ルリが村に来た事の真実全てを話さねば、エミーは納得せぬ、のは致し方なしとして。流石に複数人に話すのはあらぬ誤解や思わぬ火種になりかねん、なのじゃ。
という訳で。
「《
「「うおおおお……!」」
「疲れが! 吹っ飛んだあ〜〜!!」
「今日負った傷、細かいのまで全部塞がってくわぁ……!」
「なんだか、心まであったけぇ……!」
「おぉ、ありがたや聖女様……ありがたやアルちゃん様……!」
疲労回復・精力増強効果付き(治癒術の一種じゃから後遺症の心配が一切なく、実際安全)の広範囲治癒術で働く村民全員を癒してから、我達3人はエミーとジョッシュを連れて、診療所へ向かう。これで、村滅亡レベルの緊急事態でも起きなければ、しばらく
⏳
という訳で。診療所にて、ルリとの邂逅の詳細を、エミー&ジョッシュコンビに語った。
ちなみに、ジョッシュに聞かせても大丈夫なのか、と思うじゃろうが。こういう奴は意外と口だけは堅かったりするものなのじゃ。
事実、エミーが同席を許しておる事から、ジョッシュから情報漏洩する恐れが低い事が察せる。ジョッシュがキチンと理解出来ないのをよく理解しているとも言う。
「うーん……なんていうか。アルちゃん、お人好し極まれりっぽい」
「でもアルらしくていいじゃんか。ハハハッ!」
全てを理解して、エミーは呆れたように苦笑いを浮かべ、ジョッシュは能天気な顔で笑い声を上げ、ベッドを軋ませる。
あ、さらにちなみにじゃが。椅子は二つしかなかったゆえ、エミーとルリに座って貰い、ジョッシュは片方のベッドに座って貰っておる。
もう片方にカタリナが座り、我はカタリナの膝に座る……というか無理矢理座らせられ、ギリ苦しくない力加減で鳩尾辺りに腕を回されホールドされた。
「スゥー……フスゥー……フヘ」
……カタリナよ。静かに呼吸しておるように見せかけておるようじゃが、我の頭皮の匂いを堪能しとるの、気付いておるからの?
変態ロリコンメイドめが。後で説教じゃ。
まぁそれはともかく。
「して、気にはなっていたが後回しにしておったのじゃが。エミーは星辰教会に何を思っておるのじゃ? 無理に答えずとも良いが」
出会って数刻の時の、何やら教会に含みのある独り言。何を抱え考えているかまではわからぬが、変革を求めておるように感じ取れたのじゃ。
「あー……あはは、バレてたっぽい? でもそんな、複雑な話じゃないっぽいかな。単純に、治癒術費がいくらなんでも高すぎるし、野良の治癒術士を無理矢理教会所属にさせようとしたりとか、教会に所属を拒む治癒術士を異端っぽい扱いしたりとか。そういうのやめて欲しいっぽいって感じ」
ふむ……腐敗に不満が募っていた感じか? しかしそれが周囲の者にとっては当たり前で、他に想いを打ち明けられる者がおらず(隣りの脳筋に話しても分で忘れそうじゃし)、モヤモヤを抱えていた、といった所かの……
(……だが。なーんかまだ話せない、何かしらを抱えているようじゃのう……)
エミーは聡明であるが、やはりまだ童じゃ。表情や声から、まだ隠し事があるのが微かに読み取れるのじゃ。
ま、無理に聞き出したりはせぬが。それが友情というものじゃろう。
「でもアルちゃん、そんな腐った教会にメスを入れる気になったっぽいでしょ? なら、私から言うことはあんまりないっぽいかなー。まぁあえて言うなら、悪人成敗する時は手伝わせて欲しいっぽい!」
「よくわかんねぇけど、そん時は俺にも声かけてくれよな! 友達なんだ、なんでも言ってくれ!」
「うむ! して欲しい事があったら遠慮なく頼らせて貰おう!」
「もちろん私だってお手伝いしますからねっ! アルちゃん様!」
エミーに続いて、ジョッシュとルリも進んで我の手伝いを約束してくれた。
フフ……やはり持つべきものは友達じゃの。
素晴らしきかな、ユウジョウ!
⏳
そんな感じでエミーに納得して貰った後は、
討伐したウルフの群れの処理を手伝ったり(我が触れるとナゼかナニか起きそうなので、カタリナに行動指示するカタチじゃが)、ガイヤー、マシュー、オスカー中心のベテランハンター達の活躍を褒めたり労ったり。
そんな諸々の後処理が終わった後の、夕刻。
「宴じゃぁあああああああぁあ↑↑!!」
「「「ぃいいやっほおおおおぅっっ!!」」」
誰も死なずの中規模討伐記念(村的には大規模じゃが)として、村の中央広場に急ごしらえで作った屋台を中心として、飲めや歌えやの祝勝会という名の宴会が開かれた。
「やれやれじゃ。乱痴気騒ぎは傍から見る分には嫌いではないが、混ざりたくはないのう」
我は、中央へ来るように熱烈に誘われたのをカタリナガードで躱して、診療所の壁に背を預けて甘めの葡萄酒をあおる。
我が転性する前ならば、見た目年齢的に飲酒はアウトなのじゃが。普通に葡萄酒の入った杯を渡されたので、今の時代は普通なのじゃろう。
まぁそもそも、酒は毒じゃ。つまり治癒力に溢れる我が飲んでも、舌や鼻でアルコール飲料の香りは多少楽しめるが、体内に入った瞬間毒判定されて浄化され、ただの
つまりは、いくら酒を飲んでも我は酔わぬ、というか酔えぬのじゃ。少しだけ残念じゃな。
「やっほーアルちゃん、葡萄酒だけで良いの?」
「何か料理を取ってきましょうか?」
そんな感じにカタリナと2人静かに飲食を楽しんでいた所、エミーとルリが近寄り、話しかけてきた。
「いんや。我は十分飲み食いしとるのじゃ」
「……お酒と甘味以外、食べていないようですが」
ルリがチラと側にいるカタリナに視線を向ける。現在カタリナは、我が半分食べたベリージャムかけパンケーキとやらを穏やかな笑顔でじっくり味わう様に食べている。
「……モグ……クフ、間接キス祭り……」
呟きは聞かなかった事にして。
「お肉の類は、全く食べていないようですが」
「肉は……嫌いではないのじゃが。ウルフ肉含め、この宴で出されておるモノはどうしても、のう」
「んー、アルちゃんの好きなお肉がないっぽい?」
「そんな感じじゃ。なぁに、肉を食わずとも十分楽しめておるよ。皆の笑顔が、何よりの馳走じゃ」
「アルちゃん様……!」
我の言葉に何やら感激しておるルリじゃが。そもそも我にとって飲食はちょっとした娯楽じゃ、少し食えれば問題ない。
それと。
(「今の肉」はのう……「元」を思うと、どうしても食う気が起きぬ。羊乳がギリじゃの)
にしても。
「こくこく……プハァ、アルちゃん様の優しい笑顔でお酒が美味い!」
「ルリは何やら面白いモノを飲んどるのう。自家製か?」
ルリは透明な酒瓶に入っていた、黄色というより金色に近い色をした酒を、グラスに注いで飲んでいた。届いた香りからして、蜂蜜酒かの。
「あ、はい。美味しいだけじゃなくて、滋養強壮に霊力回復力向上効果もある我が家秘伝の特別性です!」
「ふむ。この後の事も考えて、宴を楽しむだけでなく同時に準備も万端である、と。なかなか出来た弟子じゃの!」
「ふふっありがとうございます!」
「この後、か……」
どこか上の空な声色でそう呟くエミー。そんなエミーは、酒も飲食も我同様控えめじゃ。
チラとカタリナに視線を向ける。カタリナはフルフルと否定するように首を左右に小さく振る。どうやらまだなようじゃの。
(となると、やはり真夜中か)
ルリが聖女アビゲイルと袂を分つ決意をして我に弟子入りしてから、丸半日。そろそろ動き出すかもとカタリナに《水分身》にて哨戒させておったのじゃ。
⏳
それからしばらく。宴もたけなわ、最初よりは落ち着いてきた(酔い潰れた者が増えたとも言う)頃。カタリナの《水分身》からの報告が来た。
「1人で村へ近付いてくる女性がいます」
「んー……うむ、我も遠くあるに人間女の生命反応を感知した。まだ宴会中だというに、無粋じゃの」
こんな夜更けに女で寒村に来訪する女1人。あからさまに怪しい。そして、そんな事をする該当者は、1人しか思い当たらん。
「ルリにエミーよ。来るかの?」
「はい」
「……うん。ジョッシュはどうしよ」
「連れて行きたいなら、《
「ん、お願い」
という訳で。ジョッシュを
その女は何者かなど、生体感知せずとも予想出来る。
今回の騒動を起こしたルリをけしかけた、黒幕。聖女アビゲイルじゃ。