帰りのタクシーで
「閉鎖空間は放置しておくと全世界を覆い尽くしてしまい、そうなると、あちらがこちらの世界と入れ替わってしまいます。そのため、先程のように僕たちは不定期に現れる神人を駆除しているのです。」
と古泉から聞かされた。
自称、宇宙人に作られた人造人間。自称、時をかける少女(某デロリアンか某猫型ロボットのタイムマシンで来たのかは知らんが)。自称、エスパー戦隊。自称、異世界人連合。それぞれが自称が取れる証拠を律儀にも俺に見せつけてくれた。異世界人と古泉辺りが一番衝撃的だったな。
それにしても、俺にはさっぱり分からないことがある。
なぜ俺なのだ?
なぜ平凡な人間の俺が、こんなカオス極まりない集まりの中にいるのだ?
知ったこっちゃねーや。
いつものようにノックの返事を待って部室に入る。中に入るとメイド服の朝比奈さんが笑顔で俺を出迎えてくれた。安らぐ。
他には仗助とこなた、長門がいた。
「お茶煎れますね。」
そう言うと朝比奈さんは急須にお茶っ葉を慎重な手つきで入れ始めた。
俺はというもの、団長席にどっと腰を下ろしてパソコンのOSを起動し、「MIKURU」フォルダの中身を開いた。そして朝比奈さんの写真の、彼女の胸あたり拡大し、ホクロを確認。確かに星型だった。
「なるほど、これか。」
「何がわかったの〜?」
こなたが読んでいた雑誌を置いてPCの画面を覗いてきた。別に俺は抵抗しなかった。コイツとはたまーにそういうやり取りもするからな。
「うわぁ〜。えっちなの見てるねぇ〜…ん?ほくろ?これがどうかしたの?」
「後で話す。」
「何か分かったんですか?」
やばい、朝比奈さんまでやって来たではないか。本人に見られるのまずい。俺はすぐさま画像を閉じ、それと同時にこなたも席へと戻った。
「何見てたんですかぁ〜」
「いやぁ〜つまらないものですよぉ〜」
マウスを取ろうとする朝比奈さんの手を避ける。あと彼女の胸が背中に当たるんだが。
正直に言おう。
最高だっ!!!
「何してんのよあんた達。」
冷え切った声が俺と朝比奈さんを凍りつかせる。通学カバンを背中に掛けた体操服のハルヒが立っていた。
その後、ハルヒは着替えるからと言って「出ていけ!」と、俺と仗助を部室から蹴り飛ばして追い出した。
お茶を飲みながら、ふと思いついたことを隣の仗助に聞いた。
「…そう言えば仗助、お前の能力ってなんだ?」
「俺の?ああ、それはなぁーーー」
ーーーースタンド。超能力(古泉のアレではない)の概念に像を与え、具現化・擬人化した存在。
スタンドは基本、スタンド使いと呼ばれる者にしか見えない。だから俺はあの時、屋上での際、それを見ることができなかった。
スタンドには様々な種類があり、仗助の場合は人型の距離パワー型で、名を『クレイジー・ダイヤモンド』と言う。
圧倒的な破壊力に加え、物を元に戻すことが可能で、例えば怪我を治したりすることができる。しかし、仗助本人にはそれが出来ず、また死人を生き返らせることは不可能らしい(死体を直そうとしても怪我や欠損した箇所が元通りになるだけ)。
仗助の話で時間を潰し、十分が経過した。すると
「どうぞ…。」
朝比奈さんの小さな声がドア越しに聞こえた。中に入る。それと、団長席を見ると懐かしのバニーガール姿のハルヒがいた。
「手と肩は涼しいけど、ちょっと通気性が悪いわね。この衣装。」
朝比奈さんから入れてもらったお茶を彼女はスルスルとすすった。
「うわ、なんですか。今日は仮装パーティでしたっけ?」
笑顔のまま素っ頓狂な声をあげるという愉快な反応をしつつ、古泉が現れた。
「すみません、僕、何も準備してなくて。」
話をややこしくするようなことを言うな。
「…とりあえず、オセロでもするか。」
「いいですね、久しぶりです。」
俺たちが白と黒の争覇戦を繰り広げていると、仗助と後からやって来たトランクスが、前者は俺に後者は古泉とチームを組んでそれなりに白熱したオセロを繰り広げた(古泉はやたら弱いせいでトランクスの足を引っ張っていた)。しばらくすると古泉はクラウドと交代し、宿題をやり始めた。
その間にも、ハルヒは朝比奈さんの髪を結んで何かの髪型にしては解いたり、こなたと銀時が昨日のアニメの話をしていたり、トニーとスネークは何やら小難しい話をしていたり、長門は頭を上げず読書に浸っていた。
何の集まりなんだか、ますます分からなくなってきた。
しかし、俺は十分楽しかった。各々のやることを無目的に眺める、それはそれで非日常の香りがして、それは俺にとって妙に満足感を与えてくれた。
涼宮ハルヒとその一味みたいに言われるのは業腹だが、色んな意味でこんな面白い連中といられるのは俺だけだ。なぜ俺なのかは隅に置いておく。
そうさ、俺はこんな時間がずっと続けばいいと思っていたんだ。
そう思うだろ?普通。
だが、思わない奴がいた。
決まっている、涼宮ハルヒだ。
こいつは今日の夜、とんでもない事を引き起こすこととなる……。
帰り道、俺があの長い長い坂を下っていると
「やっほー。」
背後からバイクのエンジン音と共に、クラウドの運転するそれに乗ったこなたが声をかけて来た。
「どうした泉?」
「来て欲しいとこがあるんだ。みんな待ってるよ。」
「乗ってくれ。」
俺は2人に促されてバイクへと乗り込んだ。
2〜3キロほど進んだ先にあったのは『転生』の関係者が経営する喫茶店で、異世界組はよくここを会議所や集会所や暇つぶしとして使っているらしい(多人数の場合は貸切)。
そしてなんと、俺も無期限無料の会員的な感じで迎え入れてくれたのだ。
中に入ると、そこには既にトランクス、仗助、スネーク、トニー、銀時がいた。
「秘密基地ってやつか…なんかこう、童心に帰るのもいいな。」
「だよね〜成長した後に、ちびっ子だった時のことをするのってエモいっていうかさぁ〜。」
こなたが微笑みながら俺の背中を優しく叩いた。可愛い。
「おめーも何か頼めよ。俺たち含めて無料、しかも今後ずっとだ。」
「じゃあ…ブラックコーヒー一杯。」
銀時に促されて俺は取り敢えずコーヒーを頼み、席へと腰を下ろした。
「今日は何か大事な会議でもあんのか?」
「いえ、部室に居られる時間は限られていますので、ここへ移動して暇つぶしをしているだけです。」
トランクスがレモネードを飲むストローを口から離して言う。
しばらくの間、俺は皆んなで宿題やゲームをして過ごしたのだが、普通に楽しいし、とてもいい気分で過ごすことができた。
と言うのも、俺はコイツらのことを信用していた。
良くも悪くも彼らの行動は人間臭いのだ。表裏なく俺やみんなと接しているように見えた(銀時はたまに下品すぎるが)し、ハルヒに対してもただ単に『守るべき存在』としているだけで、それ以外は普通に接していた。
いい意味でバカみたいなことだってする。
あと、今考えると屋上で見せられた派手な光景、あの大胆な行動も人間臭いように思えた。
ふと、頭を何となくよぎったことがあり、俺はそれを口に出した。
「なあ、お前ら。あの3人……長門、朝比奈さん、古泉のことをどう思ってんだ?」
すると7人は数秒黙り込んだ後、初めにこなたが口を開いた。
「朝比奈さんは可愛いし保護欲を掻き立てられるけど……有希は保留として……古泉くんはなんかねー…。」
ここまで暗い顔のこなたを見たのは初めてな気がする。
「古泉のヤローはどーも気にくわねェーぜ…。あの笑顔の裏に何かありそうっつーかよォ。」
仗助は寝転がりながら呟く。
「僕としては…他の組織の方々とも、仲良くしたいと思っているのですが……。」
そう言うトランクス。彼の目は純粋に平和を願っているような感じに見えた。
その後、銀時やこなたが暗い空気を取っ払って、再び喫茶店に俺たちの活気を取り戻させ、一時間ほど経ってから俺たちは解散した。