ただ、生きていてほしくて   作:八音谷

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世界観の解説と主人公集団の裏方について描写しようとしたら時間がかかってしまいました。
原作突入までの準備も考えていたけど早く原作キャラと絡ませたいですね……。


回収班、解散!

 

 ゲヘナ。

 道路も建物も罅だらけ。かといって人が居ない廃墟でもない。荒れた街並みはゲヘナでは割と見かける光景だ。戦闘の余波で傷付いた家は崩壊する程ではなく、かと言って修繕するぐらいなら建て直した方がマシという塩梅で放置された街並み。

 

 そんな中を、とある集団の中で“テット”、“ツァディ”と呼ばれる二人の少女が歩いていた。

 

 全身を隠す白いローブに黒い仮面という珍妙な姿ははっきり言ってしまえば不審者そのもので、道行く人々の目を引いていた。しかし黒いインナーに覆われた手足、何より()()()()()()()ので変な恰好をした機械人に見られているようだ。

 

「不満」

「お? 急にどうした?」

 

 テットが手元に持ったタブレットに目を落として足を進めていると、唐突にツァディが声を上げた。

 

「動き辛い」

「一応試作品って言ってたしな。これフリーサイズだし」

「ザインとサメフは専用に誂えたと聞いた」

「そりゃあウチの切り札二人だし、機会が機会だからなあ」

 

 肩を回し、裾を抓んで伸ばしたりしながらぼやくツァディをテットが宥める。

 

「嘆息。ヘルメットにでもならなかったのか」

「流石に無茶でしょ。これ作るのも苦労したらしいし、一々採寸してオーダーメイドなんてしてる暇は無いでしょ。ま、完成したらちゃんと全員に合わせて作るって言ってたし我慢我慢。お、反応ありっと」

「むぅ……」

 

 眺めていた画面に変化を見つけ、テットは少し足早に足を向ける。ツァディも遅れまいとその後に続く。

 

「さぁ〜て、反応的に青かそこらの……ん〜、こっち? こっちか?」

「……推測。このへん」

「あー、上か。高さ表示できないかねぇコレ」

「請負。取ってくる」

 

 建物の屋根に上って少しして、ツァディの手に収まったのはピンク色の液体が入った黒いフレームとガラスでできた小さな筒。

 

「難解。どっちだと思う」

「んー……金、いややっぱ青か? ビミョいな」

 

 それは破損、あるいは摩耗した古代の電池―――オーパーツと呼ばれる物の一種。

 

 前世では“発見された場所や時代にそぐわない出土品”と定義されていて、簡単に言えば当時にそれを作る加工技術が無い筈だったり、用途不明、現代でも解明できない謎を秘めていたりする物の事を指す。

 考古学者を悩ませ、オカルト好きの大好物なオーパーツ。そのほとんどは解明され、捏造品や深読みのしすぎだと示されていたが、このキヴォトスでは違う。

 

 用途、原理、由来、それらが不明なのは変わらないし、ほとんどの人はガラクタと思っているが好事家には高く売れる……なんてのはどうでもいい事。

 重要なのは“神秘を宿している”ということ。

 無色透明ではない、固有の、そして完全同一の神秘。まるで同じ根源を持つようなソレは前世の人々が抱いた思い、夢、熱意が籠められたかのように。

 

 そして不思議な事にどこからともなく現れる。

 これはオーパーツが神秘が具現化しているからと、タヴは言う。

 

 誰も作らない、増える事の無い発掘品がどうして無くなる事なく集め続ける事ができるのか。これがその答えだと。

 故に神秘の溢れるキヴォトスでは自然発生するし、()()()()()()()()()()()()()()()によって拡散された神秘がキヴォトスに還ったり、()()()()()()による多数生徒の感情の高まりが高密度かつ攪拌された神秘を生み出し、高位オーパーツの元になる。これが“指名手配”と“イベント”に対する解釈だった。

 

 

 兎にも角にも、キヴォトス各地で見つかるこれらのオーパーツを回収し、ミレニアムにある研究室に持ち帰るのが二人を始めとする回収班の役割だった。

 

 

「んん……うぅ……」

「その無駄な胸肉を落とせば?」

「!?」

「もう少しでカフの研究が完成するって話だし、そうなりゃこの仕事も「テット」―――おん? ……ああ、これね」

 

 

 そして、その真の価値を知る者は彼女たち以外にも居る。

 

 

「付かず離れずって感じでそろそろ5分だ」

「黒?」

「だろうな。画面は黄色いけど」

 

 頭をできるだけ動かさないまま目線をタブレットに向けるツァディに、見やすいように少し前に出てタブレットを持ち上げるテット。

 画面には自身を示す印と散らばる青い点、そして後ろに黄色い点が1つ。噂の追跡者。

 

「一応一日分の目標は達成してるし撒いて今日は終いか?」

「同意。安全優先」

 

 角を曲がって走り出し、距離を置いてまた曲がる。単純だが目視追尾ならこれで十分に撒けるだろう。

 

「何度か曲がりながら適当なところで脱いじまおう。箱はしっかり閉じてるよな?」

「肯定。さっさと……?」

 

 しかし、黄色の点が消えない。

 

「疑問。追手が消えていない?」

「もう少し回るぞ」

 

 何度も角を曲がり視線を切る。繰り返し続けても反応は消えない。

 二人のように神秘探知機の類を使っているのなら無効化されている筈。足跡は残るような足場でもない。だというのに尾行は消えない。

 

「…………」

「…………」

 

VIII_Teth:メーデーメーデー。なんか尾行されてる。

XVIII_Sadhe:追記。対象は神秘、視覚以外の追跡方法を所持している模様。

 

 自らの手に余ると判断した二人は無言で掲示板に助けを求める。

 所詮は一般人の二人は緊張からなのか、無意識にその足は先ほどまでより速まっていた。

 

 その事から相手も気付かれたと察したのか、距離が縮まり始めた。

 

「走るぞっ!」

「憤然っ。絶対仕立て直させる!」

 

 声を荒げて走り出す二人。

 それでも距離は離れず、縮み続ける。

 

VIII_Teth:速い! これ向こうガチに仕留めに来てる! 逃げきれないわこれ!

XVIII_Sadhe:至急。救援要請。

I_Aleph:多分近いから、行くね

 

「……テット!」

「真っすぐだ。後ろは俺が見るからツァディは走れ!」

 

 テットがタブレットを渡しながら懐から手榴弾を取り出して後ろへ投げる。

 

「1、2、3」

 

 二つ数えて白煙が噴き出すと瞬く間に道路を覆い隠し、少し遅れて人影が飛び出す。

 白いセーラー服を基調とした制服―――青歴開拓学園の生徒。

 

「ここか?」

「―――!」

 

 すかさず今度は普通の手榴弾を取り出し、レバーを離して一拍置いてから投げる。すると標的の目前で炸裂した。

 

「称賛。やった?」

「まだわかんねーだろ」

「テットなら当てた筈。後は相手次第―――っ!?」

 

 並みの相手なら多少の距離は稼げるはずと考えていたツァディの頭上に影がかかる。咄嗟に回避行動をとった身を掠めたのは人影。

 

「……避けたか」

 

「爆風に乗って、か……」

「相談。どうする」

 

 頭にピンと立つ耳と後ろに見える尻尾。使い込まれた痕が見える装備、追跡技術からしても相手は相当な手練れだと判断できる上、距離も詰まってしまった。戦うほかに無いのは明確だった。

 

「俺らじゃ勝てねぇ以上、使うしかないわな」

「未成。止む無し」

 

 

―――“知恵より導かれし美”

―――“峻厳に洗練されし美”

 

 

 小さく、しかしはっきりと祝詞を唱え、戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(変なヤツらだ)

 

 追跡者の少女は胸の内で独りごちる。

 元々は風紀委員として青歴自治区内で活動していたところ、上からの指示で校外捜査に配置換えとなった彼女。戦闘は比較的得意な方で鼻が利くのが長所だった。

 

 発端は一月ほど前。

 神秘技術開発部が発注したオーパーツ集めのバイトがオーパーツを全く見つけられなかった事があった。それ自体は珍しい事では無かったのだが、しびれを切らした依頼主が神秘探知機(機密技術ということで手続きが必要なのだとか)を持ち出して校外都市監視部に捜査を依頼すると大量のオーパーツを所持している生徒を発見。

 

 ガラクタにしか見えないオーパーツを収集しているとなれば高確率で転生者だろうと判断され、追跡を試みるも全てミレニアム校外で振り切られてしまう。なので追跡能力の高い人員が求められてやってきたのが彼女だった。

 

 前任者から聞いた情報によると目標は生徒単独。オーパーツの反応を隠す箱を持っているという。

 実際に見つかったのは白いフードとのっぺりした黒い仮面の不審者で、ヘイローが無いことから正体は獣人かロボットだと思われるが怪しい事には変わりないと尾行を行っていた。

 

 

 そして今。逃げられるぐらいなら制圧してしまおうと交戦に入ったのだが―――少女は違和感を感じていた。

 

(ライフルの方は手応えが薄いしマシンガンの方はやけに響く)

 

 固い方が前に出てその後ろからマシンガンが削りにくる立ち回り。役割こそしっかり分けてこなしているものの、身のこなしからして相手は戦い慣れしていない一般人。しかし獣人やロボットとは何かが違う。生徒を相手にしているかのような感覚だが、ヘイローの有無がそれを否定する。

 

(まあ、後で剥がせばいい事か)

 

 しかし、その程度で済む疑問だった。

 

 弾丸の雨を突っ切ってツァディの腕を捕まえる。狙撃銃で前線を張るのは珍しくないが少女からすれば未熟過ぎた。降り注ぐ銃弾も耐えられない程ではなく、意識を落とす方が早いだろう。

 

 抵抗は激しいが、それだけ。地力の差が埋まるほどでもない。そもそも少女は知る由もない事だが、テット(MG)ツァディ(SR)はまだ中等部の人間で()()を使っているにしても本職には敵わない。戦いになっているだけでも善戦している方だろう。

 

 

 ただし、時間は二人の味方だった。

 

 

 

「捕まえ―――っぐ! 誰だ!?」

「……!」

「……っ!!」

 

 意識の外から到来した銃弾が脇腹を叩き、乱入者の存在を知らせる。

 先程までとは段違いの一撃に思わず動きが止まる。それでも手は離さなかったが意識を逸らしてしまい―――それが致命的な隙になった。

 

 テットの機銃掃射が降り注ぎ少女をその場に縫い留める。

 ツァディが銃を手放し、被弾を承知で後ろに回って少女を抑え込む。

 乱入者―――二人と同じ格好の少女が接近し、アサルトライフルをフルオートで撃ち込む。

 

「がっ―――」

 

 テットも駆け寄りながらこめかみに狙いを定め頭を揺らしにかかる。火力は気持ち抑えつつ、されど容赦なく。

 

「中止! 射撃中止!」

 

 少しして、動きを抑えていたツァディがヘイローの消失を確認してようやく攻撃が止まる。

 念のために命に別状が無いか容体確認もして完全に気絶していることを確認。

 

「……うん、別状ないよ」

「逃げよ逃げよ。納品は明日でいいでしょ」

「賛成」

 

 救援到着からはあっという間の事だった。

 

 

 

 

 

 

143:テット

だぁー! 疲れたぁ……

 

144:ツァディ

帰宅。疲労困憊……

 

145:アレフ

みんなでテットのお家にお泊りしてるよ

 

146:タヴ

おつかれ。無事?

 

147:テット

おうよー。まさか初っ端から襲われるとは思わなかったけどな……

襲撃ないか怖くて三人一緒にいるわ。納品も明日な

 

148:タヴ

全然いいよ。ゆっくり休んで。

私とヨッドの分をカフに譲るから、それで完成すれば回収班は解散してもいい

 

149:アレフ

いいの?

 

150:カフ

超頑張る。責任重大すぎてヤバめだけど

 

151:ヘット

そうじゃなくてぇ

実際にオーパーツクラフターができても、二人ないし三人の研究に十分な量を作れるの〜?

私達だってリスクは承知の上でやってるんだしさ

 

152:タヴ

……正直分からないけど、皆の安全が優先だよ。

テットとツァディだって弱くはないけど、現役高校生と戦うのは荷が重かった。それに撃退したことで次はもっと強い相手が来る可能性もある。

今はまだ無茶をする時期じゃない

 

153:ヘット

ほほん。日和ってる訳じゃないならいいけど

 

154:サメフ

原作まであと2年と少し。それで間に合いますか?

 

155:タヴ

間に合わせるよ。私も動くから

 

156:ヨッド

今度は何をするのやら

 

157:テット

何でもいいけど俺はもう寝るから。ツァディも寝ちまったし。

 

あ、ツァディがあの白ローブ動き辛いってずっとボヤいてたよ。

 

158:タヴ

ブツと一緒に持ってきて。しばらく仕事はないから暇だったらパスの練習とかお願い。

 

159:テット

りょ。おやすみ

 

160:サメフ

お疲れ様でした

 

161:ヘット

おやすみなさーい

 

162:カフ

 

 

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