「なんなのよアンタ……! 死ねっ《
ゆっくり近付く我に対して、襲撃者の少女が最初に取った行動は、攻撃性星霊術、略して攻星術を放つ事じゃった。
ブシャ——!
喉や頸動脈辺りが裂ける感覚と共に、鮮血が吹き出す。不可視の斬撃——風属性の刃が、必要最小限の星霊力と威力で的確に首の急所のみを切り裂いた結果じゃ。
(おっ、風の星霊術師か。風属性は、起きてからは初遭遇じゃの)
ふーむ。良いの練度じゃ、関心するのぅ。
だが無意味じゃ。
カッ——!
傷口に刹那ナゾノヒカリが発生し、我の喉元は何事もなかったかの様なスベスベお肌に戻った。
「最初から言うとるように、我は話し合いでの相互理解及び解決を求めておるのじゃが?」
「ウソ……! 発声出来なくする意味も込めて喉元斬り裂いたのに! なんで言霊も無しに、しかも一瞬で治ってるのよ!?」
「うむ。何もしておらずとも異様に高い治癒力を、更に意図的に高めているからじゃな!」
「意味分かんない事を……! 大人しく死んでなさいよ!! 《
斬ッ——!!
カッ——!!
今度は頭頂部から股下まで一直線に唐竹割りで真っ二つにされたが、先程の再現の様にナゾノヒカリと元通りが発生する。
「100歩、いや1万歩譲って怪我が一瞬で治るのは……認めたくないけど事実だけど! なんで服まで治ってるのよ!? そんなのもう治るじゃなくて直るじゃない!! 治癒術で出来る範囲完全に超えてるわよ!!」
「いや治癒術によるものじゃぞ? じゃから治るで合っておる。それよりも話——」
「《
ズシャズシャズシャ——!
今度は最初に放ったカマキリとかいう風星霊術の連射バージョンを繰り出し、首と四肢が切断される。最初のより威力上がっとるようじゃの。
カカカカツ——!!
だが同じ事。ナゾノヒカリで瞬時に全回復じゃ。
「効かぬ——」
「殺すっ!死ねっ!死んでよっ!死になさいよおっ!!」
首と四肢が切断され、頭と胴体も斬り刻まれる。ナゾノヒカリで瞬時に全回復。
「だから効か——」
「いい加減で死になさいよおっ! どうして死なないのよ!! 《
斬ッ——!!
カッ——!!
「フフ……話を聞いてくれぬのじゃ」
にしても流石に痛いのう、思わず苦笑が漏れてしまう程には。
だがまぁすぐ治るし。何よりこの程度の痛み、それも痛みは一瞬じゃ。性転換の素材として我の全身を液状に溶かした時の気が狂いそうな激痛に比べれば、この程度余裕で我慢出来るの。
それはともかく、相手が錯乱状態のままでは埒が開かぬのう……むー、あまり痛い思いはさせたくなかったが、致し方なしか。
「カタリナ、一撃で意識を落とすのじゃ」
「
「ゴフッ!?」
ゴッ——!
いつの間にか少女の懐に深く潜り込んだカタリナが、独特な体当たりをぶちかました。
まともに受けた少女は派手に吹っ飛び、背中から木にぶつかり白目を剥いて気絶した……何秒か心臓止まっとったなぁ……
「いや容赦ないの……死にかけとるではないか」
「多少なら、ざまぁとか思ったりしますが。アル様の全身が刻まれているのを黙って眺めるのは途轍もない苦痛でしたので、思い切りやりました。ですがオーダー通り、死んではいませんわ」
「むう、屁理屈を。まぁ痛みが一瞬だったと思えば、これもある意味慈悲かの」
「アル様を執拗に傷付けるモノに慈悲など不要では?」
「生きとし生ける全ての者に、慈悲は必要じゃ。他者に価値がないと見放されようとも、大罪人であろうとも」
「……やはりアル様は、根っからの聖女でございますね」
カタリナはそう言い、どこか懐かしむ様な、どこか満足そうな顔をして瞳を閉じる。
「性癖以外は」
「一言余計じゃ。それとおぬしが言うなロリコン」
まぁそれよりも。半殺し状態ではまともな会話は出来ぬじゃろうから。
「とりあえず《アースプライヤー》。それとカタリナ、拘束系の星霊術が扱えるなら頼むのじゃ」
「承知致しました」
▲▽
(あああ殺したいいぃ……! コイツ殺したいわああぁ……! アルちゃん様の! 究極にして至高の超パーフェクトロリボディを切り刻んだ大罪! どんな事情があろうと許すまじ!)
アル様のご命令通り、
数回程度ならまぁ、溜まりに溜まったアル様への積年の
しかし私は、あくまでアル様の従者。
この《
まあその代わり、と言う程の事ではありませんが。いつでも形状や重量を変えられるように、常に操作し続ける必要があるのですが。
それよりもこの星霊術、名は体を表すとある通り——いえ、続きは少女に聞かせる形式で皆様にお教え致しましょうか。
深海水枷にて拘束中の少女は、木を背にもたれかからせる形で安置しております。
私は彼女に近付き、
「いつまで寝てるんですか、永眠させられたくなければ起きなさいフ⚪︎ッキンメスガキが」
バチンバチンッ
「ブフッ!?」
往復ビンタで無理矢理起こします。
おや。割と思い切りやったのですが、既に腫れが引いて来ていますね。アル様のアースプライヤーの効果がまだ残っていた様ですね……チッ。
「おぉぅ、凄い音したのう……なんというかもう少しこう、手心とかないんか?」
「アル様を何度も殺しました、慈悲など与えません。慈悲——飴担当は、アル様に全任しますわ」
「痛ひよう……何なのよ——」
「おはようございます。わたくしはカタリナ、貴女が切り刻んだアルテミシア様に仕える戦闘メイドですわ」
「そこは護衛メイドではないのかの?」
「攻撃は最大の防御と言う言葉がありまして——それより貴女に警告です」
「《鎌——モゴッ!?」
「それはもういいので」
術を発動させないため、言い切る前に首の水枷を動かし口を塞ぐ。あ〜鼻も塞ぎたいですねぇ。
「只今わたくしの拘束系星霊術にて、貴女の行動を制限しています。手足も頭も重くて、ろくに動かせそうにないでしょう?」
「……! ……!」
「無理に動かすとを肩を外しますよ? 胴体から」
「……!?」
少女が絶望顔になりますが、まだ説明の途中ですよ?
「この拘束術は深海水枷と書いてディープカフスと読むのですが……名前の通り、この術には深海の特性が付与されています。深海に人間を沈めるとどうなるか、知っていますか?」
「……?」
「水深数千メートルに生身で沈めれば、水圧で身体が潰れるそうですよ?」
「っ!?」
「つまりは拘束と同時に、一瞬で一気に圧を上げて処せる術なのです。理解出来ましたか? 貴女の命は、わたくしの気分次第で——」
「許可せぬぞ」
……。やはりアルちゃん様は、慈悲の塊ですね……
(フフッ……そんなアル様を、私は今も昔も敬愛しております♡)
さて。顔を真っ青にしているので、脅しは十分でしょう。殺意は完全に消沈したはずです。飴と鞭の鞭担当である私のOHANASIはここまでですね。
次話は飴パート、慈悲深いアルちゃん様のスーパー