君の重しになりたくて   作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね

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今回はちょっと今までも感じを変えて。


シグリカとシュバルツ

「あ、おはよう!シュバルツくん」

 

「朝早いね。シグリカさん」

 

「そういう君もね。ダーニャちゃんを待ってるの?」

 

 スタートーチ学園の正門、まだ朝早く人工の空が白み始めた頃に彼らは顔を合わせていた。

 

「もちろん。毎日、朝早く誰よりも早くダーニャさんに告ると決めてるから」

 

「あはは。本当にダーニャちゃんの事が好きなんだね。でも、ずっと告白を続けて辛くないの?」

 

 シグリカの疑問は尤もだ。

 好意を伝え、フラれるという経験はたった一度でも経験するだけでその後に尾を引きずるレベルで落ち込む人が多い。

 如何に今日に至るまで出会ってから毎日、欠かさず告白を続けているシュバルツであっても同じだろうと常々思っている彼女は折角の機会だからと問いかけるが、その返事はあまりにも呆気からんと軽い言葉で返された。

 

「フラれる度に苦しいよ」

 

「え」

 

「そっちから聞いておいてそんな驚いた顔する?まぁ、フラれ続けているのを見てるから慣れてきってると思うのは分からなくもないけど」

 

 学園の大半の人間がシュバルツはダーニャにフラれる事に慣れきっているか、もはや次元を通り越して快楽すら見出しているんじゃないかと噂で聞き、彼女自身も薄っすらそうなんじゃないかと思っていたところにこの発言はダイナマイトにも似た衝撃を与えた。

 目を丸くして固まるシグリカを見て、シュバルツは少しだけため息を溢すと懐中時計を取り出し時間を確認し、余裕があるのを確認するとしっかりとシグリカに向き合う。

 

「本気で好意を伝えて、フラれているんだから苦しくない訳がない。でも、同時にだからこそ俺はダーニャさんが好きだと思えるんだ」

 

「えっと……苦しいのに?」

 

「あぁ。初めは一目惚れだったけど、関係を続けていくうちに俺はあの人の雰囲気に惹かれているのが分かったんだ。シグリカさんも分かるだろう?彼女の近づいたと思ったら、離れているみたいな感覚」

 

「確かになんとなく分かるかも……ダーニャちゃんって優しい言葉もくれるけど、時折、こっちの胸の内を透かしているみたいにズンってくる言葉を言ってくるんだよね」

 

「シグリカさんは誰かが釘を刺さないとすぐ無茶をするからだと思うなそれは」

 

「うっ」

 

 痛いとこを突かれたシグリカが胸に手を当てて、フラフラとする様子を微笑ましそうに眺めながらシュバルツは続けた。

 

「だから俺はあの人の……重しになりたいんだ。捉え所がなく自由で気儘なダーニャさんも良いけど、今の彼女は気を抜くとふっと遠い宇宙の向こう側に消えていってしまいそうだからね」

 

「ううっ……聞いてるだけなのになんだか恥ずかしくなってきた気がする……」

 

「なんとでも言ってくれ。兎に角、俺はなんだろうとダーニャさんが好きだし、フラれる度にちゃんと苦しんでる。それと──」

 

 言葉を区切って次に発する言葉を何一つ誤解なく伝えたいと意思を込めるシュバルツを身長差から見上げる形になるシグリカは、若干の上目遣いで見つめる。

 

「──本当にダーニャさんが俺を拒絶すればその時は潔く身を引くつもりだ。親友としてそこは安心してくれ」

 

 ダーニャを通じて友人関係と言えるかギリギリの関係性であるシュバルツとシグリカにも関わらず、彼女の方から積極的に話しかけてきた理由──それはダーニャを心配しての事だと彼は見抜いた。

 事実、良からぬ噂が立つ程度には周囲から色んな憶測がされているダーニャとシュバルツの関係は互いが、否定も肯定もしないの相まってシグリカの耳には悪い噂も届いていたのだ。

 

 曰く、シュバルツはダーニャをストーカーしているとか、ダーニャは好意をはぐらかし続け、シュバルツを意のままに操るつもりだとか。

 

 もちろん、全ては根の葉もない噂話にすぎないのだが、心優しいシグリカはもし、この噂話がダーニャを傷付けていたらと思うと真実が気になって仕方がなかったのだ。

 

「そっか……じゃあその時は私が責任を持って君を引き剥がさなきゃね!」

 

「んん?どうしてそうなった??」

 

「だって、ダーニャちゃんは優しいからシュバルツくんと完全に距離を取るのは難しいでしょ?」

 

「……なるほど。これが親友と友人(仮)の差というやつか」

 

「ん?ちゃんとシュバルツくんは友達だよ?」

 

「それは光栄だね……っと、ダーニャさんが来たっすからこれで失礼するっす!!」

 

「あ!?はやっ……」

 

 シグリカが手を伸ばした頃にはもう、此方に向かって歩く姿が見え始めているダーニャの方へ走り出しているシュバルツ。

 そのあまりにも真っ直ぐすぎる背中に微笑みを溢しながらシグリカは今日も、人助けを始めようとするのだった。

 

「?そう言えば、私と話してる時は〜〜っす!って口調じゃなかった?」

 

 ふと、過った疑問に首を傾げるシグリカは一度、足を止めて振り返ればフラれたにも関わらず、元気そうにダーニャの隣に立つ彼を見てその答えに辿り着く──なんだ、私相手だから緊張してなかったんだ、と。

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