君の重しになりたくて   作:ダーニャちゃんってふわって消えそうだよね

9 / 9
曇らせ注意です。いやほんと、曇らせたくはないんです本当です。


暗闇に潜む者

 ラハイロイの何処か、人の目が少ない場所へとダーニャは足を運んでいた。

 ウェーブラインに送りつけられた場所へと到着すると、そこには白い兎を抱き抱え頭を撫でているニヴォラの姿があった。

 

「遅かったじゃないかダーニャ」

 

「……ごめんなさい。少しだけ予定がありましたから」

 

「ふむ。それは君が学生ごっこに勤しんでいるあの男との日常だったりするのかな」

 

「ッッ」

 

「おや図星だったか」

 

 クスクスと笑うニヴォラの声に込められている明確な嘲りと、人を馬鹿にした様な笑みは学園でシグリカと共に過ごしている時には全く見られないもので、仮にこの場に他の誰かが居ればニヴォラが何か良くない物を食べたのではないかと思うだろう。

 だが、この人を嘲り笑う悪意を煮詰めた在り方こそがニヴォラのいや、フラクトシデス『組織長』の本当の在り方である。

 

「さて、お前を呼んだのは少しばかり計画に変更を加えようと思ってな。知っての通り、我々は裏学園を利用し記憶に関する力を持つ共鳴者が虚無にどれだけの抗えるのか実験している所だ。あぁ、お前の友人シグリカもだったな」

 

「……」

 

「案ずるな。彼女には何もする気はない。しかし、ここ最近気になる存在を見つけてな。ダーニャ、お前にはそいつを裏学園へと誘導して欲しいのだ」

 

「……それは、誰なんですか」

 

 目の前の存在が興味を抱く相手に心当たりがあるのかダーニャは、自分の予想が当たっていて欲しくないという思いを込めて震えた言葉を紡ぐが彼女のその細やかな願いはあっさりと裏切られる事とになる。

 

「シュバルツ──お前が()()()()()()()()()()()()あの男さ」

 

「どう、して」

 

「ん?まさか私が気がついていないとでも思っていたのか?お前という鳴式の人形を通して、アレフ1 を覗いただけであれば偶然と片付ける事も出来たが、ヴォイドストームに飲み込まれても平然としている姿……そして何よりもヴォイドワームの侵食にすら耐え切った姿を見れば流石の私も興味を惹かれるというものさ!」

 

 悪意の中に明確な熱が宿る。

 鳴式という人類にとって猛毒である存在の影響を僅かといえど、耐え切った姿は『完全な鳴式の共鳴者』を作り出したい組織長にとって有用な実験材料であったのだ。

 

「あの男は随分とお前にご執心な様だからなぁ。上目遣いで軽くおねだりでもしてやればあっさりと裏学園に足を踏み入れるだろさ」

 

 下を向いてしまったダーニャに見本だと示すかの様に上目遣いを見せるニヴォラは、自分の行動に何も反応がないとつまらなさそうに姿勢を戻す。

 

「お前の様に調整を施した訳でもなければ、巫女様の様に特異な力がある訳でもない唯の学生が鳴式に抗っているんだ。これを喜ばずして何が我々だろうか!」

 

「……彼がお眼鏡に適わなければどうするんですか……」

 

「ん?無論、捨てるとも。役に立たない物に意味はない」

 

「ッッ」

 

 それはほぼ反射的な行動だった。

 都合の良い人形としてニヴォラいや、組織長には決して逆らおうとしないダーニャが顔を上げ睨みつける様な視線をぶつけたのは──しかし、そのあまりにも弱々しい抵抗はあっさりと踏み躙られる。

 

「随分な態度じゃないか。まさか本当にあの男を愛してしまったとでも言うつもりかい?ははっ、自分がどういう存在か知っているだろうに。いや、そうだな。君が裏切り者で怪物である事を彼に教えるのもアリかもしれないなぁ。愛した女が世界を滅ぼすお人形だと知った時、それでも救おうと手を伸ばせるのかどうか──見てみたいとは思わないかね?可愛いフロイラインよ」

 

 例え鳴式に、アレフ1 に飲み込まれるだけの存在であったとしても唯の学生としての時間を大切に過ごしているダーニャにとってこの言葉はあまりにも致命的で悔しさから両手を握り締めるが、やがて強い無力感と共に開かれてしまう。

 もうこの場に強い反抗心を見せたダーニャは居なかった。

 

「それで良い。では頼んだぞ」

 

 愛しい人形が元に戻ったのを見て満足そうに頷くと組織長は溶けるようにこの場から消え去っていく。

 ただ一人、残されたダーニャは己を支配する強い無力感から動けず暫くの間佇んでいたが、ピコンっとウェーブラインの通知が届いた。

 

『ダーニャさん何処にいるっすか?ちょうどシグリカさんとも合流して一緒に飯を食べる流れになったので、一緒に食べようっす!!』

 

「シュバルツ君……シーちゃん……」

 

 大切な二人が一緒に居て、自分を待ってくれている──ただそれだけの当たり前な事に涙が溢れ出し、端末を濡らしていく。

 ダーニャはこれからシグリカには、純粋で真っ直ぐな心をへし折る様な辛い経験を味合わせ、シュバルツには運命を歪める様な案内をしなければならない。

 まだ捉え様によっては、親友に無理をして欲しくないという言い訳が成り立つシグリカの方が些か心理的負担は軽いがシュバルツはどう足掻いても、フラクトシデスの一員として悪意を込めなければならない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 自分の手で自分を暗闇から照らし出してくれる二つの太陽を落とさなければならないダーニャの心は何処までも重く、軋み悲鳴を上げるが今、この場に彼女を救い出せる者はおらずやがて覚悟を決めてしまった彼女は返信を送る。

 

『すぐに行きますから待っていてください』

 

 それだけを送り、ダーニャはシュバルツの影響でよく乗る様になったバイクに跨り学園へと戻るのだった。




組織長が書きやすいのなんか嫌だぁぁぁぁ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

定めを断つ音(作者:シャケナベイベー)(原作:鳴潮)

ブラックショアのNo.2がラハイロイで悠々自適に過ごしてたら漂泊者がやってきて、さあ大変!なお話▼注意:この物語は『鳴潮』三章第五幕(2026年五月三日現在)までのネタバレを含みます!▼Pixivにて連載中の小説をこちらでも投稿


総合評価:36/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年05月03日(日) 17:30 小説情報

『あなた』がスタレキャラと仲良く(意味深)なっちゃった!(作者:ザワザワする人)(原作:崩壊:スターレイル)

『あなた』と崩壊スターレイルキャラとのお話です。▼星、穹の主人公達とのカップリングではありません。ご了承ください。▼書いて欲しいキャラとか推しとか好きな展開とかシチュエーションがあったら是非とも感想で教えていただけると幸いです!多分書きます!▼こちらでコメントしていただけると幸いです!▼https://syosetu.org/?mode=kappo_view…


総合評価:589/評価:8.2/連載:9話/更新日時:2026年04月04日(土) 09:26 小説情報

エーテル・スペアの処生術(作者:くりぢゅん)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼「――あぁ、これでいい。俺一人が壊れれば、正解に辿り着く」▼部屋で1人コントローラーを握っていたはずが、Zenless Zone Zero(ゼンレスゾーンゼロ)の世界に転移した主人公レン。▼死に戻りを繰り返し、自らを「目的達成のための安価な交換部品」と定義する死に損ないの観測者(リセット・ホロウ)だった。▼ ▼0でも構いません。評価とご意見をください。▼


総合評価:1766/評価:8.64/連載:9話/更新日時:2026年05月08日(金) 21:00 小説情報

リセット・ホロウ 〜死に損ないの観測者〜(作者:くりぢゅん)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ゼンレスゾーンゼロの世界に転生してしまった。しかし、与えられたのは強力なスキルではなく、死ぬたびに時間を巻き戻す「死に戻り」の能力だった。▼(曇らせの栄養をください)▼結構修正を加えていくと思います。初心者なので許してほしいです。公式の設定と異なるところが多くあると思います。生暖かく見守ってください。(こいつ保険えぐ)▼誤字修正ありがとうございます……!


総合評価:642/評価:8.33/未完:13話/更新日時:2026年01月05日(月) 11:19 小説情報

一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話(作者:しいたvol.3)(原作:崩壊:スターレイル)

我、流浪の身である。▼星神らの一瞥と童貞の卒業を求む。▼全身鎧の男がなんてことなく狙われる話。▼設定のガバ・キャラ崩壊多めです。▼リクエストの募集始めました。下記のリンクからお願いします!▼https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=338210&uid=509610


総合評価:2846/評価:8.55/完結:33話/更新日時:2026年04月03日(金) 23:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>