ゆらゆら系女子 伏黒恵   作:ユラユラしろマコ!

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後悔しない様に

 

 

 

「我々の"窓"が呪胎を確認したのが、3時間ほど前。避難誘導9割の時点で現場の判断により、施設を閉鎖。受刑在院者第二宿舎に5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊になると想定されます。」

 

 

淡々と告げる補助監督【伊地知潔高】の言葉に伏黒は異を唱える。

 

 

「特級相当の任務となると私達では力不足では?」

 

 

「本来ならばそうなのですが…緊急事態で異常事態、一刻を争う中、動かせる術師は貴方達しかいないのです。」

 

 

虎杖が伏黒の脇を肘でつつき小声で話しかける。

 

 

「…なぁ特級とか良く分かんねぇんだけど」

 

 

「…弱い個体でも単独で街一つ容易に消せる化け物だとでも思っといて下さい。」

 

 

「…やっべぇじゃん、ホントに俺等がやんの?」

 

 

「…本来なら特級案件は同等級か最低でも1級術師が受け持つ筈なんですが今回は東京付近で動かせる1級以上の術師がいないから私達が駆り出されたわけです。」

 

 

伊地知は咳をし二人の会話を止める。

 

 

「…それで今回で貴方達に絶対に守って貰うことそれは【戦わないこと】特級と会敵した時の選択肢は死ぬか逃げるかのどちらかです。自分の恐怖には大人しく従って下さい、今回な君達の任務は呪霊を祓うことでは無く生存者の確認又は救出である事を忘れずに」

 

 

そう伊地知がメガネを整えた時、バリケードテープの向こうから中年の女性が酷く狼狽えた様子で声をかけてきた。

 

 

「あの…あのっ!正は…息子は大丈夫なんでしょうか」

 

 

「えっと…」

 

 

虎杖が口を開こうとするのを伊地知は手で制し前に出る。

 

 

「何者かによって施設内に毒物が撒かれた可能性があります、現時点でこれ以上のことは申し上げられません」

 

 

伊地知の言葉を聞き呆然とした表情を女性は浮かべ涙を流す姿を見て虎杖は二人に言う。

 

 

「伏黒釘崎、助けるぞ」

 

 

「当然」

 

 

「……」

 

 

釘崎は同意の言葉を返すが伏黒は返すことが出来なかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

施設内に踏み込むと濃密な呪力の気配を感じた。

施設は2階建ての寮である筈だがどう見ても2階以上の高さの空間が広がっている。

 

 

「どうなってんだ!?2階建ての寮の中だよな此処!?」

 

 

「お、お、落ち着け!メゾネットよ!」

 

 

虎杖と釘崎はすっかりとパニックになっているが伏黒は冷や汗を流していた。

 

 

「(間違いない…不完全だけれどこれは生得領域の展開…!此処まで大きいものは初めて見…まさか…扉は…!?)」

 

 

伏黒はとある事に気付き背後を振り向くが先程入ってきていた扉はまるで存在しなかったかの様に姿を消していた。

 

 

「ドアが無くなってる!?なんで!?今此処から入ってきたよね!?」

 

 

更に悪化する二人のパニックを鎮めるために伏黒は玉犬を呼び出して言う。

 

 

「大丈夫です、私の式神が出入口の匂いを覚えています」

 

 

そう言った瞬間二人は玉犬に飛びつきワシャワシャと撫で回し始める。

 

 

「わしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!」

 

 

「ジャーキーよ!ありったけのジャーキーを持ってきて!」

 

 

「はぁ…」

 

そんな二人の様子を見てため息をつく伏黒に虎杖は笑みを浮かべながら言う。

 

 

「やっぱ頼りになるな伏黒は、オマエのお陰で人は助かるし俺も助けられる。」

 

 

「……早く進みますよ」

 

 

そう言ってから在院者()()()ものを見つけるにはそうかからなかった。

 

 

2つは肉団子の様にひしゃげ1つは下半身を喪失していた。

 

 

 

「3人…で良いんだよな…」

 

 

 

虎杖は比較的損傷が少なく身元が確認しやすい下半身を喪失した遺体の身元を確認する。

 

 

「…この遺体持って帰る、あの人の子供だ、顔はそんなにやられてない。」

 

 

「でも…っ」

 

 

「遺体も無しで【死にました】じゃ納得出来ねぇだろ」

 

 

遺体を背負おうとする虎杖のパーカーを伏黒が掴み引き寄せ言う。

 

 

「あと二人の生死を確認する必要があります、その遺体は置いていって下さい」

 

 

「振り返れば来た道が無くなってる、後で戻る余裕はねぇだろ」

 

 

「【後】ではありません【置いて】と言ったんです、私はただでさえ助ける気もない人間の死体を他の優先すべき事を後回しにしてでも助ける気はありません」

 

 

 

伏黒の言葉に虎杖は反射的に胸倉を掴む。

 

 

「どういう意味だ」

 

 

「此処は少年院ですよ、呪術師には現場のあらゆる情報が事前に開示されます、その人は無免許運転で下校中の女児をはねてます、2()()()の無免許運転でです」

 

 

「…!」

 

 

「貴方は大勢の人を助けて正しい死に導くことに拘ってますよね、もし貴方が助けた人が将来人を傷つけ殺したらどうするんですか」

 

 

「じゃあなんで!!俺は助けたんだよ!!」

 

 

「いい加減にしろ!時と場所を弁え__」

 

 

険悪な雰囲気になった二人を宥めようとした釘崎は踏み出した場所がまるで水面だったかのように地面に文字通り沈んだ。

 

 

 

「釘…崎…?」

 

 

「(馬鹿な!!玉犬が反応出来な……え?)」

 

 

玉犬がいた方向に視線を向けると玉犬の頭部が壁に打ち込まれていた。

 

 

最悪に嫌な予感がした伏黒は叫ぶ

 

 

「虎杖!!逃げますよ!釘崎を探すのはそれか__」

 

 

言い終える前に二人の身体は硬直する

文字通り二人の真横に呪霊が現れたからだ。

 

 

「(間違いない…特級…!動けない…!)」

 

 

「(動け動け動け動け!)」

 

 

先に身体の硬直が解けた虎杖が必死に心を奮い立たせる為に叫びながら屠坐魔で攻撃を試みるが鈍い肉が潰れる音と共に虎杖の手首があった筈の部分から血が吹き出した。

 

 

◆◆◆

 

 

「【鵺】!」

 

 

伏黒は広大な生得領域内を釘崎を探しながら逃走していた。

 

虎杖が手首を吹き飛ばされた後、虎杖は伏黒に2つの頼み事した。

 

 

・釘崎を連れて領域内から脱出すること

・宿儺と変わるタイミングを図る為に伏黒は脱出後に合図をすること

 

 

呼び出した鵺が領域の壁に穴を空けその穴が塞がる前に通り抜ける。

 

勿論、頼みを受ける気は無かった。人を見捨てて逃げれるほど薄情になったつもりは無かったからだ。

 

『頼む』

 

しかしそう言う虎杖の姿が姉に重なってしまい断ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

玉犬に釘崎の居場所を探させて丁度呪霊に逆さまに掴まれていた釘崎を【蝦蟇】で回収する

 

 

「カエル苦手なんスけど」

 

 

「…カエルで悪かったですね」

 

 

【蝦蟇】の口の中で文句を言う釘崎を引きずりだして釘崎を背負ったまま領域内から脱出して玉犬に合図をさせる。

 

 

それと同時に激しい呪力が勃り暫くした後生得領域が消滅する。

宿儺と変わったのだろう。

 

 

「(生得領域が閉じた…特級が死んだんだ、後は虎杖が戻れば…)」

 

 

「小僧は戻らんぞ」

 

 

突然背後に現れた宿儺に伏黒は身体が硬直する。

 

 

「…!?」

 

 

「そう怯えるな俺は今機嫌が良い、少し話そう」

 

 

宿儺は酷く愉快だと言わんばかりの声色で語る。

 

 

「何の縛りも無く俺を利用したツケだな、俺と少々変わるのに手こずっているようだ」

 

 

「しかしまぁそれも時間の問題だろう、其処で俺は今出来る事を考えた」

 

 

突然宿儺は上着を裂き胸元を露出させ鳩尾を自ら貫く

 

 

「!?」

 

 

虎杖(小僧)を人質にする」

 

 

 

宿儺は醜悪な笑みを浮かべながら身体の心臓をもぎ取り手に持ちながら言う。

 

 

「俺はコレ(心臓)なしでも生きられるが小僧はそうはいかない。俺と変わる事は死を意味する、そしてこれは…」

 

 

宿儺なズボンのポケットから指を取り出す、恐らく先程の呪霊が取り込んでいたのだろう、それを放り投げ喰らう。

 

 

「ダメ押しだ」

 

 

宿儺は喉を鳴らし指を飲み込む、コレで虎杖の身体の中にある指は3本

 

 

「さてとコレで晴れて自由の身だ、もう怯えて良いぞ? 殺す 特に理由はない」

 

 

雨が降り始めた。

 

 

「…虎杖は戻って来ます、その結果自分が死んでもそういう人です」

 

 

「買い被りすぎだな、コイツは他の人間よりも少々頑丈で鈍いだけだ」

 

 

宿儺は吐き捨てる様に伏黒の言葉を否定する。

 

 

 

「先刻もな今際の際に脅えに怯えゴチャゴチャと御託を並べてきたぞ」

 

 

宿儺はさぞ愉快そうに嗤う。

 

 

「断言する、奴に自死する度胸はない」

 

 

 

「(切り飛ばされた手首が治ってる…反転術式が使えるんだ、宿備は受肉してる心臓なしで生きられるとはいえ少なからずダメージはある筈)」

 

伏黒は深呼吸し意を決する

 

 

「(虎杖が戻ってくる前に宿儺に心臓を治させる、心臓を欠いた身体で私を殺せないと思わせるんだ)」

 

 

身体が震える、宿儺が瞬殺したであろう特級相手にも動けない自分が出来るのかという思考が脳を支配する。

 

 

 

「(…出来るのかじゃない、やるんだ!!)【鵺】!!!」

 

 

鵺を呼び出し二手に分かれ宿儺の狙いを定まらさせない。

 

 

「(この小娘…式神使いのクセに向かってくるのか…!)」

 

 

宿儺の頭部を狙い蹴りを入れるが寸前で受け止められる。

 

 

「もっと呪いを込めろ」

 

 

宿儺に足首を掴まれバランスを崩された所を伏黒は宿儺の左足を影に沈め動きが止まった瞬間に宿儺の拘束を振り払う。

 

 

「影の術式か!」

 

 

「【蝦蟇】!」

 

 

距離を取り蝦蟇を呼び宿儺の右足を拘束し更にバランスを崩させた所を背後から回って来て助走をつけて最高速度になった鵺が雷撃を纏い後頭部に一撃を叩き込む。

 

 

「……!!」

 

 

「畳み掛け……」

 

 

式神に更なる指示を出す前に宿儺は影に掬われた足を引き抜き蝦蟇の舌を千切り伏黒にラリアットをかまして宙に吹き飛ばす

 

 

「折角外に出たんだ、広く使おう!」

 

 

「(反応出来なかった…!速すぎる…!!!)」

 

 

「ケヒッ!背後がガラ空きだぞ!」

 

 

「…っ!?【大蛇】!」

 

 

宙に吹き飛ばされた伏黒を追撃に来た宿儺のスレッジハンマーを喰らい地面に叩き落とされる。

 

 

「悪くないぞ小娘、影と蛙の式神による両足の拘束によって体勢を崩させた所を事前に飛ばしていた速度の乗った怪鳥の式神で無防備になった後頭部に一撃、そして先程俺に地面に叩き落とされる前に呼び出したその蛇の式神で落下の衝撃を抑えたな?」

 

 

宿儺は地面に打ち付けられヨロヨロと立ち上がる伏黒を見る。

 

 

「オマエの式神、影を媒体としているな?」

 

 

「それがどうしたんですか」

 

 

「分からんな、オマエ何故あの時逃げた?」

 

 

「……?」

 

 

「まぁ良い、宝の持ち腐れだなどのみちその程度ではココ(心臓)は治さんぞ?」

 

 

宿儺は鳩尾に空けた穴を指しながら言う。

 

 

「しかしつまらん事に命を懸けたな、この小僧にそれ程の価値はないというのに」

 

 

 

「………」

 

 

『じゃあなんで!!俺は助けたんだよ!!』

 

 

虎杖の言葉が脳内で反芻する。

 

 

「…似てたから」

 

 

「…?」

 

 

嫌な程知っている救いようのない程まで善人の姉さんと同じ気配がしたから

 

 

『誰かを呪う暇があったら大切な人の事を考えていたいの』

 

いつも笑って

綺麗事を吐いて

 

『人を許せないのは悪いことじゃないよ、それも恵の優しさでしょ』

 

そして私の性根すら肯定する。

 

そんな姉さんも私が人や自分を傷つけると本気で怒った

それに私は苛ついていた自己満足の偽善だって

意味が分からなかった。

気持ち悪くて仕方なかった。

どれだけ突き放しても自分を削ってまで私の事を心配する姉が

 

 

疑う余地のない善人だった誰よりも幸せになるべき人だった。

 

突然消えた父親の事もきっと今も何処かでのうのうと生きている。

 

 

因果応報は全自動じゃない

 

悪人は法の下で初めて裁かれる。

 

 

でも法は万能じゃない、抜け穴が幾らでもある。

 

 

真面目な人が善人が馬鹿をみる世界で

 

 

私は

 

そんな世界でも馬鹿真面目な善人であろうとする人達が少しでも平等を享受できる様に

 

 

理不尽に人を助ける。

 

 

「…!!!」

 

 

伏黒の呪力の勃りに宿儺は歓喜に震える

 

 

「良い、良いぞ、命を燃やすのはこれからだったと言うわけだ。」

 

 

宿儺を確実に殺せる方法で…

 

 

『自分も守れない奴が何かを守れると思うなよ』

 

 

…そうだ此処で死ぬ奴が何かを守れる筈がない

 

不確実で良い

 

不完全で良い

 

欲張れ、宿儺を殺して虎杖も助けて自分も生き残るそんな傲慢な結末を

 

 

伏黒は静かに構えを変え両手を組む

その姿を見て宿儺は歓喜の叫びを挙げる。

 

 

「魅せてみろ!伏黒恵!!!!」

 

 

呼吸をする。

 

呪力を練り上げる。

 

術式を

 

結界術を

 

自分の持つ全てを動員させる。

 

 

しかしそれは中断された。

 

伏黒は静かに手印を解き、眼前の相手を見つめる。

 

 

「……私は貴方を助けてた理由に論理的な思考を持ち合わせていません」

 

 

雨が強くなる。

 

 

「危険だとしても貴方の様な善人が死ぬのを見たくなかった、それなりに迷いましたが結局はワガママな感情論、でもそれで良いんです」

 

 

少しだけ苦笑しながら言う。

 

 

「私は正義の味方じゃなくて呪術師なので、だから貴方を助けた事を一度も後悔なんてしてませんよ」

 

 

 

「…そっか」

 

 

伏黒の言葉に答えたのは呪いの王ではなく何処までも不器用な15歳の少年だった。

 

 

「伏黒は頭が良いからな、俺より色々考えてんだろ、オマエの答えは間違ってないと思うでも俺が間違ってるとは思わん」

 

 

虎杖の鳩尾から溢れた血が地面につく。

 

 

「あー…悪いそろそろだわ、伏黒も釘崎も五条先生は…心配いらねぇか」

 

虎杖は身体が崩れ落ちる中、最後に言葉(呪い)を遺す

 

 

「長生きしろよな」

 

 

冷たい雨が降る少年院の敷地の中で一つ重いものが倒れる音がした。

 

 





マコーラ:折角の原作で数少ないマコが登場出来るかもしれない機会なのに出番なしマコ!?これはタイトル詐欺マコ!!!ついでに感想も欲しいマコ!!!
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