第二の人生は、闘争と謀略が世に渦巻く、剣と魔法の中世風冒険ファンタジー世界のようです。 作:ウルP
モチベが消えたらエタります。
精神男の、TS女主人公。
どれだけ成長してもチビで痩せっぽちだが、見目は悪くなく、むしろ成長するほどに美しい/可愛いとすら言える。
異常としか言いようがない魔法の才能を持って生まれ、疲れ知らずの無尽蔵な体力と、凄まじいまでの魔力と精神力からなる継続戦闘能力を強みに、ダンジョンアタックなどで実践経験を積みながら高速成長し、若くして怪物級の存在にまで成長してしまう。
最強ロリ魔法使いおじさんに、色々と狂わされる人が続出する。予定。
両親は健在だが、ここ数年はマトモに顔を見ていない。
たまに見ても、ほとんど他人と変わらない態度。
そんな、血縁上は親というだけの存在だ。
そんな親にも、感謝はしている。
血の繋がりを意識するほどの、親しみのある感謝ではない。
それでも、ここまで自分を生きながらえさせてくれたことに、感謝はしているのだ。
自分以外誰もいない病室にて…死の間際でも、そんな感謝が胸中にあった。
+
私は、幼い頃から、体が弱かった。
激しい運動ができず、習い事もまともに続けられない自分の教育というものに、両親は早期に見切りをつけて次男の教育に熱心になった。
そのことに、恨みなんてものはない。
むしろ、両親に対しては期待に応えられなくて申し訳ないという気持ちと、次男が健康で元気でいてくれたことにいつも感謝をしていたほどだ。
だが、両親も、次男も、いつもどこか、私にはよそよそしい態度だった。
嫌われているわけではなかったのだが、少しばかりの腫れ物のような扱いと、異物感のあるコミュニケーション。
平たく言えば、他人行儀で、よそよそしい。そんな態度。
私は、期待されずに育てられたが、最低限の勉学と教養を身に付ける努力さえ怠らなければ、代わりに不自由のない暮らしを許された。
激しい運動ができない私は、娯楽として読書と、そしてデジタルゲームを好んだ。
アナログゲームの…いわゆるTRPGという存在に憧れはあったが、それを一緒に遊べる友人というものはできなかった。
よほど調子が良くない限り外で遊ぶことすらできなかった私は、人生のほとんど全ての時間を、外に憧れながら室内で過ごした。
その憧れを満たすように、本も、ゲームも、冒険を題材としたようなものが増えていった。
そればかりの人生であった。
ろくに働くことができない私は、両親から与えられた小遣いを投資に用いて、少しづつ着実に増やし、そうして日々の生活費を稼ぐようになった。
情報を集め、精査し、投資し、大きく稼ごうとはせずに元手を着実に増やし、ただ稼ぐ。それだけ。
そんなことをしなくても、両親は私の生活費を工面し続けてくれた。
いつまでも良くならない弱い体のメンテナンスにかかる医療費も含めて、全て。
自分でお金を稼ぐことの意味なんて、無かった。
それでも、いつか自立して生活してみたい、外の世界で一人で生きてみたい。
その憧れが捨てられず、お金だけは自分で稼ぎ続けた。
30歳に、癌になった。
投薬も手術も試したが、体が弱すぎるためか、再発。
以後は、寝たきりの生活。
32歳まではそれでもお金を稼ぎ続けたが、余命宣告されたと同時に、スッパリ辞めた。
心が折れたと言い換えても良い。
だから、私の人生のほとんど全ては、外の世界への憧れと、その憧れを満たすための本とゲームばかり。
誰とも深く関わることもなく、ただ独りで憧れ続けて、そして心折れただけの男。
本当にそればかりしかない人生だった。
なんという、浅い走馬灯だろう。
しかし、それを嘆くことができるほどに大きな心の動きはない。
心折れたあの日から、とっくに私の心は枯れて、乾き切っていた。
ただ、嘆きはしないが、せっかくだからもう少し思い出に浸ろうと、目を瞑って記憶の湖に深く沈み込んだ。
おそらく、この瞼がもう一度開かれることはない。そんな予感がする。
微睡よりも深い眠気に誘われて、まるで空気が粘土にでもなったのかというほどの呼吸の重さを感じながら、最後の夢を楽しむことにする。
幼い頃…ずっと憧れ続けた外の世界を、その憧れを満たしてくれた……いちばん、あこがれをみたして、くれた。ゲームのことを、おもいだす、ことにする。
+
「ミッドガルズ伝記」というゲームがあった。
ストラテジー要素…経済や政治や探検の要素が色濃く、かつキャラクター育成のRPG要素と、プレイヤーの選択によって物語が変化するアドベンチャー要素もあるという、色々と詰め込みすぎなゲームだった。
このゲームが発売された頃には、とある錬金術師が主役の冒険ファンタジーRPGが大流行りした時期でもある。
そのためか、こちらのミッドガルズ伝記はそのゲームをさらに要素モリモリにしてみた!みたいな内容になっている。
冒険も、戦闘も、錬金術も、魔法も、経済も、戦争も、農耕も、工芸も、魔物の捕獲と配合も、奴隷の売買や殺人も、プレイヤーが望むなら国盗りや国造りすら、他にも、やりたいことは大体全部できる。
ただし、あまりにも要素が多すぎるのと、エンディングまで遊ぶのに時間がかかりすぎるという問題があって、評価されるのが遅すぎて思ったより人気が出なかったらしいという話を、後年のネット記事や紹介動画などで知った。
その評価も、「まあまあ良ゲー、コアなファンはいる」という、結構微妙なものだったが。
私は、恐らくだが、そのゲームのコアなファンの一人ということになるだろう。
少なくとも、普通にプレイするだけでも、引きこもり同然の生活をしている自分が半年ほどかけてやっと1回目のエンディングを見ることができたというそのゲームで、通算10回もエンディングを見るほどにプレイを楽しんだのだから。
なにも、毎度半年も遊んでいたわけではない。
遊び方によってはかなり早い段階でエンディングを迎えることがあるし、試しにすぐに生まれてからすぐに死んでもエンディングを見ることができたので、そういうおふざけプレイも含めての、通算10回という数字だ。
それに、1回目のエンディングを見終えた後は、ある程度遊び方を熟知したおかげでエンディングを見るためのペースが早まり、それは回を追うごとに早まっていき、最後にまともにエンディングを迎えた時には3ヶ月にまでプレイ時間を短縮していた。
それでも、3年強という長い間、とにかくハマってやり込んだゲームである。
あれから何年も…十数年ほども時間が経っているが、それでもかなり鮮明に…関係が希薄だった家族のことよりも、ずっとハッキリと思い出せる。
今ここに、そのゲームはない。
まあ、あったところで、もはやプレイできるほどに体も思考も働いてはくれないだろう。
今は…夢中にある自分の思考はこうして働いているが、目が覚めている時の方が意識が胡乱げでハッキリしないようになっているのだから、仕方のないことだ。
だが、こうして思い出してしまうと、最後にもう一度プレイしてみたいという欲求が湧いてきてしまった。
乾き切っていたと思っていた自分に、まだ欲が湧き出るような潤いが心の隅に残っていたことに小さく喜び、そしてあのゲームをプレイできない現実を少し悲しんだ。
プレイはできないが、それならプレイした気になって思考を働かせてみようと思った。
どうせ、思考を働かせる以外にすることもない。
それに、これが死の間際だというのなら、最後になにもせずに暗闇に沈んでいくだけというのも、味気なく、ただただ無常だ。
まずは、この世界の簡単な設定・あらすじから。
ミッドガルズ大陸を舞台の中心に置き、幾つもの国があり、争っていたり同盟を組んでいたりと、国同士でさまざまな関係性を持つ。
あらすじに触れたら、プレイヤーキャラクターの…自身の出身となる「国」を選ぶ。
大陸中央に位置する、大国「ウルズリング王国」は、肥沃な大地に恵まれ育まれた強国であり、食料や経済的な面で豊かな反面、政治的な派閥争いでドロドロとした闇の深い国でもある。
全体的に中世ヨーロッパ的デザインで、初めてこのゲームをプレイするような初心者向けの国であり、この国を出身に選んでおけば、安心して成長することができる。
大陸北部に位置する、大国「ニンブル帝国」は、極寒の山岳地帯を有する険しい環境を持ち、そこで育った屈強な戦士や兵たちが住まう戦士の国である。
長年ウルズリング王国とは戦争が続いている関係性があり、戦士を育てるなら良い国ではあるのだが、それ以外の環境や状況などの要素がかなり絶望的で、早死にしやすくプレイ難易度が高い国だ。
大陸南部に位置する、大国「ムースペル神王国」は、代々「神王」と称される神にして王たる存在が国を治める、大部分が荒野と砂漠の国だ。
メタ的に言えば恐らくエジプトあたりがモデルなのだろう、環境は悪いが建築技術や教育制度が抜きん出ており、経済にも強い。このゲームのプレイに慣れてきて、少し歯応えを望むなら、この国がオススメだ。
大陸北西部に位置する、小国「ブリスティン竜王国」は、円卓の騎士の物語がモデルになったかのような騎士の国であり、ニンブル帝国とは別の意味で過酷な国だ。
この国を出身にすると、何もかも難易度が高すぎて、ほとんどの場合で育成に失敗する。ほぼ運ゲー、もしくは「出身」の次に選ぶ特性で特殊なモノを選ばなければ、まともにプレイできる国ではない。
大陸北東部に位置する、小国「オズ聖皇国」は、この世界で最も広く普及されている宗教の総本山があり、そこを中心に築かれた街であり、国という形になった。
ニンブル帝国とは中々に蜜月の関係であるものの、争いは好まず非戦を謳い、戦士の治療や慰霊には協力するものの戦争には与しないという断固たる姿勢を貫いている。
帝国内部では、このオズ聖皇国の態度や利用価値などを巡って内部争いが発生し、その内部争いで強硬派が勝利すると聖皇国は侵略され、それをキッカケに世界中を巻き込んで大戦争に発展する…という特殊なイベントが用意されている。
ここを出身とした場合は、プレイヤー自身が政治的な立ち回りを上手に行わないとほぼ確実に戦争が回避できないため、政治ロールプレイなどを中心に行いたいならやりごたえを持って楽しめる国だ。
最後に、大陸東部に位置する、小国「ヤマト皇国」は、他の国と比べると極めて小さい島国ながらも、その島の中で延々と陣取り戦争をしている戦国乱世状態の野蛮な国である。
国同士の戦争をスピーディーかつ何度も楽しみたいというプレイをしたい場合にオススメの国だが、異常に強いネームドキャラクターがかなり多く、不意の遭遇戦などで致命傷を負う危険性が高く、高齢・大往生で死ねることはほぼない。
私は、今回は初心に帰って「ウルズリング王国」を出身に選ぶ。
やはり、なんでもできるという環境に憧れがあったことを、すっかり思い出してしまったからだろう。
他の国にもそれぞれ独自の魅力があるのだが、やはり最後は、暴力的なまでに多くの選択肢が用意されているという、そんな自由を望んでみることにした。
出身の国を選ぶと、次は「特性」である。
例えば、「魅惑の美貌」は交渉や売買で有利に働いたり、「健康な肉体」なら疲労蓄積の減少や病気の発生低下・デバフ率の減少など、持って生まれた特殊な性質・才能のことだ。
キャラクター作成時に付与されている特別なポイントを割り振って取得し、決定したら自分の意思では付け外しができなくなる。
特殊なイベントによって、後から特性が消えたり、後から追加されたりすることもあるが、基本的には一生のお付き合いとなるだろう。
真っ先に選んだのは、「小柄な女」というもの。
このゲームは生まれの性別で女性を選ぶことに、魅力システム的な面以外での明確なメリットはなく、ステータスの成長度合いの男女差などを考えると、むしろデメリットの方が多い。
男尊女卑的な価値観が各所にあるため、キャラクターのステータスとは無関係に、見下されたり不自由を押し付けられたりするのだ。
また「小柄な」と付いている通り、どんなに成長しても体格は小さく、通常よりも筋力成長がさらに下がるというかなりキツいデメリットまで持つ。
いわゆるデメリット特性なのだが、代わりに使用できるポイントが大幅に増加する。
…まあ、ステータス成長を犠牲にしてまで選ぶ特性かと言われると微妙だが、女には女の強みもあるし、得られたポイントで強力な特性を複数取得できるという強みもあるので、今回はこれを選んだ。
続いて、「竜の心臓」「魔力の渦」「祝福の子」を選ぶ。
竜の心臓は、「ブリスティン竜王国」を出身とする場合に特殊な出自を選べるようになる、キー特性でもある。
極めて高い魔力と体力の成長のボーナスと、おまけに疲労度蓄積値の減少というボーナスまで持つ。
取得のための必要ポイントはかなり大きいが、その分だけ破格の性能を持つ特性だ。
魔力の渦は、魔法の発動に必要な逐次消費型のポイント…いわゆるMPが少し早く・多めに自然回復するようになる特性で、病気や空腹・疲労などの状態でも回復率が下がらなくなる。
ついでに魔力成長のボーナスがあり、魔法使いビルドをするならほぼ必須と言って良い特性だ。
これもそれなりに必要ポイントが要求されるので、デメリット特性無しだと、竜の心臓とコレをセットで取って選択終了となるくらいだろう。
祝福の子は、魔法の消費MPそのものが減少する特性であり、魔力の渦とセットで取得することで、無尽蔵に魔法攻撃ができる移動砲台と化す。
こちらは祈力というステータスに成長のボーナスが乗るが、回復魔法に必要になる能力値なので無駄にはならない。
ただ、消費MP減少の量は控えめだし、祈力の成長は回復以外にあまりメリットが多くないため、この特性を取得するための必要ポイントも控えめで優しい。
これら3つの特性は、魔法使いビルドをするなら鉄板となる特性だ。
女性であれば、むしろ男性よりも少しだけ魔力の成長曲線が優遇されているくらいなので、デメリット特性と含めてセットで取得することをデザインされた特性群だと思われる。
さらに追加で、「非力な痩身」「健康な肉体」「魅惑の美貌」「花咲く笑顔」を選択。
非力な痩身も、デメリット特性であり、筋力と頑丈の成長が低下する。
また、常時痩身になるせいで、魅力に常時マイナスの補正が乗ってしまう「痩身時のデバフ」もかかるという、それなりに酷いデメリットを持つ。
魅力が高すぎるか、逆に低すぎると、悪漢や荒くれ者の標的にされやすくなるというシステム的な問題があるので、このデメリットはかなりキツい。その分、使用できるポイントがかなり増加する。
それらのデバフ・デメリットを帳消しにするための、健康な肉体と、魅惑の美貌、そして花咲く笑顔。
健康な肉体は、頑丈に大幅な成長のボーナスを得られて、さらに病気のなりにくさ・回復の早さ・疲労度蓄積値の減少というメリットがモリモリに積まれている。
筋力は完全に捨てて魔法特化にするが、そうだとしても生存力に直結する頑丈が低くなりすぎることは避けたいので、これはマストで選出したい。
RTAとかやるつもりなら無視できるのかもしれない…というか、このゲームでただエンディングだけを望むというRTAをするなら、キャラクターの誕生直後に死ぬのが正解なので、可能な限り死にやすいデバフを選ぶ方がむしろ正解だろう。
魅惑の美貌は、魅力というステータスに成長のボーナスを得られて、さらに異性に対してのみだが魅力に常時プラスのバフが掛かる。
非力な痩身とはほとんど真逆の性能だが、魅力以外にボーナスがないので必要なポイントは控えめ。
花咲く笑顔は、魅力と話術というステータスに成長のボーナスが得られて、健康状態ならさらに交渉系技能の成功率や品質にバフが乗る。
バフは健康時限定で、さらにバフ量もさほど多くはないが、このバフがステータスが低すぎる序盤には特に有益に働いたりするし、低すぎる筋力を補う意味でも交渉事には強くありたい。
後は、残り少ないポイントで、「野営の心得」を選択。
野営の心得は、頑丈・敏捷・器用の成長にほんのりと成長のボーナスが乗り、料理・技術・工芸のスキルにほんのりと品質ボーナスが乗り、ほんのりと疲労度蓄積値が減少する。
様々なメリット能力の複合だが、どれもこれも控えめでチリツモ的な効果しかない。
残ったポイントの中で選択可能な「疲労度蓄積値の減少」のボーナスを持つスキルがこれしか無かったので、消去法的に選んだ形だ。
デメリット特性に、「小柄な女」「非力な痩身」。
筋力の成長に極めて大幅なマイナス、頑丈さもマイナス。
さらに、常時痩身デバフが発生する状態になった。
メリット特性には、「竜の心臓」「魔力の渦」「祝福の子」「健康な肉体」「魅惑の美貌」「花咲く笑顔」「野営の心得」。
魔力の成長に絶大なプラス、体力と頑丈と魅力の成長に大幅なプラス、他に祈力・話術・敏捷・器用にプラスと、料理・技術・工芸に品質ボーナス。
さらには、疲労度蓄積値の絶大な減少と、MP自然回復速度の向上、健康状態の維持のしやすさと、健康時の交渉系能力のバフと、便利な能力がモリモリとなった。
極めて低い筋力を他の能力でカバーしつつ、高い魔力とMP自然回復力を活かして敵を蹂躙。
そして、疲労度蓄積値の減少のおかげで疲れ知らずで活動し続けられるという、継戦能力と火力を両立した暴力的なビルドだ。
女性特有の…多くのステータスの成長率が低いという仕様は、敵を蹂躙しまくることでステータスを伸ばしまくるという、過剰成長でカバーする方針である。
…やけに明瞭に、十数年も前に遊んだゲームのシステムや設定を思い出せるものだな。
と、少しだけそんな疑問が湧いた。
そう思ったところで、しかし結局のところ、今の自分にはこの夢想を楽しむ以外には何も無かった。
なので、疑問はそこそこにして横に置き、今はただ次の工程へと進めることにした。
特性を選んだら、次は「出自」となる。
生まれの環境、親の職業や階級、それに伴うプレイヤー自身の境遇。
ウルズリンク王国では、極めて特殊な職業を除けば、ゲーム中に用意されたほとんどすべての職業的な出自が選択できる。選んだ特性次第では、王族かそれに近い存在にもなれる。
先に選んでいた特性によって、男として生まれなければ選択できない出自…王子様などは不可能だが、お姫様とかなら選べるというわけだ。
お姫様は、それはそれで面白そうだが、自由を望む自分には少し興味が薄いというか、今際の際で選ぶ境遇ではないだろうと思う。
自由を望むなら、中流以上の階級で、自由を認めてくれるような境遇が望ましい。
もしくは、成長するまでは家庭に縛られた生き方を受け入れて、力を付けたら…家族を裏切る形にはなってしまうが、自由のために勝手に出ていく。とか。
帰ることができる家を失うことになるが、代わりに自立して自分だけの家を買ったり、日銭を稼いで宿暮らしもできる。
そう考えると、ならば最初は成長に集中できる環境がいいだろうと思い至り、上流階級である「名家の子」という出自に決めた。
名家の子は、名家の子息または子女として生まれ、王国内の学院に進むか、騎士を目指すべく訓練を積む日々を送ることになる。
生まれる家は、特性で固定しない限りはランダムで選ばれることになる。
軍人系の家だったり、政治家系の家だったり、商人系の家だったり、王族に近い家だったり。
今回の自分のビルドでは、子女として生まれるしかなく騎士になれる道はないので、ほぼ強制的に学院コースになる。
学院では、最低限の…スポーツレベルの剣術や馬術くらいの運動系技能を育てつつ、政治や交渉に強くなれる成長環境となっている。
また、いくつかの選択肢から選ぶ形になるが…筋力・魔力・祈力のいずれかの成長ボーナスと、何らかの技能成長や後転的な特性獲得に繋がる、特殊な成長環境を得られる場でもある。
今回のビルドでは筋力成長ボーナスを得られてもほとんど意味がないので、得られるかもしれない特性を考慮しつつ、魔力か祈力のどちらかにボーナスがある成長環境を選ぶことになるだろう。
出身・特性・出自を決めたら、あとは特性の選択時に使用しきれなかったポイント分を、直接ステータスのボーナスに割り振って、それから名前を振ってビルドが完了となる。
この方法で割り振ったステータスは、固定値での上昇でしかなく、基本的には特性による成長ボーナスを得た方が強くなれる。
ただ、装備や魔法の習得・使用には必要なステータス値というものがあるし、ただ学習するにも知力の数値が必要となる。
まだ成長できていない序盤の頃だと、この固定値成長がバカにできないくらいしっかり効果を発揮するのだ。
今回のビルドでは知力の成長補正を得ていないため、ここでポイントを知力に全部振って底上げしておく。
こうしておけば、早い段階で少しだけレベルの高い教育を受けることができるようになり、成長のしやすさも上がるだろう。
なお、知力は成長するほどに、魔力系や祈力系の魔法の効果量や、交渉系能力の成功率や品質が上昇するなどの様々なメリットがある。
しかしながら、どれも増加量が微量なので、基本的には「より良い成長をするための、土台となる数値」でしかない。
ただ知力特化だけをしても、頭でっかちの器用貧乏にしかならないという。何だか世知辛い感じである。
ちなみに、キャラの見た目はプレイヤーが作成したり選んだりできない。
デメリット特性でとんでもない不細工になるようなものを選んでいれば、その通りに不細工なキャラのモデルからランダムにプレイヤーの見た目が選ばれる。
今回の自分のビルドなら、見た目の選出に関して魅力系の特性を選んでいて、かつ「小柄な女」で小さな体躯のモデルに限定しているので、その中からランダムに選ばれるはずだ。
痩身というのは、特性によって縛られていない限りはどのようなキャラクターでも発生する肉体の状態なので、モデルの選択に影響を与えない要素となる。
プレイヤーが最後に決定できるのは、プレイヤー名だ。
このゲームに限らず、名前が決められるタイプのゲームでは、いつも実名か、それに近い名前にしていた。
今回も、記憶に残る以前のプレイと同じく、「オダ・ソーマ」と名づけることにした。
この並びだと、名がオダ、姓がソーマ、その後に家名が並ぶようになる。
例えば、ウルズリング王家の傍流の一つなら「オダ・ソーマ=ローズリング」となり、家名の無い家系ならそのまま「オダ・ソーマ」となる、といった具合だ。
それにしても、疲れ知らずで健康的で、小さくて魅力的な女の子、か。
モヤシのように白くてヒョロ長い男である自分とは、細い以外に共通点がない、ほとんど真逆の存在だろう。
今日まで、特に女性になりたいという願望を抱いたことはないが、しかし今の自分を好んでいるかというと、否としか言いようがなかった。
両親には感謝しているが、それでも私は、自分の生まれ持った身体と境遇が、ずっと好きじゃなかった。
だからだろうか。
今この瞬間は、自分が女の子として生まれていたら、もっと自分を好きになれたのかもしれない…などと思ってしまうのは。
性別が自己嫌悪の原因であるはずがないとは理解した上で、しかしそういった可能性もあるんじゃないか?とだけは考えてしまって、まだキャラクターの完成まで操作していないが、すでにこのキャラを好きになり始めていた。
もっと言うなら、私はこれになりたかった、これで生まれたかった。
そんなことを、今際の際で考えていた。
最後の最後に、心の底から湧き出る願望を吐露する。
叶うはずのない願望が自身の心から漏れ出ていってしまい、またしても心が渇き出し、胸中には一気に虚無感が訪れた。
仄暗い夢の中で、キャラクターの作成を完了し、次へ進む。
淡々と、ただの作業のように。
そこで男の意識は途切れた。
+
しばしの間、風のない静かな湖面のような場所に浮かぶ小舟が、光の中をゆっくりと進んでいった。
小舟の中には、意識のない男が一人。
その輪郭は、徐々に光の粒子となって溶けているようだ。
途中、誰かが優しく男の頬を撫でたような気がした。
男は、何かを囁かれた気もする。
だが、男に意識はなく、耳に注がれた言葉も、意味のある言葉としては伝わらず、ただ耳をくすぐるだけだった。
『祝福を』
『竜の御子よ』
『あなたの旅路に、多くの幸福がありますように』
小舟はゆらゆらと、静かに光の水面を渡る。
光の粒子となって徐々に輪郭が溶けている、痩せぎすで色白く不健康そうなヒョロ長い男を乗せて。
湖の果てを目指し、ゆらゆらと、ただ静かに進んでいく。
▼よもやま・キャラクタービルド時に選択されたやつの概要
・「ウルズリング王国」
初心者向けの出身地。
後で選べる出自の幅が極めて広く、どんなビルドで始めても安定感のある生涯を送ることができる。
この国を出身とした場合、敵対国である「ニンブル帝国」の内政に関与するための難易度が極めて高く、30年ほど生きた頃に発生する世界大戦を事前に防ぐことがほぼ不可能になるという欠点と、内政がドロドロで裏組織なども広く深いので一歩道を踏み外せば一気に外道に落ちてしまうという、国の規模と振れ幅が大きすぎるが故の問題もある国。
・「小柄な女」
「小柄」かつ「女性」のキャラクターとしてでしか誕生しなくなるというデメリット特性。
真逆の特性で「屈強な男」というものが存在し、無難にバランスよく強くなりたいならそちらの方がメリットが多い。
性別や体格の大きさに関わる特性はいずれか一つしか取得できず(取得しなくてもいいが、その場合はどんな体格であっても、特性としての特別な能力はない)、この特性は後天的に変更されない。
・「非力な痩身」
筋力と頑丈さを損なうデメリット特性。
常に痩身状態になるというデバフがなかなか厄介で、魅力を参照する際に魅力の数値が大幅に減少した状態で計算されるようになる。
なお、「痩身状態が好き」というキャラクターが相手の場合、そのデバフが反転して大幅なバフになるという、極めて限定的な仕様が存在する。
・「竜の心臓」
魔力と体力の大幅な成長と、疲労度蓄積値の高い減少効果を併せ持つ、破格の良特性。
後天的に獲得することが不可能な特性で、後天的に失うこともない。
この特性の筋力と頑丈バージョンに「竜の心魂」という特性があるのだが、効果を考えると名前は逆の方が似合っているのではないか?などと、後年にネットの情報サイトなどで突っ込まれまくっている。
・「魔力の渦」
MP自然回復の性能が強化される特殊な特性。
後天的に獲得できる場合があるが、獲得条件が極めて厳しく、概ね老齢してからの獲得になるので、その頃には…一応便利だけど、すでにあんまり意味がないという特性になっていたりする。
稀に後天的に失うこともあり、そうなると二度と獲得できない。
・「祝福の子」
消費MP減少の能力が得られる特殊な特性。
先天的に取得した場合と、後天的に獲得した場合で、性能に微妙な違いがあるという隠し要素が存在している。
後天的に得られるものは、同名だが別特性という扱いであり、どちらか片方しか取得できない。
・「健康な肉体」
頑丈の成長に大幅なボーナスが得られる特性。
健康状態の維持のしやすさと、疲労度蓄積値の減少というメリットもあり、取っておくと安定感のあるプレイが維持できる。
後天的に獲得するのが難しい特性だが、環境さえ良ければ、かつ運が良ければ獲得できることがある。
・「魅惑の美貌」
魅力の成長にボーナスが得られて、異性限定だが交渉能力にバフがかかる特性。
後天的に獲得しようとすると、異性を魅了し交渉を有利に進められる特性というだけあって、かなり悪辣な人生を歩む必要が出てくる。
善人プレイを前提とした上でこの特性を得たいなら、生まれ持った特性として得たほうが良い。
・「花咲く笑顔」
魅力と話術に成長ボーナスが得られて、健康時限定で交渉能力にバフがかかる特殊な特性。
先天的に取得した場合と、後天的に獲得した場合で、性能に微妙な違いがあるという隠し要素が存在している。
後天的に得られるものは、同名だが別特性という扱いであり、どちらか片方しか取得できない。
・「野営の心得」
色々な能力にほんのりとボーナスがかかる特性。
わざわざ先天的な特性で得ずとも、後天的に獲得する難易度がさほど高くないという特性ではあるのだが、後天的な獲得のためには…ざっくり言えば「肉体的にそこそこ優れている」という必要があり、魔法系ビルドだと獲得がそれなりに困難となっている。
疲労度蓄積値の減少は、連続した活動時間の延長や、疲労状態になることでのデバフによるステータス低下を防ぐという意味で重要視され、採用される形となった。
・「名家の子」
ランダムな上流階級の子として生まれる出自。
概ね成長環境に恵まれる代わりに、生まれた家次第では裏社会にどっぷりと両肩まで浸かっている家の子になる場合もある。
そうなった場合、裏社会の人間と持ちつ持たれつな関係を維持しなければ…つまり犯罪の片棒を担ぎ続けていないと、次の標的になるのは自分になってしまう。
また、そうでなくても犯罪の標的にされやすかったり、治安の悪い場所ではさらに優先的に悪漢や荒くれ者の標的になるなど、場所によっては露骨にデメリット要素が浮き彫りになる。
危険だったり粗暴な雰囲気のある場所に足を運びたいなら、生まれ持った良質な成長環境を活かして、悪漢や荒くれ者を返り討ちにできるようになってからにしよう。
より限定的な・詳細な出自を選択したい場合、対応する「出身」と「特性」を選択しておく必要がある。