「アルちゃん様は、少食なのですかにゃ?」
「む? まあ、見ての通りミニマムプリティボディゆえの。あまり入らぬのじゃ」
海鮮オデンスープを完食してからは、スイートポテトスティックとやらを摘んだくらいか。その後は、観光地区の雰囲気を眺めて楽しみながら、モモタロサンとかいう青いカクテルをチビチビやっておる。
ちなみに、ルリとの会話はレオ殿が案内してくれておる最中ゆえ、続きは宿に入ってカタリナを含め、となった。
「モグモグ……カタリナさんって、普段の振る舞いは凛としてますけど、コクコク……食事は、結構ワイルドなんですね」
「バリバリバリ……屋台飯とは、豪快に食べるのが1番美味しいですし、それが礼儀でしょう。バリバリ」
我がレオ殿と会話中、カタリナは龍海老(カタリナは伊勢海老と言うとったが)の丸焼きを殻ごと豪快に食らいつつ、もう片手に串焼きアワビを持っている。よく食うのう。
ルリは、鹿肉の串焼きを食べつつ、いつもの自家製蜂蜜酒を飲んでおる。
(フフ。いつの間にか、仲良く会話し食を共にしておる。美味な食は友情を育むのに最適じゃの!)
こうして我等は、観光地区にて屋台メシを堪能してから、レオ殿オススメの宿に向かった。
⏳
さて。風呂に入り落ち着いたところで、情報共有と今後の予定を話すために宿部屋に集合した。
「まずは、ルリの目についてじゃが」
「聞こえておりましたので省いて構いませんわ」
「ふむ。ならば土着神についてじゃが。レオ殿が近くにいたゆえ、風の神性存在と言うたが。要するに、神話級星霊剣じゃ」
「神話級……邪神剣ではないんですね?」
「霊脈から、在るのが判っただけでの。封印的なのが施されておるようじゃから、我にも詳しくは分からぬ。が、ハッキリ判明しておる事もある」
「腐れ魚野郎共が襲撃している事実、ですわね」
「うむ。彼奴等は邪教徒——ルリ的には、邪神の
「それって……!」
言い方を変えて、イマイチピンと来ていなかった様子のルリも理解したらしい。昨日戦った異形と化した者どもが、星辰教会の手の者であると。
「大聖女ジェシカの祀る邪神とこの島の神剣とが敵対関係なのは、間違いないじゃろうの。じゃがはやとちりするでないぞ。敵の敵だからとて、必ずしも人類の味方であるとは限らぬのじゃ」
「まあ、ですわね」
「この島に眠っている神剣も、邪神剣の恐れがあるって事ですか……」
「うむ」
さてそうだとして。我等が真っ先にすべき事は。
「まず第一に。島の住民と仲良くなる事じゃ!」
「……え? それが1番最初なんです?」
「皆仲良し! それが何よりじゃ! 綺麗事大いに結構! 話が通じるのなら、余地があるのなら、人であろうと邪神剣であろうと最初は対話から、なのじゃ!」
「えぇ……」
我のスタンスに流石に戸惑うルリじゃが、
「まずは対話から。それがアル様です。弟子であるなら早く慣れなさい、ルリ」
「はぁ……ですかぁ」
カタリナは慣れた様子で、そしてどこか誇らしげに微笑みそう助言した。
⏳
という訳で翌日。宿にて焼き魚定食的な朝食を頂いてから、早速動く。
まずは、昨日世話になったレオ殿に改めて感謝をしに……もとい、自警団の皆に挨拶しに、昨日レオ殿に聞いていた詰所的な建物へと向かった。
「ハッハァ! 昨日ぶりだなアルちゃ——」
「「「チェンジで」」」
ノックしてすぐに開いた扉からうるさいのが来た。あまりの騒音に、咄嗟に仲良く口に出てしまった。
「おっとそうだったな! まぁ仕方ねぇだぜ! おぉ、せっかくだから、総隊長を呼んでくるっぜ!」
「その必要はないわ」
彼の背後から、ハスキーボイスで彼を静止させる……そこにいたのは、革装備以外露出している体毛が全身真っ黒な、黒豹獣人。
「おっとぉ話をすればっだぜ!」
……中性的な声と長身・起伏のないスレンダーボディゆえ、一瞬性別が分からんかったが。生命感知的に、女性か。
「お初にお目にかかります、大聖女アルテミシア・アルアジフ様。私がこの島の自警団総隊長を務めさせていただいております、リリウムと申します」
「……うむ、よろしく頼む」
まぁそれはともかく。
「総隊長という役職ならば、他の島民でも知らぬ事も知っておろう」
「おや、何か珍しい品や店をお探しで?」
「理解も早い、期待出来そうじゃ」
とはいえ、あまり表側の人間には知られたくない情報やも知れぬ。我はリリウム嬢のすぐ側まで近寄り、小声で尋ねる。
「土地神の巫女殿にお会いしたいのじゃが?」
「……!」
リリウムは、一瞬ピクリと表情筋を動かすが、すぐに笑顔で返す。
「失礼ですが、アルテミシア様の星霊属性をお聞きしても?」
「地属性じゃ。後ろのサングラスをしておる娘が風、メイドは水じゃ」
「なるほど……」
リリウム嬢はチラリとルリ、カタリナの順で視線を移し、再びルリへと視線を戻す。
(フフ。この反応は、かなり深い事情まで知っていそうじゃの)
内心でほくそ笑んでいると、リリウムは我に視線を戻し、屈んで視線を合わせてくる。
「地属性で、大聖女レベルの治癒術をお使いになられるのですね」
「……やはり、世間的には水属性以外は基本治癒術は扱えない、とされておるのじゃな」
「その通りでございます」
明らかな情報統制。それをリリウム嬢自らが気付いたのか、誰かから教わったのかは分からぬが。
「早速ご案内致します。元より下から珍しい「水属性ではない聖女」と報告がありました。近い内にお迎えに伺う予定だったので、渡りに船です」
笑顔で了承した事から、敵意や害意はなさそうじゃの。
「話が早くて助かるの。では案内を頼む。行くぞカタリナ、ルリ」
「了解しました」
「はいです!」
⏳
自警団詰所を出て山道に入り、徒歩で約1時間程。銀の塗料で塗られた木製の扉と、そこを起点に地域一帯を囲う高い柵と有刺鉄線。更には害意を持って柵に触れた際に発生する仕組みの、防護結界。
「かなり厳重ですわね」
「神器と巫女様を守るためのものですので……キャットマン殿、伝達は届いていますね」
「はい、リリウム様。今お開けします」
カタリナと雑談しつつ、門番に指示を出すリリウム嬢……ちなみにキャットマンと呼ばれた門番の獣人は、純白羽毛の鳩頭獣人じゃ……もうツッコまんぞ。
「……(ごくり)」
対してルリは、柵の向こう、恐らくは風の神剣の存在力に圧倒されて唾を飲む……ふむ。流石のルリも、この距離まで近づけば気付くか。
ギィィ……
「どうぞ皆様、お通り下さい」
「うむ、ご苦労様なのじゃ」
我はキャットマン殿に軽く労いの言葉を告げて、先導するリリウム嬢に続いて門を潜り抜けた。
⏳
銀の門を通り抜けてから、更に徒歩で約1時間程。今度は建物の壁全体が銀の塗料で塗られた和風建築染みた神殿が現れた。
その神殿の前には、我と見た目年齢同じくらいの10歳程に見える 、1人の少女。白衣に緋袴の和風巫女服を来ており、長く白い髪は毛先だけ黒くなっており、背には同じように全体が白で一部が黒の翼が生えていた。
生命感知的に、この娘が巫女で、この島では珍しく人間に近い容姿の獣人。カラーリングからして、鶴の獣人かの。
「ようこそおいで下さいました、真の大聖女様。わたくしはシエラ。970年程、この地で風神様の巫女を務めさせていただいている者でございます」
たおやかな口調でそう自己紹介し、見本のような綺麗なお辞儀をするシエラ嬢。
それを聞いて、我は。
(いや獣人なのに名前マトモじゃの!?)
心の中でツッコミを入れていた。
……まぁ冷静に考えれば、最初に出会った獣人の名はマシューじゃったし、何もおかしくはないのじゃが……