「あぁ、本当に……なんて凄まじい星霊力に生命力なのでしょう。これこそまさしくアルアジフ様のお力です。紛い物とは明らかに違います」
風神の巫女・シエラに挨拶の次に告げられたのは、我の内なる力についてじゃった。
「ほう、ひと目でそこまで断言するか。そういう巫女殿も、星霊神剣の契約者の上に、自らも高い霊力を持っておるようじゃな」
「分かりますか。流石は真のアルアジフ様です。あぁ、シエラとお呼び下さい」
「うむ、ではシエラ殿と。我もアルちゃんと気軽に呼んで欲しいのじゃ。まあ、真のアルアジフ聖女の我なら、相手の生命力から読み取るは余裕なのじゃ」
「ふふっアルちゃん様ですね」
「なのじゃ!」
お互いの存在力の高さを認め合い、賞賛し合う。良きかな良きかな、気に入った!
「……なんか、お二人から強者の貫禄が溢れ出て見えるようです……まぁ今眼球ないんですけどね」
「ええ。まぁですが、アルちゃんボディはヨワヨワなのですけどね」
にしても、なんかいきなり仲良くなったのぅ。カタリナがルリを認め始めたのじゃろう、多分。
「超越者と言えど、十人十色です。わたくしは神剣の契約者ではありますが、戦闘力だけで言えばそれ程高くはありませんので」
「そのようじゃの。感じる霊力・存在力からして……封印特化、と言ったところかの」
「はい。星霊神剣第4位『
「我もそこらの魔獣程度ならば倒せる……はずだったのじゃがの。なんか治癒力に特化し過ぎてか、触る者皆癒してしもうてのぅ」
「あらまあ。そこまで尖った治癒力なのですね」
あ〜、存在力の近しい者との会話は心弾むのぅ。変に気を使わんくて良き。
「……シエラ様」
「あら、そうでしたね。もうしばらくお話していたいですが、ご用があって来られたのでしたものね」
ふむ。この言い方からして、こちらの目的は大体把握しておるようじゃの。まあ、リリウム嬢が風属性のルリを注視していた時点で、シエラ殿は察していたのじゃろうが。
「封印されしモノを確認させてくれる、という事で良いかの?」
「えぇ、アルちゃん様と御一行様ならば……」
そう言いながら、銀塗りの神殿へと顔向けるシエラ殿。そちらを見ながら、
「……と言いたいのですが。まずはそちらの風使いの方次第なところがあります」
「……え、私?」
突然水を向けられ、戸惑うルリ。
「お名前はなんというのでしょうか?」
「アッハイ……ル。シュルズベリー、です……」
「ル・シュルズベリーさん?」
「あぁいえ! シュルズベリーです!」
「アイエェ・シュルズベリーさん?」
「名字はないんです! ただのシュルズベリーです!」
「多田野シュルズベリ——」
「おぬし最初以外ワザと言っておるじゃろ。ルリは根が素直なのじゃ、あまり揶揄わんでやってくれ」
「名前がシュルズベリーで、愛称がルリさん、でよろしいですか?」
「はい……」
まったく……フフッ。この巫女、思ったより愉快な性格しておる。ますます気に入った……ルリは振り回されて少し疲れたようじゃが。
「ごめんなさいね。心が純真な方なのは、結構重要なのです」
「それは、これから会う神剣と関係している、という意味でしょうか」
「神剣の方は分からぬが。少なくともこの神殿内におる星霊剣は、無垢な精神を持っていそうじゃの」
「……神剣じゃなくて、普通の星霊剣がここに封印されているんですか?」
「第1級なので、限りなく神剣に近い星霊剣ですが……そうですね。主神の配祀神的な立ち位置の剣なのです」
……やはりか。そうなると、その第1級の剣も風属性であろうな。
そして「心が純真な方が重要」と言っている事からして。剣の気に入りそうな人間も剣の精神も、恐らく純真無垢。
「定期的にお話ししているのですが、無垢で好奇心旺盛な性格をしておりまして……人間と遜色無い心をお持ちの最高等級星霊剣なので、自由にさせると何をするやら予想出来ないのです」
「ゆえにこの建物で封印中であると……ふむ。なるほどのぅ」
本命の風の主神ではないが、配祀神……堅い言い方をせぬなら、信頼している部下と友誼を結ぶのは、悪くない。
「では、お入り下さい」
一度こちらに振り返って微笑んでから、神殿に向き直り先行で進んでいく。
「さて……お願いしますね、『封神』」
シエラ殿はそう呟き扉の前で手をかざすと、爽やかな香の様な香りと共に新緑色の光が手元に集まり、
リィン——
鈴の音のような厳かな音と共に、星霊神剣『封神』が顕現する。
「ほう、其奴が『封神』か」
「特化タイプだけあって、独特な形状ですわね」
「ふふっそうですよね」
「……あの、気配でなんか凄い力は感じるんですけど。どんなカタチされてるんです?」
「ああ、貴女は目が見えないのでしたね」
そう言ってその場でくるりと振り返り、手に持った封神をルリに向かって掲げる。
「簡単に言うなら、ぱっと見は
「んーと……え、四角?」
「はい、四角です。刃の代わりに青銅色の角材が付いている、と想像して下さい」
「えぇ……」
まぁ、その反応は分からんでもないが。
「精神を持ち、契約者に戦う力を与えてくれるのが星霊剣じゃ。戦闘力が与えられるなら、形状はその星霊剣の個性じゃ」
「私の『深海』なんか、基本形状は不定形ですよ。それに比べれば、シエラ様のはまだ剣に見える方ですわ」
「あー。言われてみれば確かにそうかも」
「そのまま殴る事も出来ますが、剣形態にも出来ます。それはさておき開けますね」
唐突に話題を戻し、神殿に向き直って『封神』の先端を扉に当てがう。と、
——ヴン——
カシャシャシャ!
——カチリ——
カシャン!
剣身に電子回路の様な模様が走り、一瞬にして何かを組み替える音と共に剣身が枝分かれした様な形状になり、鍵が開いたような音の後に再びの組み替え音、角材形態に戻る。この間約1秒。
(……流石は特化型神剣じゃな。先程までは「この辺りになんとなく星霊剣いそう」程度じゃったが、今はハッキリと「神殿内に強き力を持つ星霊剣がある」と感じ取れる。これ程強力な封印結界を、約1秒で開閉出来るとはの……)
ギィィ……
内心で舌を巻いていると、何でもないかの様に扉を開けるシエラ殿。
「どうぞお入り下さい」
「うむ、感謝する」
促されて入ると、板張りの部屋に机と椅子のみが置かれた、少々寂しい風景。その机の横に扉があり、その先の部屋におるようじゃ。
「さて。配祀神様の見た目は『封神』とは別方向に独特です。どうか取り乱さず、お友達とおしゃべりするように気安く接して下さい。嫌悪感を抱かれるのは気にされませんが、堅苦しくへり下るようなのは好まれない方です」
そう注意事項を述べてから扉を開け、こちらの返事を待たずすぐに入室するシエラ殿……なんというか、我が言えた事ではないかもしれぬが、マイペースな方じゃのぅ。
(角材や不定形他、奇妙な形状の剣はいくつか見た事があるが……この霊力、存在力の波長からして……特に珍しい、生物模写系かの?)
姿を想像しながらシエラ殿に続いて入った先にいたのは。
(これはなんとも……ルリは眼球を再生させんで正解だったやもしれんな。まぁ、キモカワ系が好きならば、驚きはすれど恐怖は感じぬかの。ルリがそうかは聞いとらんが)
手のひらに乗るサイズの肉塊と触手で出来た生物が、無理矢理人の形になっているかのような……見る者によっては正気度を削られるような姿だった。
「わぁ。冒涜的な見た目ですわねー」
「……」
それが、風をまとい中に浮いている。それも、赤と緑の色違いが2体。
「この方達に、現在名はありません。別宇宙から来た剣らしく、仮の名前はありますが……人間の発声器官では正確に言えないため、仮の仮の名前になります」
そこまで言い切ると、シエラ殿は2体に視線を向けて、仮名を述べる。
「緑がロイガー、赤がツァール。2体いますが、星霊剣的には一振りの、双子剣となります」
「ほう。生物系の時点で珍しいが、双子剣は我でも2度しか見た事ないぞい」
さて。気軽に接してくれとは言われたが、まずは挨拶じゃな。挨拶は大事じゃ。
「どうも初めまして。我はアルテミシア・アルアジフ。超絶美少女大聖女なのじゃ」
カーテシーしながらそう告げると、双子らしく同時に返してきた。
「「イニーム、サハルゥタス、ウルーソサ!」」
謎言語じゃった。