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「……最後に観測されたのは、ここのはずなのだけれど……チッ、暴れた形跡はあるけど、アイツの死臭が無いわね。魔力を使い切っていない……?」
それはちょうど、シュルズベリーをもたれかけさせていた木。ソレを中心に辺りをぐるぐる歩き回り何かを探る、修道女のような服を着た女。
のような、と表現した通り、その修道服には刺繍が過分に施されていたり、ロングスカートは大胆なスリットがあって脚が強調されていたり、胸が強調されるよう改造されたりしていて、コスプレ衣装感が強いです。
娼婦、というより、コスプレ風俗店にいそうな、というか……
要するに。ドスケベシスターコスプレ女が夜の林をうろつくという、なんか世界観間違ってないですか?な状況です。わたくしカタリナ視点での印象ですが。
まぁ格好はともかく。「魔力」や「死臭」と言っている時点で、黒確定です。
つまり——この女は、間違いなく邪神の使徒。
しかも先程の呟きからして、シュルズベリーはここで始末する予定だった——最初から、シュルズベリーを小聖女にするつもりはサラサラなかった、と言う事。流石の私でも、シュルズベリーに同情を禁じ得ない。
「……で。さっきから誰か、見てるわね? 本体ではなさそうだけど」
そう言って、おもむろにこちらに振り返る。
ふむ……姿も気配も消していたのですが、気付かれていましたか。なかなかに鋭い霊力感知力ですね。流石に聖女認定されるだけあり、それなりの実力者なのでしょう。
まぁ、《水分身》を介しての視線ですので、私としては答える義理も義務もありません……が。
「私の
敵と分かっていても、まずは話し合いから始めるのがアルちゃん様です。なので私の心情は二の次、第一にアルちゃん様の望む手順を。
「ふぅん……ま、そっちから来るんなら手間が省けるか。ええ、少しなら待っててあげるわ」
……こちらを侮った上から目線での言い方にイラッとしましたが。我慢我慢。
「では、10分程お待ち下さい」
△▼
「……ふむ」
カタリナ通信による報告に少し迷うが。星辰教会と袂を分つ覚悟完了後な今のルリなら、真実を告げても大丈夫じゃろう。
「……アビゲイルのひとりごとからして、どうやらルリに授けた魔獣を操る
「ぅえっ!? あ、あっぶなー……逃走を選択して力を使い切っていたら、逆にアウトだったって事じゃないですか!」
「つまりはアル様に攻撃したのが正解だったと言いたい訳ですねコイツ処します? はい処します」
「処すな処すな我の弟子ぞ?」
「(ガタガタブルブル……)すんません言葉の綾的なのなんで勘弁して下さい……」
「なぁ、しょごすってなんだ?」
「処す、ね? ジョッシュは覚えなくていいっぽい言葉だよ……まぁすぐ忘れるだろうけど」
カタリナが水を差したせいで話がズレたが。
「要するにルリは、小聖女のための試練に遣わされたのではなく、ここで使い捨てるために送り出された訳じゃ……心なき腐れ外道共め」
「なんだよそれ! 許せねーぜ!」
「……うん、私も同意」
「ジョッシュ、エミー……ありがとね」
……エミーがいつになく辛そうな顔で、しかも口癖の「ぽい」を付けない所から、かなり重い想いが内で渦巻いておるようじゃ。
はてさて。エミーとアビゲイルの間に、どの様な因縁があるのやら。
さてと。10分後に向かうとカタリナが言ってから、すでに数分経っておる。今から普通に駆けて行っても、ルリと出会った場所まで間に合わぬ。
ので。
「……クフフ……」
「またこれか……」
「これが1番早いと思いますクンカクンカ!」
カタリナが我をお姫様抱っこ(という名の抱っこ形態らしい)して駆け抜けるなら、約束の時間に1、2分程余裕を持って着ける……
「ほらエミー、早くしろよ」
ジョッシュは地に膝を着き、エミーに背を向け自身の背中をポンポンと叩き、おぶさるのを急かす。
「……まぁいいけどさー」
我を、というか我の抱っこ姿を羨ましげに横目で見つつ、ジョッシュの肩をしっかと掴みおぶさる。青春を感じるの、愛いのぅ。
「……フゥーッ……《
ルリは、高速移動用風星霊術を自身にかけておる。高度な術でルリの家の秘術に当たるらしく、自家製黄金の蜂蜜酒を飲んでブーストしてからでなければ、今のルリには使えぬらしい。
ちなみに、我等が襲撃した時に《
……この3組で、ジョッシュ&エミーだけが約束の10分以内にちょっと間に合わぬのだが。まぁ遅れてもせいぜい数分程、荒事に発展する前までには間に合うじゃろう。
「遅い! 聖女である私を8分も待たせるなんて! いい身分ねえ、ズベリー?」
「……相変わらず怒りっぽいわね、アビー」
いやほんに、《
のじゃが……
「あらあらぁ♡たった数日で、昔みたいな
赤らんだ頬に手を当て、恍惚の表情でそう返すアビゲイル……わぁ、本当にレズのサディストなんじゃのー……
「で、そっちの2人は何者よ? さっきの星霊術からして、メイドが只者じゃないのは分かるけど」
よしよし。まだ会話で引き伸ばせそうじゃの。
「わたくしは、カタリナ。貴女のような鼻が曲がりそうな腐臭を放つ偽聖女などではなく本物の聖女、大聖女アルテミシア・アルアジフ様に忠誠を誓う戦闘メイドですわ」
「……私が偽聖女? ジェシカ様以外の大聖女? フフ……早死にしたいみたいね」
「カタリナ……邪神の関係者とはいえ、いきなり喧嘩を売るでない」
「ですがアル様は激カワのマジ聖女ですよ?」
「それが事実だとて、いきなり喧嘩を売るなという話じゃ!」
こやつ、相手が完全に黒と判って済ました顔して若干暴走しとるな。まぁ我としても、早めに邪神の徒は滅したくはあるが、まだエミーが——
「すまねー遅れた!」
「アルちゃん無事っ!?」
と、一触即発になりかけていた所で到着した。
「あら、まだ来るの……うん?」
急いでジョッシュの背から降りたエミーが、何かを覚悟した顔で、誰よりもアビゲイルの前に出る。
「あんた、まさか……」
「なんか人相が随分変わっちゃったっぽいけど……間違いなく、聖女アビゲイル様……ううん」
悲しげな顔と声で呟き、一度顔を伏せるエミー。しかし次に上げたエミーの瞳は、まっすぐ相手を見据える覚悟の決まったものじゃった。
「久しぶり。聖女になるんだって星辰教会に入ってから7年振りになるね、アビーお姉ちゃん」
「エミリー? エミリーなの!? なんでこんな辺境の何もない村にいるのよ!」
どうやら、お姉ちゃんに本名?のエミリー呼び……その声色に込められた感情からして、実の姉妹のようじゃ……マジか。
(何かしら因縁があるとは思っとったが。予想以上にガッツリ血縁者とは……我の目を持ってしても流石に見抜けんかった)
……これは、どう転ぶか予想がつかなくなってきた。
と、言いたいが……
(アビゲイルが邪神の徒と判明している以上、最終的に倒す以外ありえぬのじゃ……あー、気が重いのじゃー……)
とはいえしかし。久しぶりに再開した実の姉妹の語り合いを遮るのも、無粋というもの。しばし様子見じゃ。