涼宮ハルヒの錯綜   作:ドドロット

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第九話 絶体絶命

部室に戻ると朝比奈さんが下着姿で立っていた。

 

「…。」

 

朝比奈さんはエプロンドレスを持って真っ赤な顔で俺を凝視した。ゆっくりと口の形が変わっていく。悲鳴をあげる時の形になろうとしている。

 

「失礼しましたぁ〜…。」

 

俺は扉をそっと閉めた。それと偶然1テンポほど遅れてやってきた銀時がクスクス笑いながらこちらを見ていた。

 

数分後、「どうぞ〜…」という声と共に朝比奈さんがドアを開けた。

 

「すみません」

 

「いえ…。」

 

俺は彼女の頭二つ分くらい低いところにある旋毛を見つつ謝った。

 

「わたしこそ…いつも恥ずかしいとこばっか見せちゃって…。」

 

いえ、全然結構です。

 

「なあトニー…お前何作ってんだ?」

 

数十分後にやってきたトニーが作り始めたライフルらしき…いやそのものの何かを見て俺は言った。

 

「これか?通常の2倍の威力を出せるエアガンさ。」

 

なんだエアガンか…って、エアガンでも威力高めたの作っちゃダメだろ。特にライフルなんて尚更。てかエアガンの時点でそもそもだろ。

 

「ハルヒに頼まれたんだ。今後現れるかも知れない、SOS団を潰しに来た連中を追い返す為に欲しいってな。」

 

トニーが得意なのは機械いじり(屋上で見せられたスーツのことを踏まえるとそれ以上であろう)だったはずだ。そう考えるとエアガンを作れってのはズレてる気もするが…まあ、細かい所は気にしないでおこう。

 

「泉は何見てんだ?」

 

こなたがパソコンで何か見ており、俺はなんとなーく気になって覗いてみたのだが、そこには

 

「ぬっ!?」

 

どう言葉として表せばいいか迷う、成人向けゲームの画像が写っていたのだ。

 

「どうしたのキョンくん?」

 

驚愕する俺を見て、朝比奈さんが頭にハテナマークを浮かべながら近づいてくる。まずい、見せちゃダメだ。

俺は適当に誤魔化してなんとか場を凌いだ。団長席のパソコンでよかった、もしノートパソコンだったら間に合わなかったかもしれん。

 

「お前それ、男性向けのエロゲーじゃねぇか。もしかして恋愛対象に女も含まれてんのか?」

 

朝比奈さんに聞こえぬよう、俺はこなたの耳元でそっと呟いた。

 

「それとこれは別!」

 

ああ、そういうことね。

 

結局その日、ハルヒは部室に来なかった。

 

 

次の日、後ろの席で顔を突っ伏しているハルヒに対して俺は

 

「涼宮、前にも言ったかもしれんが、普通の高校生らしいことも開拓しろよ。」

 

と言った。するとハルヒは顔をガバッと上げて、お得意の不機嫌そうな顔で俺を睨みつけた。

 

「高校生らしいことって何よ。」

 

声にも潤いがない。

 

「だから、いい男でも見つけて市内の散策はそいつとやれよ。デートもできて一石二鳥だろ。」

 

「ふんだ。男なんてどうでもいいわ。それに、恋愛感情なんてのはね、精神病の一種よ。一時期の気の迷いだわ。」

 

つくづく意味不明な理屈を展開する奴だ。

 

「あー…何かドーンと、非現実的なことでも起きないかしらぁ…。」

 

俺はもう屋上の件でお腹一杯なんだがな。これ以上は胃が破裂しちまうよ。

 

 

放課後、俺は朝からの懸案事項を抱きながら歩いていた。というのも、登校した際下駄箱を開けると

 

『放課後誰もいなくなったら、一年5組の教室に来て』

 

と、明らかに女の文字で書いてあるノートの切れ端があったのだ。告白か?それとも谷口あたりの巧妙なイタズラか?

とりあえず俺は部室で時間を潰してから一年5組へと足を運んだ。

 

「遅いじゃない。」

 

そこにいたのは朝倉涼子だった。優等生のお前が、ただの平凡な男子高校生に一体何の用だ?

 

「あなたに協力して欲しいことがあるの。」

 

「俺が協力?」

 

おいおい、委員長のお前がやることような事に協力すべきなのは、もっと優等生な連中だろ。極端な例、古泉一樹とかさ。

 

「そういうことじゃない、あなたにしかできないこと。というのもね、何も変化しない対象にわたしは飽き飽きしてるの。だから……。」

 

朝倉はとんでもないことを言った。

 

「あなたを殺して、涼宮ハルヒの反応を見る。」

 

その瞬間俺は思考が一瞬だけフリーズした。殺すだと?

 

「なっ!?」

 

次の瞬間、彼女はナイフを取り出し間合いを詰めてそれを振ってきたが、ネクタイを犠牲に俺は何とか回避することができた。

 

「お、おい朝倉!お前自分が何してんのか分かってんだろうな!?」

 

「言ったでしょ?あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見るって。」

 

正気じゃない。今のこいつはマジで人を殺る時の目をしている。

 

「!?」

 

俺が教室から脱出しようとした。しかし、窓や引き戸のあった場所は暗い灰色のコンクリートの様な壁で閉ざされていた。しかも外の窓を見ると、まるで異空間の様な景色が広がっていた。

 

「なんで壁に変わったって思ってるでしょ?簡単なことよ。この惑星の建築物なんてちょっと分子情報を改変すればすぐ弄れる。あなたはもう逃げられない。」

 

「ま、待て!俺を殺して、もしハルヒが暴走なんかしたらお前ごと消される可能性だってあるんだぞ!頭使いやがれこのクソアマの大マヌケッ!!!これでも食らえッ!!!」

 

このまま何も出来ず死ぬのもアレだったので、俺は朝倉にそれっぽい煽りを言い放ち、近くにあった椅子をぶん投げた。だがそれは彼女にぶつかる寸前でその場に静止した。

 

「無駄無駄。言ったでしょ、この教室はわたしの意のままに動くって。」

 

すると俺は金縛りになったかの様に体が動かなくなった。

 

「じゃあね、キョンくん。」

 

そして俺にナイフを刺そうと一直線に向かってくる朝倉。ああ、俺死ぬんだな。ふざけんなよ。

 

その時だった。

天井を突き破る様にコンクリートの瓦礫が降って来た。

 

「痛ってーなコノヤローッ!!!」

 

俺は何が起きたのかを確認するために体を……動かせないんだった……って、あれ?動くぞ。

 

顔を見上げた俺は見た。何を?

 

そこには俺の喉に突き刺さる寸前で静止したナイフと、それを素手で掴む…

 

ーーーーー長門有希がいた。

 

「一つ一つのプログラムが甘い。」

 

長門はいつも同じ無感動な声で

 

「だから私に気づかれる。」

 

「邪魔をする気?」

 

しかし朝倉も平然としていた。

 

「情報結合の解除を申請する。」

 

長門がそう言うと、握っていたナイフが先から塵になって消滅し始めた。それが届く寸前に手を離して朝倉は距離を取る。

 

ここから、長門vs朝倉のバトルが始まった。

ROUND1、FIGHT!

 

バトルは熾烈を極めた。朝倉から伸びる複数の触手を長門が片手で防いだり、彼女は俺を守るため蹴りでぶっ飛ばしたり、朝倉の放った結晶が長門の腹を貫通したり…そんな感じだ。

 

「長門!」

 

「へいき。」

 

吊るされて血を流す長門を見て俺は叫ぶ。いや、全然平気に見えない。

だがしかし

 

「情報連結解除、開始。」

 

いきなりだった。結晶が先ほどのナイフ同様、先っぽから消え始めた。

 

「そんな…崩壊因子を先に仕込んでいたなんて…。」

 

朝倉が動揺している。さっきまでの勝ち確が嘘の様だった。

その時

 

「待てっ!」

 

天井のあった場所から聞き覚えのある渋い声が響き、空間が割れて3人の人影が入って来た。

 

「待たせたな。」

 

スネーク、トランクス、そして銀時。

 

「長門。そこの朝倉から情報を引き出したい。消すのを一旦中止してくれないか?」

 

「…。」

 

スネークの問いかけに数秒間黙り込んだ後、長門は「構わない。」とだけ言い、朝倉の消滅をストップさせた。

 

「こいつは『転生』の研究班が作った、インターフェース用の自白剤だ。」

 

スネークは朝倉の首元に注射器のような物を打ち込んだ。それから数分間、彼女はベラベラ喋りまくった。主に急進派がどうのこうのとか…まあそんなとこさ。

 

「もう一つ頼み事がある。物理攻撃でもこいつを消せるか試したい。」

 

朝倉の自白が終わるとスネークはそう言った。そんなことできるのか?

 

「構わない。」

 

と、また一言だけの長門。

 

「やれ、トランクス。」

 

「はい。」

 

トランクスは朝倉の目の前に近づき

 

「お前は存在しちゃいけない……消えろぉーーっ!!!」

 

後で聞いたのだが気功波という名称のエネルギー波を彼女にゼロ距離で放ち、朝倉は悲鳴を上げるまでもなく消滅した。

 

「朝倉涼子の消滅を確認。この空間を再構成する。」

 

程なくして長門はこの教室を元に戻し始めたのだが、その直後バタンと倒れた。

 

「大丈夫か!?」

 

俺が駆け寄ると彼女は

 

「肉体の損傷は大したことない。優先すべきはこの教室。」

 

と無感情に言った。そして、異空間化していた教室は放課後の夕日がさす場所へと戻った。

 

「手を貸そうか?」

 

俺の手に案外素直にすがりついた。上体を起こしたところで

 

「あっ。」

 

「どうした?」

 

「眼鏡の再構成を忘れた。」

 

そう言えば、さっき吊るされた時にずり落ちてからずっとないままだったな。

 

「…ない方がいいと思うぞ。俺に眼鏡属性はないし。」

 

「眼鏡属性って何?」

 

「何でもない。ただの妄言だ。」

 

「そう。」

 

こんなどうでもいい会話をするべきじゃなかったと後に俺は後悔することとなった。さっさと長門やスネーク達を置いてその場から立ち去るべきだったと。

 

「WAWAWA忘れ物〜♪」

 

アホの谷口がヘンテコなオリジナルソングを歌いながら入って来やがったのだ。

 

「!?」

 

俺たちを見て驚愕する谷口。おそらくこいつの脳内では「キョンとスネークとトランクスと銀時が長門を襲っている!?」という事になってるに違いない。

 

「ご、ご、ゴーヤプリンッ!」

 

多分「ごゆっくりっ!」と言っていたのだろう、谷口は走り去っていった。

 

「どーすっかなぁ…。」

 

と俺。

 

「まかせて。情報改変を行い、朝倉涼子は転校した事にする。」

 

そっちかよ!

 

「…そう言えば坂田、お前何しに来たんだ?」

 

追加でやって来た3人の中で唯一何もしていない銀時を見ながら言う。

 

「え?見学。」

 

「ああ、そうか…。」

 

俺は溜息をついた。

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