最弱無敵の転性聖女   作:繭浮

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 TSモノが大好きなので描きました。でも男の娘モノの方がもっと好きです。嘘ですどっちも同じくらい大好きです。


読者の皆様、いきなりスプラッタですが気にしないで下さい

 ブヂイッ!!

 

 灰狼(グレイウルフ)っぽい大型魔獣の口に丸ごと咥えられた、小柄な少女の小さな頭が噛み千切られ、首から上を失い胴体だけになった少女の身体がスプリンクラーのように赤い血を撒き散らす。

 

 その様子を「ざまぁ」と思いながら眺めつつ、こうなった経緯を軽く振り返る。

 

 あ、ご紹介遅れました。私はカタリナと申します。この物語の語り部的なことをさせていただきます。

 

 ちなみに、灰狼っぽいのに頭をバリムシャされてどう見ても死んでいる少女は、私のご主人様です。

 

 さて、話の続きをしましょう。少々時間を程遡りますが——

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 かつて、聖者と呼ばれた男がいた。

 

 男は、生まれつき普通の人間にはない不思議な力を持っていて、物心ついた頃にはすでにそれを自在に扱う事が出来た。

 

 特に得意としたのは、癒しの力。男は、善人悪人問わず、多くの人々の怪我や病気を治していった。男は情に厚く、とても優しい性格の人物だった。

 

 また男は、その不思議な力の究明にも精力的だった。

 

 長年にわたる研究の結果、その力が自分以外の人間にも扱える可能性を見出した。

 

 自分ほど自在に扱えるものは現れなかったが、他の者も似たような力が発現する可能性とその方法を、男は確立することに成功した。

 

 男は後の世に、奇跡、魔術、星霊(しょうれい)術などと呼ばれるようになった、不思議な力の始祖となった。

 

 男は人々から賞賛と敬意を込めて『賢者』や『聖者』と呼ばれるようになった。ただし、老若男女問わず多くの者の傷病を癒した経緯から、聖者と呼ぶ者の方が圧倒的に多かった。

 

 そんな男の最期は、謎に包まれている。ある日を境に、男は忽然と人々の前から姿を消したからだ。

 

 そのため、男の最期に関して様々な憶測が飛び交っている。

 

 曰く、死後自身の遺体が神聖視されるのを避けたかったがために、世界の最果てにて隠居して一人静かに生涯を終えた。

 

 曰く、多大な善行を積んだため、神が天使の一人として秘密裏に天界へと連れ去った。

 

 曰く、実は今も生きていて、陰ながら人間を見守ってくれている。等々。

 

 

 

 

 はたして真実は——

 

 

 

 

「なかなかに面白い考察じゃが——全部、ハズレじゃなぁ」

 

 私が記憶している数々の伝説を聞いて、本人はカラカラと楽しげに笑いながらそう言った。

 

 かつて聖者と呼ばれた、伝説の男。我が創造主、我が主。

 

 その名は、アブドゥル・アルアジフ。

 

 ただし、現在の我が主は——

 

 

 

 

「過去の栄光なんぞどうでもよい! 今の我は、まごう事無き究極完璧美少女! なのじゃ!」

 

 

 

 

——愛らしい、少女の姿をしていた。

 

 

 

 

△▼

 

※あ、読者の皆様。このふたつの色違い三角は、視点が変わる際の目印です。白三角より前が私カタリナ視点、黒三角より後がご主人様視点です。

 

 

 

 

「しかしなんじゃな。完了予定より100年長くかかるとはのぅ。なんでかの?」

「アブドゥル様。正確に言えば、91年と108日ですわ」

「細かいのぅ」

「相変わらず大らかですわね、アブドゥル様は。悪く言えば大雑把ですわね」

「……なぜわざわざ悪く言った?」

「なぜでしょうね?」

「ふーむ」

 

 我が造った人造人間(ホムンクルス)の従者の小言を聞き流しながら、我は理想通りに愛くるしくなった自身の肉体を、大きな姿見で全身くまなく観察する。

 

「あぁ……それにしても。我、ほんっっっっ……と、可愛い……」

「うわあ、へんたいさんですわー」

「うるさいわい。自分を愛でて何が悪い」

「能動的に美少女になってニヤついているのが、とっても気持ち悪いですわ。まさに超・変態」

「……盲目的に忠義を尽くすだけではつまらんから、多少捻くれておるのはまぁ良い。とはいえこう、もう少しの。主人を敬う気持ちを前面に出してくれんかの」

「敬っていますわ。アブドゥル様の聖者としての偉業だけは」

「ふむ、ならヨシ!」

 

 まぁ、それは置いておくとしてじゃ。

 

 再び、自身の姿をじっくり観察する。

 

 尻まで伸びた桜色の愛らしい髪、色白ながら健康的な血色をした傷一つないスベスベの肌、蒼穹のような美しい色をしたクリッとした大きな瞳、華奢ながら引き締まった体に低めの身長、膨らみかけの胸……全てが我の理想通り。

 

(あぁ……究極にして至高! 最の高、最っ高じゃ……最っ強に可愛いっ!!)

 

 理想を完璧に具現化した容姿に、歓喜で打ち震える。

 

 我、アブドゥル・アルアジフには、唯一どうしても我慢のならない事があった。

 

 それは——自分が男だったこと。

 

 ゆえに我は、自分の持ちうるすべての知識、技術、神秘を用いて、全てにおいて完璧な理想通りの体を創り出し、史上最強の美少女になる事にした。

 

 使ったものは、その時我が持っていたモノすべて。それには、自信の肉体も含む。

 

 諸々の計算上、成功率は100%……なのじゃが。理想と成功率を追い求めすぎた結果、100%を目指すなら完成に4000年はかかると算出された。

 

 完成までの行程じゃが、まず素体となる人造少女(ホムンクルス)の素体を我が霊力と体液と骨粉と最上位星霊石から削り出した粉末と我の神秘存在(スピリット)等々で造り上げ地下深くの大霊脈であるここにて我が肉体霊力全てを完全液体化して造った生命の水で満たしたガラス管に素体を入れ…………おっと。長くなるのでここまでにしておくかの。

 

 簡潔に簡単にいうならば。我にしか実行不可能な事を、滅茶苦茶面倒で大変な手順の数々を踏んで実行したわけじゃな……数多の手順を思い返すと、我ながら本当に、途中で挫折せずやり遂げたものじゃなぁ……もう二度とやりたくないがの。

 

 兎にも角にも。我はついに、最高で最強な美少女の体を手に入れたのじゃあ!

 

 そう! 最高なだけでなく、最強じゃ!

 

 約4000年かけて創り出したこの体は、華奢な見た目と違い鍛え上げた成人男性より数倍強靭な上に、不老不死。正直、不老なだけな肉体ならここまでの時間はかかからんかったし、いつか他の誰かが成し遂げるじゃろ。

 

「というか、いい加減服を着て下さい変態アブドゥル様」

「一言余計じゃ! ……いや、二言、じゃな」

「と言いますと?」

「究極で完璧な美少女の我に、アブドゥルという名は似合わぬ! ぜんっっぜん可愛くない! のじゃ! なあんじゃそのブ男っぽい名は!」

 

 一応、男の時の顔もブ男ではなかったぞ。どこにでもいそうな平凡顔じゃったが。

 

「そう言われましても、それがご主人の本名ですので。というかすごい偏見ですわね、全世界のアブドゥルさんに早く謝って下さい」

「どう言われようと、可愛くはないのじゃ!」

「まあ、可愛い響きでないのは確かですが。ではどう呼べと?」

「ふーむ……ならば、美少女らしい可愛い名前に改名なのじゃ!」

 

 とはいえ、アブドゥルと呼ばれ慣れておるし、大きく変えると馴染まぬかもしれんし……

 

 となると……アブ……アル……

 

(む?)

 

 ふと部屋の隅にあった、男の時に最後に飲んだ、酒の空瓶が目に入る。

 

 確か、アレを作るのに使った植物は……ニガヨモギ。別名、アルテミシア。

 

 ヒラメキ!

 

「今後我の名は、アルテミシア・アルアジフとする! 愛称はアルちゃんじゃ! どうじゃ、なかなか愛らしい響きじゃろう?」

「まぁ、アブドゥルよりは……ですがアルですと、男性の愛称になりますが?」

「細かいことは気にするな! なのじゃ!」

「まあ、元男のご主人様にはお似合いかもしれませんが。というかその取って付けたような『のじゃ』がなんかムカつきますわ、なんですかのじゃロリ気取りたいんですか」

「のじゃろり? むぅ、現代語も覚えぬとじゃの。無事完璧美少女になれたのは良いが、課題は山積みじゃな!」

 

 とはいえ、ついに念願が叶った今、他のことは些事じゃ些事。

 

 ちなみに、この従者に90年ほど前に直情の地上の地域で使われていた言語をすでに小1時間程教わったゆえ、多少言語体系が変わっておったとしても、意志の疎通は問題ないはずじゃ。

 

「さて、着替えたらさっそく地上へ繰り出し、我が最強可愛い美少女ぶりを世界に知らしめようぞ! というわけで早う着替えを寄越すのじゃ、我が従者♪」

「はいはい、承知しましたアル様。というか今全裸なので着替えという表現は少し違うのでは?」

「ほんと細かいのぅ」

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