賢者の孫と仙鶴の弟子   作:ΣiGMA

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執筆する上で原作を確認してたところ、「身分証」ではなく「市民証」であったと判明したので修正致しました


第7話【手合わせ】

【シン視点】

 

 合図が出されるが不意にシドがこんな事を言ってきた。

 

 

「シン……お前の実力は噂で聞いちゃあいるが、それでも一つ忠告しておく。初手から本気で来い」

 

「……?別にいいけど」

 

「それじゃあ行くぞ?頑張って避けろよ」

 

「はぁ?いったい何を言っ────とぅあっ?!」

 

 

 思わず変な声が出た。

 

 なにせシドはそう言うなり、気付けば俺の眼前にまで迫ってきていたからだ。

 

 慌てて魔法障壁を展開しようとした俺だったが、何故か嫌な予感がして咄嗟にシドの拳を避けた。

 

 

「てっきり防御するのかと思ったが?」

 

「嫌な予感がしてね」

 

「大事だぞ?そういった直感つむてやつは」

 

 

 シドはそう言いながら連続して拳を放ってくる。

 

 俺はそれをなんとか回避をしてはいるけど、このままではジリ貧である事も理解していた。

 

 なにせシドの拳は速い……それこそようやく目で追えているレベルだ。

 

 

「どうした?避けてばっかじゃ駄目だろ?反撃してこいよ」

 

「言われなくてもそうするつもりだったよ」

 

 

 俺はそう言うと一気に距離を取り、シドに向けて水魔法を撃ち込む。

 

 ただの水の魔法弾ではあるが、当たればもちろん痛い。

 

 目標も固定しているので避けても当たるまで追ってくる仕様だ……いくら動きの速いシドでも避けられないはずだ。

 

 そう思っていたのだが、しかし迫ってくる魔法に対してシドは驚愕の行動をとった。

 

 

「あめぇな」

 

「なぁっ────?!」

 

 

 あろう事かシドは避けるでも防ぐでもなく俺が放った魔法を弾き飛ばした……素手で。

 

 弾き飛ばされた魔法はかき消されたように霧散し、他の魔法も次々とシドによって軽々弾き飛ばされてゆく。

 

 

「はは……マジかよ……」

 

 

 思わずそんな乾いた笑いが出た。

 

 

「どうした、打ち止めか?なら今度は俺の番だ」

 

 

 シドはそう言うと五指を鈎状にした右手を振りかぶる。

 

 するとシドの影がその右手を覆い、それはまるで黒い獣の(アギト)のようになっていた

 

 

「神氣術〝五爪閃撃・喰蝕(くいばみ)〟」

 

「まずっ……!」

 

 

 急いで魔法障壁を展開する。

 

 シドの術と俺の魔法障壁がぶつかり、その場に激しい衝撃が生まれる。

 

 

「くっ……!」

 

「存外かてぇな」

 

「伊達に魔力制御を鍛えてねぇからな」

 

「そうか……だが、残念ながら無駄だ」

 

「なんっ……」

 

 

 〝なんだって〟と言い終える前に、シドが徐ろに出した左手が俺の魔法障壁に触れた途端、まるで霞のように魔法障壁が霧散した。

 

 

「……は?」

 

「仙氣術〝絶破衝拳〟」

 

「やべ……!」

 

 

 気づいた時にはシドが放った拳が今まさに俺のみぞおちを捉える寸前であった。

 

 しかしその拳は俺に当たることはなく、その寸止め程で止まっている。

 

 

「シド、そこまでだ」

 

 

 シドの拳を止めたのはナユタさん……ナユタさんがシドを見下ろしながらそう告げると、シドは大人しくその拳を下げる。

 

 

「シン君もここまでにして良いだろうか?」

 

「え……あ、はい……」

 

 

 今起きた出来事に理解が追いつかず、ナユタさんからの言葉に気の抜けた返事をしてしまった。

 

 最後に起きた魔法障壁の霧散……あれは俺が制服に〝魔法防御〟の付与を行う際にイメージしていたものと似たものだった。

 

 

「シド……最後に何をしたんだ?」

 

「何って?」

 

「俺の魔法障壁を消しただろ?あれも仙氣術や神氣術によるものなのか?」

 

「あ〜、あれね……」

 

 

 シドはそう言うと手のひらを俺へと向けて出す。

 

 

「俺さ……生まれつき魔力ってもんが無いんだよ。全くの皆無ってやつでね」

 

「えっ?!」

 

「そのせいで市民証も発行出来なくてね、そのせいで捨てられたんさ。でも、不思議な事に魔力が無いからなのか分からんが、何故か魔法が通じねぇんだよな」

 

「魔法が通じない?」

 

「そう。お前さんの魔法を素手で弾いたのも、魔法障壁を消したのも、そしてお前さんとゲートを潜らなかったのもそれが理由だ」

 

 

 なるほどな……だからゲートを通らずに影で移動してきたのか。

 

 

「言っておくが何故こんな身体なのか俺自身もさっぱり分かんねぇんだ。あともう一つ伝えておくと、俺に触れられた奴は魔法が使えなくなる」

 

「なんだって?!」

 

「この体質が何処まで影響するのか試したくてな……知り合いの魔物ハンターに協力してもらって検証してみたら分かったんだ。陛下からお前さん達と同行する件については嬉しい誘いだったが、正直言うと力になれるかは分からん」

 

 

 シド自身も理解が出来ず苦労している事も多いのだろう。

 

 確かにシドはたった今この俺を打倒して見せたが、アルティメット・マジシャンズのメンバーになれるかと言えば難しいものがあるだろうな。

 

 しかしそんな俺とシドの心配を払拭するように、いつの間にかそばまで来ていたオーグがこんな事を言い出した。

 

 

「別に構わないのではないか?あのシンを圧倒した……それだけでも我々と行動を共にする資格は十分にあると私は思うぞ?」

 

「オーグ……」

 

「しかし魔力が無いのに術は使えるのか」

 

「仙氣術や神氣術に必要なのは氣ですからね。氣は魔力と違って誰にでもあるものですから」

 

「そうなのか……それよりもシドと言ったか?何故敬語なんだ?」

 

「いやぁ、流石にこの国の王太子に砕けた口調は失礼でしょうよ?」

 

「私としては一向に構わんのだがな。それに私とシンはある意味では親戚のような間柄でな。そして互いに気を使うことのない親友同士でもある。私はそんな関係をシド、お前とも結びたいと思っている」

 

「そうは言われてもでしてねぇ……」

 

 

 シドがそう言いながら伺うようにシシリー達へと顔を向けると、オーグの従者であるトールとユリウスが口々にこう言った。

 

 

「こうなった時の殿下は止められませんから」

「諦めた方が良いでござる」

 

「さいですか……なら、お言葉に甘えようかね」

 

「そうするといい。なにせお前の義母は過去に父上と共に旅した仲だろう?ならばお前も私と親戚のようなものだからな」

 

「それ……こじつけが過ぎやしねぇか?」

 

「シド、オーグに対して口で勝とうとか思うな。俺でさえ勝てないんだから」

 

「褒めるなよシン、照れるだろ?」

 

「褒めてねぇよ……」

 

 

 そうして思わず笑い合う俺やシド、そしてオーグ……こうして実力を示したシドは晴れて俺達と行動を共にする事になったのだった。

 

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