君の重しになりたくて   作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね

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実装前なら設定を盛っても良いって聞いた。


雨の日には手作りお弁当

 シュバルツの朝は早い。

 スタートーチ学園の生徒達が、夢を追うために普通の学生よりも早く活動を開始する傾向はあるが、その中でも彼は一、二を争うほどに早い。

 

「今日の天気は雨か」

 

 管理された天気が指し示すのは雨で、こういう日は殊更に彼は早く動き出す。

 カバっと飛び起きた彼はその勢いのままに、キッチンに立つとコンロに火を灯し、フライパンに薄く油をひく。

 

 冷蔵庫から太めのソーセージを取り出すと、パチパチと音を奏でているフライパンの上に落としじっくりと火を通していく。

 

 焦げない様にソーセージを管理しながら、炊飯器を開け仕込んでいた通りに炊けているのを確認し、上下をひっくり返し、暫く蒸し上げる。

 

「昨日の残りだけど煮物は二日目からだな」

 

 冷やしておいた鍋を2つ目のコンロ口に置き、中火にかける。

 それとほぼ同時に焼き上がったソーセージを皿に移し、用意していた四角形のプラスチックの容器に、切り分けておいたキャベツを置き、その上にソーセージを並べる。

 

 残った油とソーセージから出た油を利用し、卵の殻を片手で割ると綺麗な目玉焼きを作り、先程のソーセージの上に重ねる。

 

「おっと……温まったかな」

 

 グツグツと音を立てる煮物の火を消すと、一口、茶色に染まった大根を齧り、しっかりと味が染みているのを確認すると他の具材を少し取り分け残った物をお弁当に入れる。

 あとはサラダを健康と彩りの為に隙間に入れ、下の段になるお弁当によく蒸らしたご飯を入れればシュバルツ特製のお弁当の出来上がりだ。

 二つ用意されたお弁当の一つはピンクに星が描かれた布に包まれ、彼女の元へと運ばれる。

 

「ダーニャさん!!おはようっす!!リューク先生から貰った頭痛薬も一緒に入れてるんで、辛ければ食後に飲んでくださいっす」

 

「……また作ってきてくれたんですかぁ」

 

「はいっす。雨の日は片頭痛で辛いっすもんね。いつもダーニャさんの顔色が悪いので」

 

 机に突っ伏すダーニャの前でニコニコ笑顔を浮かべるシュバルツ。

 そう、彼が雨の日は普段よりも早く起きて行動を開始するのは片頭痛持ちのダーニャを少しでも助ける為であったのだ。

 

「ラハイロイでも苦しむ事になるとは思いませんでした……」

 

「ここの技術は凄いっすからね。気圧の低下も再現してるらしいっすよ」

 

「……恨めしい……今なら、ラハイロイの空に穴を開けられる気がしてきますよ」

 

「あはは!!それなら自分も手伝うっすよ。戦いが苦手なダーニャさんより俺の方が向いてるっすから」

 

「冗談ですよ冗談……全く、貴方が言うと本当に実行しそうで怖いんですよ」

 

 あくまで空に穴が出来るほどの鬱憤が溜まっていると言う程度の表現であり、別に実行するつもりなど更々ないダーニャのちょっとした冗談だったのだがシュバルツの言葉には妙な説得力が宿っていたので、彼女はやんわりと止める──だが、それが彼の重さの一端を引き出してしまった。

 

「──ダーニャさんがそれで楽になるなら俺、幾らでもやるっすよ」

 

 一寸の闇すら感じない彼の周波数と同じキラキラと輝いた瞳で断言する有り様に、突っ伏していたダーニャの顔が引き攣る。

 

「……だから重いんですって。もぅ」

 

「それだけ本気って事っすよ。ダーニャさん」

 

「ヴォイドマター学部の成績優秀者さんは本当に真っ直ぐですねぇ。私はシュバルツ君みたいに誰かの期待を背負うとか嫌なんですよ」

 

「ダーニャさんが本当に嫌なら俺も引き下がるっす。好きな子を苦しめてまで好意を伝えたいほど、自分勝手ではないっすから」

 

「……一年前の冬もそんなことを言ってませんでしたぁ?」

 

「ハハっ、言ってたかもっすね。っと、すんません!!俺、このあと講義入ってるんで失礼します!!」

 

 時計を見て自分の講義を思い出したシュバルツは名残惜しそうにダーニャの席から離れて、教室を出て行こうとし入り口のところでピタッと立ち止まり彼女の方へと振り返る。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえそう言えば忘れていたなと。ダーニャさん、好きっす!!俺と付き合ってください!!」

 

「今ですか!?……シュバルツ君は友達ですので」

 

「ぐっ!!」

 

 教室にはこれから講義を受ける生徒達が集まっており、ダーニャへと視線が集中するがこの二年間で慣れてしまった彼女は周囲の視線など気にも止めず、あっさりとシュバルツの告白を断ると彼も悔しげな表情を浮かべつつ断られた直後とは思えない速度で、走り去っていった。

 

「……はぁ。シュバルツ君には困ったものですね」

 

 そう溢す彼女の口元は少しばかり上がっていたのを隣の女子は見逃さなかった。

 ちなみにお弁当の味付けは全て、ダーニャの好みに整えられており彼女と昼ご飯を共にするシグリカと二ヴォラは大変、ご満悦そうにしている彼女を見る事になるのだった。




 ダーニャちゃんって髪長いし、ふわっとしてるから湿度が高い雨の日とか苦手そうだなって思いこの話が生まれました。
シグリカのPVでは怪しい雰囲気が強かったですが、本編では結構、思っている事が表情に出るタイプでもあったので妄想捗る。
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