週明け、そろそろ梅雨を感じさせる湿気を感じてくる頃合いだった。
不思議探しでは何も見つからなかったので(実際は周りに不思議以上の存在がゴロゴロいるが)、ハルヒは一日中不機嫌だった。2日も引きずることか?そのせいで俺は授業中ずっとハルヒの不機嫌オーラを背中で直に感じることになってしまった。
終業のチャイムがなると、俺はそのオーラから避難するために部室へと足を運んだ。
入るや否や、俺は先着していた古泉に
「お前も俺に涼宮のことで話したいことがあるんじゃあないか?」
と言った。すると彼は
「おやおや。すでに僕以外の方々からアプローチを受けているようですね。場所を変えましょう。涼宮さんに出くわすとマズイですから。」
古泉が俺を伴って訪れた先は食堂の野外テーブルで、途中で自販機でコーヒーを買って俺に手渡し、そして丸いテーブルに2人で座った。
「どこまでご存知ですか?」
「涼宮がただ者じゃないこと、長門が宇宙人モドキ、朝比奈さんが未来人、残った古泉以外の連中が異世界人ってとこまでだ。特に異世界組からは色んな意味で実物を見せられた。だから何でも言え、信じてやる。仮に俺がそれを嫌がっても脳みそが強制的に認めるかも知れん。」
「視覚的にわかりやすい超常現象をご覧になったのですね。それなら話は早いです。」
「流れからしてお前は超能力者だな?」
「先に言わないで欲しかったのですが、その通りです。ちょっと違うような気もするのですが、超能力者と呼ぶのが近いでしょう。」
俺はコーヒーを飲んだ。減糖しておくべきだった、甘ったるい。あと、銀時は一般人なら一口で飽きるようなもっと甘いのを飲みそうだ。
「本当は転校するつもりはなかったんですが、状況が変わりましてね。よもやあの9人が涼宮ハルヒと結託するとは予想外でした。それまでは外部から観察しているだけだったんですけど。」
ハルヒを珍しい昆虫か現象みたいに言うな。
俺の眉を見て察したのか
「どうか気を悪くしないでください。我々も必死なんです。涼宮さんに危害を加えたりはしませんし、寧ろ我々は彼女を危機から守ろうとしてるんですから。」
彼女を危機から守ろうとしている、か。涼宮さんの生活を守ること、なんてトランクスが似たことを言ってたな。
「我々ってことは他にも超能力者が沢山いるんだな?」
「沢山ってことはないのですが、それなりには。僕は末端で、正確なことは知りませんが、おそらく地球全土で10人ぐらいでしょう。その全員が『機関』に所属しています。」
『機関』か。『転生』みたいな秘密組織が他にもあったとは。
「実体は不明です。構成員が何人いるのかも、トップにいる人間たちがすべてを統括しているそうですが。」
「それで、その『機関』なる秘密結社は何をする団体なんだ?」
「あなたの予想通りですよ。『機関』は3年前の発足以来、涼宮ハルヒの感想を最重要事項としており、きっぱり言ってしまうと、涼宮さんを監視するためだけに発生した組織です。ちなみにこの学校には既に、僕以外の、何人ものエージェントが潜入済みです。僕は追加要員としてここに来ました。」
それを聞いて谷口の顔を思い出した。ハルヒとは中学でずっと同じクラスにいたとか言ってた。まさかあいつも古泉と同種類の人間なのか?
「さあ、それはどうでしょう?しかしまあ、それなりの人数が涼宮さんの周りにいることは保証してもいいですよ。」
古泉は続ける。
「今から3年前に何があったかはわかりません。僕にわかるのは、3年前のあの日。突然僕に超能力としか言い様のない力が宿ったことでしょう。最初はパニックでしたよ。すぐに『機関』からお迎えが来て救われましたが、あのままではてっきり自分の頭がおかしくなったと思って自殺していたかもしれません。」
「……………。」
「ところで、我々にはこれよりも、もっと畏怖すべきある可能性があります。」
古泉が自嘲的な笑みをしながらコーヒーを飲む。
「何だそりゃ?」
「あなたは世界はいつから存在していると思いますか?」
それからの話は、既に視覚的な超常現象を体験した俺であっても、半信半疑になる程の胡散臭い話だった。
世界は3年前に始まったと言う仮説だ。
古泉が言うには、それまでの記憶を保持した者たちが、3年前にいきなり生まれたと言うのだ。
そして、そんなことをできる存在を我々は知っている。そう、例の女、涼宮ハルヒ。
「世界を自由に自らの意思で作ったり壊したりできる存在、人間はそのような存在のことを、神、と定義しています。」
とうとう神様にされちまったハルヒであった。
で、機関の連中はハルヒの力にビビり散らかしているらしい。この世界が神もと言いハルヒの不興を買ったら、あっさりこの世界を破壊して再構築するかもしれんのだ。
それと、古泉はこの世界にそれなりの愛着を抱いているので、『機関に』協力しているらしいのだ。
「ハルヒに頼んでみたらどうだ。世界を壊すのはやめてください、って。」
「涼宮さんはそのようなことについては無自覚です。彼女はまだ自分の持つ特別な能力に気が付いていない。我々はできれば生涯気付かないまま平穏な人生を送っていただきたいと考えています。」
ここで古泉は元の笑みを取り戻した。
「いわば、彼女は未完成の神ですよ。」
「地味にカッコよく言うな。」
「そのようなつもりはなかったのですが…。」
「それは俺が悪かったな。じゃあ続けてくれ。」
「自在に世界を操るまでにはなっていない。ただし未発達ながら、その片鱗を見せるようになっています。」
「どうしてわかる?」
古泉は言った。我々のような超能力者や、朝比奈さんや長門、異世界組たちのような存在がここにいるのか。それはハルヒが願ったからと。
すると、俺はあることを思い出した。
「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。」
「原因はハルヒだ。ヤツには物事を自由に改変する能力が備わっている。それが発動して俺たちはここに来たんだ。」
と言う、ハルヒの自己紹介と、屋上でのスネークの言葉だ。別に思い出したからってどーってことはない。ただ、点と点が繋がったように感じたんだ。