ただ、生きていてほしくて   作:八音谷

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大変お待たせしました。

こんなに時間がかかるなら移動はカットしても良かったな、と思いつつキャラの掘り下げや出来る内に青春してほしいと思ったら凄まじく難産に。


会話多めです。


4人組、ネツァクへ向けて

 

「おはよう」

「おは……」

「おはようございます」

「おはよっ」

 

 朝9時の駅前。

 人混みで溢れる中私達は待ち合わせに誰一人遅れることなく、全員がしっかり約束通りに集まった。

 

 寝癖ボサボサ白髪の猫背のカフ、姿勢の良い馬耳金髪ポニテのメム、唯一和服の振袖ミニスカハレンチ狐耳付き緑頭な属性過多のラメド。

 

 今回一緒に長い旅をする事になる、個性豊かな面子だ。

 

「いやぁーよかった〜! あんまり遠いもんだから正直間に合うか不安だったんだよね」

「ええ、私も心配していました」

「言ってくれればもう少し遅くしても良かったんだよ? どうせ移動だけで2日そこらはかかるし」

 

 カフは私と同じミレニアム。だからここに来る前に拾って来たが、メムはトリニティ、ラメドに至っては百鬼夜行の出で随分と遠い。

 

 そんな私達は春休みを使って推定片道2日、目的地で2泊と計6日の予定でデカグラマトン第七の預言者、ネツァクを訪ねる。

 

「しかしこうして顔を合わせるのは結成以来ですね。皆さん変わりないようで何よりです。特に、タヴ様は……」

「ん、皆とはタヴとしてしか接してないからね。皆への影響は無いんだよ」

「ふぁ〜……」

「っと、カフも眠そうにしてるし、足は用意してるから乗っちゃって。ガンラックは前の方にあるから」

「成る程。これが」

「準備いいねー」

 

 移動の足はこの為に急遽用意したキャンピングカー。目的地は更に先だが、手前のコクマーとゲブラの居る氷海にはミドリ曰く電車とヘリで3日もかかるらしいが、車で一直線に向かえば多少はマシになるだろう。

 

「“Constant Moderato”ですか。それもピアノ」

「いいでしょ明るくて。三人は何かリクエストある?」

「じゃあ47番道路」

「世界が違う」

 

 他ゲーじゃんそれ。入ってるけどさ。

 

「おお……再現度高ッ!? どうやって作ったのこれ」

「そこは分からないんだ。まぁ神秘的集合意識によって集積された魂と記憶から───んー、分かりやすく言うと完全再現じゃなくて“皆が想像を擦り合わせた再現物”だよ」

「へー……?」

「こっち見んな。私カフ。専門外」

 

 

 車内BGMをきっかけにして下らない話に花を咲かせている内に車は高速道路に入った。こうなってしまえば運転も楽になる。

 

「さて、予定だと12時過ぎにSA入るけど大丈夫?」

「問題ありません。それにしても……いよいよ預言者に会えるのですね。緊張してしまいそうです」

「早い早い。私はこの集合までが緊張してたよ。遠いと遅延の影響が大きくなるし。タヴは?」

「私? 割と緊張してたよ。メムが言ってた通り会うのは結成以来だからね」

 

 結成のときは大元の掲示板から追放されたから繋ぎ直す為に直接会う必要があった。レーダー片手に顔も知らない相手を探しにキヴォトスほぼ全土を回るのは本当にキツかった。

 以降は会う理由も無かったからぶっちゃけ顔もうろ覚えだし、ヘイローで覚えてた。

 

「それにカフだって中で待ってて良いって言ってるのに我慢して外で待ってたからね」

「言うなし……」

「ずっと眠そうだよね。……楽しみで寝れなかったの?」

「は?」

「ついでに開発が順調で止め時も無かった感じみたい」

「言うなってば……!」

「寝なければ寝坊しない理論ですか。お子様みたいですね」

「メムまで……!? 中2はガキだしいーじゃん……」

「それはそれでしっかり寝るべきじゃんね」

 

 でもこうして顔を合わせて話していると掲示板の時とは印象は少し変わって感じる。語録多めのカフは見た目通り陰キャ。メムは感情のしっかり者に見せてノリがいい。ラメドは……変わらないなコイツ。

 例えるならラメドはアスナに似てて、メムはトキに近い。あくまでも振る舞い方の話でラメドは巨乳じゃないし、メムも表情豊かだけど。

 

「ははっ、早速仲良くなれたみたいだね」

「……ふんっ。いいよもう寝るから」

 

 ミラー越しにカフが後ろのロフトに登るのが見えた。よく研究室で寝落ちする時直前の顔だね。本当に限界っぽい。

 

「やりすぎましたか?」

「いんやぁ、おふざけの範囲だね。恥ずかしがってるだけだよ」

 

 ま、SA入っても寝てたら何か買っておいてあげればいいでしょ。

 

 そんな風に考えて、早くもオヤツを漁るラメドに釘を刺したり荷物からゲーム機を取り出すメムを尻目に、私達の旅は緩い空気で始まった。

 

 

 

 

 

「ん、ん〜………」

「起きた? 水飲む?」

「あんがと……止まってる?」

「3時の休憩中だよ。ほら」

「あ、タヴ。ありがと」

 

 

「暇だね」

「遊戯王しない? 持ってきたんでしょ?」

「いいでしょう。私のドラゴンテイルFGSが相手です」

「メイドのイメージだったんだけどエグいの使うね」

「だったら私のキラーチューンで骨抜きにしてやんよ」

「地獄じゃん」

 

 

「なんで!! キラーチューンに!! 超融合があるんですか!?」

「いや先行ダブルマスカレイドとかクソにも程があんだろ」

「おーい。あんまり面白い事されると気になるんだけどー」

「これホントに面白い?」

「「「知らない」」」

 

 

 

「───」

「どうしたの?」

「いえ、夕日が綺麗だと」

「ホント? おぉ〜」

「悪かないね」

「よそ見運転ですよ」

「るっせ」

 

 

「タヴ様、ここからは代わりましょう」

「メムって運転できるの? 免許は?」

「当然ッ、ありません! それが流儀ィィッ!!」

「本当にそうだからこえーわ」

「キヴォトスクオリティだね」

「マジで事故はやめてね」

 

 

「タヴ、夜は何処で停めましょうか」

「メムが運転できるなら交代して夜通し走ろうかなって思うんだけど。遠いし」

「ま?」

「まー?」

「車って二日もフルで走り続けられるんですか?」

「コレ今回の為だけの殆ど使い捨てだし。元々一人で運転するつもりだったから一応目星はつけてるけど」

 

 

 

「じゃあ、おやすみ~」

「おやすみー!」

「ん、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「Zzzz……」

「zzz」

「ごめんな。私も運転できたら代わったんだけど」

「いえいえ。カフさんが気にする事ではありません。私が勝手にやっているだけなので」

 

 夜も深まり、郊外へ向かう都合もあって車通りは段々と減っていく。照明も減り暗闇の中で他車のエンジン音も僅かにしか聞こえない静かな空間。

 

「……この旅は本当なら、私達だけだったかもしれないんだよな」

「はい」

 

 ピルグリムのメンバーはそれぞれ自分の持つパスによって対応する預言者が決まっている。マルクトへのタヴと中心にして核心たるティファレトを除いた8つの預言者に各2名。

 パスは基本的に話し合いで決めたものの選定に住所は考慮されず、対応者も人数調整などの都合で交流が薄い二人になる事もあり。

 

「あ〜、その、なに? 今二人きりだしさ。改めて話をっていうか……」

 

 有り体に言えば、カフは距離感を掴みかねていた。

 

「いいですよ。私も同じ事を考えていました。きっと他のみんなもそうでしょうが、人を挟まない交流が私達は特に薄いですから」

 

 人見知りのカフ。

 リアルが忙しいメム。

 

 二人とも普段は積極的に声を上げるタイプではなく、誰かが起こした話題に乗るタイプ。

 しかし一歩踏み出したカフに応えようとメムも話題を考える。

 

「実は私、普段はレーシュ様の付き人をしています」

「え、そうなのか? 知り合いっぽい感じはしてたけどそんな関係だったの?」

「はい。元々そういう家系でして、気付いたのはお嬢様の方からでした」

「家系……あるんだ、そういう関係」

 

───今ではトリニティでもあまり多くはないのですが。

 

 そう前置きしてメムはレーシュとの関係を打ち明ける。

 

「最初は子供の面倒を見る程度に思っていたのです。しかしお嬢様には才能があり、聡明な方でした。こんな人の下に付く人生も良いのかもしれないと思ったほどです」

「ほーん……そんなに凄いんだ」

「お会いした事は?」

「ないよ」

 

「二人なら会ったかもしれないけど、私はオマケだからさ」

 

 自嘲気味に吐き捨てて笑う。

 

「私はタヴみたいに開拓する訳でもヨッドみたいに製造できる訳でもない。二人が立てた理論を使って二人の手を借りながらおもちゃを作ってるようなものだよ」

「そうでしょうか」

「そうだよ。オパクラだって二人ならもっと早く作れるだろうし……」

「…………」

 

 話せば分かる。開発班なら会ったかもしれない。そんな軽い気持ちで振った話に返された重い空気。

 困惑してしまうが、高すぎる目標に挫けているのだとメムは解釈した。特に回収班の活動停止やタヴの覚悟といった周りの変化に圧力を感じているのだろうと。

 

「方向性の違いで片付けていいと思いますよ」

「……何が?」

「お嬢様に視野が広いと褒められた事があります。私はお嬢様の方が凄いと思いますが……隣の芝は青いものですから」

 

 メムからすればレーシュの身の回りを世話するのが役割で、できて当然の事も他人(レーシュ)からすれば凄い事に見える。できない人ができる人を羨むのは普通の事で、人は皆できる事は違う。

 そんな簡単な事も時には見えなくなってしまうのが人だと、メムは知っていた。

 

「できるできないに関わらず、お二人がカフさんに任せたのならそれはカフさんの役目でしょう」

「……私、偶然居ただけだよ。ここにさえ居れば多分、ミレニアム生なら誰だってできる」

「それでも。集ったのは私達の意思です。違いますか?」

「……意思、か」

 

 “意思”

 

 なんてない言葉がどうしようもなく意味を持って退路(まよい)を断つ。

 

「はは、狡いなその言葉。結局やるしかないんだ。私が選んだんだから」

「気は晴れましたか?」

「ま、多少はね」

「先ばかり見ているから悩むんです。思春期ですね」

「……中2だからな」

「私は中3ですよ。先輩です。あまり多用していると相応の態度を求めたくなってしまいます」

「キヴォトスではッ」

「おっと。一本取られましたか」

 

 二人で重い空気を茶化して中和するように中身の無い掛け合いをして、ふとメムは思う。

 

「子供と大人、私達の本質はどちらでしょうか……」

 

「なんか言った?」

「そういえばお嬢様の話がまだ終わってませんでしたね。お嬢様の素晴らしいところは───」

「ガチ勢かコイツ」

 

 

 しかしそれは少なくとも悩み忙しい友人に話す事でもないだろうと誤魔化す。

 今重要なのは互いを知ることで、悩み事の相談ではない。重い話をされた分はこっちの番と言わんばかりに語り始めるメムに少し引きつつ話を聞くカフ。

 

 二人のドライブはまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

「おはよー……どうしたの?」

「コイツ一晩中レーシュの話し続けやがった…………」

 




次回、十話目にしてついに初対面になります。
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