(設定変えました)
唐突だが、皆さんはエスデスという女性をご存じだろうか?
漫画『アカメが斬る!』に登場する氷を操る敵の大ボスにして、ド級のサディスト、ドS。しかし主人公のことを惚れてからは、何故かヒロイン度が高くなるというギャップを持っている。
性格が軟化したわけではないし、依然として敵で強いままなのに、何故か可愛く見えちゃうという不思議な立ち位置だった。
…え?"どうしてそんなにエスデスの事に詳しいのか"だって?___仮に自分がその人みたいな見た目に唐突になったら、必死に記憶の中から探り出すものでしょ?
ええ、そうなんですよね…どうしてかまでは思い出せないけど、私はどうやらエスデスみたいな見た目に転生してしまったんですよね。これが夢なら…少ししたら覚めたいと思ったけど、あいにく現実だった___現実になった。
現実ならば、最大限楽しむしかないでしょ…この世界がディストピアみたいな世界じゃなくて、個性?とかいう超能力が蔓延る世界で、それが当たり前のアメコミテイストな世界なのだからね。
私が思う強者なエスデスを周りに見せるしかないんだッ!異世界転生程度のデバフで、私の覇道を邪魔されてたまるか!
◆◆◆
私は入学入試のため、雄英高校の門を潜る。思えば、ここまでの道のりは長く険しいものだった…私は元々、男友達と一緒にサッカー遊んで、しばらく会わずに久々の再会をした時に『お、お前___女だったのかよ!』をリアルに経験した過去を持つボーイッシュ女子だった。
ベリーショート髪型で、素っ気ない服を泥に塗れながら遊ぶほどのやんちゃな性格を、価値観から改める必要があったのだが、前世の記憶と経験が邪魔をした。
母上からは女の子なのだからお淑やかにしなきゃダメ、父上からも危険な事はやっちゃダメ…と、口を酸っぱくして教えられ、個性を伸ばす事も自由に出来なかった。
思えば、有名企業の令嬢という立場もそれに拍車をかけた。令嬢としての礼儀作法、果てには帝王学まで…いや、学んでみると帝王学は悪くなかった。
でも許嫁の選別はハッキリ言って地獄だった。候補として選ばれた男は一回り以上年上ばかりな上に、私の家柄と外面しか見ていなくて、内面を見ようとしてくれない。アレでは友達どころか知り合いにすらなりたくない。
はぁ…せっかく転生のようなもので全く別の人生で生まれ直したのだから、前世では縁もゆかりもなかった恋というものを、一度くらいしてみたいものだ。
そうだな、好みのタイプとしては…まずはトップヒーローの一位から十位になれるような精神性と器の持ち主は外せないな。
危険な凶悪敵を捕まえられる腕前があるといい。
今までの傾向的に、私は年上はあまり好みではないらしいから、同年代か年下がいいかも。
あとは…無垢な笑顔が出来たら言う事がないな。
…なんだか、好みがエスデスっぽくなってるような…まぁ、そんな人なかなか見つからないだろう。
しかし、そんな私も高校受験の時期に差し掛かり、雄英高校普通科を勧めた父上母上の反対を押し切り、私はヒーロー科を受験した。
正直なところ、ヒーローに憧れを抱くことはなかったが、戦いというものにはどうにも血がさわぐ。…ふふ、どうやらこの闘争心も個性の影響のようだ。
◆◆◆
エスデスはやる気に満ちた表情で、雄英の実技試験を受けようと他の受験者達と開始までの待機をしていた。今までの彼女の抑圧された家庭環境もそうだが、高なる心臓の高揚感は彼女の持つ個性の影響だった。
他の受験者は、エスデスの端正な顔立ちとモデル顔負けのプロポーションに惹かれて、男性は鼻の下を伸ばし、女性は憧れの目を向けた。
「はい、スタート」
実技試験官の雄英講師兼プロヒーロー、プレゼントマイクが、唐突に試験開始を宣言した。
他の受験者はエスデスに気を取られていたこともあるが、試験開始がカウントダウンもなしにいきなり開始する事に戸惑いながら、受験者達は開始と同時に走り出したエスデスを見送ることしか出来なかった。
「ッ!見つけた___」
エスデスは青く長い髪が尾を引きながら、街一つのような大きさの試験会場となっている雄英のグラウンドを走り、実技試験の目標となっている仮想敵のロボットを発見する。
「ハッケン!ブッコロス!」
仮想敵もエスデスを発見すると、応戦しようとするが、彼女は仮想敵に瞬時に近づき、手元に顕現させた氷で出来たレイピアを仮想敵に突き刺し、切り裂いた。
「まず1点…」
仮想敵にはその強さに応じて点数が割り振られている。一点は仮想敵の中では一番弱い。しかし、彼女にとって仮想敵は文字通り相手にならなかった。
「アッハハ!脆い脆い!」
二点、三点と仮想敵を次々と破壊していく様は、まさに蹂躙だった。
エスデスが会場に散らばって配置された仮想敵の半分を一人で蹂躙したであろうタイミングで、地面が揺らいだ。
受験生の何人かは地震だと考えていたが、地面を揺らす大きな足音からその考えを否定した。
「ほう…あれが0点仮想敵、少しは歯応えがありそうだ」
試験開始前の説明会で紹介されたお邪魔虫こと、超巨大0点仮想敵が姿を現した。
「くそ!なんなんだよあの大きさ!」
「逃げろ!!」
「あんなのに勝てるわけないだろ!」
受験者は狼狽えながら後退し、中には腰を抜かして、そのまま後退る者もいたが、エスデスは冷めた表情でその受験者たちを眺めていた。
「これが、噂に聞く雄英の実技試験会場か…ハッキリ言って興醒めだな」
エスデスはため息を吐きながら、地響きを立てながら近づく超巨大仮想敵を見遣る。
「今から大技で、あのデカブツを倒す。周りから退避しろ___ッて!聞いてるのか!」
エスデスは超巨大仮想敵の上から氷塊を顕現させ押し潰す為に、周りに注意を促そうとした時、何処からか人が飛び出し仮想敵向かって飛び出した。
「SMAASH!!!」
飛び出した人物は超巨大仮想敵を殴りつけ、その表面を大きく歪ませながら後ろに倒した。
土煙が立ち上るなか、エスデスの冷め切った心臓が、トクンと揺れた。
「ふふ、凄いな…」
十数メートルほど飛び上がって仮想敵を殴った受験者が落ちてくるのを眺めながら、エスデスは脚に顕現させた氷に浮力を持たせて飛行し、空中でその受験者をキャッチした。
「凄いな、お前は…名前は?」
「ありがとうございます…って!女の子!?み、みみ、緑谷、出久…デス」
緑谷出久と名乗った受験者は、緊張しながらも、一仕事終えた後のように、屈託のない笑顔をエスデスに向けた。
「___そうか、出久か、良い名前だな…お前を私のものにする」
「…え?え?え?」
突然の告白により、氷のように固まった緑谷出久が動き出すには数分ほど掛かった。
◆◆◆
エスデス・イェーガー、個性『デモンズエキス』
彼女は人間とは異なる血液を持ち、見た目は綺麗な普通の女性だが、分類上は異形型だぞ!無から氷を創り出し、自由に操ることもできる。出血して体内の血が少なくなればなるほど、氷の精製と操作の精度は落ちるぞ、出血注意!赤は御法度だ!
お疲れ様でした。
お茶子ちゃんぇ…