聖典によれば、創造主は初めの人間を粘土で
ゆえにこの、我オリジナルの広範囲蘇生術を、聖典の記述になぞらえ、
『おおおおおお!!』
「冥府から戦士たちが帰ってきたぁ!!」
「奇跡! 奇跡だぎゃー!!」
「あっれ……オラ、ぜってぇ死んだよな?」
「……ギリギリ治癒術が間に合った、のか?」
沈んだ顔をしておった生き残りの獣人戦士達は歓喜乱舞し、蘇った者達は起き上がり、死んだはずの自分の身体や仲間達を見て頭に大量のハテナを浮かべた顔をしておる。
ふむ。獣顔じゃが、結構顔から感情は読み取れるものじゃの、面白い。
「思ったんですが……複数人を同時に復活させるって、大聖女様超えてませんか?」
「まあ、我は純血のアルアジフじゃからのう!」
「じゅ!? ……純潔美!」
ブバッ!
「うわ」
「またか」
なんか知らんがいきなりカタリナが勝手に1人興奮して鼻血吹き出したが無視する。ルリはドン引きしとるが、我はなんか慣れた。
それはともかく。
「死んでたみんにゃ! こちらにおわす通りすがりの大聖女様が、蘇らせてくれたのにゃ!」
レオ殿が、生き返った戦士達に端的にそう説明した。
「大聖女様? 噂と違って、随分小さな大聖女様だぎゃ」
「けんど、噂通りにでらぁべっぴんさんだぎゃぁ」
「そうだなぁ。将来は絶世の美女に……いんや、今の時点で絶世の美少女か!」
「獣人の俺でも惹かれるべっぴんさんだべ、少女趣味のヤツの行動に目を光らせとかんとあかん!」
「んだなぁ。しっかしカワイイにゃあ!」
おお……うむうむ! こういうチヤホヤが欲しかったのじゃ、こういうのが!
ハイスロープ村でもチヤホヤはされたが。どちらかというと聖女信仰的な感じじゃったし、何より人口少な過ぎてか、若干物足りなかったのじゃよなぁ。
……あと、今話題に上がったロリコン獣人。カタリナと出会ったら同担拒否されて半殺しにされそうな気がするのじゃ。多分。
さて……悲喜交々がある程度収まった所で。
「改めて! 礼をさせてもらうぜ! オレはクレイン島第二自警団団長ぅ! ホークマンだっぜ!」
死んでいた本来の部隊長、鷲獣人から熱血感溢れる感謝と自己紹介をされた。というか鷲顔鷲柄羽毛なのに名は
……まあ、副部隊長も猫顔豹柄毛で
「アルちゃんサマには感謝しても仕切れねえぜ! ぜひオレに島の案内させてくれなんだっぜ!」
「わたくしとしては猫ちゃんカワイイ様の方が」
「うるさいですね……」
「カタリナはともかく。ルリは耳があまりに良過ぎての。ホークマン殿のご厚意を無碍にするようで申し訳ないが、出来ればレオ殿をお借りしたいのじゃが」
「おおっそいつはすまねぇんだぜ! レオ、俺達の文字通りの命の恩人だぜ、丁重に丁重に! お・も・て・な・し! なんだっぜ!」
「お任せなのにゃ。まぁ元よりそのつもりだったにゃ、いつもの事だけど団長うるさ過ぎにゃし」
「はっはあ! すまねぇんだぜ!」
此奴はいつもこうらしい……いやほんにうるさいからのう。ルリに気を遣っての事じゃが、代わってもらえて我的にも助かったのじゃ。
⏳
と言う事で。
「美少女大聖女様とお供の皆様! クレイン島観光地区へようこそ! なのにゃ!」
このクレイン島は、週に1回の定期船が来て、島で入手し辛い物資と島の特産である海産物で交換・購入をしておるらしい。
それに随伴する形で観光船も来ており、次回の定期船が来る1週間留まり、島の観光地区にてゆったり過ごしたり海水浴をしたり釣りをしたりと、一種のリゾート地の側面もあるらしい。
「常に風が吹いていて、まるでハワイのようですね。島の形状も立地も違うのに、不思議なものですわ」
「ですねぇ。だから私の風探知ですぐ見つけられたんですかね」
「……うむ」
「そうなのにゃ。いつも微風が吹いてるから湿気が溜まりにくくて、いつでも快適な気候なのがひとつの売りなのにゃ!」
レオ殿に解説されながら歩いているが、我には気になる事があり思考を高速回転させていた。
(この風……それに、島に入り込んで感知した、生体感知と霊脈感知からして……)
くぅぅ〜〜……
考え事をしつつ観光地区を観察しておったのじゃが。可愛らしい腹の音で我に帰り、気付く。
「あ、あはは……」
ルリが、恥ずかしげに頬を染めつつ腹をさする。
「フフ。美味そうな香りが漂っておるからのぅ」
「ここ数日は携帯食でしたしね。わたくしもお腹を鳴らすような卑しい事はしませんが、キチンと調理されたものでお腹を満たしたい気持ちは分かりますわ」
「……空腹音って調整出来るものなんですか?」
「出来ますわよ?」
「まぁ、出来るの。姿勢を真っ直ぐ伸ばし腹に力入れたり、呼吸を……いやまぁ豆知識は後にして。何かいただくとしよう」
考え事をしていて気に留めておらんかったが、周りにいくつかの屋台があった。そこから漂う食欲をそそる香りに気付いてから、我も食欲を刺激されておる。
「今は諸事情あって、屋台の数はかなり少なめで申し訳ないですにゃが……それでも色々ありますにゃので、お気に召すはずですにゃ!」
ふむ。少ないのは……普段はあるはずの観光船がなかった事から、邪教徒のせいじゃろなあ。
「島だから海鮮料理の香りが中心かと思ってましたけど。陸の獣の肉の香りも半分くらいありますね。何から食べようかなー、やっぱり新鮮な海鮮からかなー」
「皆様はオラ達の救世主にゃ、お代は自警団が持ちますにゃ、気にせず好きなだけどうぞですにゃ!」
「アルちゃん様っ香りからしてどれ食べても絶対美味しいですよ! あっ海老の焼ける香り〜!」
「ふむ。魚肉ならまあ……」
今の陸の動物や魔物は食う気になれぬが。海の生き物は我が眠りに入る前とさほど変わらぬようじゃ。それ自体は良い事なのじゃが。
我、そもそも海鮮あまり好きではないのじゃよなぁ。特に貝。
「アルちゃん様は海老や貝等の甲殻類が苦手です。よく焼いた魚を持ってくるので……ハフハフ」
ルリにそう指示しつつ、カタリナはすでに串焼きイカに齧り付いていた。こやつ……
「美幼女のジト目ありがとうございます二重で美味しいですわ!」
「こやつ、食欲と性欲を同時に……」
……驚きよりも呆れが勝るのう。コヤツらいしといえばらしいが。
「アルちゃん様、このオーディンという海鮮煮込みスープはどうでしょう!」
「にゃにゃっお目が高い! オディンはクレイン島の名物料理にゃ! ホタテ、イカ、ブリハマチ! 海鮮と野菜たっぷりで栄養満点ですにゃ!」
「思いっきり甲殻類入ってるじゃないですかオバカルリ」
「えっ! す、すいません、流石に匂いだけだとそこまで分からなくて……」
「あー、気にせずとも良い。食えぬ程苦手な訳ではないし、煮込みなら寄生虫も安心じゃしの!」
カタリナのルリ弄りを軽くたしなめ、ルリから受け取る。さて味は……
ズズッ……
「ほう……これは美味い。具材の味がたっぷり染み出していながら調和の取れた、優しいスープじゃ」
「お口に合ったようで何よりですにゃ!」
我の感想に、レオ殿もルリもホッとした顔になる。
「……」
が、ルリは唐突に周囲を気にするように首を振り、我に近寄り小声で尋ねる。
「あの……陸地に辿り着きましたし、私の両目は……」
「あー、そうじゃのぅ……」
今の失態も、目が見えていれば避けられた事じゃし、レオ殿の「お目が高い」という言葉も、眼球のないルリには気にかかったのじゃろう。
(しかしのう……悩みどころじゃが……)
本来なら、この地の霊脈を感知した時点で治そうと思っておったのじゃが。
「今までは海上で修練を積ませたが、今は陸地じゃ。せっかくじゃから、陸地でも数日修練を積んでから治すのが良いと思ったのじゃが」
「……つまり、まだ数日はアルちゃん様を見れないって事ですか」
ルリががっかりしたようにシュンとして呟く。やめてくれルリ、心が痛いのじゃ……
じゃがしかし。ルリの戦力増強を思えば仕方ないのじゃ。ルリの今後を考えれば、ここは心を鬼にすべし。
それにじゃ。
「すぐに治さないのは、他にも理由がある」
「他、ですか?」
「この地が、ルリにとって修練を積むのに最上だからじゃ」
「クレイン島が……?」
その呟きに小さく頷き、島の中央へと顔を向けてから続ける。
「我の感知したモノが正しければ、じゃが。どうやらこの島は、風の神性存在の眠る島のようじゃからの」
「風の神性……!?」
常に風が吹いているのは、この島の立地だけではない。そして、海の邪教徒が来ていると言う事は。
「この島の神性存在——土着神とでも呼ぼうか。上手く事が運べば、ルリはカタリナ以上の実力者になれるやも知れぬぞ」