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——邪神。自身以外のあらゆる存在を見下せし冒涜者。
最上位星霊剣である星霊神剣は人間とほぼ変わらぬ精神を持ち、それぞれ趣味嗜好を持ち、
その趣味嗜好が、まともな人間や世界にとって害悪にしかならぬ精神の神剣もいる。精神が人間と変わらぬならば十人十色、悪辣な精神の持ち主もいると言う事。
問題なのは、そういった類の精神破綻神剣——邪神剣や魔神剣等と呼ばれるが。その剣と契約、いや、手に触れるだけでも、精神強度の弱い者や感受性の豊か過ぎる者は、気が触れてしまったり性格が歪んでしまったりする。
契約しても自己を保てた者であっても、いずれは必ず気が触れたり、何かしらの歪みが自身の気付かぬ内に生じるようになる……だけなら、まだマシな神剣。
大体は巧みに甘い言葉で契約を促し、契約させた瞬間の刹那の隙にその者の精神を圧殺し、肉体を乗っ取る。それでもまだマシな段階。
数十年、あるいは数百年をかけて肉体に精神を馴染ませた後には、乗っ取った肉体と本体の剣を物理的に融合させ、完全に異形の化け物と化す。
それが『邪神』『悪神』『魔神』と呼ばれる存在。
全世界の、全宇宙に存在する生命にとっての、まさしく天敵——
……的な事を、シュルズベリーを伴い村へと帰還中に、アルちゃん様が説明しました。実際はもう少し表現が柔らかかったり端折ったりしていましたが。
ちなみに、シュルズベリーを連れてきた経緯や理由をそのまま話しても、何人かは疑ったり受け入れられなかったりな展開が予想されるので……ですが、アルちゃん様は嘘をつくのがお嫌いなので。コイツの事情は説明しますが、全部ひけらかしたりはしない、と言う事になりました。
要するに、嘘を言ってはいないが真実全てを語った訳ではない、というヤツです。詭弁ですね。
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「邪神……大聖女様が、邪神かその使徒……」
村へ帰る道中、ルリに「邪神」について教えてやると、歩きながら話の内容を熟考し始めた。
ただ、その表情に絶望や失望は感じられない。冷静に考え込んでいる、といった雰囲気じゃ。
やがて村に近づき、村人が討伐したウルフの運搬しているのが見えてきた辺りで、歩を緩めたルリが話し始める。
「なんというか……腑に落ちたって感じです」
「ふむ?」
「アビーも……レズかどうかはともかく。最初は、私と同じで聖女様に純粋に憧れて、星辰教会に入ったんだと思います。というか、他の聖女も全員」
ちなみにルリの話では、「アルアジフ」の洗礼名を貰ったのはアビゲイルを含め、現在3人らしい。名は確か、マジソンとヴィッキー、じゃったか。
「多分、邪神由来の
「ということは、他2人のアルアジフ聖女も、性格に異常性が?」
「ふむ、だから腑に落ちた、か」
「はい……まぁ他2人は、小聖女になる前の2人から聞いた話ですけど」
確かアルアジフ聖女にはそれぞれに、小聖女という聖女見習いというか、アルアジフ聖女の後継者候補が最低1人づつ付いており、シュルズベリーもその1人になる予定だった、という話じゃったな。
「聖女マジソンは、フラウ……小聖女フラウィアが、聖女ヴィクトリアにはティア……小聖女ティベリアが、それぞれ付き添い人をしているんですが。小聖女になる前の2人とは、休息時間によく雑談や小言を言い合う中だったんです。小聖女になってからは、何故か疎遠になっちゃいましたけど……もしかしたらそれも……」
ほむ、愛称呼びか。小聖女になる前の2人とは、それなりに仲良しだったようじゃの。
「話が逸れていますよ。それで、2人のアルアジフ聖女もレズのサディストなんですか?」
「あーいえ、流石に違います、けど……」
えっとですね、と言い一呼吸おいて、指を一本立て頭の辺りでくるくると動かし、少し顔と視線を上向けそれぞれの異常性について思い出しながら語るルリ。
「フラウとティアの小言通り、なら……マジソン様は、独占欲強めでヒステリック。ヴィッキー様は怠け癖があって、人目がないといつも何かしら飲み食いしまくっている、だったかな。そんな感じで、アルアジフ聖女としてアレでいいのかなって、愚痴を話し合っていました。アビー含めて、聖典の教えではどれも避けるべきとされている事を、3人とも裏でしているみたいなんです」
「なるほどの。確かにそれは、聖女としてどうかと思う精神性じゃの」
しかし、独占的、怒りっぽい、怠け癖、暴飲暴食か。
アビゲイルは……ルリはまだ若く、結構な美少女と言って良い容姿じゃ。嫉妬心を抱かれがちじゃろう。で、ルリがビアンと断定しておる事から、いつも性的な視線でも感じておったのかの。
「強欲、憤怒、怠惰、暴食、嫉妬、色欲、じゃの」
「過去の聖典で大罪とされた7つのうち、6つですわね。最も重いとされる傲慢が残っていますが、アルアジフ聖女はもう1人……大聖女がいますので、そういう事でしょう」
「じゃなぁ。いかにも邪神の好みそうな組織に仕上がっておるようじゃ」
ちなみにまだ言っとらんかったが、ルリは我程ではないが、美少女と言って過言ではない容姿を持っておった。見つけた時は、顔のみ認識阻害効果付きのフード付き派手な黄色いローブを羽織っておったゆえ、少女だという事以外わからんかったからの。
何が言いたいかと言えば。容姿にコンプレックスがない者でも、多少は嫉妬してしまいかねぬ程には可愛い。アビゲイルが歪んだ妬心を持っているなら、頻繁に暴行していたのが容易に想像出来る。
そんなルリの具体的な容姿じゃが。
薄緑色の髪を肩に掛かるか掛からないかで切り揃え、瞳は勝気そうな吊り目気味で、色は鮮やかなピジョンブラッド。
ローブの下の服は、黄色のスポーツシャツに深緑のショートパンツという、快活少女と言った印象の組み合わせじゃ。ルリに良く似合った格好じゃの!
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ちなみに、シャツやらショーパンやらの名称は私が教えました。アルちゃん様のオシャレ度が上がりました。
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さて。邪神関連の話はあまり多くのもの(少人数の村ではあるが)には聞かせぬ方が良い話題じゃ。なので、村人に会話が聞こえる距離に近づいた今は、この話題は控える。
「どうやら問題なく殲滅完了したようじゃな。皆、お疲れ様なのじゃ!」
「おおっ聖女アル・チャン様! おーいみんなっ聖女様御一行が無事お戻りになられたぞ〜〜!!」
……なんかイントネーションが気になったが、後で修正するとして。
「よくぞお戻りになられました、御三方! ……ん、3?」
「お一人増えていらっしゃいますが……そちらの美少女は?」
やはりというか当然というか、ルリの話題になった。まぁ、3人でルリをどう紹介するかはすでに話し合って決めておるからの。するりと返答出来るのじゃ。
「こやつは星辰教会の使者で、名をシュルズベリーと言う。見回りの最中、ウルフに囲まれている所で遭遇しての。此奴1人でも対処可能だったようじゃが、撃退したらなんか懐かれてのう」
「ご紹介に預かりました、私は聖女アビゲイル様に辺境の調査の任を受けて遣わされた、シュルズベリーと申します! あくまで使者だった者なので、気楽にルリとでもお呼び下さい!」
「なんと、アルアジフ聖女様が……うん、だった?」
「今は大聖女様に並ぶ偉大な聖女、アルテミシア・アルアジフ様に弟子入りしましたので!」
「……アルテミシア?」
うむ、上手く修正チャンスを作ってくれたの。ルリは顔だけ少し振り返り、我にウインクをする。カワイイ。
「チッ」
「……聞こえぬようにの」
そして小さく舌打ちするカタリナ……うーみゅ。ルリの方はともかく、カタリナがルリを許すのはだいぶかかりそうじゃの……
「我の名は、アルテミシア・アルアジフ。アルちゃんは愛称じゃからそう呼んで欲しいが、それがフルネームではないのは覚えて欲しいのじゃ」
「あー、なんかみんなアルチャン様アルチャン様言ってるからあたしゃそれがフルネームだと思ってたよ!」
うむ、名前の勘違い修正はルリの機転もあってすぐに済んだの。
「だがねぇ……あー、ルリ様でしたかい? あんたが聖女アビゲイル・アルアジフ様の使者だった、てのはどういう事だい? 更にはアルちゃん様の弟子になったときたもんだ」
まぁ、やはり気にならぬ訳もなし。アビゲイルに許可なく仕える者を鞍替えしたのじゃし。
という訳で、これも事前に話し合っていた、村人への説明内容を話す場面じゃ。やはり準備はしておくものじゃな。
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会話の全部を記すと少々長くなるので、大体こんな感じに説明しました。
シュルズベリーは、アビゲイルの小聖女候補となる為の試練の一環で村に派遣された道中、遭遇した敵に向かって攻星術を放ったところ、アルちゃん様に当ててしまい大怪我を負わせてしまった。
アルちゃん様はすぐに怪我を治して、傷跡もまったくないから気にするな、と寛大に許したところ、アビゲイル以上の慈悲深さに感激して熱心に弟子入りを志願し、それを受け入れた。
こんな感じです。
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ほとんど皆が我等がした説明で納得し、ウルフの群れの後処理に戻って行った、のじゃが。
「アルちゃん。今の説明、大事な部分を上手くぼかして説明してたっぽい?」
エミーだけは、何やら難しい顔で我等が意図的に説明を省いたのを指摘してきた。
フフ、やはりエミーは聡いの! 勘の良い童は大好きじゃ!
……まぁ、何やらエミーは前から星辰教会に対して思う所があったようじゃからの。なんとなく、説明の穴を見抜かれる気はしていたのじゃ。
エミーには、ルリがした事を正確に語らねば納得せぬじゃろうなぁ……それでも。
(相変わらず深く考えぬジョッシュはともかく。ルリとエミーには、仲良くなって欲しいのじゃ)
みんな仲良し。さっきの敵は今は友。そうなって欲しいのう。