インフィニット・ストラトス Re:RISING 作:最後のVESPERの挑戦状
IS学園1年1組のクラス代表決定戦後の翌日の昼。
この日は季節外れの大雨となり、IS学園の一部のカリキュラムとISアリーナは、安全の為に使用禁止となってしまい、多くの生徒と教師に影響を及ぼしていた。
それは1年1組の時城承壱達も例外ではなかった。
窓ガラスに雨粒が打ち付けられる様に横殴りの強風が吹いているのがよく分かる程で、まるでそれは嵐の様であった。
「あーあ、酷い雨だな…」
「承壱さん、天気予報によると3日間は雨模様の様ですよ」
「そうなのか、箒ちゃん?そうなるとなぁ…」
スマートフォンの天気予報アプリで天気を確認した箒の報告を受け、承壱は眉間にしわ寄せてしまう。
「アニキ、放課後の訓練はどうするんだ?」
「アリーナも一部使えない。2年生と3年生が優先して使っているから、何処も一杯だ…。そうなると今日は勉強ですか、承壱さん?」
「勉強でしたら、私もご一緒させていただきたいですわ」
承壱の席の周りに集まるのは、弟分の織斑一夏、その恋人の篠ノ之箒、そして、クラス代表決定戦で親睦を深めた専用機持ちでは先輩であるクラスメイトのセシリア・オルコットだ。
一夏と箒はいつも通りだが、昼食からセシリアも一緒になりこうして今にいたるのだ。
「…ちょっとな、今日は指向を変えてな、ISの整備についてやっていこうと思っていたんだよ」
「えっ、という事は?」
「この雨は、俺達に技術を教えてくれる恵みの雨というわけだ」
「でも、承壱さん、整備の本格的授業は2年生に進級してからの『整備科』があります。いくら何でも早すぎるのでは…?」
セシリアの質問はもっともだが、ここで承壱は持論を述べて反論した。
「それじゃあ、専用機持ちはいざという時にすぐ動けないだろう?それに俺は昔から持論が一つあるんだ。『自分の手足になる力なら、自分で管理運営して整備と調整をしろ』ってな。多くのロボットアニメの主人公達は極力自分の機体は自分で最終調整をして戦っていた。そりゃあ、修理には人手が多く必要になるが、それはそれ、これはこれだ。結局、最後に頼れるのは自分の勘と経験になる。それを100パーセント以上の力にしてくれるのは…?」
「「「自分の機体…?」」」
「正解、そうゆう事だ」
妙に揃って答えを出した一夏、箒、セシリアに承壱は感心して頷いた。
だが、箒はある事を思い出した。
「…整備室は何処にあるんだろうか?」
「確かにまだ行った事ないですわね…」
3人は顔を合わせるが、それに対して承壱は右の人差し指をチッチッチッと揺らした。
「だと思ってな、理子ちゃんに頼んである人を呼んでもらった」
承壱の口から出た理子とは、承壱と寮の同室になっているクラスメイトだ。承壱は理子からクラスメイト達の情報をもらい、ある人を呼んでいた。その人とは…。
「ジョーさん呼んだ~?」
「お、来てくれたか本音ちゃん」
1年1組のマスコットキャラのポジションに落ち着いた布仏本音であった。因み『ジョーさん』とは本音が付けた承壱のあだ名であり、承壱本人も気に入っている。
「ジョ、ジョーさんって…」
「イチ、これで『くん』だったら俺が困るから、こっちにしてもらったんだよ」
「「ああ~…」」
ある天才科学者が承壱を呼ぶ時を思い出し、それを知っている一夏と箒は納得の声を出すが、セシリアはまだ分からないので思わずキョロキョロしてしまった。
気を取り直して、承壱は本音に質問した
「理子ちゃんから話は聞いているか?」
「うん。整備室なら私の幼なじみがいつもいるから~すぐに案内できるよ~」
「よし。という事だ。皆、今日から整備の方も『かなり早めに』勉強していくぞ」
「分かったぜ、アニキ」
「う、うむ」
「分かりましたわ。やりましょう!」
一夏、箒、セシリアの了承を得て、こうして今日の放課後は整備室でISの整備・点検の勉強を行う事になった。
放課後。
本音の案内で承壱達4人は『第2アリーナIS整備室』に到着した。
IS整備室は各アリーナに隣接する形で存在するその場所は、2年生から始まる『整備科』の為の施設でもある。この場所は第2アリーナに隣接しているので、第2アリーナIS整備室と呼称されている。
しかし、承壱、一夏、セシリアは専用機持ち。承壱の持論を元にできる限りの整備技術を学ぶのもあるが、今日は自分達のISの確認も兼ねている。
「ここだよ~」
「ありがとう、布仏さん。これは、お礼のチョコレートだ。貰ってくれないか?」
そう言いながら承壱はどこらともなく板チョコを取り出し、本音は喜んで受け取った。
「わ~い、ありがと~、ジョーさん!」
「アニキ、どっから出したの…?」
「ちょっとな。じゃ、お邪魔しまーす!」
堂々と正面から入る承壱に続いて、一夏達3人も続き、そのまま、本音も続いた。
「へぇ~、ガレージみたいなってるんだな。じゃ、早速…」
感想を言いながら承壱は、持ってきた自前のノートパソコンに数本のケーブルを繋いで、更に一夏とセシリアの待機状態のISにそのケーブルを繋いで見始めた。これを箒はしっかりと見て覚えようとしている。
因みに専用ISは一度フィッテイングしたら、操縦者の体にアクセサリーの形状で待機する。一夏の白式は右腕に白い腕輪で、セシリアのブルー・ティアーズは左耳に青いイヤーカフスで、といった形で目立たないアクセサリーとして形状を変化しているのだが、承壱のロックスミスは不思議な事に『ネイビーブルーの拳銃』になってしまい、腰のベルトに挟んでいるのだ。
承壱は素早い操作でノートパソコンの画面に表示されたブルー・ティアーズのデータに注目する。
「へぇ~、こう改めて見るとブルー・ティアーズって良い機体だな。遠距離戦特化型の機体とした最高の仕上がりがある。後発の完成機はもっと優れた機体になるだろうな。…だが、近接用のブレードも設けているけど、稼働率が低いな。接近戦はあまりやっていないな?今後の訓練の指標にもなるから定期的にデータ化するか…」
「…承壱さん、分かるのですか?」
「アニキはロボットアニメ好きすぎるあまり、ジャンクパーツでロボットを自作するくらいだから、ISも分かるんだよ、セシリア」
「そうですの!それはそれですごいですわ…」
「承壱さんは私にもわかりやすく教えてくれるのだから、これ位は朝飯前なのだろうな…」
「ジョーさん、すごい~!」
それぞれが承壱を褒め称えるが、意外な人がいる事に気付いた。本音である。
「…本音ちゃん、まだいたのか?誰か待っているのか?」
「おお、ジョーさん、大当たり~」
「そうか。じゃ、さっきのチョコレートでも食べて待ってな」
「うん、ありがと~」
マイペースな本音に翻弄される事なく、承壱は次に白式のデータを表示した。
「うわっなんじゃこりゃ!」
「アニキどうした?」
「お前がブレオンスタイルになった原因はこれかよ…。近接ブレード1本って、ライフルとかミサイルとか付けてくれてもいいのに…近接ブレードの『雪片弐型』しかないってどうゆう無理ゲーだよ。しかも雪片弐型って名前もイチをバカにしているのか?これ作った奴、イチの事を完全に『千冬の弟』としか見てない証拠じゃないか。本当に束が調整してくれたのか怪しくなってきたぞ…。しかもワンオフ・アビリティーが最初から使えるってどうゆうこっちゃ?普通、二次移行してから使えるはずなのに…。イチが不憫すぎるぞ。大抵の初期機体はジェネレータが粗悪品を持たされるが、武装だけは充実しているのに…。アーマード・コアやった事無いのか…?」
いきなりの承壱の一人マシンガントークに箒とセシリアはびびってしまい、それを知っている一夏は苦笑する。
「すごいマシンガントーク…」
「今度は承壱さん…壊れましたわ」
「あちゃ~、アニキのアーキテクター魂に火が付いたぽい」
聞き慣れない言葉が出てきた事に箒は一夏に聞いた。
「アーキ…一夏、なんだって?」
「…アーキテクター。つまり、設計者という意味ですか、一夏さん?」
「ああ。さっきも言ったけどアニキは、ロボットも自作するし、昼間に言っていたアニキの持論もあるだろ?だから、多分…」
「…あーもうっ!腹立たしいなぁっ!これっ!」
頭に怒りマークが6つぐらい付いている様に見える承壱は、遂に大声を出して一夏に向き直った。
「イチッ!」
「は、はいっ!」
あまりの怒りの剣幕に呼ばれた一夏はビシッと姿勢を正し、釣られて箒とセシリア、更に本音も一斉にビシッと姿勢を正してしまった。
それが眼中に入っていない承壱は続ける。
「お前、このままでいいのか!この白式じゃ、お前は対策に対策を取られまくって、最悪、卒業まで黒星を付けられ続けて、新入生からはボーナスキャラの様な扱いを受けちまうぞっ!」
「げぇ…それは嫌だな…」
「だろ?その嫌な気持ちがずーっと続いたら、将来に何らかの影響が出てしまうのは明白の理…。そこで俺はお前に選択肢を与える…」
急に冷静になった承壱に一同は注目する。
「どうする?今の白式のまま戦い『千冬の弟』として評価される人生を歩むか、それとも俺が改造した白式で戦い『千冬の意志を継ぐ弟』として評価される人生を歩むか?」
「っ!それは…」
「一夏…」
「一夏さん…」
「おりむー…」
一連の話を聞いていた箒とセシリア、本音は心配のあまり一夏に注目してしまう。
この選択肢は正に一夏にとって重たい選択だ。承壱の言いたい事はよく分かるが、素人である自分が戦う術は限られている。そうならば一つを極める方が良いが、自分が兄貴分として慕っている者からの忠告は重く現実的であった。
暫しの沈黙。
そして、目を閉じていた一夏は決意の返答を出した。
「…白式を初めて知った時、俺は「世界で最高の姉さんを持った」って思ったよ。でも、アニキの言う通りだ。アニキ、俺、強くなりたいよ…。でも、千冬姉の弟って評価されるのは嫌だ。今はまだそれは肩書きみたいに勝手に付いてくるから…それでも『千冬姉の意志を継ぐ弟』になりたい!」
その答えを聞いた承壱は、了承の笑顔となった。
「お前ならそう言うと信じていたぞ、イチ」
「アニキ!」
「じゃ、改造するぞ。アーキテクターの腕前を見せてやろうじゃないか」
「ちょっと待ってくれ、承壱さん!あなた…ISの改造も出来るんですか?」
箒の質問はもっともだが、承壱はニヒルに笑って答える。
「ノープロブレム。束から教わっているから問題無い」
「「「「ええ~っ!」」」」
「まず、雪片弐型はアンインストール。続いてメモリー調整して、拡張領域を確保。そんでもって、新武装に俺のロックスミスのマグナブレードとブラストシューターを改造した物を移植して…」
「「「「ちょっと待って!ちょっと待って!」」」」
「ああん、なんだ?」
サラッととんでもない事を言って、サラッととんでもない事をしようとしている承壱に一夏達は、大慌てで止めに入った。
「どうした?」
「どうしたじゃ無いですよ!姉さんから教わったって本当ですか、承壱さん!」
「ああ、まあな」
「承壱さん、束って言いましたけど、それは篠ノ之博士の事ですよね!篠ノ之博士とは、どの様な関係なのですか!」
「一言で言えば、奇妙な関係」
「アニキの武器…使っていいのか俺?」
「逆に使ってほしいんだよ。俺は。予備は3セットずつあるから1セット、お前にやる」
「ジョーさんはISの組み立て出来るの~?」
「多分な。7割組まれてたり、半壊状態なら、多分出来る」
箒、セシリア、一夏、本音の順で質問が飛ばされるが、適確に答える承壱は作業を始めるが、承壱のマルチタスクな余裕な返事に一夏達は戸惑ってしまう。
その時、IS整備室に誰かがやって来た。
「今日もやらないと…誰?」
「ん?」
「あ?」
「お?」
「あら?」
「あっ、かんちゃ~ん!」
そこにいたのは、承壱達と同じ1年生で、眼鏡をかけた青い髪のセミロングの少女だった。本音が『かんちゃん』と読んでいる所、どうやら親しい間柄の様だ。
「本音ちゃん、その子が待った子かい?」
「そうだよ~。かんちゃん、この人がジョーさんだよ~」
「ジョーさん…?」
「俺の事だ。俺は時城承壱。1年1組の副代表をしている。よろしく」
「1年4組…更識簪…よろしく、お願いします」
かんちゃんと呼ばれた少女、更識簪は、少し顔を赤くしながら差し出された承壱の手に握手で応じて自己紹介をした。それに続いて、一夏達も自己紹介を始めた。
「俺、織斑一夏。1年1組の代表。よろしく」
「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」
「セシリア・オルコットと申します。以後、お見知り置きを」
「よ、よろしく…お願いします」
一通り自己紹介を終えて、承壱は簪に質問を出した。先程からいた本音の事もあり、気になっていたのもあるからだ。
「ところで君は何故ここに?」
「それは…」
「かんちゃんは専用機の組み立てに来たんだよね~?」
「「「せ、専用機!」」」
「…なるほど。本音ちゃん、俺にしていた君の質問の意図が読めたぜ」
一夏達が驚く中、承壱は推理を述べた。
「簪ちゃん、君の専用機は何らかの事情で完成が遅れているか、頓挫しているんじゃないか?そして、本音ちゃんはそれを知っているから俺達の手を借りたいと考えた。違うか?」
「おお、ジョーさん、またまた大当たり~!」
「…何で分かったですか?」
本音は喜んでいるが、簪は警戒しながら承壱を睨んできたが、承壱は落ち着く様に両手を前に広げて、理由を述べる。
「最初から確信は無かったさ。でも、本音ちゃんが『ISの組み立て出来るの?』って聞かれた時、これは知り合いがISの組み立てで困っていると推理したんだ。で、確信を得たのは、君の名前だ」
「私の…?」
「そう。君の名前を聞いた時、最初に出てきたのは、この学園の生徒会長…更識楯無だ。そうなると親族か家族、若しくは姉妹だと思った。んで、会長は現役学生でありながらロシア代表ときたもんだ。まあ、それは千冬に聞いたから知ったけど」
「アニキ…それ、マジで?」
「大マジの大マジだ」
承壱の返答に一夏と箒とセシリアは冷や汗を流しながら顔を見合わせてしまったが、承壱はお構いなしで更に続けた。
「そうなると君は日本の代表候補生であって、更に専用機を与えられても何もおかしい話は無いって訳だ…。ここまでの推理でおかしい所はあるかな、簪ちゃん?」
「無いです…全部、合ってます…」
「で、どうする?」
「どうするって…?」
「手伝ってほしいのか?それとも独力で全部組み立てるのか?答えは二つに一つだ。それにここには専用機が3機もある。データだけでも充分活用出来るぞ?」
「…」
承壱の問いに簪は黙ってしまい、スカートを強く握ってしまう。
その時、今まで黙っていたセシリアが承壱に苦笑しながら質問した。
「…承壱さん、それ、私のティアーズも入っていますよね?」
「入学初日に力をお貸ししますって言ったのは誰だったかな~?」
「…意地悪なお方ですね~。ですが、ここまで来たら乗りかかった船。最後までお供させてくださいな」
「よし、イギリス代表候補生からOKが出た。イチは?」
「勿論やる!俺達の整備の勉強にもなるなら、尚更やりたいぜ!」
「私もやりたいです、承壱さん!」
セシリアの質問から一夏と箒もやる気のある返事を貰った承壱は、また感動を覚えてしまった。
それを見ていた本音は簪へ顔を向けた。
「…かんちゃん、ジョーさん達もこう言ってるから…ね?」
「…本音」
そして、簪は遂に決心した。
「…承壱さん、手伝ってくれませんか?もう、私…1人じゃ限界で…助けてください…!」
涙ぐみながら呟く簪。
その思いを拒否する者は、ここには誰もいなかった。
早速作業に取り掛かる承壱達は、それぞれが得意としている分野に分かれて開始した。
「一夏さん、そこのケーブルを全部持ってきてください」
「分かった。後、特大レンチと高周波カッターも持って行くぞ!」
「箒さんは、小型発電機と液晶ディスプレイも持ってきてください」
「分かった!」
まだまだ素人の一夏と箒は、セシリアの指示を逐一聞いて動き、その一方で簪と本音は阿吽の呼吸で動いている。
ハードウェアは各部ブースターやスラスター、装甲、武器、内蔵装備を一からチェックし、形にして試験稼働をさせる為、簪は未完成のISを装着した。
ソフトウェアは、承壱の得意分野である為、量産機『打鉄』のソフトウェアをベースに推進ユニット・コントロール・システム、機体全体のエネルギー・バイパス・オペレーティング・システム、シールドバリヤー制御システム等の最適・効率化とシミュレーション、最終調整を物の数十分で行い、完成させてしまうが、承壱は簪の専用機『打鉄弐式』の問題点を洗っていた。
「…なるほど。そうゆう事か。デザインは白式に似ているから開発元は同じか?」
「そうです。倉持技研です」
「そうなると…イチ、白式展開して打鉄弐式の隣のハンガーに置いてくれ」
「了解だ、アニキ」
承壱の指示を聞いた一夏はハンガーへ向かい、一夏の体から光の粒子が解放される様に溢れて、再構築する様に纏まり、IS本体の白式として形成された。だが、整備状態にして展開しているので、一夏は装着していない。
承壱は自前のノートパソコンで白式と打鉄弐式のデータを見比べ、更に空中ディスプレイをも起動させてブルー・ティアーズと自分の専用機であるロックスミスのデータも表示させた。
「現在の打鉄弐式の完成度は7割程度ってとこか。ソフトウェアは作ったから問題無いはずだ。機動力周りは白式から持ってくるのがいいだろう。武装データは、ロックスミスとブルー・ティアーズのデータを使えばいいが…問題はこれだな」
「「「「どれ?」」」」
一斉に承壱のノートパソコンの画面に注目する簪を除いた一同。それに気付いた承壱は見やすくする為、指摘した部分を空中ディスプレイの方へ移し替えた。
「マルチロックオンシステムによるミサイル…ミサイルはロックスミスとブルー・ティアーズにも付いているが、こいつはすごい。なんたって48発のミサイルを全部独立稼働させるんだからな。マルチロックオンシステムは…簪ちゃん、君に任せたい」
「私が?」
「ここまで来ると君がこの機体の一番力を入れる部分に君自身の力を注いだ方が良い。そうすればコイツは君に答えるよ」
「うん、やってみる!」
「その粋だ。他の武器はすぐに完成するだろうが、問題はハードの方を作るのに人手が足りないという事になる。1組と4組の整備科志願の子…後、2年生の整備科の先輩方も巻き込むか!」
「そ、そんなに…?」
「おお、ジョーさん、だいたーん~!」
「もうここまで来たらとことんやろうアニキ!」
「そうだな。なんか楽しくなってきぞ!」
「箒さんの言うとおりですわ。私も面白くなってきましたわ!」
「やるか、簪ちゃん?」
「…はいっ!お願いします!」
承壱の提案に一夏達は盛り上がるが、最終決定権は簪にある為、確認を取ると了承した。
その後、季節外れの大雨が降る数日間。
その放課後の第2アリーナIS整備室は、1組と4組の整備科志願の子と2年生の整備科の先輩方も巻き込んでの大騒ぎの組み立てとなった。時には喧嘩になりかけてしまう者達もいたが、承壱が黙らせたので、喧嘩にはならなかった。更に整備科の先輩方は、承壱の組み立てたシステムに感動の涙を流してしまったとか。
そして、組み立てが4日目に突入し、1年生寮内の食堂で朝食を取っていた承壱、一夏、箒、セシリア、本音、簪だが、ここである事実が判明した。
「何ぃ~?イチの白式に開発スタッフを持っていかれて、君の打鉄弐式の開発が凍結寸前にまでなっていただとぉ~?」
「はい…そうなんです…」
「えーと、俺が謝って済む事じゃないけど、ごめんなさい!」
衝撃の事実に承壱はオウム返しをしてしまい、一夏は謝罪してしまった。それを慌てて簪は止めた。
「ううん、一夏くんは悪くないよ…」
「そうだぞ、一夏。これは開発元が悪い!」
「箒さんのおっしゃる通りですわ。そんな悪行をする企業、私も見た事も聞いた事もありませんわ!」
箒とセシリアの意見はまともだ。仕事を放り出す技研など信用に値しないのは間違いない。それは誰であろうとやってはいけない事だ。学生である一夏達が分かっているのに成人した技術者達が出来ないのは、なんとも情けない事だろう。
この話を聞いていた女子達は、自分は責任を放棄しない社会人になろうと決めるのであった。
「なんちゅうとこだ…倉持技研だっけか?新手の面妖な…変態技術者共なのか?おい、イチ、俺の改造プランもやるぞ。このままだと黒星ルート一直線だ。そんなとこに改造も点検も任せられるか…!」
「アニキ、頼むよ!」
「だが、先にやるのは打鉄弐式だ。予定通り行けば、今日完成する。皆、授業はしっかり受けて、放課後また集まってくれ」
「「「「おー!」」」」
元気よく返事をした一同は、朝食を済ませて教室へ向かうのであった。
そして、授業を終えたその日の放課後…。
「承壱さん…」
「ああ…。システムオールクリーン…。これで完成だ」
打鉄弐式に組み込む稼働データはロックスミス、白式、ブルー・ティアーズ、その他にIS学園で稼働している量産ISのデータを片っ端から使用し、簪がイメージする装甲と武装を皆で作り上げ、最後に簪自身が作ったマルチロックオンシステムをインストールしてようやく完成した。
「凄い…あっという間に出来た…私のIS…打鉄弐式が!」
簪はようやく完成した打鉄弐式に直に触れ、嬉しさの余り涙を流していた。
「おめでとう簪ちゃん、これで君も立派な代表候補生だ」
承壱は打鉄弐式の完成に祝福の言葉を贈り、一夏達も祝福の拍手をする。
「皆…ありがとう!」
「そして、イチ。お前にも朗報だ。白式の新しい武装も完成したぞ」
「え、マジで!」
「ああ。ブラストシューターをベースに改造したマルチライフル『唐澤』とマグナブレードを改造した近接ブレード『月光』。この二つは既に白式にはインストール済みだ。持ってけ相棒!」
「ありがとう~、アニキィ~!」
承壱からの贈り物に一夏は嬉し涙を流す。それを箒は背中をさすってあげるのだった。
その時、窓の外から夕焼けの日差しが窓越しに差し込んで来た。どうやら長かった雨は止み、天気も祝福している様だと承壱は思うのであった。
「あの、承壱さん」
「ん?なんだ、簪ちゃん?」
「これから…承壱の事、『承壱お兄ちゃん』って呼んでもいいですか?」
「…まあ、いいぞ。弟分がいるから妹分がいても大差は無いからな。好きに呼びな」
「あ、ありがとう、承壱お兄ちゃん!」
こうして、IS学園に新たな専用機操縦者であり、承壱の妹分が誕生し、簪は4組のクラス代表に就任する事になった。
クラス対抗戦は、誰が優勝するか分からなくなったが、一夏も簪もどちらも勝ちを譲る気は全く無く闘志は燃え上がる一方だった。
「って、そうゆう事になったんだよ」
『全く…ここ数日なにかしていると思ったら、そんな事をしていたか…』
夜10時前後。
日課の千冬と電話をする承壱だが、一連の出来事が事後報告になってしまったので、千冬は電話越しに溜め息を吐いてしまった。
「呆れたか?」
『いい意味で呆れたよ。お前に不可能は無いのか?』
「うーん…まだ、心に余裕が無いのが悔しいかな?」
『そうか。承壱…』
千冬の声が真面目なトーンになった事で、承壱は聞き耳を立てる。
『私はお前の味方だ。最後の最後までお前の傍にいる。だから、甘えてもいいからな?』
「それはこっちの台詞だ。千冬に甘えられると俺は嬉しいから。まあ、千冬もそうだろうけど」
『バカ…。愛してる』
「俺もだ。そうゆう事だ…」
つづく
現在公開可能な情報
白式
一夏の専用機。承壱に改造を施され、雪片弐型の代わりに承壱のロックスミスのマグナブレードを改造した近接ブレード「月光」とブラストシューターを改造したマルチライフル「唐澤」を搭載した。これでワンオフ・アビリティー『零落白夜』はリミッターを設けられたが、一夏の想いから戦いやすくなり、シールドエネルギーの燃費も改善された。
更識簪
原作よりも早く登場し、打鉄弐式が早く完成した。一連の件を経て、承壱を慕い「承壱お兄ちゃん」と呼び、言う時ははっきり言う様になった。
感想、意見、よろしくお願いします!