改心悪女四種盛り   作:白のワイん

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だんだん失速。
気が向いたら再整理対象。


終わりました・・・?

『じゃあ高瀬さんは2-Bか。まあ、そうだろうね』

『ええ、特別編入なので』

『でも家格でいうなら琴音と同じAじゃないか?』

『……同じ日に転校した学生をひとまとめにしたのかと』

『え? 他にもいるの?』

『はい……珍しいですよね』

 

 そう言った紬の顔には若干の白けた雰囲気があった。

 何か知っているな? 何故俺に隠す? 

 

 答えは翌日、登校するとすぐに分かった。

 

「なあ、雨宮ぁ。お前んとこのお嬢様、お兄さんが転校してきたんだって?」

「はあ? なにそれ、聞いてない」

「いや、実際は従兄弟らしいけど。なんでお前が知らねぇのよ?」

「……いやぁ、親からは一言もないからなぁ」

「そんなのあり得るのかよ? 色々あんだろ、普通」

「闇深案件の可能性……」

「うっ、そだろ??」

 

 普通に喋りかけてたクラスメイトが思わず声をひそめるレベル。

 流石に察したらしい。そのままいそいその自席に戻っていった。

 この私立、富裕層の子女が国内一多い学校だからな。

 割とこう言うデリケートな話は日常茶飯事だ。

 

 大富豪に跡取りと年の近い子供が急に生えてきたのに周知されてないとか、

 とんでもない厄介ごとでしかあり得ない。

 琴音の従兄弟っつーことは父方の祖父に隠し子がいてその子供ということになる。

 あくまで噂を信じればだが……。

 まさか父さんの隠し子なんてもんじゃないだろうな? 

 後天的不妊らしいから不妊になる前にやったとかなら可能性はある。

 

 母上様に聞かねばなるまい。

 

『兵藤の親戚が増えたって聞いたけど』

 

 ……

 

 既読スルー!? なんで?! 

 本気で父さんのやらかしじゃないだろうな!? 

 

 うーん……君子危に何とやら。

 絡んだらダメだという母さんの無言の圧と受け取ることにする。

 昨日、勝手に高瀬のお嬢さんを飯に誘った件もかなり際どいラインぽかったからな。

 今日は大人しくしていよう。

 それはそれとして非常に動き辛いというのもある。

 

「……」

 

 同じクラスの奈緒が、朝からずっとじっとりとした視線を向けられているのだ!! 

 それこそバス停からなのだ……。

 昨日の反省を元に普通の時間にバス停に立ってたら、まるで影のように奈緒が背後に立っていた。

 もうね、気付いた時にホラー過ぎて腰抜かしそうになったもん。

 バスのシートに座った後で助かった。

 それからずっと視線を向けられている、気がする。

 流石に堂々と振り返って確認する勇気は俺にはなかった。

 

 ただ、こう何と言うか……、湿り気のようなものを感じる。

 鬱屈としてジメジメとした独特の雰囲気。

 キノコでも生えそうだ。

 

 さて、午前の授業もこれで終わりだ。

 今日は琴音も出席してるらしいし、メシの準備だ! 

 

 ここは私立なんだがかなり立派な食堂がある。

 毎日昼時になると結構混雑する。

 はい、ヒント。

 我が妹琴音さんはパーソナルスペースにクソうるさいお嬢様。

 もうみんなわかるね? 

 列に並んだり相席なんてしようものなら大惨事よ。

 コラそこ、ただの陰キャコミュ障癇癪持ちとか言わない。

 可愛いは正義。いいね? 

 そんなこんなで俺の出番ってわけだな。

 

 日替わりの、洋食、と。

 

「ライス小でスープはポタージュ」

「はい、どうぞ」

「どーもー」

 

 食事を確保して、空きテーブルを探す。

 まあ、この時間なら探すまでもない。ダッシュしたからな。

 食堂の隅っこにあるテーブル、この一年でほぼ指定席になった場所。

 去年1年間、ずっとこんなことやってたからついたあだ名が「お世話係」なのだ。

 

 さて、配膳を済ませて琴音を待つ。

 何だったらいつもは食い終わるまで待つ。

 だって、あいつ下げ膳できねーし……。

 

 それが終わればやっと俺の食事タイムなのだ。

 まだかなまだかなー……。

 

「……」

「うん? 来たなら声かければいいのに、どした?」

 

 なんか物凄くバツの悪そうな顔した琴音が近くまで来ていた。

 陰気なオーラ出して俺の背後に立つのが流行りなのか? 

 

 ん? 今気付いたが食事の乗ったトレーを持ってる? 

 

「もう、1人で食事……できます」

「お? そっ、か……悪いな、いつもの癖で用意して」

 

 一体どう言う心境の変化か、あの琴音が自分で食事買ってきた。

 驚きすぎて思わず謝ってしまった。

 

「……だから、それはそちらで食べてください」

「わかった。それじゃ」

「……」

 

 そのままトレー持って踵を返したら、すごい顔をされた。

 口は引き絞られて眉間にすごい力が入ってる。

 後ろ髪引かれたがそれ以上止まるわけにもいかず、その場を離れた。

 

 自立、かぁ。喜ぶべきところではあるな。

 

「…………っ」

 

 

 

 その後、手早く食事を終えて自分の教室に戻ったら

 とんでもなくざわついてて廊下に人が溢れてる。

 何かあったか? 

 俺も立ち止まって人集りから一歩離れて様子を見てたらクラスメイトに捕まった。

 今朝話しかけてきたやつだ。

 

「雨宮! やばいって!」

「どうしたのかね、坂井くん。事件か?」

「バカ! 言ってる場合か! さっきまで今朝話してた転校生来てたんだよ!」

 

 なに? 

 

「うちのクラスに何の用だよ? 御曹司だろ?」

「それがさ! 佐倉さんと幼馴染なんだって! すごくね?!」

 

 流れ変わったな……。

 ん〜〜? 

 

「佐倉さんがいるって話を聞いてわざわざ会いにきたらしい」

「そりゃまたすごいな。ただの幼馴染じゃなさそう」

「だよな! ビジュ良すぎてまじ目の保養だった!」

 

 人集りの隙間から教室の中を覗くと、興奮冷めやらぬと言った感じの取り巻きに囲まれている奈緒の頭が見えたがそれだけだった。

 いや、もういいじゃん。教室入ろうぜー。

 人だかりを割ってスルッと中に入ると俺を皮切りにみんなも入り始めた。

 気配を殺しつつそっと席に着く。

 

「めっちゃキュンじゃーん! 超うらやまー!」

「いいなー、私もあんな幼馴染ほーしーいー!」

「奈緒的にどうなん!? あり? あり?」

「完全に兵藤くん、メロついてたって〜。奈緒なら絶対いけるって!」

「……別に、私……っ!」

 

 なんか背後で囲まれた奈緒が困ってる気配がする。

 つーことは、あれか。御曹司の初恋相手が奈緒、って線が濃厚だな。

 BSS……いやいや、それは嘘として。

 過度の期待を抱いたわけじゃないがここまで綺麗に脈なしだったと思うとちょっと悲しい。

 それなりに一緒に居たんだし、ちょっとくらいその気が合っても、というのは高望みなんだろうな。

 こう言うとこだけ前世と同じなのはちょっと辛すぎない? 

 まあ、ここで本気で俺がハートブレイクするようなら

 逆説的に俺がとんでもねぇロリコンであると言ってるようなもの。

 当然であるがそんなことはあり得ない。

 

「げ、雨宮じゃん。きも……」

「うちらの話さりげに聞いてるのやば」

「ストーカーすぎて死ぬ。まじ死ねよ」

 

 はい、それはそれとしてクラスでの扱いだいたいこれ。

 俺に仲良くしてくれるの坂井くんとかスクールカースト低めの子達ばっかりだ。

 同じバス停からバス乗ってるってだけでこんだけ擦れられるんだからほんと子供ってすごい。

 でもしょうがない、俺の中身はおじさん。JKには勝てない宿命……。

 

「やめて、その話は聞きたくない」

「……奈緒?」

「トイレ」

 

 やはり昨日から引き続き様子がおかしい。

 いつもはもう二、三言俺のことディスってくるのに自分から打ち切った。

 ズンズン足を踏み鳴らしながら教室を出て行く背中が見えた。

 取り巻きたちも大困惑である。

 

 午後の授業ギリギリに帰ってきた奈緒はやはりじっとりとした雰囲気を醸し出しており、

 やっぱり背中に染み込んでくるような粘着質な視線を感じる。

 いや、気のせいだよな? そうであってくれ。

 

 そして放課後、視線に耐えきれずそそくさと荷物をまとめて席を立つ。

 こりゃちょっと時間潰して帰った方がいいな。

 帰りのバスでもこんなだったら本格的に胃を悪くしちまう。

 

 とりあえず図書室かなぁ。

 うちの図書室は割とデカくて、実質図書館くらいの規模がある。

 仮に尾行されても振り切れるくらいのな。

 視線を振り切るように教室を出て図書室に直行だ。

 下校やら部活やらに向かう流れと逆行して校舎の中を進むと

 苦しそうに壁に手をついている人影を発見。

 また水野だ。

 

「……うぅ」

「おい、大丈夫かよ?」

「!?」

 

 声を掛けると弾けるように顔を上げる水野。

 おいおい、すっごいクマだな。寝れてないのか? 

 

「やめて、放っておいて」

「いや、どう見たって保健室……」

「ほっといてって言ってるでしょ!!! うぅ……」

「バカバカ、またぶっ倒れるぞ?!」

「もう、いやなのよ、あんたの顔見るの……近寄らないでよぅ……」

「……」

 

 ……嫌われすぎである。

 仕方ない、ここで食い下がって興奮させたら本気でやばい。

 山田先生を召喚して任せしまおう。

 

 しのごの言わずにさっと離れる。

 この調子なら身動きも取れまい。

 さっさと呼んでこよう。

 

「………………」

 

 

 それから保健室に直行したらなんと不在である。

 あの先生、やたら不在が多くね? 

 ちゃんと仕事してんのかよ。

 仕方ない、職員室で適当な教師捕まえるか。

 

 保健室を出て職員室を目指して走り始めたとき、

 背後からバタバタする足音と喧騒が聞こえてきた。

 

「保健室は?!」

「すぐそこだよ! 兵藤くん!」

 

 ぬ? 

 思わず振り返ってみると、めちゃくちゃ美形な男子が

 女の子を姫抱きしたまま、血相変えて保健室に走り込むとこだった。

 ご丁寧に取り巻きの男女も引き連れて大変な騒ぎだ。

 そして、案の定抱き抱えられてるのは水野だった。

 もうね、狙ったかのようにバッチリ目が合ったよ。

 一瞬だったけど口半開きで呆然としてたな。

 

 見せつけてくれるじゃないの。ちょっと卑屈になりそうだ。

 やっぱりツラが違うと同じ事やっても映え方が違うな。

 

 そう、水野を抱き抱えてた男子のツラ。一瞬だったが、あれは……。

 

 半ば確信めいたものを感じながら、俺は下駄箱の物陰にいた。

 ちょうどいい場所にスツールがあり、人を待っている体で居座ってみる。

 たぶん、ここで待ってたら俺の知りたいことはわかるはずだ。

 

 何分待ったか、やはり待った甲斐があった。

 

「栞ちゃん、大丈夫かなぁ。だいぶ具合悪そうだったけど。いてて、ヒリヒリするぅ……」

「先生が診ているので問題ないでしょう」

「でもさ、酷くない? せっかく助けたのにお礼がビンタなんてさ」

「……何か問題でも?」

「え!? ひどい! やましい気持ちなんてなかったのに!」

 

「早く参りましょう。琴音さんがお待ちになっています」

「先にさっさと行っちゃったのは琴音のほうじゃんかぁ」

 

 俺の横を通り過ぎる。正面から見るまでもない。

 チラリと一瞥したその少年の顔は──ー

 

「おし、それじゃ帰ろうか。紬さん!」

「はい、ユウマさま」

 

 とても、見覚えがある顔で──ー

 

「……? ……!!!!」

「紬? どうしたの?」

「何でも、ありません。参りましょう」

 

 気付かれたか。

 格好のつかないことだ。

 

 第五の登場人物、兵藤ユウマ。

 俺の養父、雨宮竜也──ー旧姓、兵藤竜也に瓜二つの少年。

 

 佐倉奈緒の幼馴染。

 兵藤琴音の兄であり従兄弟。

 水野栞を助けた王子様。

 高瀬紬の主人。

 

 おお、ちゃんとした主人公が出て──ー

 

「ユーマ!!」

 

「ん?」 「あ!」 「!?!?」

 

 来たなぁと思った矢先に飛び出してきたのは奈緒だった。

 思わず反射で反応してしまった。

 ついでに推定兵藤さん家のユウマくんも振り返るのはわかるが

 何故か高瀬のお嬢さんがめちゃくちゃ動揺してる。

 

 位置関係的に前門の主人公(仮)、後門のヒロイン(仮)となっている。

 間に挟まれた俺が部外者すぎて辛い。

 どうやら犬系主人公? らしく喜色満面で奈緒に走り寄っていく。

 あぶね、避けなかったら衝突コースだった。

 なんだこいつ。

 とりあえず帰るか……。この状況は気まずい。

 

「奈緒! 探してくれて……」

「お前じゃない!!! どいて!!」

「え?! うわっ!」

 

 ドンッ! 

 ズンズンズンズン

 ガシィッッ! 

 

 オノマトペはイメージだが物理的に聞こえそうな勢いなんですけど! 

 

「どっ、え?! ナニ!?」

「っフー……! っフー! ……」

 

 駆け寄った主人公くんをぶっ飛ばしたと思ったら

 まっすぐ俺の前まできて胸ぐらを掴まれた。

 よく見ると汗が滴ってるし、息も荒く目は血走ってる。え、こわ。

 

「ちょ、マジでナニ?!!」

「っふぅぅ…………きて」

「は? うぐうぇ?!」

「……」

「説明する気なし!?」

 

 そのまま胸ぐらをホールドして歩き出しやがった!! 

 いや、そんなことしなくても着いてくから離してくれない?! 

 力強っ……。

 そのまま引きずられて行こうとしたその瞬間……

 

 ガシィッッ! 

 

「行かせるわけ、ないでしょう?」

「アンタ、誰?」

 

 なんと俺の手首を鷲掴みしたのは紬だった。

 ていうか、顔が大変険しい。

 昨日の柔らかい儚げな印象はぶっ飛んでおり、目は異様にギラギラして火を噴きそうだし、

 口の端はヒクついてるし、よく見たら額に血管浮き出てない? 

 対する奈緒は困惑3割くらい抱えながらも完全にバトルモードって感じだ。

 昭和生まれも驚きのメンチを切っていらっしゃる。

 おかしい、さっきまでラブコメ時空だったのにいきなり不良漫画になりよったで。

 

「まさか、ここで出会うとは……油断していました」

「は? 意味わかんない。早く手離してよ」

「何度も言わせないでください。あなたみたいなアバズレと行かせる訳がないでしょう」

「アンタ、初対面でしょ。どっちがアバズレよ!」

「っ! そっちがそうなら逆に都合がいい。もう、好きにはさせませんから」

「さっきから意味わかんないのよ! アンタはアッチのカスの世話でもしてなさいよ!」

「あら? いつ代わってもよろしくてよ?」

 

 主人公くん、流れ弾くらってて草。

 立ち上がりもせず呆然としてんじゃん、可哀想に。

 ていうか、これ君の役回りじゃないの?? 何で俺が修羅場ってるんだっけ?? 

 連日のイベントラッシュで僕の中年脳ミソは悲鳴をあげてます。

 

 助けてママ〜〜〜!

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