ムーンセルによって開かれた聖杯争奪戦。
128人のマスターによる生存競争。
――なにそれこわい。
言峰「汝、自らを以て最強を証明するがいい!
これより開かれるは、128人のますたーによるバトルトーナメント!
争え……もっと争え……!」
――正しくはこうである。
『カプセルさーばんと!!
それはどこぞの大聖杯が生み出した、それなりにどこかで見たことのある英霊たち? の事である!
カプセルサモンと呼ばれる擬似英霊の小規模召喚法の確立によって実現した、未来の子供達のベーゴマバトル的な何かなのだ!!』
「――は?」
脳内からジョージィな叫びが聞こえる。
この声は確か、言峰綺礼……?
『争え、もっと争え……!』
「…………」
この司会、えらく好戦的である。
だけど、今争うのは極力避けたい。
――聖杯戦争。
電脳世界『SE.RA.PH』にて行われる命懸けの戦い。
百二十八人の
今はその一回戦。対戦相手は間桐シンジ。
性格に難はあるものの、その腕は本物だ。
素人である自分が今、どうこうできるものではな――
「おい岸波! 何やってんだよお前!」
「っ!? ……シンジか?」
「はぁ? 何その言い草。もしかして、対戦相手であるボクに恐れをなして逃げたのかい?
でも残念だったね。さあ、さっさと会場に行くぞ!」
「え? でも、戦いは七日後なんじゃ……」
「七日ぁ? ……へえ。もしかして、もう勝った気になってる?」
「いや、そういうわけじゃ――」
「チクショウ!! んだよ、どいつこいつも馬鹿にしやがって!!
チュートリアルだからって舐めるなよぉ!? お前なんかボコボコにしてやるからなっ!!」
プンスカ怒りながらシンジはさっさと歩いて行った。
……でも。どういうことだろうこれは。
本戦は七日後。それまでにトリガーを集めなければ失格になるはず。
知らない間に七日経ってしまった、ということなのか?
――分からない。
ひとまず、シンジのあとをついていこう。
それにしても――チュートリアルって、何のことだろう……?
◆
「――――あれ?」
そうして自分は、よく分からないリングの上に立たされていた。
向かい合うは対戦相手・間桐シンジ。
余程自信があるのか、不敵な笑みが浮かべている。
リングの周辺には観客大勢。
『キャーご主人様ー!!』だの、『奏者よファイトだっ!!』だの、
聞き覚えがあるようなないような声援が聞こえてくる。
しばらく待つと司会の神父・言峰綺礼がマイク片手に現れた。
『レディース、エーンドジェントルマン!
此度は遥遥ご足労いただき、誠にありがとうございますっ!』
誰ですかアナタ。
『これより始まりますは、血で血を洗う死の宴――
ではなく! なんかゆる~いさーばんと達が争い合う戦い……その名も! カプセルさーばんと!!』
『YEAH――――――!!!!!』
――――え?
なんだこの盛り上がり。
『優勝賞品は聖杯こと、ムーンセル・オートマトン!
闇と課金に蝕まれた亡者達よ! これでもう資金の心配はいらないぞっ!!』
資金ってなんだ!?
そんなことに聖杯使っちゃうのかっ!?
『では、まずはこの“カプさばト-ナメント”、栄えあるトップランナーを紹介しよう! まずは青コーナー!』
「え?」
ババッ!
とスポットライトが浴びせられる。
なんだこれは!
『落とした女性は星の数。ルートと選択肢によって中身、性別すら変える白紙のますたー!
その名も、岸波白野ー!!!』
「ご主人様ぁ!! 私と結婚してくださいぃ――!!」
「奏者――!! 世の婿に来るがよォ――い!」
「子ブタぁ――! 負けたら承知しないからね――!!」
「………………そうか、分かったぞ」
今、全てを悟った。
ここは――カプさば時空だっっ!!!!
『黄色い声援、感謝するぞさーばんと達よ。
さあ、迎え撃つは青コーナー!』
今度はスポットライトがシンジに当たる。
シンジはドヤ顔でキラッ☆と微笑む。
『知る人ぞ知るチュートリアル! staynightでは噛ませ、EXTRAでも噛ませ、かの英雄王も認めた道化の王!
WAKAMEこと、間桐シンジ――!!』
「ワカメって言うなぁぁ!!」
シンジが絶叫する。
が、誰も気に止めない。
「っ……ふん、まあいい。どうせ勝つのはこのボクなんだからね。
おい岸波。戦う前に一つ相談がある。
この勝負、わざと負けてくれないか?」
「……何?」
「ほら、お互い本気だとさ。お前が負けた時色々問題になるじゃん?
敵うはずのない相手に立ち向かって、その上ボロクソにやられるんだぜ?
まあ、これでも友達だしさ。ある程度手加減してやろうかなって思うんだよね。
実力差は明白だけど、いい感じに白熱した展開にしてやろうって言ってんの」
「……」
そうか。そういうことか。
だが――
「――は。冗談は止めてくれ」
手加減無用。
正面から、シンジの提案を切り捨てた。
「本気かよ、お前。まさかそんなレベルでボクに勝つ気?
ボクのデッキの最強さーばんとのレベルは二十。お前は殆どが一だろ?
言っとくけど、どう足掻いてもボクの勝ちは決まりだぜ?」
「それはどうかな」
確かにレベルの差は歴然。
だが、それがなんだというのだ。
たかが二十程度、戦術で覆せる。
「……言ったな、お前。ならボクも
「ああ、来い。我がEXTRAデッキの真髄、見せてくれる……!」
『クク、いい煽り合いだ。では――始めるぞ!』
『カプさばぁ――!』
「「 ファイッッ!!! 」」
かくして、聖杯を巡るトーナメントは幕を切った。
50騎を越えるさーばんと。
集結するすごうでマスター。
岸波白野――否、ハクノぐうぜん手に入れた『カプセルさーばんと』の力で、優勝賞品『聖杯』を手に入れるため立ち上がるのだった……!!
じゃんけんによる聖杯戦争(?)があるなら、こういうのがあってもいいんじゃね?