放課後。
俺とスネークはハルヒに連れられて朝倉の住んでいた分割マンションへと足を運んだ。
当然部屋には入れず(ハルヒは扉を壊してでも入ろうとしたので止めた)、管理人にも俺からすれば嘘の情報しか言わなかった。しかもこれが無機質な感じではなく自然な言い回しだったから、俺は改めて長門の凄さ兼恐ろしさを実感した。
ローカル線の線路沿いを歩くハルヒの二、三歩前を俺はトボトボ歩いていた。ちなみにスネークは「急用ができた」と言って既に別れている。
「…。」
するとハルヒは突然何の前触れもなくピタッとその場に立ち止まり、そのせいで俺はこいつと危うく衝突しそうになった。
「あんたさ、自分がこの地球でどれだけちっぽけな存在なのか自覚したことある?」
急に何を言い出すんだ。
「あたしはある。忘れもしない。」
ハルヒは語り出した。
小学六年生の頃。こいつは家族で野球を見に行った際、野球場全体を見渡して、ある事に気がついてしまったのだ。自分はこの中のちっぽけな人間の1人で、しかもここ全体でも日本全体から見ればほんの一部に過ぎない。それからハルヒは突如として目に見えるものがつまらなくなり、しかも面白いことは待っていてもやって来ないから自ら見つけようとした。しかし、結局何も起こらず、いつの間にか高校生になっていた……と。
語り終えて無言で体を翻し去って行くハルヒ。
そんな彼女を、俺は特に何もせず、ただ単に見つめることしか出来なかった。
自宅に戻ると、例の胡散臭い笑顔マン、古泉一樹が俺を待っていた。
「こんにちわ。」
俺は彼に連れられて、あり得ないぐらいグッドタイミングでやって来たタクシーに乗り、数時間高速道路を走って日本有数の地方都市へと向かった。
スクランブル交差点の前で降り、数歩だけ進んだ先で古泉から
「しばし目を閉じていただけませんか?」
と言われて俺は目を閉じた。それとほぼ同時に古泉が俺の手を掴む。数秒経ってから
「もうけっこうです。」
俺は目を開いた。
世界が灰色に染まっていた。
「次元断層の狭間、我々の世界とは隔離された、閉鎖空間です。」
古泉の声が誰もいなくなり静まり返った大気の中でやけによく響いた。
「ちょうどここが閉鎖空間の壁でしてね、ほら。」
伸ばした彼の手が抵抗を受けたように止まった。俺も触ってみると確かに見えない壁があった。
「涼宮さんの精神状態が不安定になると、この空間が生まれます。そして、あの巨人は神人と言って、涼宮さんのストレスが具現化した存在です。」
近くのビルの屋上へと上がり、遠くに見える建物を壊しながら暴れている、青い光の巨人を指差して古泉が説明した。
「ああやって周りの物をぶち壊すことでストレスを発散させているんです。かと言って、現実で暴れられては大惨事になりかねます。そこで、閉鎖空間を生み出し、その内部のみで破壊行動をする。なかなか理性的ではありませんか?そして、アレを倒すのが我々超能力者の役目であり、また、この空間でのみ僕たちは能力を発揮することができます。」
すると、突然古泉の周りに赤く発光する球体が現れ、大きな光の球と化した彼は神人に向かって飛び去って行った。
それから数分間、古泉と同じ超能力者たちだろうか、彼を含めた紅のスーパーボール達は神人と戦闘を繰り広げ、そして体を切り刻まれた青い巨人は崩れ去った。
赤い球が俺の隣に降り立って、光の放出をやめた時、そこに立っていたのは古泉だった。
「お待たせしました。それと、面白いものが見れますよ。」
彼が呟いたその直後、グレーの空に卵のヒビのような亀裂が現れたと思ったらパリィンと割れ、それから周りを見渡すと、景色は俺のよく知る現実世界へと戻っていた。
「あの青い怪物の消滅に伴い、閉鎖空間も消滅します。ちょっとしたスペクタルですよ。」
古泉が説明した。