほどするところを購入額支援で半額で買えた。すげぇよな・・・こんな額の買い物なんて人生でするとは思ってなかった。
「みかちゃんあとはなんかある?」
「あとはねー買い物行くくらいかな。行ってくるから留守番しててくれる?」
「わかった。」
みかちゃんは買い物に行ってしまった。冷蔵庫とか買ったけど中身空っぽだしね。俺は自分の部屋に戻り、支援会から支給された赤いランドセルを眺めた。
「はぁ・・・」
また小学生をするとは・・・しかも女子小学生。嫌になるが授業に出なくていいと言われてるし友達も作らなくて良い。それだけは気が楽だ。
「まぁ五年だけだ。通うのは・・・・・・あっいや中学校もあるのか・・・・・・」
気が重くなった。ため息を吐いたら視界に姿見が入った。母さんが女の子なんだから姿見くらい持っときなさいと押し付けられたものだ。
「・・・。」
改めて変容した俺の体を見る。白い肌、白い長い髪、それに赤い瞳。身長は126センチ。体重は24キロ。俺は異人変化症という珍しい病気だけならずアルビノという稀少属性まで得ていたのだった。なんだこの身体。
「はぁ・・・」
まぁ・・・どうしようもない。他の異人変化症患者を見たこと無いからなんとも言えんがこういう珍しい属性を持ってるのは俺だけじゃなかろうか。
「ゲームでもしよ。」
俺はもう考えるのを辞めて賠償金があるのだからと奮発して買った100インチテレビにゲームを繋げるのであった。
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数日後。俺の受け入れ準備が整ったとのことで中村さんに案内されて都立国浜寺第四小学校登校した。
「・・・。」
「よろしくお願いします。校長の杉本です。」
「教頭の鳩羽です。」
「養護教諭の月島です。」
「古畑さん、こちらがこの学校の協力者になります。」
この3人が都立国浜寺第四小学校で俺の事情を知っている3人だという。担任は知らないのかな。
「一応教室に席はあります。ですが教室には行かなくていいです。」
「じゃあ俺はどこで過ごせば?」
「保健室ですね。そこで1日過ごしていただく事になります。」
「はぁ・・・」
「担任なんですが事情がある生徒が1人いると言うことしか知りません。これは古畑さんの情報を秘匿する上で知っている人間が少ない方が隠し易いとの判断です。」
「大丈夫なんでしょうかそれは。」
「異人変化症だと感づかれると保護者からどのような意見が出てくるかわかりません。古畑さんはアルビノという稀有な個性を持っていますのでそれを中心としたカバーストーリーを作れば異人変化症のことは隠せると思います。」
「・・・わかりました。」
「アリスメタモルフォーゼの偏見こそ恐ろしく少ないものの無いわけではないですからね。不安の芽は摘んでおくに限ります。」
「大丈夫かなぁ。」
「全力でサポートしますので何卒よろしくお願いします。」
「はい・・・」
「それでは保健室に行きましょうか。」
「月島先生よろしくお願いします。」
「古畑さんの方が年上なんですから気にしないでくださいね。」
「いや・・・年上・・・いや、まぁ・・・そうか・・・えと今は7歳なんで。」
「ああ・・・大変ですね。」
「まぁ、早く慣れるようにします。」
「はい。」
⏰
保健室、養護教諭の月島先生に連れられやってきたが、デカい。都内の学校の保健室ってこんなデカイんか。
「じゃああっちの休憩室で過ごしてね。」
「休憩室・・・」
月島先生が指差す方向には二つの扉。
「・・・どっちです?」
「あ、右の扉ね。左はベッドルームだから。」
「はい。」
そして右の扉に手を掛け、ガラッと開ける。
「あっ。」
「ん?」
「・・・えっ。」
中には恐ろしく整った顔の女子が2人。片方は青、翠のオッドアイ。着物を着ている。そしてもう片方は日本人顔なのに金髪ポニテ。ゴスロリを着ている。もしかして・・・
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
しばし睨み合う。まさか・・・?いや・・・でも・・・
「古畑さん。」
「えっ。」
ふと振り向くと息を切らせた中村さんが立っていた。と、いうことは。
「お伝えするの忘れてました。この学校、古畑さんの他にも2人、完全変異型の患者が登校しています。」
「じゃあ・・・この2人が?」
「はい。」
「あー中村さん。」
「お久しぶりですー」
和かに中村さんに挨拶する2人を見て、なんか、もう。日本に俺含めて12人しか居ないはずの完全変異型の4分の1が集まってるのを見て目眩を覚えた。というか他の患者初めてみた。
「・・・その、古畑はやてです。よろしく。」
「よろしく。私は小屋津あかねです。」
「よろしくお願いします。私は夜ノ森霧子です。」
ぎこちない挨拶をして、俺はランドセルを置いて椅子に座るのであった。
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「まぁまぁまずはお茶でもどうぞ。」
「はぁ・・・」
着物姿の小屋津さんは手際よく水筒から熱々のお茶を紙コップに注いでくれた。
「お菓子もありますよ。」
ゴスロリの夜ノ森さんはランドセルからどんどんお菓子が出てくる。どうなってんだ。
「その・・・」
「はい。」
「なんでしょう。」
「お二人も・・・元は、男なんですよね。」
「そうですよ。」
「異人変化症になって私は2年。夜ノ森さんは3年です。なので私は3年生。」
「私は5年生です。」
「もし、失礼じゃなければ・・・昔の事を聞いても?というか異人変化症同士でそういうの話していいのか・・・」
「ああ、古畑さんは姿がかわってから日が浅いので?」
「え、ええ・・・まだ2ヶ月ほどで・・・」
「そうでしたか。大変だったでしょう。私達の話が役に立つならいくらでも話しますよ。」
「アリスメタモルフォーゼじゃない人がアリスメタモルフォーゼの人に過去を聞くのは大変無礼ですが、患者同士なら何も問題無いんです。」
「知らなかった・・・」
「で、私の事でしたっけ。私はですね。元の名前は小屋津賢二郎です。58歳でした。今は8歳です。」
「うお・・・」
「驚いたでしょう?私は現場監督でして工事中に火球が飛来して気づいたら・・・と言う感じです。」
「そうだったんですね・・・」
「新しい名前は妻が考えてくれたんですよ。」
「奥さんがいたんですか。」
「ええ。私が異人変化症になった時、もう一緒に暮らすのは無理だと言ったんですが・・・なかなか気骨のある妻でして。どんな姿になろうが私の隣が居場所だと言ってくれたんです。」
「良い奥さんですね。」
「はい。私にはもったいないくらいです。」
「次は私が。私は元の名前は烏山翔太です。41歳でした。今は10歳です。私も妻と子供が居たんです。」
「居た・・・?」
「ええ・・・妻と子供は・・・隕石の落下の衝撃波をモロに受けて・・・亡くなりました・・・」
「ッ・・・すみません。」
「いえ、いいんですよ。こうして私にも妻と子供が居たことを誰かに知ってもらった方が浮かばれます。」
「・・・。」
「私は会社の社長だったんですが・・・妻と子供を失って自暴自棄になっていたところに会社の仲間に励まされました。それで今ここに。」
「そうだったんですね。」
「古畑さんはどうだったんですか?」
「俺は・・・」
「あまり気分のよい話では無いかもしれませんが。ここは一種の患者コミュニティです。辛いこと、悲しいことを共有して次に繋げる場でもありますよ。」
「・・・。」
「まぁご無理をせずとも・・・」
「俺は・・・元の名前は古畑隼でした。年齢は33歳。新しい名前は自分で考えました。」
「まだお若いのに苦労してますね。」
「異人変化症になったのは・・・仕事場で・・・隕石が落ちてきて、何もかも吹き飛ばしました。」
「そういえば2ヶ月前と言えば・・・福島の浜通りの流星群帯災害の現場ですね。」
「そうです・・・・・・俺はそこの生き残りで・・・」
「ニュースで見ました。16メートル大の隕石が落ちてきたとか・・・」
「家は無事だったんですが・・・街はめちゃくちゃで・・・」
「大変でしたね・・・」
「ええ、ほんとに・・・」
少し雰囲気が沈む。だが夜ノ森さんがパン!と手を合わせ沈んだ雰囲気を打破した。
「古畑さん、我々は無事ではありませんが隕石と遭遇し生き残った生存者です。暗く生きていると犠牲者が浮かばれません。私達に出来るのは苦難に負けず笑って生きて行く事ですよ。」
「・・・ッ!」
「今は辛いかもしれません。でも少しだけでも笑いましょう。そうすると前に進めますから。」
「はい・・・!」
「さてお茶お代わり淹れますから飲んじゃいましょう。」
グイッと少し冷めたお茶を飲む。そして小屋津さんが手早く熱々のお茶をおかわりしてくれた。
「あ、夜ノ森さんもう来ますよ。」
「あ、もうそんな時間ですか。」
「?来るって・・・?」
「古畑さんにも紹介しないといけませんね。」
「え?」
「私達、古畑さんが同じクラスだとは限らないんですが・・・小屋津さんと私は宛てがわれている教室が同じ担任のクラスなんです。」
「?」
「それでですね、担任が若いのですがなかなか熱血な人でして・・・」
「友達を作らせようと放課後になると女子生徒を連れてやってくるんです。」
「ええ・・・」
「まぁ致し方ない。友達も作らず保健室に籠ってるだけは怪しまれると受け入れる事にしたんです。」
「古畑さんはこういうの持ってますか。」
そう言って夜ノ森さんは可愛らしい手帳の様な物を二つ取り出した。なにこれ。
「これはシール帳です。」
「友達を作らせようとした担任・・・槙島先生というんですが。ここで私達と交流することを条件にシール帳などの持ち込みを教頭先生からもぎ取ってきまして・・・」
「あの有能さ、うちの会社に欲しかったです。」
「はぁ・・・」
そしてその時キンコンカンと予鈴が鳴った。時間は3時。
「おやつ出しましょう。」
「お茶ありますか?」
手早くテーブルを片付ける2人を尻目に、学校生活がえらい事になったと戦慄するのであった。