君の重しになりたくて   作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね

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これにて完結!!


君の重しになりたくて 後編

 スタートーチ学園の正門側、学園を一望出来る崖の上にガシャンと音を立ててバイクの滑空モードを終わらせ着地させる。

 先に降りて後ろに乗っていたダーニャさんの手を取りゆっくりと下ろしてから、バイクを回収すれば思っていた通りの夕焼けが俺達を照らし出す。

 

「此処なら誰の邪魔も入らず綺麗な景色が見れると思ってたっす」

 

「確かに綺麗ですねぇ……学園を守るバリアの反射ですら様々な色に輝いていますし」

 

「学園の中を見て回るのも良かったっすけど、こうやって眺めるのもまた乙っつすよね」

 

「はい。帰って来れたんだなぁって安心します」

 

 やっぱりダーニャさんは学園が大切なのがよく分かる。

 口角が上がっているし、目も凄く優しくなってて……此処を見つけた甲斐があるってものだな。

 本当は彼女の横顔をずっと見つめていたいけど、今日は俺も普段以上に覚悟を決めてきたんだから逃げる訳にはいかない。

 

「ダーニャさん」

 

「はい……て、その手紙……」

 

「あの時、ダーニャさんが置いていったものっす……寝ていた俺も悪いっすけど、手紙で返事をされるとは思ってなかったっす」

 

 ダーニャさんが俺宛にと残していた手紙には、俺との日々が楽しかった事やお弁当を作ってくれたお礼なんかが初めに書かれていて、その次に彼女の出生……つまり、フラクトシデスに関する事やアレフ1の事が書かれていき、最後に今までと違って何度か書き直した跡と震えた筆跡でこう書かれていた。

 

「『シュバルツ君は幸せに生きてください。沢山の人の笑顔に包まれて、愛されて陽にあたる輝かしい人生を送ってください。貴方が幸福な人生を歩んでくれれば、それが貴方を好きになった私の幸福です。だからどうか、私を忘れてください』……俺に忘れて欲しいならきっちり断るべきっすよダーニャさん」

 

「……私だってそう思ってました。シュバルツ君の事ですから、ちゃんと断るべきだって……でも、何度書き直しても無理だったんですよねぇ」

 

 手紙の内容を読まれて恥ずかしいのか夕日の色とは違う赤に染まるダーニャさんをじっと見つめれば、心臓の音がうるさい程に響く。

 こればっかりは何度も告白を続けているが、全く慣れる気がしないな。

 

「ダーニャさんは一旦、アレフ1の脅威からもフラクトシデスからも解放されたっす。ただの一人の人間としてこれからを生きる権利を勝ち取れたっす。それでもまだ──自分が消えるべきだと思ってるっすか?」

 

「どうでしょうねぇ……全ての因果から私が解放されても、私が鳴式の共鳴者(私である限り)は世界を滅ぼす不発弾です。もう一度、消える事が正解だと提示されれば分かりません」

 

 生きることを選択してくれたからこそ、もう一度命を賭けるしかない危機が訪れたのならやっぱりダーニャさんは選んでしまうと思っていた──だって、俺が彼女を大切だと思うのと同じで彼女も周りの人が自分以上に大切なのだから。

 

「ダーニャさんは優しいっすね。普通、自分の消滅を選べる人は居ないっすよ?」

 

「それ、シュバルツ君が言います?私と一緒にヴォイドスペースの先に堕ちようとした貴方が」

 

「俺はダーニャさんと一緒なら何処でも構わないだけっすよ。一人で消えるなんて無理っす」

 

 あぁ……やっぱり聞いておいて良かった。

 

「ダーニャさん。俺はずっと貴女が好きです。世界が滅ぶのなら手を取り合って一緒に、貴女を犠牲に世界が救えるのならそんな世界は滅んで欲しいぐらいに俺にとってはダーニャさんが全てです」

 

「……相変わらず重いですねぇ」

 

 苦笑を浮かべるダーニャさん。

 確かに俺の彼女に対する思いは、色々と重たいのかもしれない……いや、重いのは自覚している。

 彼女の隣で話をしている時はもちろんのこと、講義中に居眠りしている顔を、教室で友人と談笑している横顔を、ふとした瞬間に見せる何処か寂しげな顔を、俺は暇さえあれば見つめてはその一つ一つに見惚れていたのだから。

 

 でも、そんな俺でもダーニャさんが涙を浮かべた時は、胸の奥が苦しくなってもう二度と見たくないと思ったし、助けてと言葉を聞いた時は身を焦がすほどの強い怒りをニヴォラに抱いた──ダーニャさんだけが俺の感情を強く揺さぶる。

 

「……重くてちょうど良いくらいっすよダーニャさん」

 

「シュバルツ君?」

 

 ダーニャさんの手を取り、片膝をつき触れるか触れないかという距離感でリップ音を鳴らす……リナシータ関連の本で読んで格好良いなと思ったから真似て見たけどこれ結構、恥ずかしいな。

 

「どんな選択を君が選んでも俺が必ずそばに居る。俺はこれから先の長い人生をずっとずっと君の手を取り支え、辛い経験を多くした分沢山の笑顔を浮かべさせて見せる……だからどうか俺をシャボン玉の様に儚くふわりと消えてしまうダーニャさんの重しにさせて欲しい」

 

 夕焼けが一際強く俺達を照らし出す。

 俺の思い違いでなければ、告白を聞き届けたダーニャさんの顔は今まで見た事がない程に赤く染まり、熱を帯びた潤んだ瞳が愛おしげに俺を見ている。

 だが、彼女の返事はすぐに返ってくることはなく、一分、二分と時間が過ぎていきあれ程輝いていた夕日が沈み始めた頃に彼女はゆっくりと口を開いてくれた。

 

「……シュバルツ君を置いて私は早く死んでしまうかもしれませんよぉ?」

 

「周波数の問題なら俺がどうにかする。それ以外でも必ず君と一緒だ」

 

「私は家族を知らないんです。だから色々と迷惑をかけるかもしれません」

 

「俺達には俺達の形がある。ゆっくりと作っていけば良い」

 

「……良いんですかぁ?私なんかで……シュバルツ君にはもっと相応しい子が……」

 

 堪えていた涙が言葉と共に溢れ出し、ポタポタと俺の手を濡らすからギュッと握る力を強くした──俺がこの手を離すことはないと熱を刻み込む様に。

 

「俺はダーニャさんが良いんです。いや、君じゃないと駄目なんっすよ」

 

 あぁもう緊張のせいでいつもの口調になってしまった……格好良く決めるために我慢してたのに。

 

「……シュバルツ君」

 

「ダーニャさん!?!?」

 

 片膝立ちというちょっと不安定な立ち方ではあったけど、まさか俺がダーニャさんに押し倒されるとは思わず、裏返った素っ頓狂な声を出してしまった。

 正直、此処までで心臓はとっくに限界点を超えているんだから変な声も当然で……しかも押し倒されたお陰でダーニャさんの長い髪が俺の視界にある余計なものを隠して潤んだ瞳で見つめてくるダーニャさんしか見えないし!!可愛すぎるし、凄い良い匂いに包まれて色々と限界がががが。

 

「ふ、ふふっ……凄い顔真っ赤で可愛いですねぇ?そんなに私に押し倒されて嬉しいんですかぁ?」

 

「嬉しい」

 

「少しは恥ずかしいとか思ってください全く……それに危機感だって」

 

 音もなくダーニャさんが呼び出した黒い手が俺の首元へ添えられる。

 

「……今の私ならこうやってシュバルツ君を殺すことだって出来るんですから」

 

「ダーニャさんに殺されるなら本望っすよ。それで君がこの先もずっと笑顔で生きてくれるならっすけど」

 

 アレフ1の周波数を色濃く放つ黒い手に躊躇いもなく触れる。

 やっぱり、虚無の鳴式の力で作られているせいかそこにあるのにないみたいななんとも掴み難い感覚が伝わってくるし、少しずつ何かが吸われている様な感じもしてきたな。

 

「……何があっても私の手を離すつもりはないんですかぁ?」

 

「ない。俺の全てを賭けて君の手を掴み続ける」

 

「はぁ……本当に一途で重い人、その選択は賢くない筈なのに……でも──」

 

 黒い手が首から離れたかと思うと、ダーニャさんの手が俺の頬を包み込み──ゆっくりと唇が重ねられた。

 お互いに顔を真っ赤にしながら、重なり合い息苦しくなった頃、ダーニャさんは名残惜しそうに離れる。

 

「──一番、愚かなのはそんなシュバルツ君が好きで大好きで、どうしようもなく愛してしまう私かもしれないですねぇ」

 

「ダ、ダーニャさんそれって……」

 

「はい。ぜひ、私と付き合ってくださいシュバルツ君。私の重しになってくれるんですよね?」

 

「もちろんっすよ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 ずっと続けてきた告白が受け入れて貰えた嬉しさから、勢いよく起き上がり今度は俺がダーニャさんを押し倒す形となる。

 

「「……」」

 

 じっとお互いを見つめ合った後、もう一度お互いの熱を求め合う様に唇を重ね合い好きだと愛していると思いをぶつけ合う。

 そんな俺達の熱を少し冷やす様にラハイロイの冷たい夜風が流れ込み、俺達は漸く立ち上がりすっかり暗くなった夜に輝くスタートーチ学園を見下ろす。

 

「夜景も綺麗っすね」

 

「そうですねぇ」

 

 漂泊者や皆の頑張りでアレフ1は追放され、最後のアンカーであったダーニャさんも繋がりは最小限になった。

 エクソストライダーも宇宙の何処かへ消え、ヴォイドマターの脅威も去ったラハイロイでこの先、スタートーチ学園がどんな運命を迎えることになるのかは分からない。

 

 でも、例えどんな障害が訪れたとしても俺にはこの手を繋いでくれるダーニャさんが居る。

 

「そろそろ帰るっすか。俺達のスタートーチ学園に」

 

「戻ったらシグリカちゃんに色々と聞かれそうですが、どう答えるつもりですかぁ?」

 

「そんなの決まってるっすよ!!──最高の彼女が出来たと伝えるっす」

 

 だから、覚悟してくださいっすダーニャさん、俺という重しは絶対に君を離さないから。




ダーニャちゃん可愛いなぁから始まった今作が此処まで続くとは見抜けませんでしたね……原作で、なんだかんだ救われるんやろ?って頃に書き始めたものが随分と遠くまできたものです。

感想や評価をくれる皆様、大変励みになりました事をこの場でお礼させてください。モチベーションの維持、皆様の期待に応えねばと熱量を高く持ち続ける事が出来ました。

今後、ダーニャちゃんとシュバルツが付き合ったりなどのお話は、再び熱が戻るか思いつき形にしたい衝動に駆られた時などにまったりマイペースで書きたいなと思っております。ifルートなども同じですね。

では、最後にゲーム本編で再びダーニャちゃんと会える事を祈願し締め括らせて貰います。

ダスビダーニャ!!
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