ロングラン・スリーピース・アリス・コンプレックス 作:電動ガン
俺が学校に通うようになって1週間が過ぎた。まぁ少し慣れた。学校では流石に四六時中お菓子食ってお茶飲んでと言うわけにはいかないので学校から渡されたドリルをやっているんだが、まぁ小学生向けドリルなんてたかがしれてるので・・・・・・ドリルをこなしながらお茶飲んでお菓子食って放課後あまねちゃんとさやかちゃんと仕入れたシールが無いか見せ合って、と言う日々。そして今日は日曜日。
「・・・。」
パソコンでぽちぽちとネットサーフィンをしながら漫画の新刊をぽちぽちしてるんだが・・・・・・この隕石災害が起きてから漫画は目に見えて衰退した。だが何故かアニメゲームは盛り上がっている。なぜ漫画は衰退したかというと・・・一部の表現が使えなくなったからだ。
「・・・。」
その表現というのはトランスセクシャルや女装少年と言ったもの。さらに女の子に見える男の子までもが粛清された。誰がやったか、ではなく自然とそうなった。
「・・・。」
漫画において一つの作品に必ず1人はいるとされていたこの女の子に見える可愛い男の子や女装少年というのは作品に彩りを加える必要不可欠なものだった。ジャンルとしても市場は非常に大きかった。だがそれは異人変化症が現れたことで不謹慎だと自然消滅した。
「・・・はぁ。」
仕方ないのだ。現実は小説より奇なり。現実に現れたTSというのは一言で言わなくても地獄だったからだ。異人変化症が現れてから五年もその内容は隠されていた。マスコミがいつものように知る権利がある!と騒ぎ、異人変化症対策支援委員会に詰め寄り、患者の様子を発表しろと迫った。もっと言えばフェミニスト団体までもが嘲笑っていた。女性の苦労を知るが良いと。だがしかし。異人変化症対策支援委員会は記者会見を開いて対応すれば良かったところを収容施設の映像を公開した。
「・・・。」
収容施設はまさに地獄だった。錯乱し叫び続ける患者。夢遊病の様に徘徊し頭蓋を骨折するまで壁に頭を打ち付ける患者。重度の鬱で食事も受け付けず、整っている顔が幽鬼の様に歪んで微動だにしない患者。この世の地獄がそこにあった。これにはマスコミも閉口した。自ら地獄の蓋を開け覗き込んでしまって後悔したと後ほど言っていた。フェミニスト団体も絶句した。男に女の苦労を知って欲しかったが、地獄に落ちて欲しいとは思ってないと。
「・・・。」
夢があったTSは一瞬で打ち砕かれた。完全変異型の患者は隠されたものの10000人いる患者のほぼ全部がこの有様。国民に異人変化症は今までにない恐ろしい病気だと言うのが周知されたのだった。
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だが、だがしかしだ。俺はTSというジャンルは割と好きだ。今は最早、公に好きと言える時代では無くなったが同人誌などで本当に、本当にひっそりと個人ホームページでの通販でTS本は買える。
「・・・・・・これでいいか。」
秘密のパスワードを打ち込み、販売ページを開く。新刊があるな。ポチ。俺は当事者になったこそ。TSは夢を持ったままでいて欲しい。というスタンスだ。そして試し読みページを眺めて購入ボタンを押した。
「・・・・・・よし。」
銀行振込のメールが送られてきて振り込む。今は後ろ指を刺されるジャンルの作家だが、長生きしてくれ。
「・・・・・・さて。」
と、そこでピロリとスマホが鳴った。俺が元の男性だった頃の友人には隕石災害で死んだことになってるので連絡は来ない。母さんかな?とスマホを手にとると通知には小屋津の文字。
「・・・。」
小屋津さんが今夜ノ森さんが家に遊びに来てるから俺もどうか?とのことだった。暇してたし、行ってみるか。
「みかちゃんちょっと出かけてくる。」
「はーい5時までには帰って来なさいよ。」
そんな子供じゃあるまいし・・・と思ったが俺は子供だった。
⏰
「お邪魔します。」
「いらっしゃい!」
小屋津さんは中野に住んでいた。小屋津さんの奥さんに新宿駅まで車で迎えに来てもらって向かった。
「あ、小屋津さんこれ・・・」
「おお!ありがとう。みんなで食べましょう。」
流石に手ぶらはマズイかとサトレーゼで急いでケーキを買ったが・・・まぁ大丈夫か。
「ささ、上がってください。」
「はい。」
客間に入ると何やらテーブルにお店が広げてある。なんだこれ・・・
「何やってたんですか?」
「TRPGですよ!」
「面白いですよ。」
そう言って夜ノ森さんがカードを見せてきた。さくさくTRPGソードアンドマジックというもの。TRPGは初めてだな。
「古畑さんが来たので最初からやりましょう。」
「ですね。」
「あ、すみません・・・・・・」
「いいんですよ。」
「童心に帰って遊ぶと言うのも大事です。」
「なるほど・・・・・・」
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少し熱中し過ぎた。時間を見ると4時半。そろそろ帰る準備しないと。
「あの、俺そろそろ帰らないと・・・」
「あ、もうそんな時間ですか。」
「じゃあ古畑さんが持って来てくれたおやつ食べましょうか。」
テーブルを片付けて小屋津さんの奥さんがケーキを出してくれた。そして紅茶も淹れてくれた。美味しいお茶だ。多分良い茶葉使ってる。
「テレビでも付けましょうか。」
小屋津さんがテレビを付ける。ちょうどニュースが速報を出していた。
「ああ・・・・・・遂に中国で医療崩壊ですか。」
「なんてことだ・・・・・・」
小学生女児が3人集まって見るのがニュースとは如何なもんかと思ったが・・・まぁいいか。
「中東の方はもっとすごいんでしたっけ。」
「ですね。中東地域では三億人の異人変化症患者がいるそうです。中東人口の80パーセントが患者でもう国としての体裁を残しているのはクウェートだけになったそうですよ。」
「今ではアメリカが原油施設を掌握してるそうで・・・・・・そして次いで中国で五億人・・・・・・中国総人口の三分の一が患者です。世界はどうなってしまうんでしょう・・・・・・」
どうしようもない・・・俺たちに出来ることは無い。隕石が来るからと宇宙に脱出も出来ないし。ここで暮らして行くしかないんだ。早く終わるのを祈りながら。だが意外な事にそれでも世界は回っていけるんだと人類の強さも見せていたんだ。
「さて、怖いニュースばかり見ていても仕方ないですし。ケーキ食べましょう。」
「ですね。」
そしてケーキにフォークを差し込もうとした瞬間だった。ビービービー!!!とスマホの警報が鳴る。隕石警報だ!!!!
「皆さん伏せて!!!!!」
小屋津さんの叫びと同時にテーブルの下に入る。そして窓の外が一層明るくなるとゴォという音が聞こえてきた。落下音はしなかった。空中で燃え尽きたらしい。
「・・・・・・。」
「・・・・・・もう、大丈夫ですかね。」
「ふぅ・・・・・・」
手が震えている。やはり隕石は怖い。今のでも異人変化症になった人がいるのだろうか。空中で燃え尽きたならいないと思うが。
「おやつ食べて皆さん帰りましょう。妻に送らせます。」
「そう、ですね。お願いします。」
「俺も、すみません。」
「いいんですよ。私は子供ですが皆さんより年上でもありますからね。頼ってください。」
そうして気を取り直してケーキを食べて、小屋津さんの家を後にした。小屋津さんの奥さんは新宿駅までで良いと言ったが家まで送ってくれた。正直ありがたかった。