最弱無敵の転性聖女   作:繭浮

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まさに最弱、タイトルに偽りなしです。

 さて、知りたい情報は聞けたことじゃし。ここらで真実を告げるとしよう。我は基本嘘が嫌いなのじゃ。

 

「情報感謝する。さて、実はここまで語った我らの情報に、話を円滑にするための嘘設定が混ざっておるのじゃ」

「え?」

「設定?」

 

 困惑の表情になる童2人。まぁ仕方あるまい、唐突な話題転換じゃからな。

 

「我は本来嘘が嫌いなのじゃ。じゃからここから我が話す内容は、嘘偽りのない物と誓って約束しよう。どう捉えるかは、そなたら次第ではあるがの」

「……お忍びなら、いきなり平民に真実全てを語れなくても仕方ないっぽいですよ」

「なんか難しい事情があるんだろ?」

「うむ、まずそこが嘘設定なのじゃ」

「「へ?」」

 

 間の抜けた声を上げる童2人。気にせず続けて語る。

 

「我はその、ジェシカとかいう大聖女なんか知らんし、其奴と我は一切関係のないのじゃ。つまり我は野良聖女——いや。我こそが、本物の聖女じゃ」

「意味わかんねぇ」

「流石に私も意味不明っぽい」

 

 まぁ、わからぬよな。ならば噛み砕き教え込ませるまで。

 

「アブドゥル・アルアジフという人物の事を知っておるかの?」

「それはまあ、知らないワケないですよ」

「誰だ?」

 

 こやつは……

 

「……おぬしは何なら知っておるのじゃ?」

「え? ウルフの解体の仕方とか?」

「今の話題とは全く関係ないの……」

「伝説の大聖者様の名前、ですよね」

 

 無理矢理話の流れを戻すエミー。もうジョッシュはしばらく放置じゃ。

 

 にしても、フッフフフ……偉大と褒められると、流石にちょいと気分が高揚するのう♪

 

 まぁ、過去の栄光は過去に捨ててきた。今の我は、あくまでアルちゃんなのじゃ。

 

「うむ。アルアジフの姓は、大聖女と、大聖女に直接認められた聖女のみが与えられる洗礼名、とのことじゃが。伝説の聖者から名前を(あやか)っておるだけで、大聖女と大聖者に血縁は一切ないじゃろう?」

「それは当然です。アブドゥル・アルアジフ様は、世界が滅びるより何千年も前に存在していたと言われる、伝説上の人ですし。弟子の子孫の話はあるっぽいですけど、伝説の聖者様は結婚していたとか、子孫がいたなんて話は全然なかったっぽいです」

 

 ぽいというか、確実にない。我、結婚も子作りもしたことないからの。独身万歳!

 

「じゃが、どうじゃろう。その大聖者が、実はわりと最近まで生存しておったとしたら?」

 

 さて。ここまで言えば、聡いエミーなら、我の言いたい事に気付いたはずじゃ。

 

 ……呆けた顔のジョッシュは気にせんで置く。馬鹿な童はそれはそれで可愛いからの。

 

「……まさか、大聖者様の……!」

 

 やはり答えにたどり着いたか。賢い童も好きじゃぞ〜。

 

「うむ! 我こそは、唯一正統にアルアジフを名乗る事を許された、伝説の聖者の娘。アブドゥル・アルアジフの全てを受け継いだ、真の意味での大聖女! アルテミシア・アルアジフである!」

「!!」

 

 細かい事を言えば違うのじゃろうが、嘘は言っておらぬつもりじゃ。

 

 この肉体は我の血肉と、ある意味実の娘とも言えるスピリットとで造られておる。

 

 すなわち。我が造ったのじゃから、我は我の娘、ということじゃ。

 

 ……まぁ、中身(精神)はアブドゥル本人なんじゃがの。

 

「この施設も、我が父上より受け継いだものじゃ。まぁ、管理のほとんどはカタリナに任せきりにしておったのじゃが」

「改めまして。ここの管理人兼アル様の忠実なメイド、カタリナですわ」

 

 我の設定に乗って、正式な役割を告げるカタリナ。

 

「いきなり我が伝説の聖者の娘じゃと告げても信じられぬじゃろうし、話も進まなくなりそうじゃったからの。必要だったとはいえ嘘をついてしまい、本当に申し訳なかったの。すまん」

 

 そう言い、深く頭を下げる。

 

「そんな、頭を上げて下さい! 本当に伝説の聖者様の娘かどうかはともかく、その治癒術が大聖女様レベルっぽいのはわかります! そんな凄い人に頭を下げられるなんて!」

「嘘は嘘じゃ。人として聖女を名乗る者として、謝罪せねばならぬ」

「気持ちは嬉しいですけど、なんていうか! やっぱり恐れ多いっぽいですから!」

 

 ふーむ。恐れ多い、のぅ。

 

「そこなのじゃ」

「え?」

「聖者とは——聖女とは、敬われこそすれ、本来そのように畏れられる存在ではない。傷付いた者と共にあり、友になる物じゃ。癒した代わりにわずかな報酬を受け取るだけならまだしも、暴利を貪るなどあってはならぬ! それは聖女の行いではない!」

「ええっと……アル様は」

「敬語はともかく様付けはなしじゃ、アルちゃんと呼べい! 我がつい崇めたくなるほど狂おしく愛らしいのは分かるが、我は歳の近いおぬしらに崇拝などされとうない! 求めるは友情、友愛じゃ!」

「まるで駄々っ子ですわね」

 

 カタリナのツッコミは無視じゃ。

 

「えっえ? で、でも〜」

「デモもデーモンもない! ほれ、ユウジョウ!」

「ゆ、ユウジョウ」

「アルちゃんは可愛い!」

「アル、ちゃんは可愛い」

「聖女は友達!」

「「聖女は友達!」」

「アルちゃんは聖女で友達!」

「「アルちゃんは聖女で友達っ!」」

 

 なーんかいつの間にかジョッシュも加わっていたが。とにかく一緒に復唱させた。

 

 ユウジョウ!

 

「なんでしょうかねこの茶番」

 

 1人冷静にツッコむカタリナ。

 

 ふん、ノリの悪い奴じゃ。まぁ我は懐が深いゆえ、許せる!

 

 

 ⏳

 

 

「さて、これでお互い友人同士になった訳でじゃ」

「あ、今の、友達の儀式っぽいナニカだったんだ」

「うむ! ということで、早速友人のおぬしらに頼みたい事があるのじゃ」

「そうだな、友達の頼みは聞いてやらないとな!」

「はぁ、単細胞っぽい……」

 

 エミーが呆れたように呟く。

 

 単細胞か、じゃがそれも良し。ジョッシュはジョッシュらしく、で良いのじゃ。

 

「困難な事を頼むつもりはない。ただ我を、リバークロス帝国?とやらの帝都まで、案内してはくれぬか?」

「帝都スラッシャンバーンまで、ですか」

「あぁいいぜ。ちょうど金も貯まったし、近いうちに出るつもりだったからな」

「何気軽に言ってるのジョッシュ。アルさ……アルちゃんへ払う治癒術費で全部消えるっていうか、全然足りないじゃない」

「あ、やっべそっか!」

「ふむ、エミーも少々抜けておるの。我は現在世に知られておる聖女ではなく、野良みたいなもんじゃ。今後旅費代わりに多少の治癒費を受け取る事はあるだろうが、暴利(ぼり)はせぬ」

「……アルちゃん、ほんとにそれで良いの?」

「かまわぬかまわぬ。それが本来の聖者——聖女じゃからの!」

「マジか! ありがてぇ! これで予定通り、帝都で冒険者だぜ!」

「いいのかなぁ……ほんと、お気楽頭で良いよねージョッシュは」

 

 相方の反応に、苦笑いを浮かべるエミー。まぁ、今までの聖女の常識を覆すような発言しとるしの、いきなり我の価値観を受け入れよと言われても、難しいのじゃろう。

 

「じゃが、それではおぬしら……特に、不満顔を浮かべておるエミーは納得しないようじゃ。そこで、報酬の要求じゃ」

「帝都まで案内するのが報酬、ですか?」

「うむ。嘘を混ぜたとはいえ、我らが世情に疎いのは事実じゃ。我は今日まで一度もここから出ず、引きこもっておったのでな」

「わたくしも、ここ十数年アル様に付きっきりでしたので、案内役がいると助かりますわ」

「ということで、どうじゃろうか? おぬし達の旅に同行させては貰えんかの。その間、怪我をしたら即治すし、その際の治療費は一切取らん。メリットばかりじゃ」

「俺は大歓迎だぜ!」

「ジョッシュ、勝手に決めないで」

「ふむ、エミーは気が進まぬか?」

「気が進まないっていうか……」

 

 ふむ、懸念があるようじゃな。厄介事(リスク)は避けるのが普通じゃから、まぁ仕方ないが。

 

「アルちゃん、帝国に行ってなにするの? どうにも目的が見えてこないの。理由、聞かせて?」

「なんじゃ、そんなことか」

 

 この姿になってやる事と言えば、それは当然!

 

「我は最強に可愛いじゃろ? 誰もが振り返り花も恥じらい花弁を赤く染めてしまう愛らしさは、独り占めするよりも大衆に認知されて然るべき! なのじゃ!」

「確かにすっごい可愛いし、気持ちはわからなくもないけど……なんとなく、自意識過剰っぽい」

「ついでに、帝国の近隣国家の、ルルララ?だかに行って、大聖女とやらに文句を言うじゃ。聖女としての本来の在り方を、みっちり教育せねばならぬからの!」

「え、そっちのがついでなんだ……」

「あと友達100億万人欲しいのじゃ」

「急にアホの子っぽいこと言い出さないで、頭混乱する」

「なぁ、俺ハラ減ってきたぜ、そろそろ帰ろうぜ?」

「お主……」

「ジョッシュさあ……」

 

 ……我も大概じゃという自覚はあるが、此奴いくらなんでもマイペース過ぎぬか?

 

 まあ……ある意味、大物かもしれんな。今後化ける……かのぅ?

 

 まぁそんなわけで。まずは2人の生まれ故郷でもあり、魔獣狩人(ハンター)として拠点にしている村へ、我らは向かう事になった。

 

 なった、のじゃが……

 

 

 

 

 ⏳

 

 

 

 

「……うぅ……すまんのぅ、すまんのぅ……」

「いやいや、聖女様に戦闘力は求められてないっぽいし、仕方ないよー」

「いやーあっはははは! 自信満々に突っ込んで何回も自爆するとは思わなかったぜ!」

「ポンコツアルちゃん様、残念可愛くて……存外に捗りますわ。くふっ」

「2人ともっデリカシーないっぽい! こんなに落ち込んでるのに……」

 

 村に辿り着くまでの道中、我は童(とカタリナ)に爆笑されたり慰められたりで、気落ちしておった。

 

 どうしてこうなった……解せぬ……!

 

「なんでじゃー!? 我、むっっっちゃ弱〜〜い!!!!」

 

 我の肉体、最高に最強になるよう調整したはずなのじゃが!?

 

 カタリナに用意させておいた業物の短刀だけあれば、あんなウルフ程度に遅れをとるようなはずは……はずがないのにぃ……

 

「廃墟を離れてからの今日のご主人様:

・単体のウルフに単身自信満々で突撃、足を食いちぎられ転倒し頭部を半分噛みちぎられ死亡。復活まで約20秒。

・大型シカの魔獣の群れに突撃し、刃のように鋭く尖った角に全身串刺しにされ死亡。復活まで約10秒。

・単体のウルフにまたもや単身突っ込み何故か生成した鞭の方で応戦、善戦のような何かになったものの鞭の特性上致命傷を与えられず、最後は胴体心臓付近を爪で引き裂かれ死亡。復活まで約10秒。

……足手まとい以外のなにものでもありませんでしたわね?」

「ごふぅっ!」

「精神ダメージで喀血したっぽい!?」

 

 カタリナが、村に着くまでの我の死亡記録を誦じる。

 

 主人の心に負った傷を容赦なく抉って来るとはのぅ……やっぱりなんか性格悪くなっとらんかの?

 

(あれかのぅ……やはり90年間も寝坊してしもうたのが原因かの……肉体調整の方も、それで狂ったとしか……その代わりであるかのように、自動治癒(オートリカバリィ)とかが想定より強力になっておるが……)

 

 まあ……「最強の肉体」は悪ノリの結果的なとこあるしの。想定より弱い肉体になってしもうたのは気に食わんが、鍛えとらんそこらのおっさんよりは強い感じじゃし。

 

 まぁヨシ! ……ヨシにしたい。

 

 ……そもそもこんな、野生動物を超強化したような生物が発生しておるのは流石に想定外じゃったし?

 

 つまり! 我自身に落ち度はないのじゃ! ないったらないのじゃ!

 

 それよりも。

 

「……何故、90年も寝坊してしもうたかじゃな……」

「……91年108日と4時間43分ですわ」

「更に細かくなっとる……それと、独り言の小さな呟きをわざわざ拾わんで良いっ」

「……地上の情勢と並行して調べてゆきましょう」

「んむ、そじゃな」

「おーい、2人してなに話し込んでんだよ! 村は目の前なんだから早くしてくれよ、腹減ったぜー!」

「やれやれ、十数秒程度の会話じゃというのに、せっかちな坊じゃのぅ」

「あははっごめんねアルちゃん。でも私もだいぶお腹空いたから、気持ちはわかるっぽいかな」

「ま、陽もだいぶ傾いて来たしの」

 

 苦笑いで返しつつ、我は先導する童達の跡を小走りで近寄り、村の出入口らしき場所で待つ2人に追い付く。

 

「着いたぜー! いやー、やっぱ村の風景見てると落ち着くぜー」

「なんだかんだハンター業は命懸けだしね。無事帰れたら安心するから当然だよ」

 

 村に五体満足で仕事から帰還出来た事で安堵したのか、しみじみとそう言ってからこちらを振り返り。

 

「「ようこそ、ハイスロープ村へ! 伝説の大聖者様の娘、聖女アルテミシア・アルアジフ様!」」

 

 童が一丁前に格好付けてから、手を差し伸べて歓迎の意を示す。

 

「何もない村だけどな!」

「ジョッシュ一言多いっぽい! 事実だけど! なんにしても、私達はお2人を歓迎します!」

 

 じゃがすぐに愛想を崩して、本当に心から歓迎していると言うてくれた。

 

 うむ! やはり友情、素晴らしい!

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