次の日、朝比奈さんは学校を休んだ。恐らく昨日のバニーガールの件がよっぽど心の傷となったのだろう。
それと、ハルヒ待望の転校生がやってきた。彼女はそいつへの様々な考察を俺に話してきたが…正直、勝手に妄想してるだけにしか聞こえなかった。
次の日。放課後の部室にて。
昨日の昼休み、新しく団員が2人増えた。1人目が糖尿病の坂田銀時で、2人目が機械いじりがどうとかのトニー・スタークだ。ハルヒ曰く前者はギャグが面白いから、後者は武器を作って欲しいからとのこと。いや待て、武器って…仗助の時と言い、お前はSOS団を軍隊にでもしたいのか?
取り敢えず、こうして自己紹介の際にいろんな理由で目立った連中は、全員漏れなくハルヒの傘下になってしまったわけだ。
今部室にいるのは俺、長門、復活した朝比奈さん、こなた、仗助、銀時、トニー、スネーク、クラウド、トランクス、計10人。文芸室は広いわけでもないのでちと狭い。
長門は相変わらず本を読み、こなたと仗助はゲーム、銀時はジャンプを読み、トニーは何か作っていて、スネークはダンボールの整備、トランクスは真面目に宿題、クラウドは腕を組んで静かに座っていて、俺と朝比奈さんはオセロでひたすら対戦をしていた。
「涼宮さん、遅いね。」
朝比奈さんがポツリと漏らした。表情はすぐれないが落ち込んでもいなかったので俺は安心した。こんなカオス極まりない空間でも一学年上とは言え可愛い女の子と同じにするのは心が躍る。
「今日、転校生が来たんですよ。多分そいつの勧誘でしょうね。」
「転校生…?」
小鳥のように朝比奈さんが首を傾げる。
「1年9組に転校してきた奴でよー。朝から謎の転校生謎の転校生って、ハルヒの奴大喜びだったぞ。」
銀時が俺と似た声で口を挟む。
「ふうん…?」
「にしても朝比奈さん、よくまた部室にくる気になったすねェ。キョンから聞きましたよぉ、どえらい事されたって。」
なんて事言うんだ仗助。当然朝比奈さんは「きょ、キョンっ!?」と顔を赤くしながら手で隠している。すると
「へい、お待ち!」
全ての元凶涼宮ハルヒが新たな生贄を連れてやってきた。
「一年9組に本日やって来た即戦力の転校生、その名も、」
ハルヒは途中で言葉を区切り、あとは自分で言えと促す。連れてこられた少年は俺たちに向かって微笑み
「古泉一樹です…よろしく。」
さわやかなスポーツ少年のような雰囲気、柔和な目、細身の長身、トランクスやクラウドにも負けないイケメンっぷり。適当にポーズをとらせてチラシにモデルとして採用させたら、間違いなくファンが付きそうなルックスである。
「ここ、SOS団。あたしが団長の涼宮ハルヒ。そこの10人は団員その1から10。ちなみにあなたは11番目。みんな、仲良くやりましょう!」
「随分と大人数ですね…。」
「たくさんいた方が楽しいしね!」
それに関してはわからんでもない。だが狭い。
「入るのはいいんですが、何をするクラブなんですか?」
転校生古泉は落ち着いた笑みを絶やさずに言った。
「よくぞ聞いてくれたわ!教えるわね!SOS団の活動内容…それは…」
演出効果のつもりなのか、一度息を大きく吸って溜めてから、そして驚くべき真相をハルヒは吐いた。
「宇宙人や未来人や超能力者や異世界人を探し出して一緒に遊ぶことよ!」
俺はただ単に「やっぱりか」と思った。
「はあ、なるほど。」
と何か悟ったような口ぶりで呟き、周りを見回してから、訳知り顔で頷いた。
「流石は涼宮さんですね。いいでしょう、入ります。今後ともよろしくお願いします。」
白い歯を見せて微笑んだ。
今日の活動を終えた俺はいつも通り下駄箱へ向かおうとしたのだが、部室を出る際に長門から
「本読んだ?」
と聞かれた。
「いや…まだ」
「今日読んで。帰ったらすぐ。」
そんなに面白いのだろうか。正直気になる。
そして俺が下駄箱の手前あたりに来た際、こなたがやってきた。
「どうした泉?」
「話したことがあるの。今すぐ屋上来て。」
何だろうか。それに今の彼女はいつもの眠そうな表情ではなく、とても真面目なものだった。
「何これ…?」
俺は連れられて屋上に行くと、そこにはスネーク、トランクス、クラウド、仗助、銀時、トニーがいた。
そして、スネークが前に出て言った。
「単刀直入に言う。俺たちはこの世界の人間ではない。」
「は?」
俺は耳を疑った。この世界の人間ではない?どう言うことだ。
「しかもそれぞれ別の世界から来たんだよ!」
「豪華だろ?」
こなたと銀時が補足し、スネークが続ける。
「原因はハルヒだ。ヤツには物事を自由に改変する能力が備わっている。それが発動して俺たちはここに来たんだ。しかし、ハルヒは自分の持つのそれについては知らない上、発動させるときは毎回無意識のうちだ。」
彼が言い終わると、今度はトランクスが話しはじめた。
「我々はこの世界に来てからすぐ、「転生」という組織に引き入れられました。そこは大多数が異界の者たちで構成されている組織で、主に異世界人たちを保護、もし悪人であれば倒す。それ以外にも、ハルヒさんの生活を守る、と言うのが仕事です。ちなみに創設者も僕らのように彼女の能力でこの世界にやって来た異世界人です。」
「いやいやいや……お前ら頭大丈夫か?」
こいつらが異世界人?ハルヒが改変能力?しかも当の本人は知らないし無意識?異世界人で構成された組織?意味がわからん。
「信じられないのも無理はない…だが、本当なんだ。」
クラウドが静かにつぶやく。その瞳は嘘ついているそれには見えなかった。
「よし!トニー、仗助、トランクス、クラウド!見せてやれ!」
スネークが言うと、トニーは「瞬き厳禁だぞ!」と言って制服のシャツをずらして出てきた腕時計みたいなものを操作して、飛んできた赤と金色基調のスーツに身を包み、手からレザーを発射した。
トランクスは「はあぁぁ!!!」と髪を逆立った金髪に変化させ、変な手の動きをしてから「バーニングアタック!!!」と叫んで空にエネルギー弾を発射し、それは空中で炸裂した。
クラウドは数十メートルジャンプした上、そこで背中に背負っていたバカでかい剣をブンブン振り回した。
仗助は見えない何かで屋上のコンクリートを破壊、したと思ったらそこが元通りに修復された。
「……舐めた口聞いてスンマセンでした…。」
俺は膝をガクリと落として情けなさそうに言う。目の前で起こったことは手品でもCGでもない、現実だ。そしてここにいるはバケモン、ガチのバケモン達だ。否定できる要素などどこにもない。
「まあ私はこの世界から見たら異世界人ってだけで、それ以外は普通のオタクだけどね!」
こなたがいつもの眠そうな顔をして言う。なんでこんなバケモン達に囲まれてんだよお前は。
「非戦闘要員ってやつ!ハルヒと関わって色々するんだ!」
ああ、なるほど。
「お前らがそういう意味で普通の人間じゃないことは分かった…。だがなんでハルヒに直で言わないんだ?」
すると銀時が
「それ聞いてあの嬢ちゃんが混乱したらどうなる?最悪の場合、地球どころか宇宙ごと滅びるぞ。」
と目を半開きにして言った。
「それとだ。長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹、この3人もただの人間ではない。詳しくはそれぞれに聞いてくれ。」
スネークが説明する。もしかしたらと思ってはいたが、まさか残りの3人もそうだったとは。