「クザン、アイスクリーム屋として再出発する」
夜汽車を降りた翌朝。
クザンは、
フーシャ村の外れにある、
かつて自分が営んでいた小さなアイスクリーム屋の前に立っていた。
看板は色あせ、
窓ガラスには砂埃がついている。
クザン(……ここか……
俺の……原点……)
ポケットには、
夜汽車で食べた“アイスクリームの天ぷら”の余韻が残っていた。
クザン(……やるか……
もう一度……)
◆そこへシャッキーが現れる
シャッキー(クザンちゃん……
やっと戻ってきたのね)
クザン(シャッキーさん……)
シャッキーは、
レイリーの嫁であり、
とんでもない金持ち であり、
そして――
クザンのアイスの大ファン だった。
シャッキー(あなたのアイスがないと……
わたし……ヒステリー起こすのよ……)
クザン(……えぇ……)
シャッキー(出資するわ。
店、全部直しなさい。
あなたのアイスが食べられないなんて……
耐えられないの)
クザン(……助かる……)
シャッキー(助かるじゃないの。
あなたのアイスは……
わたしの人生なのよ)
クザン(重いな……)
◆店は一気に再生する
シャッキーの資金力は凄まじかった。
新しい冷凍庫
新しいショーケース
新しい看板
新しい内装
新しい制服(クザンは嫌がった)
シャッキー(クザンちゃん、似合ってるわよ)
クザン(……働いたら負け……
でも……アイス売るのは……勝ち……)
◆そこへマッフィー宮がやってくる
マッフィー宮(クザンくん……
お店、再開したんだね)
クザン(マッフィーさん……)
マッフィー宮(あなたのアイス……
ずっと食べたかったんだよ)
クザン(……どうぞ……)
マッフィー宮は、
バニラアイスを一口食べて、
目を細めた。
マッフィー宮(……おいしい……
やっぱり……クザンくんのアイス……
世界一だよ)
クザン(……ありがとう……)
◆そしてマルコも常連になる
マルコ(マッフィーさんが来るなら……
俺も来るんだよい)
クザン(……なんでだよ……)
マルコ(マッフィーさんの隣の席……
空いてるんだよい?)
マッフィー宮(マルコ、来てくれたんだね)
マルコ(もちろんだよい)
クザン(……なんだこの店……
アイス屋なのに……
恋愛サロンみたいになってる……)
◆シャッキーの依存はさらに深まる
シャッキー(クザンちゃん!!
今日のピスタチオは!?
ピスタチオはあるの!?
ないなら暴れるわよ!!)
クザン(落ち着いてください……
ありますから……)
シャッキー(よかった……
あなたのアイスがないと……
わたし……壊れちゃうの……)
クザン(……重いな……)
◆クザン、静かに笑う
店のカウンターに立ちながら、
クザンはふと思った。
クザン(……逃げてばかりだったけど……
こうして……
またアイスを作って……
誰かが喜んでくれるなら……
悪くねえな……)
夜汽車で食べた“アイスクリームの天ぷら”の味が、
胸の奥で静かに灯り続けていた。