おれは人間をやめ……たくないッ!! 作:暴覇斬空410竜
・パワー8000
・このカードが攻撃する時、自分は場のモンスター1体を破壊する
・このカードが破壊された時、墓地のカード3枚をデッキの下に置いてもよい。そうしたら、このカードを墓地から場に出す
大剣で周囲全てを薙ぎ倒すフランケン。力の制御が苦手であり、よく味方を巻き込む。
『
「アマドくんは今年も帰宅部ですか。もし他に校外活動をしているなら、生徒会に申請が必要ですよ?」
「そういうのもない、マジにただの帰宅部だ。……
放課後の生徒会室。その部屋の主に招かれたオレは、豪華なソファと用意されていた紅茶と菓子を堪能している。テーブルを挟んだ対面にはキシマ・ヨルカ。生徒会長キャラにありがちな容姿端麗、文武両道の完璧超人だ。
「あら?部員としての大会出場はしていないと記憶していますが」
「そりゃ選手じゃなくて、デッキの構築相談と仮想相手になってるだけだからな」
部活の方には何度も勧誘を受けているが、全て断っている。大会に興味がないわけではないが、青春を捧げる程の熱量がオレに欠けていると感じたからだ。その分コーチ役として徹底的に鍛えてやったが。
「そうでしたのね。ところで、今日DiM部には巷で噂のアイドルに剣術道場の一人娘も訪れたようですが……何か心当たりはありますか?」
「……そりゃあ、DiM部だし誰が来てもおかしくないだろ」
一人1デッキが当たり前のこの時代、DiM部の入部希望者は下手な運動部より多い。もちろん、そういった輩の大半は『入部試験』で門前払いにされるのだが。
しかし、ヨルカが挙げた二人はそんな試験を軽々突破した猛者である。……にも関わらず、入部はしなかったのだが。
「女たらしというべきか、モンスターたらしというべきか……。退屈とは無縁の生活を送れているようで何よりです」
「そうだな。執拗な勧誘さえなければ素直に喜んだかもしれない」
実際その二人の目当てはオレだったらしく、入部を蹴ったのもオレが正式に属してないからだ。その後は個人間でオレの取り合いが始まったので、部長に丸投げして颯爽と抜け出してきた。
「それなら、なおさら私のところに来るべきでは?近づく相手がいるならば、私も堂々と釘をさせますし」
「……生徒会への誘いだとしても受けないからな」
ここで二つ返事して首を縦に振ろうものなら、とんでもないことになるのは目に見えてる。釘を刺すっていうのも比喩ではないし、最悪十字架の雨が降ることになるだろう。
「まぁ、口で靡くようなら今頃は私以外のモノになっているでしょう?冗談ですよ、半分程は」
半分は冗談じゃないのが冗談であってくれ。
「ところで……」
目線をヨルカから机上に移す。茶と菓子はまだ残ってる。だが、それらは机の隅にあって、肝心の中央には木材で構成された正方形の基盤が設置されていた。その基盤にも黒い線で正方形のマス目が描かれ、そこには幾つもの駒が並んでいた。
「なんでオレは将棋をやらされている?」
「あら、お気に召しませんでした?」
将棋。20対20の駒を互いに減らし合い、敵の将である王の駒を取った時点で勝負がつく古き良きボードゲーム。
オレが生徒会に着いた時にはもう将棋の用意はされており、流れるようにヨルカと対局していた。
「いや別にカードゲームにしか興味ないわけじゃない……。けど、どちらかといえばチェスやってそうなイメージの方が強いというか」
元が西洋の怪物なのに、和風な娯楽やってるのはギャップがすごい。前世の知識でも将棋を嗜むという描写はなく、二次創作ではあるが和やかにチェスをしている光景の方が見慣れていた。
「確かにチェスは私の世界にもありますが、私はこちらの方が好みですよ。だって……」
ヨルカが駒を手に取る。盤面上の自分の駒ではなく、
「相手から奪った駒をこうして好きに使ってもよい、なんて。チェスでは味わえない楽しさがあります」
お互い駒を進める手が早くなる。その度にオレの駒だけが次々に奪われる。
「こうして一手、また一手と詰め。一つ、また一つと切り崩し……」
抵抗しようと必死に駒を進ませるが、どれも呆気なく取られていく。そうしてオレのところには……一つの駒だけが残った。
「遂には、玉すらも手中に収める。拒むのならば、拒めぬほどの包囲網を築き、ゆっくり攻め立てるのも……悪くはないと思いませんか?」
オレが向いてない以上に、ヨルカが強すぎる。完膚なきまでに一方的な盤面は、無力化した敵将の処刑を淡々と執り行うかの如くだった。ここからの逆転はありえないと、ヨルカは勝利の笑みを浮かべている。
そんな笑みを崩したのは、オレの取った意外な一手だった。
「これで王手だ」
盤面の外から飛の駒……それが裏返った龍の駒を王の眼前に突きつける。予想外の行動にヨルカは目を見開いた。
「……あの、確かに奪った駒を好きに使えるとはいいましたが、それは無法にも程がありません?」
ヨルカの盤面にはまだ自身の飛の駒がちゃんと残っている。オレが出したのは……さっき取られたオレの飛の駒だ。それをヨルカの元からサッと奪って盤面に置き、なんなら龍に成ったまま出している。ルール違反のオンパレードだ。
「まぁな。でも、これぐらいの事はDiMなら日常茶飯事だろ?」
「……確かに、そういったこともありますね」
オレ達が将棋以上に全霊を懸けるディメンジョン・マテリアルでも、
最後まで気を緩めず、諦めずに戦い抜く。DiMのプレイヤーであるからこそ、この行為を無駄無意味と吐き捨てることはできない。
「それはそれとして、将棋ではルール違反なので私の勝ちです。異議は認めませんよ」
「ですよね」
敗因:違反行為へのマジレス。あのまま続けても勝てるわけないのでワンチャンを狙ったが、案の定ダメだった。
……良い子のみんなは負け確状況でも最後までルールを守ってプレイしようね!
「全く、次はありませんからね…………ですが、フフ、ウフフ。主戦場ではないにせよ、アナタを下したのは事実。というわけで、これぐらいの褒賞は貰ってもいいでしょう」
ヨルカが机越しに身を乗り出して、顔を近づける。あまりにも唐突な行動に反応できず、顎までもしっかり掴まれてしまっていた。窓から差し込む夕陽も、ヨルカの妖艶な雰囲気を更に引き立てていた。
そのまま互いのくいの距離が縮まっていき…………ヨルカはピタリと動きを止めた。
「……ライト……アナタ、今日の昼……
「昨日レンがお裾分けしてくれた麻婆豆腐の残り」
「くっ……よ、よりによって……そんなものを……ッ!」
ヨルカには苦手なモノがある。それは日の光や十字架といったものではなく……
「うっ……く、ぐぅぅ…………おぇ……」
合意なき急なキスを防げたのは不幸中の幸いだが、ヨルカにとっては飛んだ貰い事故だ。本気で苦しそうなその姿は流石に可哀想だった。床に蹲るヨルカを介抱しようと近づいた。
「こ……れ、しきのことで……諦めてなるもの……です、かッ!」
「え」
気づいた頃には、ヨルカの顔はオレの横にあって、熱い感触が頬に残っていた。頬といっても、あと数ミリでもズレていれば唇に触れているほどの場所だったが。
そこまで接近したことで
その日の帰宅はいつもより遥かに遅かった。帰宅部なのに。
もっと厨二感マシマシでカッコよくできるモチーフではありましたが、ネーミングは敢えて安直にしました。ふざけた名前なのにクソ強い集団というのもカードゲームあるあるなので。
主人公の仕様テーマも少しだけ匂わせましたが、お披露目はもうちょっとだけ先となります。