おれは人間をやめ……たくないッ!!   作:暴覇斬空410竜

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 カード紹介『AQ魔進Bアール!』
 ・パワー2000
 ・攻撃中、このモンスターは相手カードの効果を受けない
 ・モンスターが2体以上攻撃したターン中、このカードのパワーは相手ソウルの数×1000上がる

 バイクに改造された悪魔が一柱。軽量モデルながら圧倒的なスピードを誇る。


 


AQ魔進は突き進む

 『AQ魔進(あくましん)』、かつて世界を平定していた無数の悪魔達。その強大な力故に世界は荒れ果てた……ので、いっそレース場にしました。そんなに広いコースを誰が走るのか。ちょうどそこに力を持て余している悪魔がいるではないか。全員マシンに改造されました。こうして世界は破壊による秩序ではなく、熱狂による混沌に支配された。今も世界ではかつて悪魔だったものが、永久に走り続けている。

 

 

「俺は『AQ魔進Fカルロス!』でテメェのソウル持ち『AQ魔進Bティン!』を破壊。剥き出しの『ソウル』を『AQ魔進Fネックス!』で攻撃だ!!」

 

 

 とある店頭大会、決勝カードは『AQ魔進』ミラー。見るからに暴走族な格好の男が、フォーミュラのようなAQ魔進モンスター達でエイマ・クオンを攻め立てる。

 

 少し基本ルールを解説しよう。ディメンジョン・マテリアルには、『ソウル』と呼ばれるシステムがある。これを互いに削り合って先に0にした方の勝ち。ソウルを攻撃するには、ソウルを用いて実体化したモンスターを破壊し、肉体を失ったソウルは場に露出。それをモンスターで攻撃することで初めて減らすことができる。

 ルールによって数は異なるが、今回は基本ルールであるためソウルは3つ。これをどう扱うかで勝敗は分かれる。

 

 

「これでテメェのソウルはあと一つ!次のターンで俺の勝ちだな!」

 

 

 『AQ魔進』モンスターはマシンの性質を示すアルファベットと!マークが名前に入るのが特徴的なテーマ。男の使うAQ魔進F(略称)はソウルなしではフルスペックを発揮できないが、高いパワーを持つものが多い。ミラー戦ともなればその脅威度は更に高いものとなるだろう。

 それでも、エイマ・クオンは余裕を崩さない。

 

 

「キミ下手だねぇ、AQ魔進の使い方が下手」

 

 

「ハッ、ここまで追い詰められて何言ってやがる。オレの場には強力なモンスターが2体もいる!こっから逆転なんてできるわけ」

 

 

「まずはマジックカード『AQコース悪魔の地上絵』。さっき破壊されたBティンを手札に回収して、そのまま召喚」

 

 

 一度倒されたバイク型のAQ魔進が甦る。Bを名称に持つAQ魔進はパワーを抑えられているが、攻撃時に発動する能力を駆使すれば盤面を制覇することができる。

 

 

「続けて『AQ魔進Aスモデース!』を召喚。Aスモデースは出た時にカードを一枚ドローできる」

 

 

 今度は飛行機型のAQ魔進。AのAQ魔進はcip……場に出た瞬間に発動効果を共通で持っている。この効果で引いたカードを見て、クオンをニッと笑う。

 

 

「ボクは最後のソウルを使って、『AQ魔進合(あくましんごう)GAME TIER(ゲームティア)を召喚する!!」

 

 

「な、なにィ!?AQ魔進シリーズのトップレアだと!!こんなガキが……!?」

 

 

 AQ魔進合GAME TIER。他のAQ魔進とは違って名称は英文字オンリーで!マークもない。姿も乗り物を模したものでなく、その乗り物の進行を制御するもの……つまるところ、信号だ。赤と緑の無数のランプがまるで瞳のように蠢き、柱のように聳え立っている。実体化もしているからか、格の違いが感じ取れる。流通が少ないため、効果も広く知られてないことも威圧感を増している要因だろう。

 これでクオンの盤面は出揃った。……とはいったものの、これ以上の召喚はできない(・・・・・・・・・・・・)。ディメンジョン・マテリアルのルール上、出せるモンスターに上限数を設けられてはいない。だが、実質的な上限がある。

 

 まず、ヴィジョンモンスターは2体までしか存在できない。手札に何枚モンスターカードがあろうと、BティンとAスモデースを出した今これ以上の展開は不可能。ちなみに場にヴィジョンしかいない状態でターンを終えた場合は『強制敗北(ソウルロスト)』となる。気をつけておこう。

 そして、ソウルを用いて実体化するマテリアルモンスター(長いしややこしいしでソウル持ち、あるいはソウルモンスターと呼ばれることが大半)。これは制限なく何体でも召喚でき、自分のターン中は破壊されないというメリットもある。ただソウルは有限であるため、今回のルールではモンスターを最大5体までしか並べられないということになる。

 

 

 ここで現在の盤面を見てみよう。

 

 

 クオン:残りソウル1 手札2

 ・Bティン(1000p)

 ・Aスモデース(2000p)

 ・GAME TIER(7200p,ソウル所持)

 

 対戦相手:残りソウル2 手札1

 ・Fカルロス(5000p,ソウル所持)

 ・Fネックス(6000p,ソウル所持)

 

 

 互いに全てのソウルが盤面にある状態。しかし、ソウルを削るにはモンスターの破壊とソウルへの直接攻撃で最低でも2回アタックする必要がある。クオンが場に出せるモンスターは最大3体。攻撃もその数と同じ回数しかできないとなると、ソウル2つを破壊できる4打点には届かない。

 返しにやられることはほぼありえないからこそ、相手は前のターンでソウル持ち2体を場に出す強気なプレイングをしたのだ。

 

 

「まずはBティンでFカルロスに攻撃!この時Bティンの効果で、ボクのモンスターのパワーを2000上げる!」

 

 

 スピーカーのような二つの前輪から軽快な音を流し、三輪バイクは走り出す。もちろんパワー負けしてるので無惨に爆散してしまったが、その勇姿と音楽に後続は鼓舞されたようだ。

 だが、この自爆特攻には更なる意味が存在する。

 

 

「本番はこれから!ギアを上げろAQ魔進!!」

 

 

 クオンの号令と共に、場にいるAQ魔進全てがエンジンを轟かせ始める。AQ魔進にはアルファベット関係なしに共通の効果が存在している。

 その効果は……。

 

 

「AスモデースでFカルロスにアタック!この瞬間、AQ魔進モンスターは相手ソウルの数だけパワー1000アップする!!デビルズ・イグニッションッ!!」

 

 

 AQ魔進シリーズの目玉。それは『モンスターが2体以上攻撃したターン中、このカードのパワーは相手ソウルの数×1000上がる』というもの。まさにレース中のデッドヒートを体現したかのような効果。

 これによりクオンのAスモデースは相手のソウル二つ分、つまりパワー2000が上乗せされる。しかし、このAQ魔進の効果は自分のターンでなくとも発動可能だ。

 

 

「チッ、だが俺のFカルロスもパワー1000の上昇だ」

 

 

 Fカルロスもクオンのソウルの数だけパワーを上げる。これでFカルロスのパワーは6000に上がる。AスモデースにはBティンの効果も重ねがけされているため、2000+2000+2000で6000。お互いにパワーが並び、相打ちとなった。Fカルロスは破壊されたことでその場にソウルを残す。

 

 

「さぁて、今度はGAME TIERでFネックスに攻撃!」

 

 

「バカが!ソウルを持ったFネックスは元々のパワーが自分を上回っているモンスターとバトルする時、手札1枚を捨てることで墓地にあるAQ魔進の数×1000される!俺の墓地には5枚のAQ魔進、合計12000で返り討ちだ!!」

 

 

 Fネックスのパワーが増大する。能力の穴として同じパワー6000に攻撃されれば呆気なく相打ちになるが、AQ魔進の共通効果が発動すればそのデメリットも打ち消せる。それなりのレアリティで手に入ることもあり、一般的なAQ魔進デッキなら文句なしのエースカードだ。

 

 

 GAME TIERが相手でなければ、だが。

 

 

「それはどうかな?GAME TIERにも相手ソウルの数パワーが上がる効果がある。でも上昇(バフ)量が違う!ソウル一つにつき3000、2つあれば6000!Bティンの効果も含めれば15200だよ!!」

 

 

「ば、バカなぁ!?」

 

 

 GAME TIERが蠢動したかと思えば、Fネックスの周囲に無数の光が発生する。それらは全てGAME TIERの眼であり、2色の光線が何十発と放たれ、Fネックスは原型を留めることなく焼き切られた。

 これで男の盤面にはソウル二つのみが残された。しかし……。

 

 

「は、はは、やられたからなんだってんだ。もう攻撃できるモンスターは…………な、なんだ!?」

 

 

 男が安堵していると、GAME TIERの無数のランプが消灯した。その不気味な静寂の中で、クオンは2枚のカードを掲げる。

 

 

「ここからがGAME TIERの本領発揮だよ。GAME TIERは攻撃後に新たなモンスターを呼び寄せるのさ」

 

 

 GAME TIERの眼がカウントダウンのように次々と点灯し、赤に染まっていく。

 詳しい効果はこうだ。GAME TIERは攻撃後、場のヴィジョンモンスターを好きな数破壊し、手札からモンスターを召喚できる。

 こうして新たに召喚したモンスターには、もちろん攻撃の権利が残っている。

 

 GAME TIERの全てのランプが赤から緑に切り替わると同時に、2体のモンスターがトップスピードで走り去り、相手ゾーンに漂う2つのソウルを砕いた。

 

 

「『AQ魔進Bアール』と『AQ魔進Jガーン』を召喚&即攻撃で、一方的に僕の勝ち!!」

 

 

「ギャアアアアアッ!?」

 

 

 こうしてクオンは見事に優勝し、ついでに対戦相手が先手後手を決めるシステムにイカサマしていたことをバラした。

 ゲーム中にオレが来ていたことに気づいていたらしく、クオンはこちらに近寄り勝利報告をしてきた。

 

 

「ふっふっふー、どうだったライト!ボクのAQ魔進のウイニングラン!!」

 

 

「そうだな。見事なオーバーキル(・・・・・・)だったよ」

 

 

 さっきの局面、別にGAME TIER抜きでも最後に出していたJガーンを駆使すれば勝ててはいた。F軸のAQ魔進は単体スペックこそ高いが手札消費も激しく、仮に削りきれなくともそうそう負けることはなかっただろう。

 それでも確実に、完膚なきまでに叩きのめしたのは、エイマ・クオンがAQ魔進の生みの親であり、それら全てを愛しているから。その勝者が卑怯な行為に手を染めたならば、彼女の自慢のマシンに泥を塗ったも同然だからだ。

 

 

「それにしても、いいのか?せっかくの景品を」

 

 

 離れたところでは、参加していた子供達がクオンに与えられたパックを剥き、手に入ったカードを早速試す光景があった。

 この世界ではレアカード一枚でもかなりの値がつくほどに貴重であり、一攫千金を狙う輩も少なくはない。連行された決勝の相手のように悪知恵を働かせる価値もある。

 もちろん今回の景品であったカードパックからそれが出る保証もないが、それでも簡単に手放すとは。

 

 

「だって、どうせ笑うヤツがいるなら卑怯者より真面目に頑張る人の方がいいじゃん。キミが守りたかったのはそういう世界じゃないの?」

 

 

「……そうだな」

 

 

 何事もハッピーエンドがいい。オレもそれを目指して今まで足掻きに足掻いてきた。その過程で救えたキャラが似たような行動をしたというのは……上手く言葉にはできないが、なんだかむず痒い。

 

 

「というわけで、どうかなライト!Jガーンみたいな迫力のあるジェット機とか、スピードも出しやすいし結構人気出ると思うんだけど!!」

 

 

「オレの改造より先にオマエのメンテナンスをおすすめするよ。特に頭のネジ」

 

 

 何故この流れでいけると思ったらのか。感傷とか何もかもぶち壊しである。会話に限らず、唐突なクラッシュ事故とかAQ魔進だけの冗談にしてほしい。いや、AQ魔進の仲間入りしたらそのクラッシュ事故も日常茶飯事か。また一つ拒否する理由が増えた。




 基本ルールとかゲームの流れ書いてたらめちゃくちゃ長くなった……。フルで描写する時は前後編に分けなくては。
 流石に毎回ゲーム内容書くことはしないので、次回はキャラ深掘りしつつ箸休め回になる予定です。
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