インフィニット・ストラトス Re:RISING   作:最後のVESPERの挑戦状

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第11話:激戦、学年別個人トーナメント!

「…本気か、承壱?」

「ああ、やるよ。俺は」

IS学園の生徒指導室にて承壱は千冬と話していた。内容はエキシビションマッチの提案でもあったが、その内容だけに千冬は、承壱が正気の沙汰かと疑ってしまうが、その目は本気だと理解出来た。

だからこそ、呆れながらも千冬は知っている情報を伝える。

「…ケイシーは7期生、サファイアは8期生のエースだ。専用機持ちではあるがも、実力は本物だ。私から見ても次期国家代表は間違いないだろう。だが、一番恐ろしいのは、あの2人がタッグを組んでいる状態で相手をするという事だ」

「…というと?」

「機体同士の相性が良く、その上、本人達も交際している様で、そのコンビネーションは学園一といってもいい。厄介な2人に目を付けられたな」

「…止めた方が良いって事か?」

「いや…多分、もう他の教員を通じてエキシビションマッチの用意がされるだろう。サファイアかケイシー経緯でな。だが、私から見てもお前の実力は、間違いなく1年生で最強だろう。仮にお前と山田先生が正面から対戦したら、お前が勝つかもしれない。それ位の実力はあると思って良いさ」

千冬の高評価に承壱は思わず、口角を上げてしまう。だが、ダリルとフォルテとの対戦を安請け合いしてしまった自分に後悔してしまい、珍しく顔をうつむかせてしまう。

それに千冬が確認する。

「…後悔しているのか?」

「ああ…。ちょっと、調子に乗ってしまった。だが…戦ってみたいという気持ちもある」

自身の右手の平を見てから握り拳にして呟く承壱。その手は全く震えておらず冷静の様で、表情は余裕が出てきた。それを見て千冬は支援する事を決めた。

「…残り数週間だが、過去のデータを探して渡しておこう。それとトレーニングをするなら私を頼れ。相手にとして付き合ってやる」

「…それって、トレーニングデートって事か?」

「…バカ。デートでは無い。全く、面倒を起こすとは…織斑のトラブルが移ったか?」

千冬から皮肉を言われてしまい承壱は苦笑するしなかった。だが、心強い味方であるのは変わらない。その嬉しさから二人っきりもあって承壱は千冬を抱き締めてしまう。

「ありがとう、千冬。俺は、本当に幸せ者だよ…」

「っ!この…バカ」

恋人に求められてしまい怒るに怒れない千冬は、結局、自分と恋人に呆れつつ抱き締め返すのであった。

 

6月も最終週に入り、IS学園は学年別個人トーナメント一色にと変わる。その慌ただしさは予想よりも遙かに凄く、全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導を行っていた。それはトーナメントAブロック第1回戦が始まる直前までだ。

それから解放された生徒達は、急いで各アリーナの更衣室へと走る。

因みに承壱以外のメンバーは、後日行われる各ブロックで出場する為、今日は第3アリーナの観客席にいた。

「しかし、すごいなこりゃ…」

「本当だな…」

一夏は周りの観客席の様子を見て、箒が同意する。そこには各国政府関係者、研究所員、企業のエージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に会していた。

「3年にはスカウト、2年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。1年には今の所関係無いみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者には早速チェックが入ると思うよ」

「ふーん、ご苦労な事だ」

シャルルは説明するが、一夏はあんまり興味が無い様だ。興味があるとすれば、ここ数週間、承壱が姉である千冬と毎日、過酷なトレーニングをしていた事だ。

(俺達と別行動していたけど、千冬姉とトレーニングするなんて…ちょっと狡いぞ、アニキ…)

弟の嫉妬心なのか、義理の兄に対する対抗心なのか、そのどちらかあるいは両方か、いずれにしても一夏は複雑な心境を抱いていた。

それはこの場にいるシャルルも同じだ。

(時城さん、織斑先生からトレーニングを受けていたみたいだけど…ちょっといいな。僕達一緒にしてほしかったよ…)

自身の正体がメンバーに発覚して以降、シャルルは妙な事に皆と一緒に何かをする事に固執する様になっている。しかし、頑固にそれを突き通そうとしている訳では無い。やむない時や妥協する時は仕方が無いが、自分でも分かる程に安心を得ようとしている。そうシャルルは自覚していた。

「…承壱さんはAブロックを勝ち抜けるだろうか?」

「箒さん、心配は分かりますけど、承壱さんなら大丈夫ですわ」

「そーそー。千冬さんのトレーニングも受けていたみたいだし」

「だが、兄上も人が悪いな。私達とあまり関わらずにトレーニングするなんてな…」

「お兄ちゃんの事だから…何か考えがあるんだと思うよ、ラウラ」

セシリア、鈴音、ラウラ、簪の4人も一夏と共に観客席で観戦する為、この場にいた。皆の頼れる兄貴分である承壱を信じているが、何が起こるか分からないのが勝負の世界だ。

「でも、良かったな。鈴とセシリアの回復が間に合って」

「そうだな。ISももう万全なのだろう?」

一夏と箒の質問にセシリアと鈴音は頷いた。

「ええ。承壱さんが回復を専念しろと言ってくれた御蔭で滑り込みセーフでしたわ」

「でも、一夏とは決勝リーグで会う事になるか、それまで負けないでね!クラス対抗戦のリベンジもあるんだから!」

「おお。望むところだ」

「…皆はいいな、参戦出来て」

そのやり取りを見てラウラは、思わず羨ましがってしまう声を出してしまう。今回のトーナメントで唯一出場出来なかったのはラウラだけだからだ。

「しょうがないよ。ドイツ本国の強制監査がまだ終わってないんでしょ?」

「うむ、シャルルの言う通りだ。本国の指示で出場禁止命令が出た以上、従うしかない…。やはり、時には我慢も必要だな」

「監査が終わったら…一夏くんと対戦すればいいよ」

「そうだな、簪。一夏、その時はよろしく頼む」

「OK。でも…今はアニキの応援をしよう!」

「「「「「「おー!」」」」」」

妙に息がぴったりなメンバーであった。

 

その承壱当人は、控え室のベンチに座りながら、額に指をあてて考える人の様なポーズをしていた。どうやらいつも以上に真剣に考えている様だ。

(ロックスミスには可能な限りのチューンアップをしてハルデと嵐雪も追加した。千冬にトレーニングをもしてもらった…。これで負けたら、千冬の事だ…。『問答無用で落第だ。そして、別れよう』って言われてもおかしくない…。絶対にそれは嫌だ…)

動機はともかく真剣な悩みを抱える承壱。

しかし、不純な思いはここまでだ。

待機状態になっているロックスミスを取り出し、見詰めながら承壱の目には迷いは無い。

対戦相手は既に前日に渡されたトーナメント表で分かっている。対策もシミュレーションもトレーニングもバッチリ。今の承壱に負ける要素は微塵も無いだろう。

「やってやろうぜ、相棒」

承壱は拳銃状態のロックスミスを見詰めて呟く。それは勝利への願掛けであった。

今回のトーナメントのルールは、相手のシールドエネルギーをゼロか操縦者の気絶で勝敗が決まるスタンダードルールとなっている。

遂に学年別個人トーナメントが開始される。

 

トーナメント1日目Aブロック。

このブロックにエントリーしている専用機持ちは承壱のみで、その戦闘能力は非常に高いものとなっていたらしく、ロックスミスの性能も相まって、承壱が出場した試合は、一方的な試合の流れとなった。

しかも幸運な事なのか相手選手は、名も知らない他のクラスの同級生達ばかりで、使われたISは打鉄かリヴァイヴのどちらかだったので、承壱は容赦無く戦いまさかの全勝勝利。

出場する残りの試合は、後日行われる決勝リーグのみで、承壱はメンバーの中で一番乗りとなった。

(終わりか?面白くないな…)

大歓声が響くAブロック決勝戦を終えた承壱は、心の中でそう思ってしまうのであった。

 

トーナメント2日目Bブロック。

このブロックでは一夏と箒がエントリーしていた。

ブレオンスタイルで戦う一夏、打鉄を装着して格闘特化で挑む箒、2人は順調に勝ち進んでBブロックの決勝で対戦する事になった。

「こうして対戦するのは久し振りだな、箒」

「ああ。だが、恋人だからと言って手加減はしないぞ?」

「それはそうだ。全力で行くぞ!」

「来い、一夏!」

2人の戦いは、最初はISを装備した『剣道の試合』であったが、結局、2人は射撃武器も使って互角の戦いとなり、最終的に白式の月光のリミッター解除を使った一夏の勝利で終わった。

「箒、大丈夫か?」

「大丈夫だ。だが、強くなったな一夏。流石、私の恋人だ」

プライベート通信で甘いやり取りをしてしまう一夏と箒。

それを目撃したメンバーは嫉妬が混じった複雑な表情になっていた。

(…皆、イチの事が好きなんだ。イチも箒ちゃんも人が悪いな。いっその事、ハーレムとして一致団結すればいいんだけど)

メンバーの嫉妬と愛の想いがこもった表情を横目で見ていた承壱はそう思ってしまうが、なんだかんだ言っても一夏は決勝リーグに駒を進めるのであった。

 

トーナメント3日目Cブロック。

エントリーしている専用機持ちは、セシリア、簪の2名。このブロックには2人の友人やルームメイトがいた為、苦戦を強いられてしまったが、無事にCブロックの決勝戦まで進められた。

「病み上がりだけど…頑張ったね」

「簪さん…それは嫌みですか?」

「ううん。労いのつもり」

「でしょうね。貴方の性格からそんな事は思いませんからね。では…よろしくお願いたします」

「こっちこそ…よろしくね」

この試合は、ブルー・ティアーズのスターライトmkⅢとビットユニット、ショットガンのハルデを活用、打鉄弐式の背中に搭載された2門の連射型荷電粒子砲『春雷』とマルチロックオンミサイル『山嵐』、3点バースト式アサルトライフル『嵐雪』の撃ち合いとなった。

そして、先に弾切れを起こしてしまった簪。この隙をセシリアは逃さず、レーザー弾の集中砲火が放たれるが、簪はカウンターと言わんばかりに超振動薙刀『夢現』を力一杯に投擲。見事にブルー・ティアーズへ直撃して絶対防御が発動、一気にシールドエネルギーを消失させてしまった。

これにより簪の勝利となり、決勝リーグへ進んだ。

「まさか薙刀を投擲するとは…予想外でしたわ、簪さん」

「セシリアのビットユニットの操作も凄かったよ」

「ありがとうございます。決勝リーグ、頑張ってください!」

「うん!」

 

トーナメント4日目Dブロック。

最後のブロックも大きなトラブルが起こる事無く始まり、残っている専用機持ちの鈴音とシャルルは、このブロックにエントリーしている。

難しい試合になる事もあったが、『専用機』というタクティカル・アドバンテージは、そうそう簡単に崩せる物では無かった。

その結果、Dブロックの決勝戦も専用機持ちの鈴音とシャルルとなった。

「こうして戦うのは初めてね、シャルル」

「うん、よろしく鈴」

「所でさ…アンタ、本当の名前は何て言うの?」

「うーん、それはまだ言えないかな。どうしても知りたかったら、僕に勝って?勝ったら先行して教えてもいいよ?」

「その賭け、乗った!容赦しないわよ!」

「よーし、行くよ!」

奇妙な賭けも始めてしまう2人だが、その表情は楽しんでいた。専用機といえども1世代差の性能で、第3世代型である甲龍の鈴音が有利と思われていたが、シャルルは第2世代型のリヴァイヴ・カスタムⅡの豊富な拡張領域に搭載している武装を持ち前の技能を駆使し、互角の戦いに持ち込む。

その結果、持久戦に持ち込んだシャルルが粘り勝ち、シャルルが決勝リーグに進んだ。

「く~、悔しいっ!でも、次は負けないからね、シャルル!」

「いつでも再戦は受けるよ、鈴!」

 

トーナメント4日目の夕食。

どこの誰が用意してくれた分からないが、パーティションがあったので、それを仕切りにして1年生寮の食堂の一画にいつものメンバーが集まった。その中には早く仕事を終えた千冬もいた。

全員の顔は疲労もあるが、その表情は満足げになっている。

「…皆、今日までよく頑張ってくれた。これでデュノアの秘密も守れるだろう」

「間違いない。このメンバーで決勝リーグを戦う事になるからな」

千冬の労いの言葉に続いて、承壱が繋げた。

その決勝リーグに出場する一夏、簪、シャルルは安堵の表情となった。

「一時はどうなるかと思ったぜ」

「でも、最初から僕が優勝すれば問題無いかもしれないけど…」

「シャルル、それじゃあ…皆の思いが水の泡になっちゃう」

「まあ、何はともあれ明日は誰と誰が当たるか全く分からないから全員、全力全開でやろうか」

そこまで言った承壱は負けてしまった箒、セシリア、鈴音、そして不参加となっているラウラに注目する。

「さて…、今回のトーナメントで負けてしまった3人は今後の訓練で、弱点を減らして改善していくからな?負けた要因や改善点が分かったら、書面化でも口頭でもいいから纏めておいてくれ」

「分かりました」

「よろしくお願いします」

「え~、分かったわよ…」

「ラウラちゃんは…ドイツ本国の監査次第だが、お咎め無しになったら皆で訓練する。それでいいか?」

「うむ、問題無い。兄上、その時はよろしく頼む」

「よし。一先ず、明日だな」

承壱は話を終えたタイミングで夕食を取ってこようと立ち上がった。その時、一夏が承壱に待ったを掛ける。

「ちょっと待ったアニキ!」

「どうしたイチ?」

「…そろそろ教えてくれないか?アニキ…明日の決勝リーグを終えたら、何かやるんじゃないのか?」

一夏の言葉は、適確だった。

千冬以外には誰も話していないが、トーナメント予定表には『エキシビションマッチ』と書かれており、その内容は未定とされていた。だが、ここ数週間の承壱の行動は、いつものメンバーにも疑問視される程、千冬の協力し単独行動を取っていたからだ。

一夏の言葉を切っ掛けに箒達他のメンバーも真剣な顔で見詰めてきた事で、遂に承壱は白状する。

「…ああそうだ。お前の言う通り、俺はエキシビションマッチに参加する」

「…何で言ってくれなかったんだよ?」

「何でだろうな…?自分でも分からない。ただ一つだけ分かっている事がある」

「何だよ?」

「千冬にはもう言ったけど、戦ってみたいという気持ちがあるんだよ、色んな相手とな。これは皆にどう言われてももう止まらないだろうな。だって、俺のやりたい事の一つだから」

自信と余裕のある表情で力強く宣言する承壱に箒達は、何とも言えなくなってしまった。それは一夏と千冬も同じで、こちらは呆れてしまっていた。承壱と長くいたこの姉弟がこの態度なのだから今に始まった事では無いのだが、今回は状況がこれまでとは違うので心配が勝っているのだ。

「アニキ…今までアニキは興味持った事に挑んで、勝ち負けを経験してきたけど…今回ばかりは止めた方がいいんじゃ無いか?エキシビションマッチだから勝ち負けは関係無いと思うけど、下手したら優勝の評価が白紙になるかもしれないんだぞ?そしたら…」

「織斑、気持ちは分かるが、時城は言い出したら意地でもやる男だと知っているだろう?」

「だ、だけど…」

「話を聞いて私が止めてない時点でもう察しは付いているだろう。そういう事だ。時城の参加は半強制で、相手は、2年のフォルテ・サファイアと3年のダリル・ケイシー…。代表候補生で専用機持ちのコンビが相手だ」

「え?」

「は?」

「「「「「ええええええー!」」」」」

千冬の口から明かされたエキシビションマッチの相手。勢いで言ってしまった千冬本人はしまったという顔になってしまったが、その事実に一夏と箒は間抜けな声を出し、セシリア達は驚きの声を上げた。それは食堂にいた他の生徒達の耳に入ってしまう程だ。

「待って待って!アニキが1人で、相手が2人って…そんな状況は…」

「しかも代表候補生で、専用機持ちとは…承壱さん、正気の沙汰ですか?」

「無理ゲーじゃない!承壱さんでも絶対負けるわ!」

「何て相手を…」

「と、時城さん…バカなの…?」

「お兄ちゃん…皆…」

「お、落ち着け。落ち着くんだ、皆…」

一夏と箒は不利な状況に頭を抱えてしまい、鈴音は敗北を確信して無理と言い切ってしまい、セシリアとシャルルは相手を知っているらしく名前が出た途端に額を手や腕で抑えてしまい、簪とラウラは周りの反応からオロオロと戸惑いながらも落ち着かせようとする。更に会話を聞いていた他の生徒達もワイワイと喧噪に広げて、「凄い」や「無謀か?」、「ただのバカ?」等の反応が出てしまう。

しかし、慣れているのか承壱はサッと手を出して、メンバーを落ち着かせた。

「…皆の言いたい事はよく分かる。だけど、そういう反応になると思ったからあえて言わなかったんだ」

「だからって…一言くらい言っても良いじゃないか。俺達は家族で、仲間で、友人なんだから…」

「織斑の言う通りだ。今回ばかりはお前が悪いぞ、時城」

織斑姉弟に指摘されて、承壱はバツが悪い表情になってしまうが、事実なので素直に頭を下げた。

「…申し訳なかった」

「アニキが好戦的になるのは今に始まった事じゃないけど、ISは今までとは違うんだから、次からは言ってくれよ、アニキ?」

「そうだな…いつもの調子でやっていたな。これからは直ぐに言うよ」

「言ったとしても後出しや遅れは無しだからな」

「分かっている。報連相は直ぐにするよ、千冬先生」

「承壱さん、私達にも言ってください。私と鈴は貴方の幼なじみで、セシリア達はここで出会った仲間です。もう少し、私達の事も頼ってください…」

「箒ちゃん…皆…」

箒を筆頭にメンバーも硬い表情で訴えている。それを見た承壱は、改めて今回ばかり自分の行動は間違っていたと認識する。

「…本当にごめん。次からは、もう少し皆を頼ってみる。約束しよう」

「「「「「「「「絶対に!」」」」」」」」

承壱の返答に声を揃えて怒りながら約束する千冬とメンバー達であった。

 

トーナメント5日目決勝リーグ。

出場する承壱、一夏、簪、シャルルはISスーツに着替えた状態で控え室にいた。その表情は全員、緊張しており固い。

「…遂にここまで来たな」

「誰が勝ってもいいけど…アニキは全勝優勝を目指しているんだよな?」

「ああ。彼女達ともそう約束した。だから勝たせてもらうぞ」

珍しく目線の火花が散る承壱と一夏。この義理の兄弟にも譲れない物があるのだ。

「2人共、対戦相手が決まったみたい」

シャルルの言う通り、モニターが決勝トーナメント表へと切り替わった。そこに表示される文字を食い入る様に全員で見詰める。

1回戦、時城承壱対シャルル・デュノア。

2回戦、更識簪対織斑一夏。

そう対戦相手が決まり、苦笑しつつもお互いの顔を見合ってしまうのであった。

 

準決勝1回戦。

第3アリーナのステージで、ロックスミスを展開した承壱は、リヴァイヴ・カスタムⅡを展開したシャルルと対峙する。

「初めて手合わせてして以来ですね、時城さん」

「ああ。また、退屈させてくれるなよ?」

承壱の挑発に乗らないシャルルは、余裕のある笑みを浮かべる。

しかし、この試合は承壱が圧倒してしまう。激しい銃撃戦を繰り広げるのだが、適確に承壱はシャルルの武器を次々とピンポイントで破壊しているからだ。

「悪いな、卑怯と言われるかもしれないが、君の対策は『ピンポイントで手数を奪う』のがいいって気付いたんだ!君は、事前呼び出しを必要としないで戦闘と並行して行えるリアルタイムの武装呼び出し…『高速切替』が出来る!だが、それは手数を減らされればあまり脅威じゃない!」

「うっ!よく見てますね!」

「そして、君の最大の武器は『器用さ』だ。格闘良し、射撃良し、そこに高速切替。一定の距離と攻撃リズムを保ち、攻防共に高いレベルで安定した戦術、『砂漠の逃げ水』を得意としている!だからこそ…速攻と最大威力が、君へのプレゼントだ!」

シャルルのリヴァイヴ・カスタムⅡのスピードよりも速く追いついて正面へ回り込んだ承壱のロックスミス。その両手には最大出力になったマグナブレードが二刀流で構えられていた。しかもロックスミスのショルダーランチャー用のハッチも開いており、マイクロミサイルの赤い弾頭が覗いていた。

「やば!」

「これで終わりだ!」

2発のマイクロミサイルがシャルルへ放たれ、それを追う様に承壱は加速し、X字状に2本のマグナブレードが振り下ろされるのであった。

 

準決勝2回戦。

承壱とシャルルのバトルが終わり、続いて始まるのは一夏と簪の対戦だ。観客席では箒を筆頭に一夏の応援団が結成されつつあり、1年4組も簪の応援団となっていた。

それをチラ見した2人は少し恥ずかしそうである。

「…あれ、ちょっと嬉しいな」

「でも、恥ずかしいよ…」

「だな…。でもこうして戦うのは初めてじゃないか?」

「そう…だね。一夏くん、私に勝ったらお兄ちゃんと戦う事になるよ。大丈夫?」

「クラス代表者を決める時以来、アニキとはガチンコでやってないから、いい機会だと思っている。けど、今は簪との対戦だ!よろしく頼むぜ!」

「うん…!私も負けないよ!」

試合は、ほぼ互角となり、一夏はブレオンスタイルで簪の攻撃を回避するが、打鉄弐式が山嵐を使い切った所から変わった。一夏を近づけさせない様に嵐雪で牽制する簪。一夏は多少のダメージを覚悟して突貫しながら月光を投擲する。

「それでもっ!」

「嘘っ!」

意外な攻撃に簪は驚いてしまうが、咄嗟に展開した夢現で弾き飛ばす。しかし、それが一夏の狙いで瞬時加速を活用して急接近、初めてリミッター解除した唐澤を打鉄弐式の春雷へ撃ち放った。零落白夜のエネルギーを放たれた事で春雷はシールドエネルギーと共に損失してしまう。

「春雷が…!」

一夏の大胆な戦い方に簪は思わず呆気にとられてしまうが、敗北を悟ったのか笑顔になってしまう。そのまま一夏は唐澤を使ってゼロ距離攻撃を繰り出してしまうのであった。

 

学年別個人トーナメント決勝戦。

第3アリーナの観客席は熱気に包まれていた。遂に承壱と一夏の対決が始まるからだ。

史上初の男性IS操縦者同士の公式対決なら大いに盛り上がるのは間違いなく、生徒達だけで無く、来賓席の政府や企業の方々も大いに盛り上がっており、一部では賭けまでする者もいる位だ。

開始のブザーと共にいきなり近接格闘で激突した2人。

その戦いは激しさを増させるばかりで、しかも妙な事に言い合いも混ざっている様だ。観客席やピット等に聞こえていない為、プライベート通信を使っているのだが、一夏の表情から言い合いをしているが分かってしまうのだ。

「イチ!箒ちゃんの恋人関係なのは分かっているが…セシリアちゃん達の思いに気付いているのか!」

「もう気付いているよ!でも、俺には箒がいる!だけど皆を傷付けたくないんだ!」

「そんな中途半端な気持ちでどうする!そんな気持ちのままで箒ちゃんを幸せに出来るのか!箒ちゃんはそんな事を望んでいるのか!自分に恋している女の子達にキッチリケジメを付けろ!」

「やってやるよ!俺は!この試合でアニキに勝って皆とケジメを付ける!」

「この大バカヤロウッ!言われる前にやってみろぉー!」

激しく切り結び、鍔迫り合いを繰り返し、銃撃戦も繰り広がる承壱と一夏。

試合が激しくなると観客席にいるいつものメンバー、もとい一夏応援団の声援も激しくなった。

「一夏!負けるな!」

「負けないでくださいまし!」

「諦めないで一夏!」

「一夏ファイト!」

「私と戦うまで負けるな一夏!」

「一夏くん頑張って!」

一方、ピットにいる千冬は真耶と共に観戦していた。真耶はその激しい試合にハラハラしてしまうが、千冬はいたって冷静だ。だが、内心は家族の試合に興奮しているが、上手く冷静を装っている。

「織斑先生…」

「山田君、見ているか?これが私の恋人と弟の今の実力だ」

「はい…もの凄い成長ですね。今日の試合は織斑くんが勝ちますか?」

「…ああ、多分な。(承壱、勝ってくれ。私の隣に立つ男なら、私の弟に勝ってみろ!)」

千冬は口では一夏が有利と言うが、本心は承壱の勝利を祈っていた。

やがて、試合は最後の一撃を入れた者が勝者となる状況となり、お互いに距離を取って膠着状態となった。

この時点で一夏は肩で息をしており、残っている武器は月光だけだ。それに対して承壱はマグナブレードが折れてしまい、他の武器は全て弾切れに追い込まれてしまっていたが、体力には余裕があるらしく呼吸は乱れていない。

「はぁ…はぁ…」

「…強くなったな、イチ」

「え…何?」

「本当に強くなった。ここまで強くなっていたなら、もっと早く頼るべきだった…」

「…昨日の話かよ。今更気付くなんて、アニキもバカだな」

「ああ…。俺はバカだよ。でも、バカにはバカなりの考えがある」

「へっ、そうだな…」

「…次の一撃で決めるぞ」

承壱のその言葉を合図に一夏は月光をリミッター解除、零落白夜の輝きが月光に纏わる。

承壱も折れたマグナブレードを放り投げ、もう1本のマグナブレードを展開して直ぐに最大出力にする。

そして、2人は同時に加速姿勢となり、前へ一気に進んだ。

「チェストーッ!」

「喰らいやがれぇーっ!」

加速されたお互いの刃で閃光が走り、お互いの胴を斬り抜けて、一瞬の静寂が第3アリーナの全てを包み込んだ。

そして、決着を告げるブザーが鳴り響いた。

『試合終了。勝者-時城承壱』

そのアナウンスの後、第3アリーナは歓声に沸き包まれたのだった。

だが、最後の一撃に全力を注いでしまったらしく珍しく肩で息をする承壱。

まだ自分が優勝したという実感は沸いていないが、後ろを振り返ると片膝をついて顔を俯かせる一夏がいた。その顔は見えないが、一夏の影になっている所に点々と雫の後が見えた。

(イチ、お前…そこまで…)

泣いている事に気付いた承壱は、一夏の傍に寄った。

「…イチ、よくやったな」

「アニキ…」

「いつでも再戦は望んでやるよ。だから泣くな。お前は本当によくやった。俺の自慢の義弟だよ」

「アニキ!」

承壱の労いの言葉を聞いて、ガバッと立ち上がった一夏は涙を拭い、その右手を差し出した。それは握手の意味だと承壱は悟る。

「次こそ…次こそ絶対に勝ってみせるからな!」

「…フッ。ああ、いつでもいいぞ」

承壱も右手を出し、再戦の誓いの握手を交わした。その瞬間、大きな拍手と共に再び大きな歓声が沸くのであった。

 

こうして、承壱は学年別個人トーナメントを制覇して『1年生最強』となった。だが、まだエキシビションマッチが残っているのだ。

相手は、2年生のフォルテ・サファイアと3年生のダリル・ケイシー。

それぞれ専用機持ちで、最強のコンビと言われるこの2人に承壱は挑むのである。

その戦いは、誰も予想しない結末になるか。

それは誰も分からない。

 

つづく




現在公開可能な情報

時城承壱
遂に1年生最強となる。もうやりたい放題です。

織斑一夏
なんと唐変木を卒業しており、恋人となった箒以外にセシリア、鈴音、シャルル、ラウラ、簪の好意に気付いていた!
しかし、大切にするあまり迷っていたが…。

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総合評価:2256/評価:7.32/連載:37話/更新日時:2026年05月14日(木) 16:46 小説情報


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