おれは人間をやめ……たくないッ!!   作:暴覇斬空410竜

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 カード紹介『次元の渡り人』
 ・パワー0
 ・バニラ(能力なし)

 どこからともなくこの星に流れ着いた只人。非力だが多くの世界を観測し、その知識一つで世界を破滅にも救済にも導く……かもしれない。


 


鬱√回避したらメリーバッドエンド(複数分岐)に入りかけてる件

 『ディメンジョン・マテリアル』、それは別次元の超常存在を呼び出し争うターン制カードゲーム。その影響力は単なるホビーに留まらず、レアカードたった一枚で株価が変動するといえば社会への浸透度も理解してもらえるだろう。

 基本的なルールも単純かつ幅広いプレイングができ、子供〜社会人までもが遊べるこのカードゲームは販促のために漫画やアニメの展開もされた。しかし、何をトチ狂ったのかライターはストーリーを鬱展開主軸で進めやがったのである。それも同じ主人公続投させて三期分、殆どの視聴者が二次創作に救済を求めるほど悲惨な話だった。紙一枚あるいはテレビの向こうだというのに、目を背けたくなる運命を描いたストーリーだが……それが他人事ではなくなってしまった。

 

 

 そう、転生してしまったのだ(・・・・・・・・・・)。ディメンジョン・マテリアルの主人公『アマド・ライト』に。

 

 

「ふわぁ……」

 

 

 始業式が終わり、体育館が出たオレは欠伸をこぼした。本日でアマド・ライトは2年目の高校生活を迎える。アニメの時系列で例えるならば最終シーズンの三期……その更に先だ(・・・・・・)

 世界の命運を賭けた闘いはすでに決着した。その過程で死ぬはずだったキャラも殆どが生きている。そう、転生したオレは原作の悲劇を知っていた。原作通りにいけば大半のキャラが死亡することを理解していた。ならば、その未来を変えようとするのは自明の理だ。前世であれば改変を嫌うファンに叩かれるような行動だが、実際に転生して生きてる身なのだ。最悪な結末とわかっていて何もしない方がおかしい。

 

 

「おーい、朝からあくびとかだらしないぞ?」

 

 

 オレの目の前で手を振りながら回り込んできたのは、同級生のエイマ・クオン。この人畜無害なボーイッシュ女子ともそこそこの付き合いになる。

 

 

「余計なお世話だ」

 

 

「相変わらず無愛想だな〜。そんなに退屈で眠いなら、ボクが刺激をプレゼントしてもいいよ?」

 

 

 クオンが更に近づいてオレの手を取る……前に首根っこを掴まれてオレの身体は後ろに引っ張られた。

 

 

「これだから走るしか脳のないヤツは困る。ライトにはこのあと私に付き合ってもらう」

 

 

「へーんだ。キミみたいに横槍入れるヤツよりかは100倍マシだと思うけどね」

 

 

 オレを抱き寄せ、クオンに挑発的な態度を取っている女子はシゴク・レン。無愛想と言われたオレ以上に感情を表に出さず、四六時中表情筋の死んだ無表情を貫いている。

 

 

「あら、新学期早々に風紀の乱れかしら。感心しないわね、アマドくん?」

 

 

「さもオレだけが悪いかのように言うのやめてくれません?」

 

 

 生徒会長のキシマ・ヨルカまで加わり、更に場が混沌と化していく。野次馬の生徒たちもかなり増えた。それもそのはず、この場にいるのは校内どころか世界レベルでも指折りの実力者達。羨望の眼差しを向けるのも当然だ。……オレに対しては一部嫉妬の視線も混じっているが。

 

 

「はいはい、話は生徒会室であげるから。他の二人は多めに見てあげる……同族のよしみ(・・・・・・)で、ね」

 

 

「……わかった、こう言いたいのね。『私ではアナタ達に敵いません。真っ向から挑まず尻尾を巻いて逃げ出します』って」

 

 

「わかりきった勝負ほどつまらないものはないでしょう?無益な殺生は好みませんもの。ドロドロに溶けた脳でもこれぐらいは理解できたかしら?」

 

 

「そういうことならライトはボクのものだね!なんたって、ボクのAQ魔進(あくましん)は最速最強だし!」

 

 

 三者三様に睨みを利かせている。ハーレムものにありがちな色恋沙汰であるが、彼女らの正体を知っている身からすればそんなことは言ってられない。

 

 

 ディメンジョン・マテリアルには様々なカテゴリがあるが、そのカテゴリの世界は別次元に実在(・・・・・・)している。この世界のプレイヤーはその別次元からカードを通じることで、モンスターの写し身を使役できる。また、ゲームのカギとなる『ソウル』を用いたモンスターは実体化までしてしまう。

 たかがカードゲームで別次元の存在が受肉できるとなれば、人間の姿を模倣して(・・・・・・・・・)別次元のモンスターが社会に紛れることもある。もちろん相応のリソースとリスクがあるため数はそう多くないのだが、今オレの目の前に三人いる。

 

 

「なら、ハッキリさせよう」

 

 

 拉致の開かない論争の中でレンがそういうと、身体同士が密着するかしないかの距離までオレに近づいた。そのままオレの身体に手を当てて、顔を寄せてくる。

 

 

「ねぇ、ライト」

 

 

 胴体を指でなぞりながら、レンは耳元で囁く。一般男子高校生には刺激の強いシチュエーション。横をチラリと見ると、彼女の赤い瞳と目が合った。物言わぬ人形のように整った顔は不思議な愛らしさがあり、その口が僅かに開いて次の言の葉を紡ぐ。

 

 

「岩石と溶岩の肉体に興味はある?」

 

 

「失せろマグマ野郎」

 

 

 ロマンもへったくれもない誘い文句をぶった切る。この答えが見えていたため、あれほど迫られていてもオレの心は1ミリも動じていなかった。

 いつからかシゴク・レンはオレに人の身体を捨てさせようとしにきている。自身と同じ身体構造にして、あわよくば自らの世界に連れていこうという魂胆だ。

 そして、それはレンに限った話ではない。

 

 

「ほぅら、やっぱりライトはボクのとこに来るべきだよ。……誰も追いつけないぐらいすごいマシンにしてあげるから」

 

 

「いいえ、アマドくん……ライトは私の眷属にします。少々首筋を拝借するだけでよいので、今すぐにでも……」

 

 

 ヨルカは眷属にしようとしてくるし、クオンに至ってはもはやヒトの形すら保たせてくれないらしい。

 おかしい、原作ではこんなことするようなヤツらじゃなかったはず。……まぁ原作のこの時点では全員いないので解釈不足とも言えなくもないが。

 

 

 こうして、オレの学園生活は迫り来るヒロイン達の誘いをあの手この手で回避しなければならない原作以上の修羅場と化したのであった。




 とりあえずキャラ一人一人に焦点あてながら話進めようと思います。ぶっちゃけ設定まとまってるの主人公除いて3キャラしかいないのでだいぶ見切り発車です。
 ちなみにディメンジョン・マテリアルの略称はDiM(ディム)を予定してます。頭の二文字だけ取っちゃうとどこぞのカード名悪ふざけTCGと丸被りしてしまうので()
 質問・感想にはできるだけ答える方針です。
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