君の重しになりたくて   作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね

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サブタイトル通り、ゲーム本編へ突入!!……ちょっと、ダーニャとの絡みが少ないですごめんなさい。


漂泊者

 ある日のスタートーチ学園はいつも通り、研究に明け暮れる学生達の喧騒に包まれておりその中には勿論、シュバルツやダーニャの姿もあった。

 

「先程、ヴォイドワーム警報があったみたいですが、シュバルツ君は調べに行かなくて良いんですかぁ?」

 

「今日は大丈夫っす。昨日からずっと書き続けている論文を完成させたいし、ダーニャさんとの時間もたっぷり過ごしたいっすから!」

 

「またそういう……まぁ良いですけど」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべるシュバルツの暖かな視線から逃れる様に顔を逸らしたダーニャは、指で髪先をクルクルと纏めるとふと、視線の先に見慣れない人物がやって来ているのを見つけた。

 

「ん?シュバルツ君、あの人新人さんですかね?」

 

 スタートーチ学園の生徒の数はとても多く、退学になる者もおり顔触れはかなり安定しないのだがダーニャは持ち前の観察眼を以て、正門からやって来る黒髪の女子生徒を新入生だと見抜いた様だ。

 

「そうなんすか?って、隣に居るのリンネーっすね……新入生が早速、サボり魔に絡まれてるとなると先輩として助け舟を出すべきか」

 

 リンネー……スタートーチ学園のラベル学部に所属する生徒で、本来であればヴォイドマター学部のシュバルツとは関わり合いが少ない筈なのだが、彼女は何かと理由をつけて授業をサボったり、遅刻したりする為に補習を科されるのだが時折、教授達の都合が悪くなった時の代理として彼女に教える役割を担うのがシュバルツであったのだ。

 また、二人の趣味がバイクを通して共通している為にツーリングをする仲でもあったりする。

 

「……ふーん。じゃあ、私は先に教室に向かっていますねぇ〜シュバルツ君はゆっくりと相手をしてあげてください」

 

「あ、ちょダーニャさん!?って、歩くの早ぁ!!……俺、何か怒らせることしたかな……」

 

 好きな人(自分)と一緒に居るのに他の女の子を気にかける事に嫉妬した──なんていう乙女特有の理不尽さにシュバルツが気がつく訳もなく、どうやって謝るかを考えながら件の二人へと歩いて行く。

 

「やっぱ保健室に連れてくよ。ラハイロイに着いたばかりの新入生は、ストームで周波数がよく乱れちゃうんだ。漂泊者ちゃんが落ちてきた場所、ちょうどヴォイドワームの活動が活発になってる場所だったし、しかも轢いちゃったし……」

 

「ヴォイドワームの活発エリア……なら、リンネーはどうしてあんな危険な場所にいたの?」

 

「えっと新しくカスタムしたバイクの性能をテストするため……ちが、その自由研究の課題でヴォイドワームの生態データを集める必要が……」

 

 聞こえて来た会話に思わず、片手で顔を押さえながら呆れきった声でシュバルツは話しかける。

 

「リンネー。俺の記憶が確かなら今は授業を受けている筈だが?」

 

「うわぁ!?シュバルツさん!?!?こ、これはそのサボりじゃなくてですね……」

 

「全部聞こえてたぞ。そこの人を轢き飛ばしたのも含めて」

 

「うっ……ど、どうしよう……これ以上怒られたらヤバいのに……よりにもよってシュバルツさんに聞かれるなんて……」

 

「リンネーの中で俺がどういう評価なのかは気になるが……はぁ、今なら急げばギリギリ間に合うだろう。彼女は俺が連れて行くから早く授業に行ってこい」

 

「え!?良いんですか!!……あ、でもこれは私の責任で」

 

「変なところ真面目だな。良いから、俺はまだ授業に余裕あるしな」

 

 気まずそうに視線を彷徨わせるリンネーだったが、漂泊者と目が合い頷かれると安心した様に口元を緩めて今度、借りを返すと約束してこの場を離れて行った。

 残された二人は賑やかな嵐が去った静けさを感じつつ、向かい合う。

 

「自己紹介をしておくか。俺はシュバルツ、リンネーとは学部が違うヴォイドマター学部で、何故かよくサボるアイツの教師役をする事もある」

 

「私は漂泊者。なるほど、だからあんなにリンネーがビビってたんだね」

 

「自業自得なんだけどな。さて雑談もそこそこに先ずは保健室に行こう。轢かれたらしいが怪我はないのか?」

 

「うん。鍛えているからね」

 

「鍛えてどうこうって問題でもないとは思うが……」

 

 見た目はどちらかと言えば、クールで理知的な漂泊者から返ってきた脳筋の極みでしかない解答に引き攣った笑みを浮かべるシュバルツの先導によって彼等はスタートーチ学園を進んで行く。

 時折、漂泊者の疑問に答えながら進むが話題は自然と彼が専攻しているヴォイドマターに関する事へと変わっていく。

 

「確かにリンネーの運転テクがあればヴォイドワームから逃れられるとは思うが……その辺りはヴォイドストームが活性化していても目撃例の少ない場所だった筈だ」

 

「シュバルツはアレに詳しいの?」

 

「正確に言えばヴォイドマターに詳しいと言うべきか。教授達に比べれば無知だが、研究対象にしているからな」

 

「……じゃあ一つ聞くけど、ヴォイドワームに捕食された場合ってどうなるの?」

 

「存在の消滅。関わった人間の記憶から消え失せ、虚無の彼方へと消え去る。だからリンネーに轢かれたのは不幸だが、幸運でもあった訳だな」

 

「なるほどね」

 

「……念のため、言っておくけどヴォイドワームをどうにかしようなんて考えるなよ?アレは鳴式に比べれば対処可能な範囲とは言え、一個人がどうにか出来る存在じゃないから」

 

「分かった」

 

 返事はされたが、何処か軽い言葉に違和感を覚えるがちょうど保健室への案内が終了し、二人の会話は打ち切られる。

 

「おや、君がダーニャさん以外と一緒に居るなんて珍しいね」

 

「そういう事もありますよリューク先生。彼女は漂泊者、ここに来る途中でリンネーに轢かれてヴォイドストームにも晒されたらしいから連れてきました」

 

 しれっとリンネーがやらかした事を報告し、シュバルツはリュークに漂泊者を預けて保健室を去って行く。

 ここで終わればただ、親切なだけの登場人物で終わる事が出来たのだが立ち去っていくシュバルツには聞き取れなかった会話で、彼は漂泊者が巻き起こす運命へと連なっていく事となる。

 それは漂泊者の体調をチェックし終わったリュークから始まった。

 

「そうだ。君をここに連れて来た彼、見た目は少し怖いかもしれないけど何かあったら頼るのをオススメするよ。とても良い子だからね」

 

「随分と彼を買っているんだね」

 

「あぁ。あの真っ直ぐさは私のよく知る人物とよく似ているからね。きっと君も気にいると思うんだ」

 

 そしてこのリュークの言葉を受け取った漂泊者は、学園がヴォイドストームに包まれヴォイドワームの脅威が迫った時に彼を頼るという選択肢を選ぶ事になる。

 

『シュバルツ。力を貸して、私はリンネーを探すから』

 

「……ダーニャさん。またデータ取りに協力して貰っても良いっすか?」

 

「この中を行くつもりですかぁ?」

 

「はいっす。友達が困ってるらしいので」

 

「……はぁ、仕方ないですね。どうせ止めてもシュバルツ君は行くんでしょうし目の届かないところで危険な事をされるぐらいなら付き合いますよ」

 

「ありがとうっす!!!!!」

 

 漂泊者とリンネーがバイクで飛び出し、ヴォイドワームを先導するのとほぼ同時に彼等もバイクで出発し追いかける。

 迎撃アレイによるヴォイドワームの拘束を狙う漂泊者とリンネーから少し離れた場所で、バイクを止めて降りるシュバルツとダーニャ。

 

「少し遠くないですかぁ?」

 

「ダーニャさんの安全を確保するには此処がギリギリっすから。じゃあ行ってきます」

 

「無事に帰ってきてくださいね」

 

「もちろんっす!!」

 

 背中に排熱ファンにも見える板状のものを五つほど背負い、シュバルツはダーニャを降ろしてリンネーの方へと向かう。

 どうやら迎撃アレイは二つほど起動している様だが、そこでヴォイドワームを惹きつけていた何かが効力を失いヴォイドワームは漂泊者が向かっている三番目の迎撃アレイへと向けて進路を変更し始める。

 

「っと、ちょうど良いか。リンネー!!一旦、離れてろ!!」

 

「シュバルツさん!?」

 

「行け!!ヴォイド・ファンネル!!」

 

 五つのヴォイド・ファンネルがシュバルツの背中を離れると彼の周波数に従い、ヴォイドワームを取り囲み簡易的なヴォイドマターバリアを展開し動きを止める。

 

「ぐっ!?」

 

 瞬間、ファンネルとシュバルツの繋がりをヴォイドマターが汚染し、逆流する形で彼に流れ込むが既視感によりシュバルツは耐える事に成功すると、更に周波数を流し込みヴォイドワームの動きを止める。

 だが、漂泊者に対し個人でどうこう出来る存在ではないと言った為か彼よりもファンネルが汚染に耐えきる事が出来ず次々と爆発してしまった──時間にして一分、しかし一分もあれば漂泊者には十分であった。

 

「──間に合ったか」

 

 三番目も迎撃アレイが起動し、ヴォイドワームを完全に拘束する。

 あとは学園に任せよう──そう考えたシュバルツの視線の先で、リンネーと漂泊者はヴォイドワームに取り付きなんと、ヴォイドワームの完全破壊を成し遂げてしまった。

 

「……無茶苦茶やるなアイツら」

 

「貴方も大概ですよシュバルツ君」

 

 ヴォイドストームの影響がなくなり、バイクで駆けつけたダーニャと共にシュバルツは空を見上げる。

 そこにはリンネーと漂泊者が仲良く手を取り合いながら、ゆっくりと降りてきており遠目からでも怪我などをしている雰囲気はなかった。

 

「じゃあ私達も帰りましょうかシュバルツ君。データはこちらです」

 

「助かるっす!!うーん、理論値ではもう少し耐えられた筈なのに何処が悪かったんだ?……流入するヴォイドマターが想定より多いな。逆に俺の身体への影響があまりに少ない……遠隔であれば周波数の繋がりであっても影響は少ないと考えるべきか?……」

 

「こういうところは立派な学生ですよねぇ」

 

 すっかりデータの虜になってしまったシュバルツをダーニャは、バイクを押しながらその横顔を微笑ましそうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ほぅ。やはりあの男、鳴式に耐性がある様だな?」

 

 そんな二人を監視している者が居るとは知らずに。




ファンネルシーンは、ニューなガンダムの時の天パみたいな雰囲気を感じてくれると嬉しい。
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