家に帰ってからすぐ、俺は長門から借りた本を読みはじめた。もしかしたらこの本にヒントか何かが隠されているのかもしれない、そう考えたからだ。
ある程度読み進めると挟んであった栞がずれて手元に落ちた。そこにはこう書いてあった。
『午後7時、光陽園駅前公園にて待つ』
と。なんだそっちかよ。いや、俺の考え過ぎだったか。
夕食を済ませてしばらくダラダラ過ごしてから俺は自転車で指定された公園へと向かった。
すると、ベンチに座っている細っこい長門のシルエットが見えた。存在感が希薄なせいで、知らずに通りかかったら幽霊と見間違えそうである。
合流するや否や、長門に連れられて分譲マンションへと行き、彼女の部屋へと入った。
恐ろしく生活臭のないとこだった。リビングにこたつが一つ置かれているぐらいである。
長門が用意したお茶を啜りつつ、俺は言った。
「お前も言いたいことがあるんだろ、何なりと話してくれ。俺はもう何言われようが信じちまう体質になってしまったんだ。」
俺は数時間前どう形容すればいいかわからない光景を目の当たりにしたんでな。
「なら、話は早い。」
長門が俺に話した内容はこうだ。
自分は情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースで、ハルヒを観察して入手した情報を統合思念体に報告することが仕事らしい。しかも生み出されてから3年、ずーっとそうやって過ごして来たのだ。その間は特に何もなく、平穏に過ごしていたのだが、最近「俺」というイレギュラー因子が現れたとのこと。
そして3年前、地球ですんげー情報フレアが観測されたらしく、その中心にいたのがハルヒだったのだ。
で、彼女の持つ、スネークが言ってた例の改変能力に長門の親玉たちは「自立進化のきっかけを与える存在」として興味があるらしく、ハルヒの観察を行っていて、またその能力が俺や長門がここにいる理由らしい。
ちなみに、情報統合思念体は言語を持たず、それでは有機生命体と直接コミュニケーションできないので、長門のような端末を造ったらしい。
「分かった?」
「ああ…。なんか…凄いんだな、お前。」
頭の中ではもっとしっかりしたことを考えてたさ。でもなんだろうな、どーも形容し難いのだ。
「それにしても、なぜ俺に説明するんだ?」
「あなたは涼宮ハルヒに選ばれた。涼宮ハルヒは意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意思を絶対的な情報として環境に影響を及ぼす。あなたが選ばれたのには必ず理由がある。」
「迷惑な野郎だぜあの女…。宇宙規模のことに一般男子高校生を巻き込みやがって。」
その後、俺は急須のお茶がなくなるまでおかわりを入れてもらった後、おいとまさせてもらった。
翌日の放課後。
掃除登板だったため、俺が遅れて部室に行くと、ハルヒが朝比奈さんで遊んでいた。
「じっとして!ほら暴れない!」
「やっ…やめぇ…助けてぇ!」
朝比奈さんはハルヒに脱がされ半裸状態。なので俺が部室に入りかけたタイミングで
「きゃぁぁぁ!!!」
と悲鳴を上げた。俺は下着姿の朝比奈さんを一瞬だけ眺めて外に出てドアを閉めた。そういえばこなたもいたな。ずるいぞ、女子とはいえ朝比奈さんのエロい姿を遠慮なく見ることができるなんて。
待つこと十分。その間にも部室の外は俺以外の団員達でいっぱいになっていた。
「スネーク、小型カメラで中を覗かねーのか?」
銀時がニヤニヤしながら、さらっとやべーこと言いやがる。
「そんな事に使う物ではない。」
当たり前だ。
「入ってもいいわよ。」
そして室内に入り、俺は絶句した。
白いエプロンに裾の広がったフレアスカートとブラウスのツーピース。白ストッキング清楚な雰囲気を抜群に演出していて非常によろしい。レースのカチューシャと紙を後ろでまとめている大きなリボンがこれまた愛らしい。
非の打ち所のないメイド少女である。
「どう、可愛いでしょ?」
ハルヒがまるで自分の手柄のように言い、朝比奈さんを撫でた。
それはそう。朝比奈さんには申し上げないが、無茶苦茶可愛い。
「なぜメイドに?」
トランクスが頭を傾げながら言った。こいつの真面目さから考えるに、こういう事は少々無知なのだろう。
「やっぱり萌えと言ったらメイドでしょ?」
「世間一般的にはそうだな。俺的にはもっと際どいのにして欲しいが。そーだなぁ、バニーガールとか比じゃねぇレベルのを…。」
余計なことを言うな銀時。てかお前は普段から下ネタとか下品な発言が多すぎるんだよ。朝比奈さんも怯えてるだろ。それに関してはハルヒですら少し引いてたし。(もっとも彼女の場合は下ネタを他人から言われるのが嫌なだけであって、自分から言ったり行動する分には何の躊躇もないのだが。)
「それもそうだけど…あたしは結構考えたのよ。」
ハルヒ、お前の考えることは考えない方がいいことばかりだ。あとそれもそうって、朝比奈さんを更に際どくする可能性もあったってことじゃねーか。
「学校を舞台にした物語にはね、こういう萌えキャラが1人は必ずいるもので、言い換えれば萌えキャラのあるところに物語は発生する、これはもはや必然と言っていいわね。いい?みくるちゃんという元々ロリで気弱で、でもグラマーっていう萌え要素てんこ盛りの子をメイドにすることでね、萌えパワーは飛躍的に増大するの。どこから見ても萌え記号のかたまりよね。もう勝ったも同然。」
一体何に勝つつもりなんだ。
すると、ハルヒはいつの間にかデジカメを用意して、記念に撮っておこうと言い出した。
まず彼女が自ら撮って、ある程度したら俺にカメラを手渡し、自分は朝比奈さんの胸元を晒した。正直たまらん。
「その辺にしておけ。」
朝比奈さんに露骨なセクハラを続けるハルヒの手をクラウドが引っ剥がした。
「何すんのよ。あんたも一緒にみくるちゃんにえっちぃことしようよ。」
「ふん…興味ない…。」
内心はある程度肯定してるんだろうが、少なくとも表だけでも否定しておけばGOODだ。俺もおんなじ事考えてるし。
「うわ、なんですかこれ?」
もみ合っているハルヒたちに声をかけたのは古泉だった。
「古泉くん、いいところに来たわね。せっかくだしみんなでみくるちゃんにイタズラしましょう。」
お前と銀髪天然パーマ以外は賛成しないだろ。
「遠慮しておきましょう。後が怖そうだ。」
古泉はふっと笑ってそう言うとパイプ椅子を組み立てて座った。
「まあいいか、写真もいっぱい撮れたし。」
すると、ハルヒは長門の横を通り過ぎ、団長席の椅子の上に立った。それにしても長門のやつ、昨日の饒舌が嘘のように淡々と本を読んでやがる。まあ、話たことが嘘偽りのない事実なのは確定だろう。そう俺が考えている間にもハルヒは
「では、これよりSOS団第一回ミーティングを始めます!」
と大音声を発した。いきなり何言い出すんだこいつは。
「今であたしたちは、ビラ配りやホームページ作りとか、とにかく色々しました。おかげで校内におけるSOS団の知名度はグンッと鰻の滝登り、第一段階は最高だったと言えるでしょう。」
朝比奈さんに心の傷を負わせておいて何が成功だ。知名度も悪い意味でだろうに。
「しかしながら、我が団のメールアドレスには一通もメールが来ず、またこの部室にも誰1人として生徒は来ません。」
そりゃあ、知名度だけは無駄にあっても、何をする部活動なのかいまいち分からんからな。第一、部活どころか同好会としても認められてないし。
「果報は寝て待て、昔の人はこう言いました。しかぁし!もうそんな時代じゃあないのですッ!地面を掘り起こしてでも、果報は必ず探し出すものなのです。だから『探し』に行きましょうッ!」
「何を?」
誰も突っ込まないので代表して俺が聞いた。あと、やたら言い方の癖が強かった気がする。
「この世の不思議!市内をくまなく探索したら、きっと見つかるはずよ!一つくらいは謎が転がっているに違いないわ!」
そのお前の発想の方がよっぽど謎だがな。
「明日!明日よ!朝九時に北口駅前に集合!くれぐれも遅れないように!来なかったら死刑!」
多重クロスオーバーってどーもキャラのセリフとか活躍とかの塩梅が難しいんですよね。