涼宮ハルヒの錯綜   作:ドドロット

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第十四話 疑い

その後、ハルヒはポニテを解いて元のストレートヘアに戻してしまった。また髪が伸びて来た頃に、遠回しにお勧めするとしよう。

 

放課後、俺が部室に入るや否や朝比奈さんは涙目になりながら全身でぶつかって来た。

 

「よかった…また会えて…」

 

俺は彼女の背中に手を回そうとしたが、それ察知したのか、朝比奈さんは俺の胸に手を当てて突っ張った。

 

「だ、だめです…。こんなとこ涼宮さんに見られたら…また、同じ顔の二の舞です」

 

「意味わからないですよ、それ」

 

その時、俺はふと思いついた。自分の心臓の上を指さして

 

「朝比奈さん、胸のここんとこに星型のホクロありますよね?」

 

「へ?」

 

素っ頓狂な声を上げる朝比奈さん。彼女は180度くるりと回転し、自分の胸元を覗き「あ、ある…」と言った。そして

 

「どどどどうして知ってるんですかぁ!あたしも今まで星の形なんて気づかなかったのに!いいいいいつ気づいたんですかぁぁぉ!!!」

 

首まで赤くして朝比奈さんは幼児のように俺をポコポコと殴りつける。痛くないし、むしろ気持ちいいまである。

 

するとドアを開けてスネークが

 

「みくる。そんなパンチじゃキョンは怯まないぞ?俺がCQC…おっと失礼、近接格闘でも教えてやろうか?」

 

なんて言ってきた。

 

「馬鹿野郎!!俺を殺す気か!!」

 

「何やってんの、あんたら?」

 

スネークの横から這い出て来たハルヒが呆れたように言った。そして朝比奈さんをとっ捕まえて着替えさせ始めた。

 

俺とスネークは失礼して部屋を辞し、扉を閉めて合掌した。

 

「お?またみくるがハルヒの着せ替え人形になってるのか」

 

トニーがハンバーガーを食いながらやって来た。俺は彼を見て、ある事を思い出した。

 

「なあトニー。昨日の「通信機」みたいなヤツ、あれはなんだったんだ?」

 

「あれか?古泉のような超能力者以外でも、閉鎖空間に入れるようにする装置を作っていた時の……良く言えば副産物、悪く言えば失敗作さ」

 

トニーは自嘲気味に言った。

 

 

時は流れ、5月の下旬。

俺がいつものように坂道を下って下校していると背後から古泉が現れた。

 

「どうも」

 

相変わらずの笑顔で挨拶する古泉。

 

「どうした?」

 

するとコイツは

 

「…やはり、これだけは言っておかねばなりませんね」

 

と妙に芝居がかった溜息をつきながら俺に顔を近づけた。

 

「だからなんだよ」

 

「『転生』の方々についてですよ」

 

古泉は歩きながら、いつもの胡散臭い笑みを少し薄め、冷徹気味な顔になった。『機関』の人間としての顔なのだろうか。

 

「転生の方々はあまりにも強力な上、統制も恐ろしい程取れています。出来すぎていると思いませんか?特に、あの良くも悪くも人間臭い仕草は、ひょっとすると貴方や涼宮さんを利用するために」

 

「おい、古泉」

 

俺は自分でも驚くほど、低く押し殺した声で言った。

それとその瞬間、頭によぎったのは、あいつらの良くも悪くも人間臭いやり取り。

 

正直、俺の中に渦巻いたのは怒りというより、もっと根源的な不快感だった。こいつが何を疑おうと勝手だが、誰だって言っていい事とダメなことがある。

 

「…二度とその口で、あいつらを疑うような真似をするな。お前みたいに……理屈で動いてるんじゃあねぇんだよ」

 

「…失礼、冗談ですよ」

 

すると古泉はいつもの笑顔に戻り、そう呟いて立ち去っていったのだが、彼の瞳はどこか寂しげな感じがした。

 

 

喫茶店に入ると既に7人とも集まっており、彼らを見て少し安らぎを得たっちゃ得たのだが、それでも心のモヤモヤは払いきれず、俺が暗い顔をして俯いていると

 

「…顔色が悪いな。何かあったのか?」

 

カウンターでコーヒーを飲んでいたスネークが、俺の表情で何かを察する。

俺は古泉とのやりとりを包み隠さず全員に話した。

 

「古泉のヤロー、人をインテリヤクザみたいに言いやがって」

 

銀時がパフェを頬張りながら言い

 

「仮に僕が企みを抱いているのだとしたら、今頃北高中のパソコンをハッキングしてるな!」

 

トニーがやりそうでやらなそうな冗談を笑いながら飛ばす。

 

そんな彼らを見て、俺は心の底から安堵していた。

確かにこいつらはデタラメで、理不尽で、一部の者達は時折バカみたいだが、その表裏のないところは、誰よりも真っ直ぐだ。

 

「……でも」

 

カウンターの端でこなたがストローを口から離して、いつになく真面目な、少しだけ寂しそうな声でポツリと漏らした。

 

「本当は古泉くんも含めて…SOS団のみんなで仲良くしたいな…って。ハルヒが作ったとこなんだもん。…誰かが欠けたり、疑い合ったりするのは、なんか……アニメの鬱展開のそれだよ…。わたしは嫌だ…」

 

俺は古泉が去る時の、あの寂しそうな目を思い出した。あいつはいつも色々と読めないし、裏では何かしているんだろうが、あの瞳は素直に自らの気持ちを表しているように見えたのだ。

 

「こなたさん…」

 

こなたの言葉に、トランクスがそっと寄り添うようにして隣に座る。

 

「僕も貴方と同じ意見です。わざわざ争う為、ハルヒさんの周りにいるわけじゃないんですから」

 

「そうだそうだ。古泉も古泉で、ハルヒや世界を守るのに必死なんだ。そーゆーとこは、俺たちと一緒さ」

 

頭をポリポリ掻き、いつもの死んだ魚の目をしながらも、銀時の瞳には真っ直ぐな光が宿っているように見える。

 

俺は窓から無数の星が輝く空を見上げた。

宇宙人、未来人、超能力者、異世界人たちが、いつか全員でここに集まり、面白おかしく笑ってテーブルを囲む日々が来るんだろうか。

 

今はわからない。だが、その方向へとは進んでいるのだと、微かに俺は感じた。

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