インフィニット・ストラトス Re:RISING   作:最後のVESPERの挑戦状

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第7話:ブルーデイズ/レッドハザードその1

フランスから来た3人目の男性IS操縦者、シャルル・デュノアとドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒがIS学園に転校し、IS学園は新たな賑わいを見せていた。

また、同じ男子という事で、寮の部屋割りはシャルルが一夏と同室になった。新しい仲間が出来た事で一夏は、その日は安心感からぐっすりと眠れたらしい。

そして、シャルルとラウラが転校してきてから5日が経ち、土曜日となった。IS学園では土曜日の午前はIS関係の授業、午後は完全に自由時間になっている為、アリーナが全開放されてほとんどの生徒が実習に使っている。

その中には承壱、一夏、箒、セシリア、簪、鈴音、シャルルもいた。因みに本日の箒はISを借りている為、打鉄を装着してこの場にいる。

「お待たせ皆。持ってきたぞ」

今日の実習は、承壱が作った新装備をセシリア、簪、鈴音に支給して実際にテストするのだ。承壱が押してきたコンテナの中にはいくつかの武器や装備が入っている。

装備の説明が始まり、最初はセシリアだ。

「セシリアちゃんは、実弾武器が欲しいって言っていたから短距離ショットガン『ハルデ』を用意したが、近距離戦はこれを使った方がいいな。ただし、弾切れには注意しろ。弾が無くなったりぶっ壊されたら、インターセプターで戦う事になるからな」

「分かりました。ありがとうございます」

次に簪。

「簪ちゃんの打鉄弐式は完成度が高く装備バランスは良いけど、少し中距離戦が難しいと思う。そこでこのバーストアサルトライフル『嵐雪』をあげよう」

「これは…焔備の改造タイプ?」

「そうだ。打鉄弐式は打鉄がベースだから同じ装備品のアサルトライフル『焔備』なら親和性があると思って改造した。3点バースト式で普通のライフルとは違うから注意してくれ」

「お兄ちゃん…ありがとう」

最後に鈴音。

「猫娘のは、ロックスミスのアームキャノンをそのまま転用させてもらった」

「えっ?そうなると承壱さんのは…」

「大丈夫だ。もう1セット作ったからロックスミスの方はそのままだ。使い方はロックスミスと同じく、レーザー弾を撃てるカートリッジ式だから、甲龍の燃費にも影響は無い。遠慮せず使えよ」

「ありがとう承壱さん!」

それぞれ新装備を受け取り、承壱は持ち込んだ自前のノートパソコンから各ISにデータをインストールし、セシリアと簪の手元に新装備が展開された。鈴音の甲龍に至っては両前腕部の装甲が変化し、立派な銃口を覗かせる。

「よし、インストール完了。各機、機体チェック!」

「…いけますわ!」

「問題無し!」

「こっちもOKよ!」

新装備は各ISに問題無くセシリア、簪、鈴音は喜んで返事をする。どうやら上手く行った様だ。

「おお~、すげぇよアニキ!」

「インストールまでこの場で行うとは…流石です、承壱さん」

「時城さんは何でも出来るんだね、すごいな…」

一夏、箒、シャルルが感想を言うが、承壱は更に続ける。

「よし、次は動作テストだ。3分間模擬戦で確認してみよう。セシリアちゃんはイチと、簪ちゃんはデュノアくんと、猫娘は箒ちゃんと、それぞれ新装備だけで戦ってくれ。この組み合わせは動作テストには持って来いの相手だから…まあ、軽くやってくれ」

「アニキは?」

「ここでデータを取る。早速始めてくれ」

「了解!じゃ、皆始めよう!」

一夏の掛け声と共に皆飛び上がり動作テストを兼ねた模擬戦を始める。

セシリアはハルデを器用に使い一夏の接近を許さず、簪は嵐雪を駆使して弾幕を張ってシャルルと射撃戦を繰り広げ、鈴音はアームキャノンで逃げる箒に追撃する。

この3分後。各機に目立った損傷は無くシールドエネルギーだけ減らした状態になって承壱の傍に着陸する。全員息は上がっているがまだ余裕の様だ。

「どうだ?新装備は?」

「…これ、良いですわ。斜角の条件はありますが、近づいた相手に不意打ちを出せますので、とても気に入りましたわ!」

「私も。しっくりなじむ…良い!」

「最高ね!甲龍は燃費の良さが売りだけど、これでどんな相手でも対等に戦えるわ!」

「そうか…成功だな」

新装備をもらった3人は大はしゃぎで感想を言い、それを聞いた承壱は満足そうに頷く。自分が勝手にボランティアに等しい事をしたのだが、それで喜んでくれるなら嬉しい物である。

「…時城さんって開発も出来るの?」

一連のやり取りを見ていたシャルルの質問に一夏が答える。

「ああ。アニキは7割方出来ているISとか武器の改造とか出来るんだ。特にすごいのプログラミングでな…整備科の先輩方が涙流して感動するぐらいだぜ」

「そんなに!」

「それだけじゃないぞ。承壱さんの御蔭で未完成のままだった簪の打鉄弐式は完成したんだ」

「箒、それ本当?」

「本当だ。とは言っても承壱さんが1人で組んだわけじゃ無い。1組と4組の整備科志願の子、整備科の先輩方を巻き込んで、皆で完成させたのだ。その時に承壱さんの才能が開花したのだろうな…」

箒の補足説明にシャルルは、ほえ~と口を開けて驚いてしまう。

ISに関わり合ってまだ数ヶ月の素人に近い者、しかもこの女尊男卑の世界で『男』が活躍しているのだから感心しない方がおかしいと言えるだろう。

「しかもその時、同時進行で俺の白式の改造もしてくれたんだ」

「え?白式の改造も?」

「ああ。アニキ曰く『アーマード・コアをやってないから滅茶苦茶で汚い機体だ!』って言っていたな…」

「え?」

「分かんないよな?俺も言ってた事が分からないけど、意味は分かったんだ。初心者の俺に格闘オンリーの機体って、俺でもダメだろうって分かったし…」

「確かに…」

装着者の一夏からもダメ出しされる最初期の白式。その一夏の感想は、シャルルも思わず同情してしまう程だ。

「最初、白式はセンサー・リンクも無かったんだよ。だけど、アニキが付けてくれてマルチライフルの唐澤が使える様になったんだ。んで、一番酷かったのは近接ブレードの名称が『雪片弐型』で、それもアニキが新しい近接ブレードの月光にしてくれたんだよ」

「あれ?雪片弐型って…確か織斑先生…初代『ブリュンヒルデ』のISと同じ…」

「ああ、暮桜の雪片の後継機らしいけど、それもアニキが『欠陥渡して自己満コードに浸ってんじゃねぇよ!』ってぶち切れてた」

「あの時の承壱さんは…怖かったな…」

思い出した箒は恐怖で顔を歪めてしまい、その恐ろしさを物語っていた。

その承壱は、自前のノートパソコンにデータ入力を終えて、そのデータを纏めたメモリースティックを3人に渡していた。

「ほら、設計図と必要データが入ったメモリーだ。本国への報告書とかに使える奴だから、一応、持っておいてくれ」

「「「ありがとうございますっ!」」」

セシリア、簪、鈴音は受け取り3人揃って礼を述べる。承壱本にも上手く行ったのでホクホク顔である。そんな承壱にシャルルが声を掛けた。

「承壱さん」

「ん?なんだデュノアくん。戦いたいのか?」

「はい、手合わせをお願いしたくて」

「…いいぜ。退屈させてくれるなよ」

 

5分間という制限時間を設けて始まった承壱対シャルルのISバトル。

シャルルのISは、ラファール・リヴァイヴの専用機仕様にカスタマイズされた『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』。

通常のリヴァイヴは、ネイビーカラーに4枚の多方向加速推進翼が特徴だ。しかし、カスタムⅡは背中に背負った一対の推進翼は中央部分から2つの翼に分かれて機動性と加速性が高くなっており、アーマー部分が小さくシェイプアップされ、マルチウェポンラックとして姿勢制御用の小型推進翼が付いた大型リアスカートが装備されている。

そして、通常のリヴァイヴとの大きな違いは肩部分アーマーで、リヴァイヴに本来付いている4枚の物理シールドが全て外され、左腕にシールドと一体化した腕部装甲が装着され、右腕はすっきりとしたスキンアーマーのみとなっている。

開始の合図を箒が行う。

「では、両者良いな?…始め!」

先手を取ったのはシャルルで55口径アサルトライフル『ヴェント』を展開して撃ち放つ。

それを避けながら承壱は、右手にブラストシューターを展開して撃ちながら距離を保ちつつ、左腕のアームキャノンも使いレーザー弾も撃って反撃する。

しかし、射撃戦はどうやらシャルルは得意な様で華麗に避けられてしまう。

(…当たらないか。なら、近づくか!)

加速姿勢になった承壱。背中のメインブースターにエネルギーを集中させて一気に飛び出す。その軌道は読まれない様にフェイントも混ぜており、シャルルの射撃は掠りしない。

(…ここだ!)

一瞬の死角を見つけた承壱は、左手にマグナブレードを展開して急接近。その刃を振り下ろすが、シャルルは余裕の表情のまま、瞬時に近接ブレード『ブレッド・スライサー』を左手に展開して受け止める。

そして、そのままシャルルは右手の武器を承壱へ向けた。その瞬間、承壱は我が目を疑った。

(っ!武器が変わっている!)

さっきまではヴェントだったのに今自分へ向けているのは、面制圧力に特化した62口径連装ショットガン『レイン・オブ・サタディ』だったからだ。

いきなりの変化に承壱は、バックステップをして距離を取る再びブラストシューターをシャルルの前に突き出した。

「…まさか、今の読んでいました?」

「いいや。反射神経で動いただけだ。だが…なるほど、そうゆう動きもあるのか。面白いな」

ここで承壱はシャルルの能力を把握し始めた。もっとも本格的な対策を立てるには、もっと多くのデータが必要になるが、今の場合、推測で充分である。

(リヴァイヴ・カスタムⅡ本体はそこまで強い機体じゃない。…彼の?…彼女の?…まあ、こいつの強さはあの一瞬で武器を切り替えたあの『速さ』だ。見た感じ、リヴァイヴよりも多くの武器があるだろうし…何よりあの左腕のシールドには…『とっつき』がありそうだ。どうする…?)

そう考えながらも承壱は、高速移動しながらブラストシューターの射撃を繰り出し、左手のマグナブレードを収納してもう1丁のブラストシューターを展開し、時間差で発砲。更に両腕のアームキャノンも起動させて、レーザー弾を実弾と共に乱射に近い形で撃ちまくる。

その攻撃は確実にシャルルに命中しており、シャルルも内心焦り始めていた。

(…以外だな。格闘と射撃をバランスよくこなして、相手が一瞬でも隙を見せたら直撃を狙う…。しかもどの攻撃も正確でフェイントを混ぜているから避けきれない!バカ正直に突っ込んでくると思っていた自分が恥ずかしいや。…訂正するね、時城さん)

「えーい!これも喰らっとけ!」

「えっ?」

承壱が大声を上げて気持ちを込めて『何か』を撃った。

その何かとは、ロックスミスのショルダーランチャーに備わっていた単発マイクロミサイル。

それにシャルルが気付いた時は、既に遅かった。

 

「…噂通り強いですね。時城さんに大きなダメージが1回も入れられなかったよ…」

「いや…あのまま続けていたら、俺が負けたかもしれない…」

マスクが展開されるロックスミスのせいでその顔が見えないが、承壱は難しい表情になっており、その右手を顎の部分に添えて考えを纏めている様だ。

シャルルの言う通り承壱のロックスミスのシールドエネルギーは大きく減らせず、マイクロミサイルの直撃したシャルルのリヴァイヴ・カスタムⅡは大きくシールドエネルギーを減らしてしまうが、バトルは続き膠着状態となってしまう。

だが、結局、時間切れとなってしまいシールドエネルギーの残量で承壱が判定勝ちしたのだ。

そのバトルを見ていた一夏、箒、セシリア、簪、鈴音はひそひそと話す。

「シャルルの動きも気になるけど…アニキの動きはなんだ?早くなかったか?」

「ああ。一夏の言う通りだ。承壱さんのロックスミスの速さは何なのだ?瞬時加速には見えないぞ…?」

「箒さんのおっしゃる通りですわ。稼働音が全く異なります。あれはそもそもが全く違うのでは…?」

「だとしたら…承壱お兄ちゃんは、本当に想像力を解き放っているって事…?」

「ええ?ただでさえ早い承壱さんのロックスミスが、更に早くなっていうの…?勘弁してよぉ~…」

各々が感想と意見を言い、承壱の強さを再確認した一同は、承壱の方を見ると考えが纏まらない様で先程から同じポーズのままだ。

(…対策が難しいな。デュノアくんには何か特殊技術を身に着けているのは分かるけど…こっちが把握した時には既に別の武器になっているんだよな。…零落白夜に近い一撃必殺の技があれば倒せるかもしれないな)

考えが纏まり楽な姿勢になる承壱。その耳に周囲のざわめきが聞こえてきた。

「ねえ、ちょっとアレ…」

「うそっ、ドイツの第3世代型だ」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いていたけど…」

「ん?」

その注目の的に視線を移す承壱と一夏達。

そこにいたのは、もう1人の転校生、ドイツ代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒだった。既に漆黒の専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』を展開・装着しており、ピットから降りて堂々と腕組みをして承壱達を見ている。

初対面の時、一夏に宣戦布告して以降、実習等ではクラスメイト達としっかり会話はするが、承壱と一夏には挨拶のみ交わして必要以上に会話しないラウラ。何故ここに来たのかは誰も分からなかった。

「…」

「…どうしたんだ?何か用か?」

承壱が代表して問い掛けるとラウラは、その視線を一夏に向けて話し出した。

「…織斑一夏、頼みがある」

「な、なんだよ?」

「私と…戦って欲しい」

「…理由を聞いても良いか?」

探りを入れる一夏にラウラは少し黙ってから理由を語り出した。

「…私は織斑教官を尊敬している。だからこそ、モンド・グロッソ二連覇の偉業を達成出来なかったのは悔しい。悔しいが…あれが無ければ私は教官と出会えなかった。だからこそ、私は貴様を倒して…自分の心にケジメ付けたいんだ」

ラウラから出たある言葉に承壱と一夏は苦い思い出が蘇り、難しい顔になってしまった。

第2回IS世界大会『モンド・グロッソ』の決勝戦のその日に一夏が正体不明の組織に誘拐されてしまい、報せを聞いた千冬が決勝戦会場からISを装備したまま文字通り飛んで、承壱と共に救出したのだ。結果的に千冬は決勝戦を棄権した事で二連覇を果たせず、独自の情報網で支援してくれたドイツ軍に『借り』が出来た為、千冬はドイツ軍IS部隊の教官を約1年したのだ。

ラウラはその時の教え子の1人らしく、千冬を今でも『教官』と呼んで尊敬しているが一目で分かり、承壱と一夏はラウラの悔しさが痛い程に理解出来た。

あの日の無力な自分達を呪っているのは、紛れもなく自分達なのだから。

「…なるほど。つまり、すっきりしたいって訳か?」

「ああ。そして、私は自分の強さも証明したいんだ。教官に『今』の私の強さを」

(…やっぱり、面倒な娘だな)

一夏と承壱は複雑な心境になってしまうが、ラウラの目的も理解出来た。数年ぶりの再会で憧れの人に今の自分の実力を見てもらいたいのは誰でもある気持ちだ。

しかし、その事情と交流を知らないセシリア、簪、鈴音は困惑してしまい、箒に至っては一夏の前に出て守る様に近接ブレードを構える程だ。

だが、一夏はそっと箒を控えさせてラウラと向き合った。

「あいにくだけど、今すぐ戦う事は出来ない。近い内にイベントがあるからそこで戦うのはどうだ?」

「…学年別個人トーナメントだったな。良いだろう。織斑一夏、貴様は私と当たるまで誰にも敗北するな。約束しろ」

「分かった。俺もその時は全力で相手してやるよ」

「ありがとう。その…物は相談なのだが…」

一夏と試合する約束までこぎ着けたラウラだが、今度は何か言いにくそうにしてしまう。急な態度の変化に全員が首を傾げてしまう。

(今度は何を言い出すつもりだ?)

「その…あの…もし良かったら…」

「「「「「「「?」」」」」」」

「わ、私と…ゆ、友人になってくれないか…?」

「「「「「「「…え?」」」」」」」

意外な申し出に全員の声がハモってしまった。

「実は…知り合いが学園に1人もいなくて…このアリーナに来るにも迷子になりかける程に一苦労してしまったんだ…」

「結構広いもんね、ここ」

声が涙ぐみながら話すラウラ。転入してきた直後に本校舎一階総合事務受付を探し回った経験がある鈴音は、その話から同情してしまい、その言葉に全員がうんうんと頷いた。

「だから…せめて友人になってくれる人が欲しくて…ダメか…?」

「ちょ、ちょっと待って。そうなると…初日の態度とイチへの宣戦布告は何だ?」

「あ、あれは、異国の地にたった1人で来た緊張のあまり…何を言って良いか分からなくなって…言葉が全く出てこなかったんだ…。誤解を招く様な事をして本当にすまなかった…」

今度は涙目になりながら頭を下げて謝罪するラウラ。そんな姿を見て全員あんぐりと口を開けて呆れてしまい、遂に承壱が折れた。

「…はぁ~。皆集まれ」

承壱の掛け声にラウラを除き、全員が円陣を組んで小声で話し始めた。

「どうする?俺は友人として迎え入れたいんだが…?」

「俺、宣戦布告されたけど…あのまま一人ぼっちは可哀想だよ」

「一夏に賛成だ。私も何度も転校させられたから、一人ぼっちの寂しさはよく分かる…」

「私もです。なんだかほっとけませんわ」

「私も。助けてあげたい」

「あたしも。同情しちゃうとこもあるし…」

「僕も賛成。同じ日に学園に来た縁もあるし」

「よし。じゃ、決まりだ」

全員がラウラに対して同情と好意的な意見を持っているのを確認し、円陣を解いた承壱達は、今度はラウラの周りに集まった。その表情は皆、微笑んでいた。

「え?」

「ラウラちゃん、俺達は君を友人として歓迎する」

「ほ、本当か?」

「ああ。でも、一つだけ条件がある」

「?」

「友人は対等な関係だ。だから、お互いに…名前で呼び合おう」

そう提示されてラウラは、暗い表情から一気に明るい笑顔となった。

「ありがとう…!本当にありがとう…!」

「じゃあ、改めて…俺は時城承壱。イチとデュノアくんはもう分かっているからいいか?」

「ええ~?アニキ…そりゃあ無いよぉ…」

「時城さん、あっさりしすぎですよ…」

「私は篠ノ之箒。よろしく頼む」

「セシリア・オルコットですわ。よろしくお願いたします」

「更識簪です。よろしくお願いします」

「凰鈴音よ。鈴って呼んで良いからよろしくね!」

承壱の一声から定番となった自己紹介をし、ラウラは承壱達の新たな友人となる事が出来た。

この後、アリーナの閉館時間となり訓練が全く出来なかったラウラはふくれっ面になってしまい、承壱達はラウラ特有の『可愛さ』を感じたのはここだけの話。

 

アリーナが閉じる前に承壱達はピットに戻って更衣室で着替えるのだが…。

「えっと…僕は…」

「別の場所で着替えるんだろ?いいよ。行ってきな」

「すみません…」

「気にするな。肌を見せるのを嫌う奴は大勢いる。それも個性だと思えば問題無い」

承壱はそう言った後、シャルルは一礼してから別の更衣室に向かった。シャルルが来てからはトランスジェンダーの配慮として、承壱と一夏はシャルルを先か後に行動してもらう様にしていた。因みに箒達女性陣は女子更衣室で着替えているが、承壱達の話を聞いている。

そんなシャルルを見送り、自分の荷物を置いたロッカーがある更衣室に着いた承壱と一夏は、着替えながら話し始めた。

「…ありゃ、どういう生き物なんだろうな?」

「急に何の話アニキ?」

「ラウラちゃんの可愛さだよ。ドイツの女性軍人はキュート&ビューティーで攻めているのか?」

「確かにラウラは可愛かったけど…それは違うと思うよ?」

「そうだな。だが…ラウラちゃんの気持ちはよーく分かるな…」

「ああ…」

「イチ、ラウラちゃんとは全力で戦えよ?じゃなきゃ、あの子に失礼だからな」

「分かっているよ!それが俺とラウラの為になるんだろ?」

「そうだ。分かっているなら、やってくれよ?」

「ああ!」

グッと拳を握り締めて気持ちを固める一夏。承壱は面倒が治まったと思い、話題を変更した。

「話は変わるが、デュノアくんとの同室はどうだ?何か問題はあるか?」

「ああ、それ…。1人部屋の癖がまだ抜けなくて、シャワー上がりにパンツ一丁でうろうろしたら怒られちゃった…」

「バカ、自宅じゃないんだからそんな事するな。というか…1人部屋でもパンツ一丁でうろうろするな、風邪ひくぞ?」

「ごめんなさい…」

一夏の無意識の行動を咎める承壱は、呆れもあるがここ数日間に得た情報を纏める。

(やっぱり、トランスジェンダーなのか?だとしてもなんか妙なんだよな…。まさか男装女子か?)

推測するが、ISスーツの姿のシャルルを思い出しても女性特有の体型になっていないので、益々分からなくなってしまう承壱。そう思いながらも承壱は着替えを終え、同じく一夏も終えた。

『あのー、織斑くんと時城くんはいますかー?』

「はい?えーと、織斑と時城だけいます」

「え?誰?」

ドア越しに呼ぶ声が聞こえ、声の主はどうやら真耶の様だ。

『入っても大丈夫ですかー?まだ着替え中だったりしますー?』

「「問題無いですー!」」

『そうですかー。それじゃあ失礼しますねー』

パシュッとドアが開いて真耶が入ってきた。

「あれ?デュノアくんは一緒ではないんですか?今日は皆さんと実習しているって聞いていましたけど」

「デュノアくんなら別の更衣室に行きましたよ?」

「そうですか。実はお二人に用事があるんです。ちょっと書いて欲しい書類があるんで、職員室まで来てもらえますか?専用機の正式な登録に関する書類なので、ちょっと枚数が多いんですけど」

「そういう事なら分かりました。イチ、デュノアくんには先に戻っておく様に連絡してくれ」

「OK」

「では、行きましょうか」

そうして承壱と一夏は、真耶の後ろに着いていく形で職員室へと向かった。

 

「…はぁっ…」

ドアを閉め、寮の自室に自分1人だけになった所でシャルルは吐き出す様に溜め息を漏らした。それまで我慢していたせいだろうか、無意識に出たそれは思ったよりも深くシャルル本人が驚く位だった。

(また…気を使われちゃった…)

シャルルは承壱達の気遣いに助けられてきた。普段の生活でもフォローをして貰い、シャルルの初めての学園生活はかなり快適であった。

しかし、それがシャルルに罪悪感が増していく。

(…シャワーでもして気分を変えよう)

シャルルはクローゼットから着替えを取り出してシャワールームへと向かった。

 

「ただいまーってあれ?シャルルがいないな」

専用機の正式登録の書類を書き終えた一夏は漸く部屋に戻り、すぐにシャワールームから響く水音に気付く。

(あ、シャワー中なのか。そういえば…確か昨日ボディーソープが切れたって言っていたっけ)

そうシャルルが言っていた事を思い出した一夏は、クローゼットから予備のボディーソープを取り出して届けようと思ったが、相手が相手なので迷ってしまう。

(どうしよう…切らしているから困っていると思うけど…今、行ったら大騒ぎに…)

ベッドに腰掛けてどう行動するべきか、うーんと迷ってしまう一夏。

すると急にシャワールームの扉が開かれた。

「ボディーソープの中身が無かった…。確か、クローゼットの中に予備のやつがあった筈…だ…か…ら…」

「へ…?」

そこには、生まれたままの姿でこっちを見る金髪の女子が全身を濡らした状態のまま立っていた。

「「…」」

いきなりの出来事に、お互いに時が止まったかの様に固まってしまう。

そして、数瞬の後に我に返った一夏が最初に思った事は…。

(…箒、ゴメン。浮気じゃないから怒らないで…)

恋人への謝罪と釈明であった。

 

「書類ってのは、本当に面倒だな…」

「だか、こうして私も一緒に夕食に行けるから、今日は良かったじゃないか」

「だな」

職員室で正式登録の書類を書き終えた承壱は、同じタイミングで仕事を終えた千冬と共に一夏とシャルルの部屋に向かっていた。というのも承壱の提案で今夜の夕食はラウラの歓迎会も兼ねる事にした為、千冬も誘ったのである。

その時、承壱と千冬にスマートフォンが同時に鳴った。見るとメッセージアプリの通知で、相手は家族グループの一夏からだった。

「イチからだ。『マジでピンチ!助けてくれ!』だって」

「あのバカ…今度は何をした?」

「またまた面倒か?せっかくラウラちゃんが和解したのよぉ…」

「行くぞ承壱。恐らくまだ部屋だろう」

「OK」

連絡を受けて承壱と千冬は、急いで一夏とシャルルの部屋へ向かう。その途中、箒、セシリア、簪、鈴音、ラウラとも合流した。待ち合わせの場所が丁度、一夏とシャルルの部屋の前にしていたのあったからだ。

「承壱さんどうしたんですか?」

「イチからSOSコールだ。現場はイチとデュノアくんの部屋だ。付いてきてくれ」

「は、はい」

「何事でしょうか?」

「ただ事じゃなそう…」

「もしかして、シャルルと喧嘩して打たれたとか?」

「鈴よ、それは物騒な発想だぞ」

「…嫌な予感がする」

それぞれ思いを抱きながら一夏の部屋に到着し、承壱が代表してドアをノックする。

「イチ、俺だ。開けていいか?」

『アニキか…?皆ももういる?』

「いるぞ。入っていいのか?」

『ど、どうぞ…』

入室の許可を貰い、承壱達はぞろぞろと入る。

「この人数で入ると流石に狭くなる…って、え?」

「承壱、どうし…は?」

「…」

「…あら?」

「…なんで?」

「どうゆう事よ…?」

「以外だな…これは」

一夏とシャルルしかいないと思われていたこの部屋。

しかし、いたのは一夏とシャルルによく似た容姿の金髪の女子であった。その女子は髪を下ろし、胸の膨らみを隠さずにジャージ姿いるが、承壱達は直感でシャルルと理解してその姿に驚いた。

「君、デュノアくんだよな…?」

「その胸の膨らみ…まさか、あんたは女だったの!」

鈴音の直球な質問にシャルルはコクンと頷いた。

「はぁ…やっぱりか」

「千冬?やっぱりって学園上層部も探りを入れていたのか?」

「ああ。トランスジェンダーだったら、いい前例になるかもしれないと期待されていたんだが…」

「事態は変わったって事か…」

千冬は承壱に答え合わせをする様に説明するが、その様子はまた頭痛の種が出来てしまった呆れ顔であった。

その一方、箒はブルブルと震え、怒りの覇気がその身体を包んでいた。

それに気付いた一夏は、顔を白くさせ冷や汗を大量にかいてしまう。

「ほ、箒…?」

「…一夏…私がいながら…シャルルに手を出したのか…?」

「絶対に出してない!というか俺も今初めてこの事態になっているんだよ!」

「…本当か…?嘘ならばお前の舌を引っこ抜くぞ…?」

「絶対にやってないってば!千冬姉とアニキに誓って!俺はやってない!」

この後、怒り狂う箒を止める為、全員で落ち着かせるのであった。

 

つづく




現在公開可能な情報

ラウラ・ボーデヴィッヒ
前回の宣戦布告はまさかの緊張と恥ずかしさから来た物であった事が判明し、すぐに和解。頼もしい友人として迎えられ、承壱達のマスコットキャラクターになりつつあるが…。

ブルー・ティアーズ
セシリアの専用機。白式と同じく承壱の改造が施され、実弾式短距離ショットガン『ハルデ』が追加された。

甲龍
鈴音の専用機。白式と同じく承壱の改造が施され、ロックスミスのアームキャノンが転用された。

打鉄弐式
簪の専用機。白式と同じく承壱の改造が施され、3点バースト式アサルトライフル『嵐雪』が追加された。

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