インフィニット・ストラトス Re:RISING   作:最後のVESPERの挑戦状

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第12話:炎と氷のエキシビションマッチ

激戦に激戦が続いた学年別個人トーナメントは、承壱の優勝で幕を閉じる事になる。だが、まだこれで終わりになるわけで無い。

閉会式直前のエキシビションマッチが残っているのだ。しかもこの試合は承壱が圧倒的に不利な2対1という状況で、相手は2年生のフォルテ・サファイアと3年生のダリル・ケイシーの最強のコンビ。

その2人を相手にする承壱は、急ピッチでロックスミスの整備を第3アリーナ整備室で行っていた。その整備には、整備科のエースである黛薫子を筆頭に1組と4組の整備科志願の子、打鉄弐式の組み立てに参加してくれた整備科の先輩方も参加してくれていた。

「さあさあ、一気に直すよ!承壱さん、ここは私達に任せて。貴方のロックスミス、必ず万全な状態にするから」

「黛、他の子の所に行かなくて大丈夫か?」

「大丈夫。承壱さんも知っている人なら信頼して任せられるでしょ?」

「そうだな…俺の相棒を頼む」

「任せて!承壱さんは、体力回復!」

そう薫子に促され、承壱は椅子に向かって踵を返すが、ある事を思い出して薫子に話し掛けた。

「黛、折れたブレードの代わりって何か思い付く物があるか?」

「え?ブレードの代わり…?うーん…打鉄の近接ブレードの『葵』位かな…?」

「葵か…。あれなら何とか使えそうだ。ロックスミスの拡張領域にまだ余裕はあるから1本入れておいてくれないか?こっちは…あるプログラムを調整するから何かあったら呼んでくれ」

「分かったわ」

そう言って承壱は椅子に座り、自前のノートパソコンを広げてプログラムの調整を始めた。これはダリルとフォルテ用の対策の一つで、上手く行くかは博打に近いが、無いよりはマシのプログラムだ。

(確実に動けるようにしておこう)

 

一方、学食の一角には一夏達メンバーが集まっていた。

試合終了後、一夏は箒を筆頭にメンバーから労いの言葉を貰った後、こうして学食の一角へ連行されてしまったが、沈黙の空間となっていた。

そして、全員の表情は神妙な面持ちとなっており、箒達の視線は一夏へ注視していた。

「…一夏、さっきの試合…承壱さんと何か話していた様だが、何を話していたんだ?」

「えーと…」

一夏は迷っていた。この期に及んでまだ迷っていたのは、ある目的が達成されていないからだ。

(どうしよう…アニキに勝ったら、皆に告白するはずだったけど…あんな啖呵切って負けたから言い出しづらい、というか言えない!)

準優勝という他人から見ても素晴らしい結果を残した一夏だが、妙に頑固な所があり、有言実行が出来ない己の弱さを恨む。

中々言い出さない一夏に痺れを切らした箒は、深い溜め息を出してしまう。

「はぁ~…一夏、承壱さんが言っていたぞ。『マジメにケジメを付ければ誰もミジメにならない』って。だから言ってくれ。私は、お前の話をしっかり受け止めるぞ」

「箒…」

優しく諭す表情で一夏に話す事を促す箒。

恋人のその顔を見た一夏は、尊敬する義兄となる承壱の言葉を思い出した。

(…そういえば、アニキは何時だかそんな事も言ってたな…。それに…『自分に恋している女の子達にキッチリケジメを付けろ!』って…。よし…やっぱり、今この場で言おう)

漸く決心した一夏は、一呼吸置いてから語り出した。

「…実は、俺…皆の気持ちに気付いている。俺の事を1人の男として見ている事、どうしようもない位に俺を…好きになっている事も…」

「…ん?」

「え?」

「…?」

「は?」

「うそ…」

「む…」

箒、セシリア、簪、鈴音、シャルル、ラウラは一夏の告白から間抜けな声を出してしまった。

「アニキに言われて気付く事もあったけど、皆が俺を見る目が段々変わっていくのは分かったんだ。でも…俺には箒がいるから、どう応えていいか分からなかったんだ。応えれば…今の関係が壊れて、皆が傷付け合う事になるじゃないかと思って…言えなかった。だから、今回のトーナメントで優勝したら皆に話そうと思っていたんだ」

「一夏…どうしてそう思ったんだ?」

「それは…アニキが千冬姉と束さんと同時に付き合っているから…」

「「「「「えっ!」」」」」

衝撃の事実に箒以外のメンバーは口を揃えて驚いてしまう。一瞬で色々と想像してしまうメンバーは赤面してしまい、箒に至ってはどこか納得した顔になっていた。

「…なるほど、そういう事か。一夏、私もそれは姉さんから聞いている。お前から承壱さんと千冬さんが付き合っていると聞いた時は、承壱さんは女誑しになったのかと思ったが、姉さんと千冬さんの性格からそんないい加減な人とは付き合わないからな」

「ああ。アニキは誠実に千冬姉と付き合っている。でも、束さんはアニキを諦めきれなかったから、千冬姉が同時に交際する事を提案したんだ」

「「「「「「ええ~?」」」」」」

またしても意外な事実に今度は箒も一緒にメンバーは、口を揃えて驚いてしまう。何せ言い出しっぺがあの厳格なイメージしかない千冬だったのだから驚くのは無理もないだろう。

「…つまり、一夏。お前はまず、私と話して皆と同時交際…いや、ハーレム交際する許可が欲しかったのだな?その為の口実としてトーナメント優勝を目指していたんだな?」

「…そういう事になる。本当にごめん、箒。こんな最低な考えを持った恋人は嫌だろ?別れても仕方が無いから…」

「私はいいぞ。私を正妻してくれるなら」

「「「「「「…え?」」」」」」

ケジメを付ける為、恋人である箒に別れ話を切り出した一夏だが、それを箒は遮り意外な提案をして、全員戸惑ってしまう。

言った本人は余裕の笑顔を見せていた。

「…皆の気持ちに気付いているのはお前だけじゃないんだ、一夏。私も気付いていた。6年の時間は私を孤独にさせていたが、ここで一夏と再会して皆と出会った。同時に皆と離れるのは、嫌なんだ…」

「箒…」

「皆はどうする?」

箒の問い掛けにセシリア達は顔を見合わせてしまうが、遂に鈴音が動いた。

「箒がそう言うなら…私も一夏と交際する!この中で2番目の付き合い長いし、中学の頃から好きだったし!」

「わ、私も…一夏くんと付き合いたい…」

「…僕も鈴と簪と同じ。皆と一夏の傍にいたい」

鈴音の宣言を皮切りに簪とシャルルも堂々と宣言する。それを見てセシリアは珍しくオロオロとしてしまうが、ラウラはそれを横目で見てから言い出す。

「…私は一夏を倒すと言ったが…それは撤回させて貰おう。あの時に…レーゲンが暴走した時に負けて、惚れてしまったのだ…。一夏…わ、私達を…お前の嫁にしろ。決定事項だ。異論は認めん!」

「ラ、ラウラさん…それ、私も入っていますよね?」

「なんだ、セシリア?お前は一夏の嫁になりたくないのか?」

「あの…その…」

ラウラの宣言と問いにしどろもどろになってしまうセシリア。それを見ていた箒は、承壱のまねで意地悪な事を言い出す。

「では…セシリア抜きで、皆で一夏の恋人になろう」

「「「「賛成~!」」」」

「ああ~待って下さい!私も一夏さんとお付き合いしたいです~!」

「だったら恥ずかしがってはダメだぞ」

「はい~…」

最後の最後に本心を出したセシリア。貴族の当主であるセシリアだが、年相応の恋をして、場に流されてしまった自分に少し後悔してしまうが、腹を括った様である。

全員の意思と本心を確認した箒は、一夏と向き合った。

「と言う事で一夏…私達6人を…こ、恋人として付き合ってくれないか…?」

「み、皆…よろしくお願いします!」

綺麗なお辞儀を見せた一夏に箒達は、涙を浮かべて喜んで一斉に抱き着こうとした。流石に6人いっぺんに抱き着けなかったが、それでも来る事をやめようとしなかったので、一夏はしっかり1人ずつ抱き締めるのであった。因み順番は出会った順となり、箒、鈴音、セシリア、簪、シャルル、ラウラとなった。

こうして学食の一角で、一夏のハーレムが誕生してしまった。

不幸中の幸いなのは、他の生徒達があまりおらず、聞き耳も立てていなかった事だろう。だが、この大騒ぎはそれなりに響いた様で、騒ぎを聞きつけて他の生徒達が来たらしいが、一夏達はこのハーレム関係は一切喋らなかったのだった。

 

翌日のトーナメント最終日。

閉会式直前のエキシビションマッチは第3アリーナで開催されるのだが、前日の承壱と一夏の試合と同じ様に全席満員。来賓席の政府や企業の方々も大いに盛り上がっており、会場入りできなかった生徒や関係者は、中継ドローンによるリアルタイムモニターで鑑賞している。

その観客席には一夏達もいるが、まだ昨日のハーレム結成の件は喋っていない。承壱に変な影響を出さない為にバトルが終わった後に喋る事にしたのだ。

一方、第3アリーナAピットには千冬がいた。そこには出場する承壱がいて、ISスーツ姿でベンチに腰掛けていた。

「…大丈夫か承壱?」

「今は先生じゃないのか、千冬?」

「こんな状況だ。教師でなく恋人として接するさ。エキシビションマッチだから、そこまで気張らなくてもいいんだぞ?」

「そうは言うけど…戦う以上勝ちたい気持ちがある。まあ、怪我しない程度に頑張るさ」

そう言って立ち上がった承壱は、拳銃状態のロックスミスを取り出し、トリガーを引いてロックスミスを展開した。

ピット・ゲートに進む前に承壱は、もう一言言いたい様で横顔を千冬へ向ける。それに気付いた千冬は黙って視線を向けた。

「…行ってくるよ、千冬」

「…行ってこい。そして、勝ってこい」

「ああ」

そうして承壱はステージへ飛び出していく。

そして、数分後。開始のブザーと共にISバトルが始まった。

 

ISバトルは数的有利と思われていたダリル&フォルテコンビにあっさり軍配が上がると思われていたが、承壱は互角の戦いへ持ち込んでいた。

千冬のトレーニングのお陰もあるが、ダリルとフォルテの専用機の特性をよく理解しているのあるからだ。

「そら燃えろ!」

「おっと!」

ダリルの専用機『ヘル・ハウンドver2.5』から火炎放射が放たれるが、承壱は難無く避けてカウンターにブラストシューターの射撃を繰り出して命中させて怯ませた。

その時、ロックスミスの両脚が急に動かなくなった。それだけではなく各部が凍結状態になってきたのだ。

フォルテの専用機『コールド・ブラッド』の第3世代型兵装による空間の分子活動を極端に鈍くさせて停止・凍結する能力だと理解した承壱は、直ぐにアーマー内部のある機能を作動させた。

その瞬間、ロックスミスから各部から蒸気が噴出され、ISアーマー各部の凍結が状態変化をして気化してしまった。

「えぇ~溶けたっス…」

「悪いが凍結能力は対策済みだ。プログラムに強制廃熱による温度調節機能を加えたんだ。そう簡単には、凍結されないぞ」

「じゃあ、これならどうっスか!」

今度はフォルテの周りに大量の氷柱が槍状に生成され、一気に承壱へ投擲された。

それに承壱は焦る事無く、ブラストシューターを収納して、あらかじめインストールしていた短距離ショットガンのハルデを両手に1丁ずつ展開。乱射して弾幕を形成しながら回避動作を行う。だが、行く手を阻む様にダリルの火炎弾も降りかかってきた。

(しまった!)

攻撃をさばききれなかった承壱は、降りかかる氷柱と火球からダメージを受けてしまう。

互角の戦いといえば聞こえはいいかもしれないが、既にロックスミスのシールドエネルギーは半分以下になっており、絶対防御が数回発動すれば負けが確定するだろう。だが、諦めないのが承壱である。

(そろそろ、接近戦でやるか…!)

爆煙で視界が悪い中で、そう思いながら承壱は、弾切れになった両手のハルデを後ろへ放り投げる。そのまま、右手にマグナブレードを展開し、左手に打鉄用の近接ブレード『葵』も展開して、加速姿勢を取った。狙いはダリルだ。

「行くぞ、ロックスミス」

瞬時加速とは異なる駆動音を響かせ、爆煙の中から飛び出した承壱は、フェイントも混ぜた軌道でダリルへ接近する。

それに気付いたダリルは双刃剣『エスコート・ブラック』を構えて激しい打ち合いとなる。

「やるな、お前!」

「負けたくないんだよ!」

「だがよ…オレ1人じゃないんだぜ!」

その瞬間、承壱は左横からもの凄く思い衝撃が全身に走った。横目で見せるとフォルテが生成した巨大な氷塊が直撃していたのだ。

「ぐあああああああ!」

気付いた時には既に遅く、あまりの衝撃に吹っ飛ばされてしまった承壱はアリーナの壁に激突してしまう。

それを見ていた一夏と箒は声を出してしまった。

「アニキッ!」

「承壱さん!」

それに釣られる様にセシリア達も声援を飛ばすが、その声は承壱の耳には届いていないが、承壱の心には届いているのだろう。現にフラフラになりながらも承壱は立ち上がった。だが、打ち所が悪かったらしくマスクの左目部分に大きな亀裂が入ってしまっていた。それによりマスク内の承壱の視界も割れたスマートフォンの画面と同じ位に悪い視界となってしまった。

(…まずい、左半分が分からねぇ…)

シールドエネルギーの残量を確認するとあと少ししか残っておらず、近接ブレードの葵は先程の鍔迫り合いで既に刃こぼれしてしまい使い物にならない。射撃武器はまだ充分あるが、決定打になりにくいだろう。

そう思った承壱は詰んでしまったかと片膝をついてしまう。だが、まだ諦めていない。

「ダリル、もう承壱さんは限界みたいっス」

「じゃ、終わらせるか!」

「手伝うっスよ!」

勝利を確信した2人は、最後の一撃と言わんばかりに大量の氷柱と大量の火球が生成され、容赦なく承壱へ再び降りかかる。

その反応が遅れた承壱の意識は飛んでしまった。

 

「…ここは?」

意識が飛んだと思った承壱は、自分がいつの間にか知らない場所に来ている事に気付いた。

満天の星空、鏡の様に澄んだ湖面、その上に立つ自分。

自分が動く度に湖面に波紋が生まれ、消えていく。

数センチだけ張った水膜が、波一つ無い鏡面の世界となって頭上の美しい星空をそのまま映し出している。

境界線が無い。

どこまでが本物の空で、どこからが写し鏡なのか。

水平線は消え失せ、宇宙の真ん中へ放り出されたような錯覚を覚える。

まるで誰かの心の中の景色に承壱は、心奪われてしまった。

(これは…俺の見たい景色の一つ…か。だが、これはまだ幻想だ…)

「そうだ。これは、幻想だ」

声がした方へ振り返るとそこにいたのはロックスミス。

先程まで激戦を行っていたのに目立った損傷もしていない。其れ処か自分が装着してないにも関わらず、展開されているロックスミスがそこにいたのだ。だが、承壱は目の前にいるロックスミスが、どういう存在なのかを直感で理解出来た。

「お前は…ロックスミスのISコアだな。というと…ここはお前の中か?」

「そうだ。そして、貴様の深層心理でもある。問わせてもらおう、時城承壱。貴様は、何の為に戦う?何の為に私の力を使う?」

「それは…」

具体的にどういう意味なのか、そう思ったらロックスミスが例を上げてくれた。

「ただ誰かを守る為か?己の戦闘欲を満たす為か?気に食わない奴を倒す為か?それとも…」

「決まっている。俺の夢の為だ。これだけじゃまだ不満か?」

「それは知っている。だが…何故、貴様は『夢の為』と言いつつ、戦いを選ぶ?私はそれが知りたい…」

「うーん…」

ロックスミスの痛い質問に承壱は迷ってしまう。しばらく黙って悩むが、思い付く物は一つしかなかった。

「…やっぱり、千冬の隣に立ちたいからだな」

「あの女の隣…?貴様とは、相思相愛で隣に立つのは相応しいはずだ。なのに何故そう思う?」

「…人は憶測で勘違いを起こしてしまう。そうなると余計な混乱を起こす。このまま、俺と千冬が一緒になっても多くの人が納得しないと余計な混乱から無関係な人の命が危険にさらされてしまう。…だからこそ、世間が納得する程に実力を示さなければならないんだ。俺の夢の為を叶える為にも、俺の夢の為にお前達を『元の使い方に戻す為』にも、俺は戦うしかないんだ」

「…なるほど、そういう考えか。面白いな」

「納得してくれるなら良いんだが…?」

「…変わらないな、貴様は。あの頃から何も変わっていない」

「あの頃?」

ロックスミスのその顔はマスクである為、表情は無い。だが、ある記憶を思い出している様で、右斜め上を向きながら呟く。その声は少し安らぎがあった。

「幼い頃から抱いている夢。一時は諦めて呪いになりかけた。だが、私の仲間が使える事が分かり、私を使って夢を再び目指している。とても素晴らしい事だ」

「もう諦めたくないんだ。この手が届く限り守るモノも守って…今度こそ、俺は夢を目指すっ!そして、叶えてみせるっ!」

「例えその道が、どんなに険しく恐ろしい真実が待っていても…」

「大切なのは、立ち向かう勇気、信頼出来る友。そして、支え合う愛」

「…貴様の亡き父、時城英治の言葉、だな。私にも貴様を通じて響いているよ、この心に…」

自分の胸を人差し指でトントンと叩くロックスミスからニヒルに笑う声が出た。どうやら納得して決意したらしい。

それに対して、承壱もいつもの余裕の笑顔が出た。

「覚悟はいいか、バディ?多くの相手と戦う覚悟は?」

ロックスミスは右手を広げて、その腕を承壱へ差し出す。

「当たり前だ、相棒。俺達は、これからも一蓮托生だ」

承壱も左手を広げて、腕を差し出し、ロックスミスの右手に重なる様にその手を伸ばす。

そして、二つの手が重なって組まれた。

「「噛み合った!」」

 

誰もが承壱が敗れたと思ったが、まだ試合終了のブザー音は鳴っていない。

その瞬間、爆煙がもうもうと立ち上がる中から眩い緑の光が発される。

「な、なんだ?」

「嫌な予感がするっス…」

ダリルとフォルテは恐れから距離を取った。観客席に喧噪とどよめきを広めさせ、一夏達も同じ様に慌てしまう光景だ。

それはピットにいる千冬もだった。

「まさか…」

何かを思い出した千冬は思わず微笑んでしまう。

やがて光が収まり、吹き荒れる炎と凍てつく氷が舞う中、そこには各部にアーマーが追加され、背部にもウィングバインダーブースターが追加され、緑色のオーラを纏うロックスミスに似たISがいた。いや、ロックスミスその物だ。マスクの左目部分の亀裂は修復され、新たな姿に進化したのだ。

「嘘だろ…?再起動…いや、第二形態移行したっていうのか?」

「ありえない…ありえないっスよ!」

非常に珍しい事態に遭遇してしまったダリルとフォルテは戦慄してしまうが、承壱は自分の状態を確認する様に左手を見ながら開いたり閉じたりする。するとロックスミスのハイパーセンサーから『Complete, system activated. NEXT will start.』と表示され、更に体中を見て回してマスクの下でニヒルに笑った。

「ネクスト…へぇ~中々いい感じじゃないか」

「姿が変わった所でこっちの勝ちは変わらないぜ!フォルテもう一度行くぞ!」

「了解っス!」

ロックスミスのシールドエネルギーは残りわずか。

そう思い込んだダリルとフォルテは、再び火炎弾と大量の氷柱を生成して放つ。だが、承壱は避ける事をせずにその場に留まり、攻撃を受けてしまう。誰もがその行動に驚くが、一番驚いていたのはダリルとフォルテの2人だ。

「な、なんで?」

「ええーっ!どういう事っスか!」

「…なるほど、そういう能力か。面白いな」

慌ててダリルは、ヘル・ハウンドver2.5のハイパーセンサーで、ロックスミスのシールドエネルギーを確認した。すると徐々に徐々にそのシールドエネルギーが回復しているのだ。

「(まさか…)フォルテ、これ以上攻撃するな!」

「え?ダリル?」

「単一仕様能力だ!あいつのIS…単一仕様能力まで目覚めやがった!」

「ええええええーっ!」

「その通りっだ!」

ダリルは全てを察してフォルテに攻撃を止めさせたが、既に遅かった。

加速姿勢を取ってないにもかかわらず瞬時加速と同じスピードで承壱は、2人の傍にまでやって来ていた。

そして、右手のマグナブレードをダリルに振り下ろし叩き落とし、左手に展開させておいたブラストシューターをフォルテへ連射して後退させた。

「ぎゃ!」

「うわっ!」

「ロックスミスの単一仕様能力…『スターリースカイ』は、あらゆる攻撃や能力を全て無力化して自身のエネルギーに変換するってもんだ。つまり、1回発動すると『ロックスミスが永久機関』になっちまうって事だ。悪気は無いが、こいつはどうやら加減を知らないから…今回ばかりは、初登場状態による無敵状態をやらせて貰うぜ!」

その後、承壱はロックスミスの性能をフルに活かして試合を続行。

フォルテの攻撃を華麗に避けて、ダリルの火炎放射を受けて回復し、ダリルとフォルテはコンビネーション『イージス』を繰り出すが全く通用しない程のスピードで回避してしまい、逆に2人が隙を見せた瞬間に猛攻を繰り出す承壱。

気付いた時にはフォルテのコールド・ブラッドはシールドエネルギーを切らして戦線離脱してしまった。

「ダリル、ごめんなさいっス~ッ!」

「…よくもフォルテをっ!」

フォルテの敵討ちと言わんばかりに激昂するダリルは、瞬時加速で承壱へ向かいエスコート・ブラックを振り下ろすが、承壱はただ黙ってマグナブレードで受け止める。

そのダリルの表情は怒りと焦りが混ざっていた。

「…何を焦っているんだ?」

「ああん?なんだ!」

「迷いが見える。一応、俺も剣術は習っているからある程度、動きで分かるんだよ。何に迷っているか知らないが…」

ダリルのエスコート・ブラックをマグナブレードでいなした承壱は、勢いのまま回し蹴りを繰り出してダリルを蹴飛ばして距離を取った。

そして、マグナブレードの切っ先をダリルへ向けて簡単な質問を出した。

「どうする?…そのISの力、お前の後ろにいる奴らの野望の為に使い続けるか、それともここで引き返して愛する人の為に使うか?」

「っ!お前…どこまで知っているんだ…?」

「さぁな…。ただ、そういう動きにしか見えないから、そう言っただけだ」

「オ、オレは…」

「…まあ、答えは直ぐに出ないよな。迷う程ならば、俺の仲間になってくれるとありがいたが、まずは…この試合を終わらせるか!」

そう言った承壱は、迷いから俯くダリルに最後の一撃を繰り出すべく、腰を低くして加速姿勢を取る。

そして、右手のマグナブレードを最大出力にして、承壱は一気に加速する。

「これで終わりだっ!」

「う、うわぁああああああああっ!」

迷いと加速してきた承壱の恐怖から反撃が遅くなったダリルは火炎放射を放つが、承壱は物ともせず突き進んでダリルの胴にマグナブレードを見事に当てて切り抜けた。その有り余る勢いから回転してしまう承壱だが、試合終了のブザー音が第3アリーナに響いた。

『試合終了。勝者-時城承壱』

それを訊いた承壱は、安堵するが、ロックスミスのハイパーセンサーから後方注意が促された。直ぐに振り返るとISが強制解除されてしまったダリルが地面へ落ちていく。

「まずい!」

承壱は急いでダリルの方に向かい、ダリルをお姫様だっこの形で受け止める。ダリル本人は気絶しているが、大きな怪我は無い様だ。

「ふう…」

「ダリル~!」

すると下の方でフォルテが呼んでいた。どうやら心配して出てきてしまったらしい。

それに気付いた承壱は、フォルテの方にダリルを抱えたまま向かって着陸する。

「承壱さん、ダリルは…?」

「大丈夫。気を失っているが、怪我はしていない」

「良かったっス~っ!」

「…フォルテ、ダリルが起きたら伝えておいてくれ。『いいバトルだった。またしてくれ』ってな」

「了解っス…。承壱さん…」

「ん?」

「…ダリルを助けてくれて…ありがとうっス」

涙ぐみながら礼を言うフォルテに承壱は、マスクの下で思わず笑顔になってしまった。

こうして大歓声が響かれる中、エキシビションマッチは承壱の逆転勝利で終わりを迎え、学年別個人トーナメントは終了するのであった。

 

…負けた。完全に負けた。男に負けるなんて情けねぇな…。

『何を言っているんだ、お前は?むしろよかったじゃないか』

どういう事だよ?

『考えてみろ。この敗北を切っ掛けに考え直すチャンスを手に入れたんだ』

チャンス…?

『そうだ。本当の戦う訳を手に入れるチャンスさ。ここでしっかり考えるんだ。フォルテと付き合ってるんだろ?俺だったら…恋人の泣き顔と涙は、嬉し涙以外…ぜーっっっっっったいに見たくないから、何が何でも傍にいて大切にするけどな。その恋人が居場所にしている所と大切な家族や兄弟、友人も守りながらな』

居場所?

『そう、居場所だ。体を求めるドライな関係の奴らならどうでもいいかもしれないが、フォルテが本当に大切なら…そいつの大切な居場所も守ってやれ。そして、絶対に傷付けるな。それが…恋人の責務と義務だ。それが出来ないならとっとと別れるんだな』

なっ…?勝手に決めるんじゃねぇよ!

『そう言われた腹立つだろ?誰だってそうだ。俺だってそうだ。そう思う気持ちがあるなら、恋人を大切にするんだな。それに…フォルテもお前が大切みたいだ。お前が無事に帰ってきたら、涙流しながら喜んでいたぞ』

…なあ、お前はどうして、そんなにも強いんだ?

『いや、俺はまだ強くない。まだ、全然目標に達していない…』

嘘だろ?お前…オレが知っている人間では最強クラスの実力を持っているぞ。

『それは買いかぶりすぎだ。それにまだ俺は、ロックスミスの性能に振り回されている気がする…』

…あれでか?

『ああ、それに強さの理由を強いて言うなら…想像力を解放しているからだな』

想像力…?そんなので、強くなるのかよ?

『人それぞれだけどな。でも、俺は夢がある。それを叶える為に強くなる…。それが今の俺の目標だ』

…なあ、もし、もしも…オレがお前の仲間になれば…フォルテもオレも守ってくれるのか?

『当たり前だ。この手が届く限り…何度でも手を延ばして守るさ』

お前は…どこまで知っているんだ?

『さぁな。俺も全てを把握しているわけじゃないから教えられないが…これから何か困った事があったら遠慮無く俺に言ってくれ。喜んで力になってやるよ、ダリル』

あぁ…そういう事か。

堕とされちゃったな…。

オレは…時城承壱という人に…。

 

数時間後。

閉会式の後で承壱は、各国の担当者や企業のエージェント、組織の使いから質疑応答をされてしまい、もみくちゃになったが、漸く解放された。

応対に次ぐ応対のあまりぐったりと疲れ果てしまったしまった承壱は、学食の一角にあるテーブル席の上に突っ伏してしまう。周りには話を聞きたかったのか、かなりの女子もいた。

「…面倒だった」

「お疲れ、アニキ…」

「お前もな、イチ…」

労いの言葉を掛けてきた一夏は、承壱の向かいの席で同じような体勢になっていた。準優勝を一夏も承壱と同じくもみくちゃにされてしまったからだ。

すると簪とラウラを除いたいつものメンバーが遅れて合流してきて、ぐったりしている2人に箒が声を掛けた。

「…2人共、大丈夫ですか?」

「…記者会見を受ける有名人の気持ちがよく分かったよ、箒ちゃん。これはキツい…」

「そうそう簡単にこの学校で…優勝とか準優勝とかしない方がいいな、アニキ」

「だが…フフフ、目的は達成したぞ」

不気味な笑い声を出しながらニヒルに笑う承壱。それはいつものメンバー達がシャルルの秘密を守る為に立てた約束であったが、承壱と一夏がツートップ優勝を飾った為、見事に達成されたからだ。しかし、それは一般生徒達には知らない事なので…。

「…優勝…チャンス…消え…」

「交際…無効…」

「…うわああああんっ!」

事実のあまり、バタバタと数十名の泣きながら走り去っていった。それを見てしまった一夏は、たまらず承壱に質問した。

「アニキ…、あれって、もしかして…」

「『夏草や~、兵どもが~、夢の跡~』って奴だな…。しかし、本気にしていた者がいたとは…」

松尾芭蕉の名句で締める承壱に皆は苦笑してしまう。

そこへ少し暗い表情になった簪とその簪を慰める様に背中をさするラウラも合流してきた。

「はぁ~…」

「大丈夫だ、簪。私達がいるから…」

「…2人共遅かったな。どうしたんだ?」

気付いた承壱が問い掛けるとラウラが答えた。

「兄上…私から良い報せ、簪から悪い報せがあるんだが…どっちから聞きたい?」

「…悪い報せから頼む…簪ちゃん、いいか?」

承壱が確認すると俯きながら簪は頷いた。

「…実はさっき…倉持技研の人が来て…」

「「「「「「えっ!」」」」」」

簪の打鉄弐式の一件は、鈴音とシャルルも把握しており、倉持技研の名前が出た途端に承壱達は身構えてしまった。特に組み立てに協力した承壱、一夏、箒、セシリアは非常に険しい顔になってしまう。

「…簪、何て言われたんだ?まさか、今頃になって打鉄弐式の返却要請か?」

「一夏、もしかすると全データの没収かもしれんぞ」

「それも有り得ますけど、箒さん、もしかするといい加減な装備の押し売りかもしれませんよ?」

一夏、箒、セシリアが心配と憶測の声を上げるが、承壱は冷静に3人を止めた。

「待て待て、憶測で喋るな、3人共。簪ちゃんに詳細を」

「うん。それで、来たけど…」

「来たけど?」

「…何か言われる前に…ビンタして追い返したの」

「…まさか、少し暗くなっていたのはそれが理由か?」

「…うん」

簪が暗くなってしまったのは、相手の全く話を聞かずに珍しく手を出してしまった事で、それがほぼ赤の他人だったからだ。しかし、事情と背景を知っている承壱達は簪を攻めなかった。

「…簪ちゃん、確かに君は悪い事をした。反省と後悔があるならいい。だが、相手は今頃になって君を頼りに来た面妖な変態技術者集団だ。気にするなと軽く言えないが…また来たら、その場に留まらせろ。俺が相手になってやる」

「…アニキ、その時は俺が行く」

「イチ?」

簪の行動を咎めつつ、倉持技研用の応対を伝える承壱だが、一夏が名乗り出た事に思わず目が点になる。

「俺の大切な人を泣かせる奴は、俺が許さない。だから俺が行くんだ。それでもって言ってな…」

「…分かった、その時はイチに託そう。簪ちゃんもそれでいいな?」

「うん…。一夏くんと一緒なら私も大丈夫」

一夏の力強い発言に承壱は感心して一任する事にした。それを簪は笑顔で同意してくれた為、悪い報せは終わった。

そして、話は次に移った。

「よし、次に良い報せだな。ラウラちゃん、いいか?」

「うむ。先程、ドイツにいる私の部下から連絡があった。ドイツの強制監査が終了したそうだ」

「結果は…?」

鈴音の問いに全員がラウラの次の発言に注目する。

「…我が部隊はお咎め無し。他の部隊も同じだ。よって、日本時間の明日から私はISの使用が解禁された」

「おお!」

「良かった~!」

ラウラの嬉しい報告に箒とシャルルは思わず声を出してしまう。それを聞いた承壱はニヒルに笑った。それを見た鈴音は思わず問い掛けた。

「…もしかして承壱さん、最初から分かってたの?」

「いや、確証が無かっただけだ。ただ、ラウラちゃんが被害者なのは間違いなかったから、使用解禁されるのは時間の問題と思っていたんだ。ラウラちゃん、次からの訓練は皆との遅れを取り戻すから厳しく行くぞ。しっかり付いてきてくれよ?」

「よろしく頼む、兄上!」

ラウラの元気な返事で良い報せは終わった。

暗い話題もあれば、明るい話題もある。

そう思いながら承壱は緑茶を一口飲んだ。

「そういえば…」

「承壱さん?」

箒が応じた為、承壱は皆に聞こえる様に続ける。

「俺のロックスミスが、第二形態移行して単一仕様能力も発現したのが原因なのか分からないが…プライベート通信以外でISの会話って出来るのか?なんかふたりだけの空間みたいな…」

「それ、僕聞いた事があります。IS同士の情報交換ネットワークの影響だって言われてますけど、操縦者同士の波長が合うと特殊な相互意識干渉が起こるっていう、あれかな?」

「相互意識干渉か…よく分からない機能を作ったなぁ、あいつ…」

シャルルが回答したが、その回答から承壱は、好奇心旺盛で破天荒、何事もやり過ぎる悪い癖を持つISを開発した天才科学者に呆れを覚えてしまう。

「ISは不明な現象や機能がかなりの数がございます。作った篠ノ之博士は全機能を公表していない上、現在は失踪中ですし…」

「あたし、何かのインタビュー記事で呼んだんだけど、自己進化する様に設定した部分があるから、本人も全部把握するのは無理だって書いてた気がするわ…」

「うわ、束さんらしいな、それ…」

「一夏の言う通りだ。姉さんならやるな…」

セシリアと鈴音が覚えている知識で補足するがそれを聞いていた一夏と箒は、自分達の姉に対して承壱と同じく呆れてしまう。それはあの姉がサボり癖もあるからだ。

「だが、兄上、何故それを私達に聞いたのだ?」

「ん~?ちょっとな…。まぁ、俺も全部が全部、束から教わった訳じゃないからな。基礎知識を皆と比べて先行して教わっただけで、整備や改造の裏技を教えられただけだ。まあ、猫娘が言った通り、あいつも全部は把握仕切れないんだろうな…もう一人歩きしているから大変だな…」

ラウラから質問されたが、承壱は上手くはぐらかして、ダリルと妙な空間で会話した事はあえて伏せた。余計な混乱がまた起こると思ったからだ。しかし、承壱の一言は皆が納得して頷くのであった。

 

夜9時。

承壱の部屋である621号室内で、パジャマ姿の承壱は険しい表情で腕を組んで椅子に腰掛けていた。その視線の先には、仁王立ちしている千冬がいて、千冬の前には一夏、箒、セシリア、簪、鈴音、シャルル、ラウラがもの凄く緊張した顔で正座していた。

「…一夏、私と承壱に話があると言ってここで待っていたが…何の用だ?全員正座までして?」

「千冬姉、単刀直入に言うよ…。俺、箒以外の…ここにいるセシリア達と交際する事にしたんだ!どうか認めてくださいっ!お願いしますっ!」

「「「「「「お願いしますっ!」」」」」」

一夏の掛け声を皮切りに全員で千冬へ懇願の綺麗な土下座をしてしまい、笑いを堪えて険しい表情になっていた承壱は、とうとう堪えきれなくなってしまい盛大に笑い始めた。

「…くくくっ!ははははははは!あっははははははは!あーははははははは!」

「承壱…笑ってやるな…」

「いや、千冬…。これは…くくく…笑っちまうよ、ははははははは!」

脇腹を押えて笑いを静めようとする承壱だが、承壱を諫めた千冬も内心笑っているのだ。一方で笑われてしまった一夏達は、もの凄くバカな頼みをしている自覚があるから、もの凄く赤面している。しかも正座になれていないセシリア、シャルルに至っては痛みと恥ずかしさから涙目になってしまうほどだ。

そして、漸く笑いが静まった承壱は、真面目な顔になって一夏達と対峙した。

「やれやれ。ケジメは付けろと言ったが、まさかの直球ストレート勝負とは思わなかったよ。皆、姿勢を崩していいぞ」

「は、はい…」

「あ、ありがとうございます…」

楽な姿勢になれた事でセシリアとシャルルは、少し息を整えた。だが、まだ緊張状態は解いていない。

「イチ、覚悟は出来ているんだな?中途半端な覚悟は無いな?ハーレム関係になるのは、お前の意思なんだな?本気で全員好きなんだ?全員平等に愛するんだな?」

「…それでもっ!それ全部含めて勿論だ、アニキッ!」

その真剣で揺るぎない意志を秘めた一夏の瞳を見た承壱は、次に千冬へ視線を向けた。

「…お前は止めるのか千冬」

「…全ての言い出しっぺである私が止められる権利と義務があると思うか?一夏がこうなってしまったのは私達に原因があるんだ。姉の私が良くて、弟の一夏がダメなんてダブスタを言えるか…。だから、一夏…私から言える事は一つだ」

「な、なんだよ…?」

千冬から真剣な眼差しで睨まれてしまう一夏達はその身を構えてしまうが、千冬は溜め息をついてからニヒルに微笑んで話した。

「好きにしろ…ただし、学生としてちゃんと自重しろよ。箒達もな」

「ありがとう、千冬姉」

「あ…は、はい!」

「「「「「ありがとうございます、織斑先生!」」」」」

一番の関門であった千冬の許可を得る事が出来た一夏達は、感謝の意味で再び綺麗な土下座をした。その表情は安心と喜びであった。

「千冬が良いなら俺も文句は無い。箒ちゃん達の揺るぎない愛の気持ちは紛れもなく君達の強さとなる。それに入学して三ヶ月でここまで至るのは精神的に良い成長をしている証だ…」

そこまで言って承壱は箒達を見回してその瞳を確認した。全員、一夏と同じく真剣で揺るぎない意志を秘めた瞳になっており、承壱も遂に決めた。

「…なるほど、それなりの覚悟はあるようだ。認めよう、君達の覚悟を。今この瞬間から君達は俺の義妹だ」

その瞬間、ドッと歓喜の声が上がった。

 

翌週。

学年別個人トーナメントが終了して学園内外では、まだまだ興奮が冷め止まない様で、学年を越えてあちこちで承壱と一夏の活躍が話題の中心となっていた。

そして、1年1組の朝はまた今日からひと味違う物となった。

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めよろしくお願いします」

スカート姿のシャルル改めシャルロットがペコリと礼をする。事情を知っているメンバー以外のクラスメイト全員がぽかんとしたまま、これはご丁寧にどうもばかりにペコリと頭を下げ返し、メンバーは笑顔で応えた。

「ええと、デュノアくんはデュノアさんでした。という事です。はぁぁ…また寮の部屋割りにを組み立て直す作業が始まります…」

どうやら真耶には何も知らされてなかった様で、これから自分がやる作業に憂いてしまった。

これに同情してしまった承壱は、優しい声を掛ける。

「…山田先生、部屋割りの作業なら手伝いますよ?」

「時城くん…ありがとうございます~」

(何だかなぁ~…)

涙目で感謝する真耶に対して、副担任として大丈夫なのかと今さながら不安を感じた承壱は、心の中で首を傾げてしまう。その直後、教室が一気に喧噪に包まれ始め、あっという間に溢れかえる。

「え?デュノア君って女…?」

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「って、織斑君、同室だから知らないって事は…」

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場を使ったわよね!」

「じゃあ、時城さんも知っているんじゃ…」

「…一応、言っとくが…やましい事やイケない事は何もしてないぞ~。『俺は』な」

「ちょ、アニキ!そんな誤解される様な言い方…」

ボソッと呟いた承壱に一夏は慌てて反応するが、それはかえって火に油を注ぐ事になり、クラスメイト達はいきなり騒ぎ出した。

案の定、数分後には騒いでいた全員の頭に千冬のカミナリが降り注いだのであった。

 

「おお~…流石、じょーくんだ」

ラボの様な部屋で1人の女が画面に釘付けになっていた。その表情は、恋人の活躍を興味津々に見る女の表情だが、その脳内は様々な理論や数式が構築されている。

画面にはロックスミスを駆る承壱の映像が映されており、第二形態移行と単一仕様能力の活躍も映されていた。

空の様に真っ青なブルーのワンピース、エプロンと背中の大きなリボンが目を引く。体はすらっと伸び、均整の取れたしなやかな曲線を描き、豊満な胸の膨らみは服のサイズが合っていないのか、バストを留めるボタンはギリギリまで引っ張られ、白いブラウスから肌が覗いている。

そして、頭には白ウサギの耳が付いたカチューシャを着けている。

この女こそ、ISを作り出した天才科学者で篠ノ之箒の実姉、篠ノ之束である。

「まさかこんなに早くネクストにするなんて…流石、束さんの旦那様!」

自分が生涯愛する男である時城承壱の活躍、夢の結晶で自身の最高傑作であるISロックスミスの活躍。

この二つを鑑賞出来た事で、束の気分は最高潮になり御満悦らしく、その場でクルクルと回ってしまう。

そして、しばらくしてキッと真顔になった。

「さて…じょーくんは勿論だけど、いっくんもちーちゃんも頑張っているみたいだし…箒ちゃんの為にももうひと頑張りしますか!」

 

つづく




現在公開可能な情報

時城承壱
エキシビションマッチでロックスミスを覚醒させる。まるで何処かの黄金の風の主人公の様なスゴ味と覚悟を見せる。
更に千冬と束と同時交際しているハーレム野郎と判明。こいつに不可能は無いのか?

ロックスミス
第二形態移行と単一仕様能力『スターリースカイ』を発現させる。どうも承壱を気に掛けてる様だ。

織斑千冬
一夏の口からハーレム関係の言い出しっぺである事が判明。一夏のハーレム関係を認めた。この姉も破天荒です。

織斑一夏
承壱と千冬に影響され、遂にハーレムを作ったバカな弟。

篠ノ之箒
一夏の正妻を条件にハーレムを認めた。

セシリア・オルコット、凰鈴音、更識簪、ラウラ・ボーデヴィッヒ
箒に促されて一夏とハーレム関係となった。

シャルル・デュノア改めシャルル・デュノア
一夏とハーレム関係になり、ようやく女に戻って登校する。

篠ノ之束
遂に初登場。愛する人達の為に何かやっている様だ。

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