ゆらゆら系女子 伏黒恵   作:ユラユラしろマコ!

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伏黒って性別さえ眼を瞑ればヒロインだと思うの


百葉箱

 

宮城県仙台市 杉沢第三高校

 

記録 2018年6月

 

 

 

「百葉箱…?そんな所に特級呪物保管するのは馬鹿すぎます」

 

『アハハ!でもそのおかげで回収もラクでしょ。』

 

丑三つ刻を少々過ぎた頃、スマホを片手に黒髪の()()が高校にある百葉箱を覗き込みながらスマホ越しから聞こえる何も考えて無さそうな男の声に苛立ちその端正な顔に悪態をつきながら言う。

 

 

「……ないですよ」

 

『え?』

 

「百葉箱 空っぽです」

 

『マジで?ウケるね(笑)』

 

通話相手の楽観的なセリフに青筋を浮かべる。

 

「ぶん殴りますよ…」

 

『それ回収するまで帰ってきちゃ駄目だから』

 

「(…今度、絶対殴る)」

 

 

そう深く彼女は誓うのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

彼女は仕切り直しの為に翌日の放課後、カモフラージュの杉沢第三高校の制服を着て再び訪れていた。

 

 

「(…このラグビー場…死体でも埋まってるんですか?)」

 

ラグビーのゴールポールにしがみつく巨大な呪霊(想定2級クラス)を見上げながら内心呟く。

 

 

「(だとしてもこのレベルの呪いが彷徨くのはあり得ない、間違いなく例の呪物の影響か…さっさと回収しないと…)」

 

 

その時校庭の方が何やら騒がしい事に気づき視線を向けると何やら校庭で人だかりが出来ていた。

 

伏黒は近くの生徒に話かける。

 

「…何の騒ぎですか?」

 

「ん?(スッゲー…美人…こんな子いたっけな…)陸部の高木と 西中の虎杖が勝負するらしいぜ!種目は砲丸投げ!…それよりもこのあと俺と…」

 

その生徒の言葉を遮るように虎杖と呼ばれた男子生徒がピッチャー投げで投球した砲丸がまさに砲弾の様に有効区域を越えた先にある30メートル程先のサッカーゴールのポールにめり込む。

 

 

「(…凄いなあの人、呪力なしの素の力で…禪院先輩と同じタイプかな…いや、見てる場合じゃなかった)」

 

 

そしてその場から立ち去ろうと背を向けていた少女を走る虎杖が追い越した瞬間、虎杖から濃密な呪いの気配を感じ取った。

 

 

 

「(呪物の気配…!明らかに今強くなった…!)ちょっと待って!…って速すぎる!?」

 

 

彼女の制止も虚しく虎杖は既に校門を通り過ぎていた。

そんな虎杖を見ていた生徒が言う。

 

 

「アイツ50メートル走3秒で走るらしいぞ」

 

 

「車かよ」

 

 

「クッソ…!」

 

少女は悪態をつきながら豆粒の様に小さく見える程離れた虎杖の背中を見ていた。

 

 

◆◆◆

 

 

虎杖の祖父が入院していると言う病院を突き止めロビーに向かうと虎杖がいた。

 

 

「虎杖悠仁ですね」

 

 

声をかけると予想通り、『誰だコイツ?』みたいな表情をしてこっちを見てくる。向こうから見れば自分は只の不審者なのは分かっているが詳しく説明する一分一秒が惜しい為簡潔に説明する。

 

 

「私は呪術高専の伏黒恵です、すみませんが余り時間が無いため詳細は後で説明させて頂きます。」

 

 

そう言いスマホの画面にうつる目的の特級呪物の画像を虎杖に見せながら淡々と言う。

 

 

「この写真の呪物、貴方が持っていますよね?今直ぐ渡して下さい、死人が出る前に」

 

 

そう言うと虎杖の『うわっ…コイツ痛い奴かも…』みたいな視線が突き刺さってくるが気にしない、こっちだって好きでやってるんじゃない。

 

 

「んー…はいはい、拾ったわ俺は別にいいけどさ先輩達が気に入ってんだよ理由くらい説明してくんないと」

 

 

余り時間は割きたくないが下手に説明を渋ると警戒されて余計に厄介な事になりかねない為呪いについて説明する。

 

日本国内での 怪死者・行方不明者は 年平均10000人を超える

 

 

「その殆どが人間から漏れ出た負の感情によって生まれた"呪い"による被害です。」

 

 

「呪いぃ?」

 

虎杖は怪訝な顔をしているが無視して話を続ける。

 

 

「貴方が信じるかどうかはどうでもいいです、続けます。特に学校や 病院のような 大勢の思い出に 残る場所には呪いが吹き溜まりやすいんです」

 

 

「辛酸・後悔・恥辱、と言った記憶を人が反芻するたびに受け皿になりますから、その対象になりやすいそれらの場所には大抵、魔除けの呪物が置いてあります。今回貴方が拾ったモノもそれに該当します。」

 

 

「魔除け?なら良いじゃん、何が危険なの?」

 

 

「魔除けと言えば聞こえは良いですがその本性はより強力な呪いで弱い呪いを寄せ付けないと言うこと、分かりやすくいえば毒を以て毒を制す悪習です。」

 

 

一呼吸間を置いてから話を再開する。

 

 

「現に長い年月が経ち封印が弛み今や逆に呪いを呼び寄せ肥やす餌です、そして貴方が拾ったモノはその中でも特に危険な【特級】に分類されるモノです、対処を誤れば冗談ではなく大量の死人がでます、今直ぐ渡して下さい」

 

 

強い口調で言うと虎杖は呪物の入っているであろう箱を投げ渡しながら言う。

 

「いやだから俺は別に良いんだって、先輩に言えよ」

 

 

箱を受け取り中を確認すると 空っぽ だった

 

 

 

「(私が追ってきたのは箱にこびりついた呪力の残穢…!!)」

 

 

 

一瞬放心状態になるが直ぐ様虎杖の胸ぐらを掴んで問い詰める。

 

 

「中身は!?」

 

 

「いやだから先輩が持ってるって!!」

 

 

「その人の家は!?」

 

 

「知らねぇよ、確か泉区の方の…」

 

 

虎杖の言葉突然止まる

 

 

「どうしましたか?」

 

 

「そういや今日の夜、学校でアレのお札剥がすって言ってた、え……もしかしてヤバい?」

 

 

伏黒の唖然とした顔を見て虎杖は冷や汗を浮かべながら聞いてくる。

 

 

「ヤバいってもんじゃありません、その人、死にますよ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

2人は病院から飛び出して学校に急行していた。

 

 

「お札ってそんな簡単に取れんの?」

 

 

「いえ…呪力のない人間にはまず無理ですが今回のは中のモノと封印が古すぎるせいで紙切れ同然です」

 

 

そう返答した時、学校から凄まじい(プレッシャー)を感じ取る。

 

 

「貴方は此処にいて下さい、部室は何処ですか」

 

 

「待てよ!俺も行く!ヤバいんだろ!?二月やそこらの仲だけど友達なんだ放っとけねぇって」

 

 

「此処にいて」

 

 

「…!」

 

 

強い口調の伏黒に虎杖は何も言い返せなかった。

その後伏黒は校舎の中を警戒しながら移動していた。

 

 

「(空間の呪力が濃い…何処が発生源か分からない…!)」

 

 

その時、上の階から女性の悲鳴が響いてくる。

 

 

「もう襲われて…!」

 

 

上の階に向かおうとすると前方に呪霊がいることに気づく。

 

 

 

ちゅーるちゅーるちゅる

 

 

 

「【玉犬】」

 

伏黒が手で犬の影絵を組むと、影が変形し白と黒の対の犬が影から現れ伏黒は簡潔に指示を出す

 

「殺せ」

 

 

その後伏黒は玉犬と共に校内の呪霊を祓いながら走って移動していた。

 

 

「(呪いの数が増えてる、近い)」

 

 

廊下の角を曲がると感の通り、其処には悲鳴をあげたと思われる女性と男性が意識を失って呪霊に取り込まれようとしていた。

 

 

 

「(不味い…!呪物ごと取り込むつもりだ…!この距離だと間に合わない…!)」

 

 

その時、呪霊の直ぐ隣の窓ガラスを蹴破って虎杖が呪霊をキックドロップしながら現れる

 

 

「(…なんで此処に!?というかここ4階ですよ!?)」

 

 

虎杖はキックドロップを喰らわせ呪霊を怯ませた瞬間に2人を回収し伏黒の方へ飛んで戻ってくる。

 

伏黒はその隙を見逃さず陰から剣の呪具を取り出して呪霊を真っ二つにし呪霊の死体を玉犬に食べさせながら虎杖の方を向く。

 

 

「どうして来たのか聞きたい所ですがまぁ…良くやりました」

 

 

「なんで偉そうなの、因みにあの呪い喰ってるあの犬は?」

 

 

「見えてるんですか、私の式神です」

 

 

「?」

 

 

どういう意味か分からず頭上にはてなマークを浮かべる虎杖を見て伏黒は額を抑えながら言う。

 

 

「呪いは普通見えません、まぁ死に際やこういった呪力の濃い場では別ですが」

 

 

そう言うと虎杖は回収した女性を抱きかかえながら納得した様に言う。

 

「あー確かに、俺今まで幽霊とか見たことないしな」

 

 

「貴方、怖くないんですね」

 

 

そう言うと虎杖は少し間を置いてから答える。

 

 

「いや怖いんだけどさ、知ってた?人ってマジっで死ぬんだよ。」

 

 

「は?」

 

 

想定外の答えに思わず間抜けな声が出てしまう。

 

 

「だったらせめて知ってる人ぐらいは正しく死んでほしいって思うんだ…まぁ自分でもよく分からん」

 

 

「……」

 

伏黒は虎杖の言葉で脳裏に義姉の姿がよぎる。

すると虎杖が抱える女性のポケットから紫色のミイラの指の様なモノが落ち虎杖が拾い上げて言う。

 

「これが?」

 

 

「ええ、特級呪物"両面宿儺"その一部です」

 

 

「りょうめ…?」

 

 

「言っても分かんないですよ、早く渡して下さい」

 

 

「はいはい」

 

 

そう虎杖が言った瞬間虎杖の頭上から嫌な気配がし虎杖を突き飛ばしながら言う。

 

 

「逃げて」

 

 

その言葉と同時に天井が突き破られ巨大な呪霊が姿を現し伏黒を掴み拘束する。

 

 

「【鵺】……がっ…!?」

 

 

直ぐ様式神による状況の打開を試みるが呪霊の方が一歩早く壁に伏黒を投げつける、その衝撃で【鵺】どころか召喚済みの玉犬も解除されてしまう。

 

呪霊は追撃の様に壁に打ち付けられた伏黒に体当たりし壁を突き破り伏黒を隣の校舎の屋上に吹き飛ばす。

 

 

「(術式が途切れた…視界が揺れる…)」

 

 

何とか立ち上がり揺れる視界の中で呪霊を捉え【鵺】を呼び出そうとすると先程の校舎から虎杖が飛び移り呪霊の頭部を殴り倒し呪霊と伏黒の間に立つように現れる。

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

「私、逃げろって言いましたよね」

 

 

「そんな事言ってる場合か!今帰ったら夢見悪ぃだろ、それにな…こっちはこっちで面倒臭ぇ呪いがかかってんだわ」

 

 

そう言い虎杖は呪霊に攻撃を試みるが攻撃は通じず伏黒の隣に吹き飛ばされる。

 

 

「無駄です、幾ら貴方が強くても…呪いは呪いでしか祓えない」

 

 

「……早く言ってくんない?」

 

 

「さっさとあの2人連れて逃げて下さい、はっきり言って呪力のない貴方は足手まといです」

 

 

虎杖は頭部から血を垂れ流して息を切らす伏黒を見て立ち上がる

 

 

「……なぁなんであの呪いはあの指狙ってんだ?」

 

 

「…?食べてより強い呪力を得るためです」

 

 

「なんだあるじゃん皆助かる方法」

 

 

「は?」

 

 

虎杖の言葉に伏黒は耳を疑う

 

 

「俺にジュリョクがあればいいんだろ?」

 

 

「まさか…!」

 

 

虎杖のしようとする事に気付き手を伸ばし制止を試みるが僅か及ばす虎杖は宿儺の指を飲み込んでしまった。

 

 

「(特級呪物ですよ!?猛毒で確実に死ぬ!でも万が一…もしも……)」

 

 

呪霊は痺れを切らし2人に襲いかかるが次の瞬間、抉り飛ばされる。

 

 

 

「ケヒッ!あぁ…!やはり…!光は生で感じるに限るな…!」

 

 

虎杖から禍々しい呪力の圧を感じる

 

 

「(最悪のケース…万が一が当たった…特級呪物が受肉した…!!)」

 

 

虎杖に受肉した宿儺は上着を破り捨て上裸になりながら叫ぶ

 

 

「呪霊の肉などつまらん!人は!女は何処だ!…!」

 

 

宿儺は伏黒の存在に気づく

 

 

「なんだいるではないか、しかし良い時代になったものだな女も子供も蛆の様に湧いている…」

 

 

宿儺は両手を広げる

 

 

「素晴らしい…!鏖殺だ!手始めに小娘、お前からだ光栄に思え」

 

 

「っ…!」

 

 

直ぐ様臨戦体勢をとり宿儺に備えるがそれは無駄に終わった。

 

 

宿儺が右手で自分自身の首を絞めたのだ。

 

 

「お前、何故動ける?」

 

 

「?いや俺の身体だし?」

 

 

「動くな」

 

 

「え?」

 

 

 

伏黒は宿儺を殺せるであろう式神を呼ぶ為の構えをしながら虎杖もしくは宿儺に言う。

 

 

 

「貴方はもう人じゃない」

 

 

「は?」

 

 

「…呪術規定に基づき虎杖悠仁、貴方を呪いとして祓う」

 

 

◆◆◆

 

 

「虎杖悠仁ですね」

 

 

突然だった、爺ちゃんが死んで必要な書類の準備を終えた時に俺と同い年位の背が高い綺麗な顔をした女の子に声をかけられた。

 

 

「私は呪術高専の伏黒恵です、すみませんが余り時間が無いため詳細は後で説明させて頂きます。」

 

 

事務作業みたいに淡々と話す子だった。

 

 

呪い?呪物?

 

 

最初は先輩たちみたいにオカルト好きの子だと思ってた。

 

 

「この写真の呪物、貴方が持っていますよね?今直ぐ渡して下さい、死人が出ない内に」

 

 

最初はなんだコイツって思ってた。

当然来て無茶苦茶な事言って変な奴だって思ってた。

 

 

「逃げて」

 

 

でも違った、血を流して、自分の方がボロボロでフラフラなのに

人の事を守ろうとする奴だった。

コイツは死ぬのが怖くないのかって思った。

 

俺も死ぬってどんな感じかなんて分かんなかった。

爺ちゃんが死んだ時も少し泣いたけど悲しかったんじゃなくて少し寂しかったからだと思う。

 

 

『オマエは強いから 人を助けろ』

 

 

爺ちゃんの言った言葉の意味なんて全然分かんねぇ。

短気で頑固者の爺ちゃんの事なんて

 

 

でも一つだけ分かる

 

今ここで逃げたら俺は一生後悔する。

 

 

 

コイツは常に自分を犠牲にしてでも誰かを守ろうするってことが少し一緒にいるだけで分かった。

 

でも誰がコイツを守るんだ?

 

助ける義理も何もない

でも理由はねぇけど絶対後悔する。

 

 

だから爺ちゃん

俺、助けるよ

 

手の届く範囲だけじゃなくて

 

助けたい人を守りたい人を絶対に。

 

それで良いだろ?爺ちゃん。

 

 

俺は指を飲み込んだ。

 

俺、結構ワガママなんだな。

 

 




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