黎の軌跡 異界から現れた少年   作:勝ち犬

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はじめまして。

勝ち犬と申します。

英雄伝説と家庭教師ヒットマンリボーンが好きです。それでいつかこの2つが交わった作品を作りたいと思い作成しました。至らぬ点は多々あると思いますが、よろしくお願いします。


第1話

並盛町の空は、夕焼けが混じり始めた穏やかな橙色に染まっていた。

放課後の気だるい空気を切り裂くように、坂道を下る三人の足音が響く。

 

「ったく、授業の最後が体育とかダリィな……」

 

 獄寺隼人は首元のネクタイを少し緩め、不機嫌そうに吐き捨てた。銀色の髪が夕日に反射して鋭く光る。そんな彼とは対照的に、隣を歩く山本武は、いかにも爽やかな笑顔で後頭部に両手を組んだ。

 

「ははっ、そうか? 俺は授業で野球が出来て楽しかったぜ」

「この野球バカが!! てか山本、部活の方はどうしたんだよ。お前がこんな時間に帰るなんて珍しいじゃねーか」

 

 獄寺の刺すような視線にも動じず、山本は「それがさ」と肩をすくめる。

 

「今日はグラウンドの調整で、休みだって連絡があったんだよ。まぁ、帰ってから家で素振りでもするかな」

「やっぱり、野球バカだ……!!」

 

 呆れ果てたように天を仰いだ獄寺は、救いを求めるように隣を歩く少年に顔を向けた。

 

「10代目もそう思いますよね!?」

「あはは……。でも、山本らしいな」

 

 沢田綱吉——ツナは、苦笑いを浮かべながら二人をなだめた。いつもの光景。いつもの喧嘩。けれど、ふとツナは獄寺が登校中からずっとそわそわしていたことを思い出す。

 

「そういえば獄寺君、今日見せたいものがあるって言ってなかったっけ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、獄寺の表情が劇的に変わった。先ほどまでの不機嫌さは霧散し、瞳には崇拝と興奮の輝きが宿る。

 

「よく聞いて下さりました、10代目!!」

 

 獄寺はガバッとツナの方へ身を乗り出した。その勢いに、ツナは思わずのけぞる。

 

「実はですね……この並盛町に**UMA(未確認生命体)**が出没したという極秘情報を入手したんです! これから10代目を、その目撃現場へとご案内するところです!!」

「う、UMA……?」

 

 ツナは一歩、後ずさりした。目の前の獄寺の瞳は、まるで遠足を楽しみにする子供のように、あるいは世紀の大発見を確信した学者のように、爛々と輝いている。その熱量に圧倒され、ツナの頬は引きつった。

 

(出た……獄寺君のUMAオタクな一面…!!)

 

 ドン引きしているツナの反応を、獄寺は「信じられないほどの衝撃」と好意的に解釈したらしい。彼はさらに一歩詰め寄り、拳を握りしめて力説し始めた。

 

「10代目、驚かれるのも無理はありません! ですが目撃証言によれば、それは体長数十メートル、鋭い眼光を持ち、並盛の裏山付近を移動していたとのこと……。これを10代目の手で捕獲、あるいは手懐けることができれば、ボンゴレの戦力はさらに盤石なものに――!」

「いや、いいよ! 怖そうだし、そんなの欲しくないから!」

 

 必死に手を振って拒むツナ。しかし、そんなやり取りを横で見ていた山本が、ポンと手を叩いた。

 

「ははっ、UMAか! 面白そうじゃねーか。な、ツナ、行ってみようぜ。案外、ただの珍しい動物かもしれねーしな」

「山本まで!? 面白がってるだけでしょ!」

「おう、冒険みたいでワクワクするな!」

 

 山本の屈託のない笑顔に、ツナがガックリと肩を落としたその時――。

 

「チャオっス」

 

 聞き慣れた、けれどどこか緊張感を与える幼い声が響いた。

 いつの間にか、山本の肩の上に黒いスーツに身を包んだ赤ん坊がちょこんと座っている。

 

「リ、リボーン!?」

「面白そうな話をしてるな。UMAの捕獲は、いい修行になりそうだ」

 

 リボーンは山本の肩で不敵な笑みを浮かべ、レオンが変形した緑色の指示棒で裏山の方向を指し示した。

 

「獄寺、案内しろ。ボンゴレのボスとして、未知の生物を従える度量を見せてもらおう。もし逃げ出そうとしたら……」

 

リボーンは懐から拳銃を出し、ツナに向ける。

 

「よーし、出発だな!」

「はいっ、リボーンさん! 10代目、参りましょう!」

「待って、ちょっと待ってよー!!」

 

 ツナの制止も虚しく、一行は意気揚々と歩き出した。夕暮れの並盛町に、ツナの悲痛な叫びだけが虚しく響き渡るのだった。

 

並盛町の裏山は、午後の陽光が木々の隙間から幾筋も差し込み、湿った土と青々とした草の匂いに包まれていた。一見すればのどかなハイキングコースだが、そこに足を踏み入れている一行の雰囲気は、どこか異様だった。

「どこだ、どこだ、UMA(未確認動物)……!」

 

血眼になって茂みをかき分けるのは、獄寺隼人だ。その首元には、怪しげな光沢を放つ巨大なネックレスがジャラジャラと音を立てていた。

 

「獄寺くん、その身につけているものは……なに?」

 

沢田綱吉(ツナ)は、引き気味にその奇妙な装飾品を指さした。待ってましたと言わんばかりに、獄寺がガバッと振り返る。

 

「良くぞ聞いて下さりました、10代目! 実はこのネックレスは、かの有名なUMA専門の博士が作成した、UMAを引き寄せると言われる逸品でして! これさえあれば、どんなUMAとも遭遇できる確率が跳ね上がるんです。10代目も、是非どうですか!?」

(明らかなパチモノだよね……。てか、写真を見せてもらったけど、それ、どう見てもリボーンがモデルだよね!?)

 

ツナが心の中で激しくツッコミを入れる傍らで、山本武は後頭部で手を組み、感心したように笑っている。

 

「獄寺のやつ、どこであんなの見つけるんだ?」

「あいつのオタク気質も大概だな」

 

ツナの肩にちょこんと飛び乗った赤ん坊、リボーンがクールに切り捨てた。

その時だった。

 

「で、でか……!!」

 

ツナが足を止めた視線の先、太い枝から巨大な「何か」がぶら下がっていた。その異様なサイズに心臓が跳ね上がるが、よく見ればその隙間から見慣れた顔が覗いている。

 

「て、よく見たらビアンキ! ランボもイーピンも! 何やってんの!?」

「あ、アネキ……」

 

最愛の10代目の前だというのに、毒サソリ・ビアンキの素顔を見てしまった獄寺は、あえなく腹痛の限界を突破して地面に崩れ落ちた。

 

「あら、ハヤト大丈夫?」

 

ビアンキは、茶色のボロボロの布に包まれた完全なミノムシ状態で、枝からゆらゆらと揺れている

 

「ビアンキ、そんな格好で何をしてるんだよ!」

「ここでUMAが出ると聞いて、ぜひ私の料理の食材にしたいと思って、この子達と探しに来たのよ」

 

そう答えるビアンキの足元――地面に置かれたキャンプ用の鍋からは、すでに不気味な紫色の湯気が立ち昇り、周囲の草花を枯らせていた。

 

「ガハハ、ランボさん、今日からミノムシになって蝶になるもんねー!」

「ランボ、ミノムシ、チョウ、チガウ!」

 

横では、同じくミノムシ姿で横に揺れるランボと、それを必死に止めようとして袋の中でピョコピョコ跳ねているイーピンがいた。

 

カオスを極める現場に、さらなる追い打ちがかかる。少し離れた場所にいた山本が声を上げた。

 

「おーい、こっちになんかでっかい足跡があるぞー!」

「何っ、でかした山本……! これが噂のUMAの足跡……!」

 

這い上がってきた獄寺が泥に残された三本指の巨大な跡を確認した、その瞬間だった。

 

――ズシン!

 

地響きと共に木々がなぎ倒され、視界の向こうから全長数メートルの亀型怪獣が現れた。

 

「ほんとにいやがった!!」

 

獄寺は、ついに夢が叶ったと言わんばかりに大粒の涙を流し、その場に崩れ落ちて感動に浸っています。しかし、その感動を打ち砕くように、隣の茂みから金髪の青年がひょっこりと顔を出しました。

 

「ディーノさん‼︎」

 

ディーノは困ったように頭をかきながら、周囲を見渡しました。

 

「いや、ローマリオ達と逸れちまってな。あいつらを探してたら、いつの間に森の中にいてんだ。」

(この人、自分が遭難してることに気づいてない……!)

「それで川の近くにいたら、そこで転んでしまってエンツィオがどっか行っちまったんだ。まさか、あんなデカくなるとは思わなかったわ」

 

ディーノの失態により巨大化したペット、エンツィオは、話している間にも咆哮を上げ、ツナたちに襲いかかってきた。全員が四散して逃げる中、運悪く木の根に足を取られたツナが転倒する。

 

「ひいいい! 助けてーー!!」

 

腰を抜かしたツナの目の前に、影が落ちます。そこには、いつもの不敵な笑みを浮かべた赤ん坊、リボーンが立っていました。

 

「ボスならファミリーを守れよ」

 

突き放すような言葉と共に、リボーンの頭に乗っていた相棒のカメレオン・レオンが、流れるような動きで黒い拳銃へとその姿を変えます。

 

「イッツ死ぬ気タイム」

 

ツナが反論する間もなく、引き金が引かれました。乾いた銃声が森に響き、特殊弾がツナの額を貫きます。ゆっくりと後ろに倒れ込むツナの意識の中で、後悔と自責の念が急速に膨れ上がっていきました。

 

(なんで、エンツィオが友達を襲っているのに助けなかったんだろう)(なんで頑張らなかったんだろう)

(なんで"死ぬ気"にならなかったんだろう……!)

 

その瞬間、弾丸に込められた「死ぬ気の炎」が、ツナの後悔をエネルギーへと変換させました。

 

「リ・ボーーーーーーーーーーーーン!!!!」

 

凄まじい咆哮と共に、倒れていたツナが跳ね起きました。ビリビリと服を破り捨て、額にはオレンジ色の炎を灯した「死ぬ気モード」のパンツ一丁姿です。

 

「死ぬ気でエンツィオを倒す‼︎」

 

迷いの消えた鋭い眼光で、ツナは巨大なエンツィオに向かって弾丸のような速さで突進しました。驚いたエンツィオが、巨大な岩のような前足でツナを踏み潰そうと振り下ろします。

しかし、ツナは逃げませんでした。地面にめり込みそうな圧力を全身で受け止め、細い腕でその巨足を支えきります。

 

「うおおおおお!」

 

信じられない怪力で逆に押し返すと、数メートルあったエンツィオの巨体がバランスを崩し、盛大な音を立てて仰向けにひっくり返りました。暴れる怪獣に対し、ツナは空中へ高く跳躍すると、その渾身の拳をエンツィオの顔面に叩き込みます。

衝撃波が周囲の草木を揺らし、エンツィオは白目を剥いて沈黙。その直後、魔法が解けたかのように縮んでいき、元の手のひらサイズのカメへと戻りました。

 

死ぬ気の炎が消え、正気に戻ったツナはその場にへたり込みました。

 

「怖かったー!!」

 

先ほどまでの勇姿はどこへやら、涙目でガタガタと震えるいつもの「ダメツナ」に戻っています。しかし、その戦いを見ていた仲間たちの興奮は冷めません。

 

「流石10代目!!あの巨大亀を素手で圧倒するとは……一生ついて行きます!!」

山本:「っはは!やるな、ツナ!流石だったぜ!」

 

そこへ、ガサガサと茂みをかき分けて黒スーツの男たちが駆け寄ってきました。

 

「ボス!無事ですか!?」

 

ディーノの部下・ローマリオたちがようやく到着しました。彼は主人のあまりに情けない遭難理由と失態を聞かされると、深々と頭を下げます。

 

「うちのボスがまた迷惑をかけちまって……本当に申し訳ない、沢田殿」

「あ、いや……まあ、みんな無事だったし、問題ないですよ……あはは……」

 

ボロボロのパンツ姿で力なく笑うツナ。並盛町の裏山に、ようやくいつもの(?)平穏な空気が戻ってきたのでした。

 

一夜明け、並盛町に平和な朝が訪れた……はずでした。

沢田家の食卓に置かれた新聞、その地方欄の片隅に踊る「衝撃の見出し」を目にするまでは。

 

「な、なにこれーーー!?」

 

新聞の地方欄。そこには、夕暮れの森で巨大な怪獣を相手に、堂々と立ち向かう**「パンツ一丁の謎の少年」**の写真がデカデカと掲載されていた。

 

【緊急速報:並盛の山中に新種のUMA出現!?謎の『半裸の超人』目撃談相次ぐ】

 

「いい写真じゃねーか。ボスの貫禄だな」

「いらないよ、そんなUMA扱い!!」

 

今日もいつもと変わらないドタバタな日常が始まるのであった。

 




今回はツナの日常回です。

次からは物語進めていく予定です。

貴重なお時間を私の作品に使ったいただきありがとうございます。
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