我が村の中に居ながら村外の敵性生物を感知出来たという事は、接敵、正確には村へ侵入するまでにもはや3分もないという事。故に、侵入される前に辿り着け、堰き止めるために特攻する者が必要じゃ。
とはいえ、すでに大怪我を追わされたおじさんハンター3人には、年齢的にも精神的にも少々荷が重いであろう。そこでカタリナの出番じゃ。
カタリナの星霊剣の身体強化ならばギリギリ村の前で接敵出来る上に、我が直々に転性開始直前までに戦闘技術を叩き込んである。彼奴ならば、役割を確実にこなせると知っている。
「カタリナ、村への侵入を許すでない」
「承知致しました。ですが、全て倒してしまっても構——」
「構う。全力を出すのはあくまで必要に迫られた時のみ。繰り返す、村への侵入を許すでない」
確かに、世界を滅ぼしうるレベルのモノがいた場合は全力を出させない訳にはいかぬが、感知した生命力的にそれはない。
何より、村の戦士に手柄を与えなければならない。カタリナが全て片付けては、我に名誉挽回の機会を奪われたと感じてしまうじゃろう。
「承知致しました」
その台詞を残し、霞のようにカタリナの姿が消える。
これは、水星霊術の《水分身》じゃな。大体の使い手にとって、役割を終えると同時に消えるメッセンジャー的な使い方が主流じゃったが、カタリナ程のワザマエならば会話も可能じゃ。
つまり。我に《水分身》にて語りかけた時点で、カタリナは我の意を汲んでウルフの群れへと1人襲撃しに行っていた、と言う事じゃの。
ユウシュウ!
ちなみに、カタリナの《水分身》は独自改良されており、更に一段上の事が出来る。
簡単に言えば。リアルタイム通信じゃ。
▲▽
アルちゃん様の側に残して置いた分身が私の側に飛んできて、事項を伝えて消える。
「……侵入を許すな、ですか。面倒ですがまぁ、仕方ありませんわね」
私が全部お片付けすれば色々な事が早く済むのですが、確かに村人も活躍するなら、相手にとってこちらの戦力を見誤らせられる。
(さて、となると……先行部隊の足止め、もとい、脚部破壊でしょうか)
村外縁部の家屋の屋根に失礼して乗り、身を屈めて腕を目線の高さに合わせて構え。
「『
『了』
私の呼び掛けに応え、私がメイド服の下に鎧下の様に纏っていた
アルちゃ……いえ、敢えてアブドゥル様と言いましょうか。
アブドゥル様が転性の眠りに入られる前に私に与えて下さった、私の相棒にして戦友。
第1級星霊剣・『深海』。通常形態は水の様な不定形であり、私の戦法に合わせて幾つかの形態に変形してくれる。
近距離ならモード:短剣。
中・遠距離ならモード:弩。
遠距離ならモード:長弓。
私の相棒は、あらゆる戦況に適応した形態になる事が出来ます。その変わり、器用貧乏ゆえ爆発力という点に関しては弱いと言わざるを得ませんが……隠密行動に爆発的な攻撃力は必要ないので問題ありません。
さて。
(数秒後に辿り着きそうなのは——10。ヘッショする方が楽なのですがオーダーは足止め、ならば)
バシュバシュバシュバシュ——
静かな水音と共に放たれた水の矢が、10体の前足付け根当たりを穿ち破壊する。
敵先行部隊の「
ちなみに、相手方の第二先行部隊は先方全員が突如前のめりに転倒したので動揺し、警戒して速度を落としています。
さてさて。戦況の実況を優先させましたので、いきなり知らない単語が出てきた事で読者の方が困惑しているかもしれません。
ジョッシュ様とエミー様、ついでにあの黒……じゃなかった、緑の三狩人とかいう通り名がある3人も所持していた様ですが。星霊剣について、もう少しつっこんで解説致します。見ているだけは暇なので。
星霊剣とは、先に出てきた星貨にも使用されている星霊石と主に銀とを混ぜ合わせて作られた、特殊合金
私の相棒はなんか不定形とかいう意味不明な形状ですが、破壊の力を持っていれば形状問わず「剣」です。
生きている、と言った通り、星霊剣には心かあります。等級が高い程に人間に近い精神を持ちますが、最低級レベルはAI程度です。相棒の『深海』は1級なので、ほぼ人間レベルで思考出来ます。むふん(ドヤァ)
現在の星霊剣の等級分けが過去と変わりないなら、最高が1級〜最低で10級、それ以下は格付けされず低級星霊剣呼ばわりです。低級の精神は虫程度です。
とはいえ、全ての星霊剣に精神がある事に変わりはありません。故に、星霊剣は使用契約をしなければ力を引き出せないという条件があります。
低級でも普通の鉄の剣よりは硬いので、契約出来なくとも使う意味はあ……ったのですが、魔獣には星霊の力以外効果が低いらしいので、意味はほぼないと言えます。
ちなみに、星霊剣も人間と同じ星霊属性を持っているのですが、ここに契約者の属性は直接的には関係しません。つまり、火属性の人が水属性の星霊剣と契約すれば、火と水の2属性の星霊術を扱う事が出来るようになります。
詳細説明は別の機会にアルちゃん様がするかもですので、今回はこのくらいにしまして。
「イクゾー!」
デッデッデデデデ カーン
ではなく。アルちゃん様を率いるハンター様方、怪我や持病で引退から回復した方含め、約12名程の男女が村から飛び出しウルフの群れに逆襲を開始しました。
ふむ。そろそろアルちゃん様へ視点を戻しましょう。
△▼
戦意を漲らせた戦士達が村から出て直後、まだ息はあるが足を壊され転がっていたウルフ約10体へと即座にドメ刺しする。
(うむ、カタリナも戦士達も良い仕事じゃ!)
少し後方でまごついておったウルフ達が、先行隊がトドメをさされたのを認識したのか、憎悪を発して突撃を再開し出す。
ふん、判断が遅いわい。所詮は獣か。
⏳
「うおおおおお!!」
「てりゃあああ!!」
「「アルちゃん様の加護ぞある!!」」
その後は、ほぼ消化試合のようなモノじゃった。現役ベテラン3人、期待の新人2人、復帰した歴戦の狩人6人におまけでカタリナまで付いておる。
正直カタリナだけで過剰戦力なのじゃが、まぁあまり手出ししないよう命令したから別にして。
ともかく。カタリナを抜きにしても、戦力的にも数的にも劣ってはいるが、我の超絶治癒術があれば数的有利は意味をなさぬ。
(しかし……妙じゃな)
先行したカタリナが付けた傷以外で、怪我をしている個体が見当たらぬ。ガイヤー達が逃げ仰たのは、相手に手傷を負わせたからなはずじゃが……
まぁ、倒れてもすぐ起き上がり攻撃してくるゾン……即治癒戦術によって、
「ゾンビアタックそのものですわね」
「うるさいわい」
我の戦術によって、ウルフは見る見る数を減らしていっておるから、問題なく殲滅は出来るじゃろうな。違和感に関しては、後で考えるのじゃ。
そうして戦い続けて十数分。遂にリーダー率いる群れと相対した。
「ようやく会えたの。ここが正念場じゃ! 皆の者、意気は十分か!!」
「「「アルちゃん様の加護ぞある!!!」」」
「なんの問題もないようじゃな! さあ戦士諸君! けっちゃこっ……決着を着けるぞ!!」
((噛んだ……可愛い))
最後の最後で締まらぬ号令になってしもうたが……ともかく!
ウルフ殲滅戦、最終局面じゃ!