邪神論:愛されながら恐れられよ   作:幾理 怜

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Because it's there. ── ジョージ・ハーバート・リー=マロリー


1-4:そこにあるから

 

知識をよこせ(所望するわ)、とセラフィーナが宣言したのに対し、

 

「……」

伯爵(父親)はつい真面目に考えてしまい、反応が遅れた。

 

そして、そんな様子を彼女(美桜)は意に介さない。

なぜって?

 

……()()()()()()()()()()

 

 

 

トコトコ。

 

 

 

本を見ればどうなるかと言えば、話していた二人(伯爵と教師担当)なんてどうでもよくなる。

そしてその書斎(執務室)の本をただ物色することに集中する。

 

その様子をぼんやりと見ながら、バーソロミューは小声で話を再開した。

「……日頃から()()でいらっしゃるのは伯爵さまもご覧の通りなわけでして」

 

という言葉に伯爵(パッパ)も意識が戻り、小声で訊き返す。

「然り。しかし教えられることがないというのはどういうことかね……?」

 

「いえ、()()に触れて良ければまだまだいくらでも話し甲斐はあるのですが……」

「うむ……」

 

二人して腕を組む。ふつう、魔法は小さくとも6歳以下には教えない。8歳でも早いくらいだ。

10から12歳でようやく『まあ、年頃であるしそろそろ』……というのが暗黙の了解というか、

実際それくらいでないと力を持て余し制御できずに事故に繋がったり性格がおかしくなる。

 

……ある意味性格は元からおかしいのだが。

 

いや、まさにそこである。

二人ともが『しかし例外的な娘ではあるからな』と考え、

しかし『迂闊に口に出すのもなぁ』と慎重になって──

 

 

 

──本を物色していたはずのセラフィーナが、

いつの間にかバーソロミューが座っていたソファの下に潜り込んでいた。

 

 

そして床からニュッっと顔を出して言った。瞳孔が全開。

 

()()〜。あるんだ、魔法。

 

……あるわよね。そりゃ。

()()()()()()()()()()()()()()()

 

教えなさい。包み隠さず、()()()

 

 

 

ゾワッ……

 

と鳥肌が立つのを抑えつつ、向かい合った伯爵に目線だけでお伺いを立てる。

ふるふる、と首を振る伯爵。

 

だが、

 

「ほら行くわよ()()()

いいこと?このわたくしに隠し事ができるなんて考えるほうが無駄よ?

早く色々教えて頂戴(キリキリと吐け)!学べることを放置しておくなんてありえないわ!!!」

 

 

伯爵(パパ)は身を乗り出すように考えていたその身体を、

息を吐きながら完全にソファの背もたれに預けた。

 

あれは……拒否できぬわ。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

セラフィーナの部屋に引っ張ってこられた騎士バーソロミュー、さっきからひたすらに胃が痛い。

ひとしきり概論的なところを延々と吐かされたばかりである。

 

「……つまりまとめるとこうね、

人はみな無意識に力を魔法で拡大してる。

 

それがさっきわたくし(あたし)パパ(伯爵)の執務室の扉をこの身体でも簡単に爆破一歩手前の勢いで開けられた理由とも繋がる、と……。

 

確かに今思えばアレはこんな身体じゃ厳しいですものね?

 

それで?鍛錬方法は?才能は差があるんでしょう?

なにか身体を強化する以外にもあるのではなくて?」

 

 

バーソロミューはほんの少し思案する。

最後にソファに倒れ込んだあの伯爵の様子は『終わった……』と全身に書かれていた。

 

なら、仕方ないよな?止められてないというか、止めようがないと認めたということだし。

 

「ねぇ、早く教えて頂戴(何黙ってんのよ)

 

……それどころじゃないな。

今何か一つでも誤魔化したらとても後悔することに(わからんけど)なりそう(こわい)だ。

 

 

 

「順序立てて説明しますね、「()()()()()()()()()。思ったこと全部言ってくれればそれでいいの。こっち(あたし)が勝手に整理して拾うから」……あーはい、承知しました。

 

まず先に明言しておきます、

魔法は流派といいますか、行使者によって全然違うやり方での発動方法になることが当たり前です。

 

そして、合う合わないも含め、師匠は弟子を選び、弟子もまたどうしても合わなければ師匠を離れることが許される……そんな文化があるため、

今から説明する一連の手順はあくまで私という騎士が最も合っていると考えるやり方です……」

 

「なるほど。ふぅん。……あ、続けて頂戴」

 

「……はい。

私が教わった、──私の理解としては、

 

魔法とは体内を循環する目に見えない力で、それを身体の外にも限定的に影響を及ぼせる。

それが……こうやって……」

 

上に向けた手のひらの上に赤い炎が出た。

 

「絞り出すようにすると、やりたいことが叶う。

──しかし、

そのためには体内の魔力の流れの感覚とは別に、

()()()()()()()()()()()()()()のなるべく正確な理解が必要、です。

それと、イメージ。

 

なので、ここで例えば、"炎ってなんだっけ"といった雑念が混じったり……」

 

言ったそばから炎が小さく不安定になった。

 

「"あるいは炎ってどんな見た目だっけ"といった揺らぎが生まれると……」

 

手のひらの上の炎の色に青が混じりだし、そして……

 

「──維持できなくなります。」

 

……消えた。

 

 

 

「ただ、その鍛錬は相当に時間を有するので……

「ねえ、要は、魔法ってのがあるってのは前提にして、えいやって思い込んで、

こんなルールで起きるでしょって細かく思い込んでればできるってこと?」

……まあそういう風に理解することもできるでしょう。

 

しかし、それはとても高度で……」

 

ボッ……。

 

「あ、できた(ウケるw)

 

 

 

……は?

 

 





あとがき:


すべてを疑うこともすべてを信じることも共に安易で、思考を放棄するに等しい。


──ポアンカレ「科学と仮説」より
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