ONEPIECE ANOTHER DREAM   作:徳武

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第三十五話 マルコ、動けない恋

マッフィー宮と出会ったあの日から──

数ヶ月が経っていた。

 

だが、マルコの胸の痛みは、

あの日よりもずっと強くなっていた。

 

夕暮れの風車村。

マルコはいつものように散歩していた。

 

マルコ(……今日こそ……店に行くんだよい……

マッフィー宮に……会うんだよい……)

 

そう思って、

ザギンの方向へ歩き出す。

 

だが──

 

マルコ(……無理なんだよい……)

 

途中で足が止まる。

 

マルコ(俺みたいな不良が……

あんな綺麗な人に……

会いに行っていいわけねえんだよい……)

 

胸がズキンと痛む。

 

マルコ(……黒ひげ先生は“恋だ”って言ってたけど……

恋って……こんなに苦しいもんなのかよい……)

 

 

 

夜。

マルコは布団に潜り込み、天井を見つめる。

 

マルコ(……会いたいんだよい……

でも……怖いんだよい……

嫌われたら……どうすりゃいいんだよい……)

 

胸がズキズキする。

 

マルコ(……俺……こんなに弱かったかよい……)

 

不良としてのプライドが邪魔をする。

恋に不慣れな自分が怖い。

マッフィー宮の格の高さに怯える。

 

マルコ(……俺なんかが……

あんな人に釣り合うわけねえんだよい……)

 

枕に顔を埋める。

 

マルコ(……でも……会いたいんだよい……

どうすりゃいいんだよい……)

 

 

翌日。

マルコが外でぼーっとしていると──

 

ラオ爺(おう、マルコ。若から伝言じゃ)

 

マルコ(……なんだよい……)

 

ラオ爺(“マッフィー宮が、お前に会いたがってる”そうじゃ)

 

マルコ(………………え?)

 

ラオ爺(“最近マルコが来ないから寂しい”ってよ)

 

マルコ(………………)

 

ラオ爺(どうした、固まって)

 

マルコ(………………)

 

ラオ爺(おーい、マルコ?)

 

マルコ(………………)

 

マルコ(………………死ぬほど嬉しいんだよい………………)

 

ラオ爺(照れのG!)

 

マルコ(うるせえぇぇぇ!!!)

 

マルコ(……マッフィー宮が……

俺に……会いたい……?)

 

胸がドクンと跳ねる。

 

マルコ(……行くしかねえんだよい……

怖いけど……

逃げてばっかじゃ……男じゃねえんだよい……)

 

マルコは拳を握りしめた。

 

マルコ(……よし……

今日こそ……会いに行くんだよい……)

 

風車村の風が、

マルコの背中を押していた。

 

翌日、マルコはずっと悩んでいた。

 

会いたい

 

でも恥ずかしい

 

店に行けない

 

ドフラミンゴに誘われても断る

 

子分たちに冷やかされる

 

胸が痛い

 

完全に 恋の沼 にハマっていた。

 

 

夕方。

マルコが公園のベンチでため息をついていると──

 

子分A(兄貴……今日もため息っすか)

 

子分B(兄貴……恋って怖いんすね)

 

マルコ(うるせえぇぇぇ!!!)

 

子分A(兄貴、もう限界っすよ。

このままじゃ兄貴、恋で死にますよ)

 

マルコ(恋で死ぬかよい!!!)

 

子分B(兄貴、今日こそ行きましょう。

マッフィー宮に会いに行きましょう)

 

マルコ(無理なんだよい……

顔合わせたら心臓が爆発するんだよい……)

 

子分A(兄貴……俺ら、兄貴の恋……応援したいんすよ)

 

子分B(兄貴が幸せになるとこ見たいんすよ)

 

マルコ(…………)

 

子分たちの真剣な目に、

マルコは少しだけ胸が熱くなった。

 

そこにドフィがやってきて...

 

ドフラミンゴ(フッフッフ……何を悩んでんだマルコ)

 

マルコ(ドフィ……)

 

ドフラミンゴ(若い男が恋でウジウジしてんじゃねえよ。

お前はパイナップル頭の大不良だろ?

胸張れよ)

 

マルコ(……でもよい……)

 

ドフラミンゴ(フッフッフ……

実はな、マッフィー宮が言ってたぜ)

 

マルコ(!!)

 

ドフラミンゴ(“最近マルコ来ないから寂しい”ってよ)

 

マルコ(………………)

 

子分A(兄貴!!)

 

子分B(兄貴!!)

 

ドフラミンゴ(行けよ、マルコ。

恋はな……

“行ったもん勝ち”だ)

 

マルコ(…………)

 

ドフラミンゴ(それに──)

 

マルコ(?)

 

ドフラミンゴ(お前が行かねえなら、

俺がマッフィー宮を指名するぜ?)

 

マルコ(やめろおおおおおおお!!!)

 

ドフラミンゴ(フッフッフ……効いたな)

 

子分たち(兄貴!!今だ!!行くしかないっす!!)

 

マルコ(…………)

 

マルコは拳を握りしめた。

 

マルコ(……わかったよい……

行くんだよい……

今日こそ……会いに行くんだよい……)

 

子分たち(兄貴ぃぃぃぃ!!!)

 

ドフラミンゴ(フッフッフ……

いい顔になったじゃねえか)

 

 

■ マルコの足が止まる

マルコ(……え?)

 

そこにいたのは──

 

マッフィー宮と、ゾロ。

 

二人は笑いながら歩いていた。

 

マッフィー(ゾロ、酔ってんじゃないよ〜)

 

ゾロ(おう、悪ぃ悪ぃ……)

 

そして──

マッフィー宮がゾロの手を握った。

 

マルコ(………………)

 

世界が止まった。

 

街の音も、

車の音も、

ネオンの光も、

全部消えた。

 

マルコ(……なんだよい……これ……)

 

胸が、

ズキン、と痛む。

 

マッフィー(ほら、こっちだよ〜)

 

ゾロ(おう)

 

二人はそのまま夜の街へ消えていった。

 

マルコは、

ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

■ 雨が降り出す

ポツ……

ポツポツ……

 

マルコ(……雨……かよい……)

 

まるで空が、

マルコの心を代弁しているようだった。

 

マルコ(……俺……何しに来たんだよい……)

 

雨はどんどん強くなる。

 

マルコ(……会いたかっただけなんだよい……

ただ……話したかっただけなんだよい……)

 

声が震える。

 

マルコ(……なんで……なんでなんだよい……)

 

雨と涙の区別がつかない。

 

マルコ(……俺なんかじゃ……

釣り合わねえんだよい……)

 

マルコはゆっくりと歩き出した。

ずぶ濡れのまま、

肩を落とし、

足を引きずるように。

 

■ 自宅に帰るマルコ

 

家に着く頃には、

服も髪も靴も、

全部びしょ濡れだった。

 

戦桃丸(兄貴!?どうしたんだよ!!)

 

マルコ(……ほっといてくれよい……)

 

戦桃丸(兄貴……)

 

マルコは部屋に入り、

ドアを静かに閉めた。

 

マルコは布団に倒れ込み、

震える手でラジカセのスイッチを押した。

 

流れてきたのは──

大槻マキの「Memories」。

 

(※歌詞は書けないけれど、

あの切ないメロディが部屋に満ちる。)

 

マルコ(……なんで……こんなに……苦しいんだよい……)

 

涙が止まらない。

 

マルコ(……会いたかったんだよい……

ただ……それだけなんだよい……)

 

枕を濡らしながら、

マルコは声を殺して泣いた。

 

マルコ(……マッフィー宮……)

 

曲がサビに差し掛かる頃、

マルコは泣き疲れて眠りに落ちた。

 

雨音と、

切ない歌声と、

マルコのすすり泣きが混ざり合い──

 

その夜、

マルコの恋は静かに砕けた。

 

 

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