邪神論:愛されながら恐れられよ   作:幾理 怜

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1-10:まほうのお勉強

 

「……まほう、しょうじょ?」

 

目の前に座るジョシュ(新しい先生的なひと)の顔つきがちょっとなんというか、

()()()()()()()()()()に変わったような気がした。

 

あーー。

 

そんな語彙は()()()()()()にはないか。

 

「あ、ええと……」

 

「いや、ははは。いいね、()()()()か。

不思議な響きだけど、いいね。聖公会としても魔法(奇跡)を行使できる少女(乙女)()()()()というのはそれはそれは素敵なものだと思うよ。その信仰心が伝わってくる。

もちろん、()()()()()()()()よ。素晴らしい賛美、私が確かに受け取った。

 

ああ、女神さま。このような思し召しに心よりの感動を捧げます。

 

── 早速、今日からたくさん勉強していこうね。まずは聖書。そして福音書、詩篇。たくさんあるけど、私としても教えがい(導きがい)があるよ。」

 

そう言うと、どこから取り出したのか、鞄から何冊も本を積み始めた。

 

……あたし、()()()()選択肢間違えたかも。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 

『マーヤによる福音書 8章

さて、聖女アデラが三日三晩祈りを捧げたのち、

とうとうその祈りが女神さまの環光を震わせた。

慈愛の雨とともに聖女アデラは()()()()()を賜り、

それを通じて稀に与る啓示によって荒廃した街ミルトンには再び豊穣が齎された。

 

豊穣の祈り(魔法)は、30日間もの間、そのためだけに建てられた清らかな仮殿に籠もって行われた。

それは信仰心と聖女の祝福によって無数の神雷を賜ることで、その畑を蘇らせるのである。』

 

── 案外と、面白い。

 

最初は読み上げる形で説明が進みかけたが、美桜(セラフィーナ)の場合、音読されると全然頭に入ってこないため、

やんわりとお願いして、黙読してから質問していくようなスタイルになった。

 

「ジョシュさま、8章、拝読できましたわ」

 

「おお、早いね。どう感じたかな?ここは。

これが聖女の権能の中でももっとも力を使うし、大変なところでもある。

けれど、これがこのミルトンの街を救ったんだよ」

 

さっきからずっとこの調子である。

(あーー。またヨイショしておけばいいかしら。もうどこまで迎合したらいいのかわかんないわよもう!)

内心で悪態をつきながら、適当な返事を脳内で選ぶ。

 

「感動いたしましたわ。さぞかし、その街は ──

ミルトンって、あのミルトンですよね?

あの、後に、聖公国ノライアが立ち上がった際の後方を支え続けた穀倉地帯の、あの……?

すごいです、まさに神の御業 ──!」

 

「そうなんだよ!この魔法は後世でもほとんどまともに行使された試しがなくてね、

神雷を賜るといっても、聖女アデラさまのそれが別格で、ふつうの神官だとほんとうに大変なんだ。

でも、その力は本物だからね、そこで祝福された畑の聖土は皆に分け与えるのが習慣だし、

実際にそれで作物は本当によく育つんだよ。

いつか君もできるかもしれない……

 

……まあそれは女神さまの思し召しだから、期待するものではないけどね」

 

はい、と明るく返事しつつ、

なるほどね、と美桜は内心で頷いた。

 

 

 

── 科学このレベルか。()()()()()()()()

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 

夕食。スパイスを多用した味付けの肉がメイン。今日は……鹿肉だ。

それに酸っぱいパン。ずっしりとつぶつぶしたライ麦のそれは、決して悪くなっているものではなく、昔からの伝統の聖餐からくる、夕食には欠かせないパンだ。

── 昼はもっとふわふわしたパンも食べるが。

 

「どうだったかな。修道士からの学びは」

 

(パッパ)が問う。そのトーンはかなり読みづらい(ニュートラルな)もので、美桜(セラフィーナ)は一瞬、返事を迷った。

 

「それはもう、興味深く福音書を勉強できましたわ、父上(とーさま)

 

どのテンションで行くのが正解かわからない。だれか助けて。

……と思いながら肉を優雅にカットしていただく。

 

いや、そう、肉は裏切らない。旨い。

ただ、しれっとじゃがいもが付け合わせに乗っているのが解せない。

この国はアンデス制覇イベント(コンキスタドール)消化済みなの?どうにもこの国の()()()がわからない。本もないことだし。

 

とか考えるのと同時に母が口を開いた。

 

「だいぶ無理を言って早く神学(魔法)を学べるように手配したのですからね、

この父(伯爵)によく感謝なさい、セラ」

 

「はい、お母様」

 

と一言入れて、食器を置いてから父のほうにきちんと身体ごと向ける。

 

そして、

 

「ありがとうございますわ、父上(パパ ♥)

 

と言うと同時に、滑らかな所作で軽く頭を下げた。

そんなセラ(愛娘)のトーンに、ゴルトン伯爵は相好を崩してしまった。

うむ、かわいい。かわいいのである。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

── なるほどね、そういう感じか。

 

そういう、世界(宗教)観で生きてるのね。この世界の住民は。

 

なるほど。だいたい分かった。

 

それなら適応できそうだわ。

 

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