君の重しになりたくて 作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね
「ダーニャさん好きっす!!俺と付き合ってください!!」
雲一つない青空がデザインされた空が投影された下で、朝から始まる講義に憂鬱な気分な者達も多い中、スタートーチ学園の正門前で周囲から向けられる好奇の視線など全く気にしていない男の告白が響き渡る。
直角九十度に曲げられた腰と、一直線に迷いなく伸ばされた右手は男が口にした告白の想いが真っ直ぐである証でもあり、それは告白相手の顔を見ていない彼の顔が真っ赤な事からも分かるだろう──そんな男の直球ストレートの告白は
「ごめんなさぁい。シュバルツ君の事はお友達としか見れませんので」
気怠げな声と共にあっさりと砕け散るのだった。
「くっ、今日もダメか!!」
しかし、男──シュバルツには落胆の様子は見えず、風切り音すら聞こえるレベルで持ち上げられた右眼に大きく縦に切り裂かれた傷痕を持つ顔はフラれた者とは思えない清々しさが宿っている。
それもそのはずで、彼等が出会ってからの約二年間に渡り毎日繰り広げられているのだから悲壮感など無くなって当然だ。
「毎日毎日飽きませんね。なんなんですかぁほんと」
「今日が駄目だからって明日も駄目とは限らないじゃないっすか」
「いや普通は駄目なんですよ。前向き思考にも程がありません?」
「えぇー!!だって、俺は確実に昨日よりも今日!今日よりも明日!!ダーニャさんの事を好きになってるっすよ!!」
「……そういうのが重いって言ってるんですよ」
話をしていても無駄だと判断したダーニャはシュバルツを追い抜き人混みの中へと消えて行く。
「お昼、一緒に食べましょうね〜〜!!!!!」
なお、何処までも前向き思考なシュバルツにダーニャの行動の意図は一欠片も伝わっておらず、彼女の背中にはいつも通り大きな声が乗っかるのであった。
「ニーヤちゃん。今日も告白を受けてたね」
「ダーニャと呼んでください。はぁ……本当に毎日、毎日飽きない人です」
「それだけダーニャちゃんの事が好きって事なんだよ!」
「シーちゃんって意外とシュバルツ君の評価高いですよね。シーちゃんが彼とお付き合いすれば良いんじゃないですか」
「えぇ!?……それはちょっと……」
ダーニャの友人、シグリカから見てシュバルツは毎日毎日、ダーニャに告白している変な人であり自分にはない迷いのない真っ直ぐさを持っている人という点からくる好印象であり、そこに異性愛はない。
それでもはっきりと言葉にせず、ゴニョゴニョと濁す辺りに彼女の善性が見てとれる。
「にゅ、入学式からって訳じゃないんだよね!いつから告白を受けてるの?」
自分への追求を逃げるようにシグリカは自身の知らない情報を聞き出そうと問いかける──学生はいつでも恋バナが大好きなのだから。
「えぇ……それ聞きます?」
面倒臭いという本心を隠さず、顔を顰めるダーニャであったが興味津々に目を輝かせぐいっと顔を近づけてくるシグリカに折れて話す事を決める。
「一年の時に課外授業があったじゃないですか。ラハイロイの環境調査という名目で、学園のすぐ近くを調べたアレです」
「あぁうん。ロイ人の私には慣れ親しんだものだったよ」
「流石は未来のヘリオディック・シックスですねぇ。まぁ、私はそんな慣れているシグリカちゃんと違いまして、適当にウロウロとしていたら思っていたより離れていたみたいでしてね。気が付いたら、5体ぐらいのビリリに囲まれていたんです」
ダーニャは当時の光景を目を閉じて思い返す。
環境調査という名目の授業に興味を持てなかった彼女はちょうど良いサボり場を探し、付き添いの教師の目が届き辛い場所へと足を運んでいたのだが、その途中で不覚にも足を滑らし坂を転がり落ち、運悪くヴォイドマターの影響を受け凶暴化したビリリに囲まれてしまっていた。
「……これはちょっと不味いですかね」
戦いが苦手であるという自覚がある彼女の足は先程の落下で、捻ってしまったのがズキズキとした痛みを訴えており目の前のビリリから逃げることは叶わない。
それでもただ黙って死ぬつもりなどない彼女は武器を取り出して──
「だりゃゃあ!!!」
「ッッ!?!?」
──光の流星が目の前に落ちる。
否、そう錯覚する程の周波数を纏って振り下ろされた長刃の一撃であった。
その余りにも大きく、切るというよりは叩きつける事に特化している様なゴツい長刃は刀身から使い手の周波数を受けているのか万華鏡の様に乱反射する光を放っており、その光一つ一つが彼の意志に応える様にビリリ達を撃ち抜いていく。
「
ダーニャがその言葉を聞き返すより前に、彼の──シュバルツの目の前に残っていたビリリが放つ放電を彼は片手で受け止めると返す一撃としてビリリを文字通り消し炭にすると長刃を地面に突き刺し振り返った。
「もう大丈夫っす。なんたって俺が……き……た……」
「えっと……ありがとうございます?」
年頃の男の子がよくやる様な格好つけた笑みを浮かべてポーズを決めようとしていたシュバルツの動きがダーニャを見て止まり、そんな彼に小首を傾げながら彼女は助けて貰ったお礼を告げたその瞬間、全ての置き去りにシュバルツは片膝を付き彼女の手を握りしめる。
「好きっす!!俺と付き合ってください!!!」
「……え、ごめんなさい」
「オゥ!!」
──なんて事はない、これはそう言ってしまえば『ただの一目惚れであったのだ』
声が好き。顔も好き。演出も好き。君はどんなダーニャちゃんが好きかい?